・ナッターを利用した5エレ八木アンテナ



 50Mの5エレ八木はTonna社のF9FTに代表されるように移動用に最も愛用され
ているアンテナに違いない。私もF9FTを愛用していたが、いかんせんばらした時に
「かさ張る」、「エレメントが太すぎる」事に不満をもっていた。

移動用アンテナに特化したアンテナを作るラディックス社のアンテナも使用してみたが、
こちらはばらしたときの部品点数が意外と多く、「蝶ねじをよくなくす。」縮めた時車で
移動すると「チャラチャラ」と耳障りな音がする。

たまたまローカルからJG2TSL片桐さんのアンテナキットを分けていただいた。
確かに軽くよくできているのだが、いささかブームがやわすぎる。

このエレメントと以前JP1IGX橋立さんに譲っていただいた谷口エンジニアの
4エレHB9CVの残骸のブームを利用し、次のコンセプトで新規に設計することにした。

コンセプト
・収納時、車のトランクに横にして入る長さ。
・展開時車一台分程度の大きさ。
・スキー宅急便で怪しまれず送れる重さ。
・マッチング機構がシンプルなこと。
・ゲインよりSWRとFB比。(飛ぶアンテナより呼ばれるアンテナ)
・部品点数の削減。

MMANAというフリーソフトがある。極めて再現性がよく、設計どおりの特性が期待できる
らしい。ちょっと触ってみたが昔と異なり1G程度のCPUパワーのPCでスイスイと動く。
(当時YOを初代ダイナブックで動かせいていたので比較する余地もない。)

ただマッチングの設定方法はまったくしてよくわからなかった。ガンママッチもCが面倒だし、
T+Uバランも防水が必要だ。又、取り扱いの悪い移動では忘れ物、接触不良の原因となる。

ちょいと前のCQ誌に50オーム給電に設計した21M八木の記事があったのを思い出した。
八木の給電部を50オームで設計、安易に直接給電することにした。
この手法はローカル局に教えていただいた所、W1JRが広帯域八木として発表した手法らしい。
各種特性がブロードで使いやすく移動コンテスターの間では結構利用している人も多い。
バランはお守り代わりにパッチンコアを給電線の3D2Vの八木側に巻き付けた。

小1地時間ほどデータをいじ繰り返して5mリアルグランドで得られたデータとパターンはこれ。
(X1,2軸のマイナスはリフレクター位置。給電部が座標原点となる。)





※詳細はそれぞれの写真を「ダブルクイック」、「拡大」をクイックしてどーぞ!

マッチングをとるためか、妙に給電部が前に出た配置となった。しかしシミュレートを見る限り、
SWRもパターンもまんざら悪くない。試作することにした。

10云年前にJH1AQZ志田さんに自作の50Mのデルタループを見せて貰ったことがあった。
メーカー製のアンテナ顔負けの出来のよさで驚いたが、それ以上にたいへんシンプルな構成となっていた。
その秘密はナッターを利用した接合方式で当時ナッターというものを見たことがなかった私には、
いまいちピンとこなかったがどうも「画期的なすごい物らしい。」ということだけわかった。

DIYで調べてみるとメスのねじつきのナットを接合部にはめ、ナッターをねじこみ引くことで固定
圧着するしくみであることを理解した。しかし値段は5K以上した。このアイデアを利用するのになく
てはならない治具なので奮発して購入した。


これが「ナッター」


ブームを貫通させるブーム直径長よりわずかに長いパイプを用意し、きっちりはまる径の穴をドリルで
開け、パイプの中にナットの玉を入れ、ブームとパイプに同時にかしめる。するとパイプは押し出された
反動で膨らみブームから外れなくなる。
オスねじはセットねじを使い、エレメント側に取り付けたナットと瞬間接着剤で固定する方法とした。
後日ねじこみ時に取れてしまうのでエポキシ系A、Bの接着剤に変更した。この部分はまだ改善の余地
がありそうだ。

千野さんからいい方法を教えていただきました。穴あけはたいへんですが、この方法が確かにベストですね。
50MHz5el八木アンテナの製作
例えば長ねじを切断、収納時にでっぱりじゃまだががブーム側にオスねじを固定したほう
が良いのかも知れない。(志田OMのループはこの方法)又この時しっかりとグリースを塗り、テスター
で導通があることを確認しておくと良い。


給電部は手持ちにあったTV用のブラケットを利用した。(なければロケット辺りで容易に入手できる
だろう)裏はプラスチックブッシュと木工ボンドでねじが落ちないように固定した。Mコネクタは
裸銅線で留め浮かしている。意外と十分な強度がある。今思うと銅線にヒシチューブを巻いて絶縁して
おけばいっそう見た目がよいと思う。


車のトランクは横136mm程度まで収納可能だった。それより長かった反射器と給電部の4箇所は
収納のため途中から馴染みの目玉クリップ留めとした。しかし目玉クリップはよく錆びる、多用は
したくない。カラーの塗装クリップもしくはテナコートをちゃんと塗っておけば防錆対策となる。
エレメントは4つからなり最端部の細いエレメントのクリップをはずし抜き取り、反対側から入れた
ときに136mmになるように長さを調整した。

ブームは手持ちの材料から5本継ぎとなった。これは普通に蝶ねじ留めとした。
ねじが少々長かったのでスプリングワッシャとナットを先に入れておき無駄な蝶ねじ
の回転回数を減らした。ここらへんは工作得意な方は「テントの骨」方式とされるの
だろう。両端の1m程度の長さのブームは収納時のエレメント入れとすることにした。
反射器と第三放射器のエレメントが抜け止めとなった。これも給電が前にいったおかげ。
ブームの中にぴったりエレメント5本ずつ入るので、振動で耳障りな音がすることはない。
ブームの材料が揃えば4本継ぎにしたいところ。マストとの固定はラディックス製の
クランプが余っていたので流用した。


左からF9FT、自作5エレ、ポール。
F9FTに比べ収納性が向上した。ポールはフジインダストリーの一番小さな7mポール。
伸縮時1mちょいと脚立いらずで上げ下げできる。なおかつ外2段を抜き取り5mとした。
5m程度ならノンステーでもいけるし、シミュレーターパターンを信じる限り、セカンド
パターンも気にならず、まんべんなく10度から25度程度の打上げ角を網羅できる。
これは移動時の大きなメリットではないか?


収納はスキー袋。頑丈でポールも同時に入る。左下はLアングル。これをハンマーで
打ち込み、自転車ゴムひもで留めポールを立てる。イコーカ(タイヤベース)いらずで
移動が出来る。これはJE1CKA熊谷さんのアイデア。

ステー線を取る場合の長さは一般的に((ポール長)ー(一段の長さ))*1.5で求まる。
今回は(5−1)*1.5=6m 4本作り24mステー線を用意すればよい。


展開したところ。少々見難いがちょうど車庫いっぱいの大きさで収まる。
展望駐車場での移動でもなんとか許してもらえる大きさではないだろうか?

部品点数は、ブーム5本、エレメント11本。
これをブーム4箇所、給電部1箇所、マスト固定2箇所、計7箇所の蝶ねじと8箇所
のセットビスのねじ留めと、4箇所のクリップ留め。この程度なら移動用アンテナ
としては及第点かと思われる。

やはりショートバーやマッチングBOXがないのは、組み立て収納においてかさ張らず
部品点数を減らす効果がある。

近所の丘にフィールドテストを行ったが、7のビーコンがフロントで57、サイドで
無感とまずまずの切れ、半値角も期待通りブロードである。SWRも設計どおりの値
となり、さすが噂どおりの再現性であった。

これだけの機能なのにフリーソフトの「MMANA」に感謝。


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