・東京から見た6m&Downコンテスト用50Mアンテナを考える



 

 

                                                        de.JQ1BVi

1.6D用の50Mアンテナとは?

 

 6m&Downコンテストの50MHzの伝播は4大コンテストで最もスリリング

といえる。Es等によるコンデションにも恵まれ大いに賑わいを見せる。Esが強い

と、一見東京が不利なようにも思えるが、潜在的なQSO可能局数は圧倒的なはずで

あり、それ故に運用配分の難しさに面白みがあるように思える。

 

アンテナは東京で呼ばれるためには水平ビームパターンは広い方が良いのでエレメン

ト数は5エレから7エレ程度のアンテナが望ましい。さらにより利得を稼ぎたいので

垂直スタックを使う局も多い。グランドウェーブ、Scは打上角が低い方がよい。

 

しかし高入射角の近距離Esでできるマルチは逃したくない。利得と伝播に見合った

打ち上げ角の両立が要求される。

 

アンテナの垂直面のパターンを知り、コントロールすることは単にEsだけでなく

ノイズ面でも有利と思われる。

 

経験的にシングル部門の参加局の中には高打上げ角用と低打ち上げ角用の2系統の

アンテナで対応される局も多い。ここでは一系統のアンテナで両立できないかを少

し考えてみたいと思う。


 

2.コンデションを知る

 

流星群の影響はもちろんの事、地球が同一軌道位置にいる日のコンデションが似て

いることが経験上よく知られている。過去5年間の7月3日、4日の東京(国分寺)

のEsの様子をCRLのサイト(http://ionet-us1.crl.go.jp/ISDJ/index.html)

上の「Ionogram viewer」を使ってパラパラとめくり調べてみた。およその最大値は

下図の、EsMaxは21.28MHzとなった。21Mでは隣町とEsで交信で

きてしまうほどの馬鹿開けのコンデションということになる。

 

EsAnalyzer(http://jq1bvi.hp.infoseek.co.jp/tool/tool.html)にEsMaxを

入力し、該当する50MHzでの伝播を予想させたところ、距離511.7km、

入射角25.2度となった。よって入射角は最高で25度であるから、それより低

い0度から25度までの範囲から落ちてくる電波を均一に拾えれば良い事になる。

 

距離は数値ではイメージがわかないので、

DirDis(http://www02.so-net.ne.jp/~fland/fla/dirdis/dirdis.html)を使って

東京からの距離に対する地名を求めると、北は秋田、岩手、西は岡山、徳島が交信

できるコンデションということがわかった。実際の2004年のコンテストも午前

中のオープンがほぼ類似したコンデションだったことから、このイオノグラムを使

った経験則はMaxに一致した。仮に例えそれ以上のビックコンデションが到来し

たとしても、グランドウェーブである程度対応できる近い距離といえるだろう。

 


     Ionogram viewer               ・EsAnalyzer      ・DirDis

 (2001年7月3日9時30分 国分寺)    (周波数→距離、打上角)(距離→方位角、地名)


 

3.スタックアンテナ

 

以上の結果を考慮し、入射角に見合ったアンテナをMMANAを使いシミュレート

し、検討を行なった。

 

・10mh5eleシングル

ごく一般的に使われる移動用アンテナだが、打上角をみると複数のローブを生じる。

第一の谷は18度に生じ、これでは630km程度(東京−島根間)のEsには対応

できない思われる。

 

・10mh5eleスタック(0.6λ)

3.6m下に0.6λをあけアンテナを追加しスタックとする。通常打上角が低く

なるといわれるスタックだが、この例では打上角が9.4度と高くなる。60度

方向のピークは消え、比較的きれいなパターンとなったが、シングル同様に20度

付近に第一の谷が生じ、第二のローブが40度方向に生じ無駄となる。

 


・10mh5eleシングル            ・10mh5eleスタック(0.6λ)

 


 

・6mh5eleスタック(0.5λ)

アンテナのトップを6mまで下げ、3m下方にアンテナを取り付けスタックと

した。半値角でおよそ0−30度付近のEsまで均等に対応できるようになり、

第二のピークも消滅した。しかしゲインは12mhシングルよりも劣る。打上角

の要求は満たしたが、これでは少々物足りない。試しに実際に山に移動しEsを

シングルと聞き比べた所、立ち木に邪魔され下部アンテナのゲイン向上はまった

く効果をなさなかった。「Esやるなら高さはいらない。」という話は確かだが、

川原等見晴らしの良い所でなければ、この性能を発揮するのは難しいと思われる。

 


・6mh5eleスタック(0.5λ)

 

これらパラメータを変え、シミュレート、設置してわかったことは、

 

     シングルでは3m。スタックではトップ6mの時の打上角のローブが比較的

きれいなパターンとなる。それ以上の高さでは複数のピークが生じメインローブ

の打上角は狭くなり値は下がる。

 

     スタックは高さ6m以上ないと利得向上の効果は見込めない。間隔に対

する利得はほぼブーム長ほぼ依存する。この場合およそ0.6λ程度が良好。

それ以上の間隔になると後方上へのローブが生じゲインは下がる。

 

     設置環境による変化が大きい。例えば山の上だと当然見かけの地上高も変わ

るであろうし、木々の茂みの中に下段があるようでは到底性能は期待できない。

 

そこで異なる3つのアプローチを考えてみた。

しかし残念ながら時間もなく検証に至らぬまま、今年の6Dを迎えてしまった。

実現される方がいらっしゃいましたら、ぜひレポートをお願いします。

 


 

4.三スタックアンテナ

 

・10mh5ele*3(0.5λ)

次にローブを生かしたまま利得が稼げる10m、7m、4mの3段スタックを

検討した。スタックの3分配の方法を調べたところJI1HCD新村さんのサイト

http://www.parkcity.ne.jp/~arata-u/3s.htm)にて2分配同様の75オーム

同軸Qマッチセッションが使えることがわかった。3分配時のインピーダンス

変換は以下の式で37.5オームと求まる。

 

Ri=R^2/Ro=75^2/(50*3)=37.5

 

アンテナの給電インピーダンスが少々低くなるが、75オーム同軸に給電して

も経験的にSWR1.2程度のミスマッチで使えることから、アンテナを43

オーム程度に再設計し直すことで十分使える範囲だろう。接合部のTコネクタ

ならぬ、十字コネクタは市販品がないので、Tのオスメスを繋げる事でH型コ

ネクタにし3分配行う。後は(300/50.3/4*0.67*奇数倍)で求まる75オーム

ケーブルを3本用意すれば良い。

 

パターンはメインローブが大きくなり良好。ただし角度は狭くなるために、入

射角15度以上のEsには対応できない。そこで給電の位相を変えてみて対応

する方法を考えてみた。

 

逆位相にするには単純にアースと芯線を他のアンテナと逆につなげば良い。

各スタックケーブルをシャックまで持ってきて、下段だけスイッチを儲け、

切り替える。下段のみを逆位相にしたところ、下図右のパターンが得られる。

 

メインローブが22度にあがり、およそ15−30度の入射角のEsに対応

できる。ちなみに上、中、又は2段時の逆位相では良好なパターンは得られ

なかった。これで鋭いゲインとEsの対応は、スイッチ一つで可能だが、ト

ータルで15eleとなり設備は少々大きくなる。

 


・10mh5ele*3(0.5λ)        ・10mh5ele*3(下段逆位相)


 

5.あおり角付5エレ

 

JK4USZ蜂須賀さんのEs対策移動用アンテナは、あおり角をつけ

ているとの話を伺った。実際にパイルを先んじてQSOされており実戦で

も有効と思われたため、さっそく10mhの5エレに10、20、30度

のあおり角を付けシミュレート(下図)してみた。

 

当初あおり角方向にゲインが生じると予想したが、地上高による依存が大

きく、メインローブは7−8度方向に生じあおり角には依存しない。

 

ただし地上高によりゲインが相殺される谷が小さくなり、垂直パターンが

均一になる傾向が見られる。あおりをつけ過ぎると50度方向のゲインが

増し、フロントゲインが落ちるため、あおりは30度以下が良いと思われる。

 

アンテナの取り付けは移動用5エレ程度なら、ねじ式ポールのボルトより

ブーム径分長めのボルトを用意し、マストとブームに貫通させマストに固定。

アンテナ前部をローブで引き持ち上げることで実現可能だろう。

 


・あおり角をつけた5ele(あおり30度)     ・あおり角10度

 


・あおり角20度                 ・あおり角30度

 

 

6.あおり角付5エレスタック

 

あおり角30度の5エレを給電位置7m、10mのスタックとして評価した。

シングルと比較し、2dBi以上ゲインが向上し50度付近のローブが大きく

減少した。又あおりなしのスタックと比較し、0.5dBiゲインは減少した

が、20度付近の谷が減少し、30度付近まで適度なゲインが期待できるほぼ

理想的なパターンとなった。(左下図)

上方向のローブが気になる方は、もう少しスタック間隔を狭めると良い。ただ

し、フロントゲインも減少する。

 

7.30mh5エレ

 

固定局で自立タワーの環境だと地上高を高く上げられる。自宅では25mhだ

が、よく言われるようなEsに不利とは特段には感じられない。そこで30m

hの5エレをシミュレートしてみた。(右下図)

60度まで5度程度毎にいくつものピークが存在する指向性パターンとなった。

 

電離層は点ではなく面で反射するので、この「5度の隙間」はある程度相殺さ

れるのではないか?地上高があがるほどさらに隙間が少なくなり、高い打ち上

げ角にも均一に対応できるようになると思われる。

 

山の上等理想的な環境では、確かに打上角が落ちるのかもしれないが平地の固定

局ではEsでまったく駄目というのでもなく、それなりに飛ぶと思われる。

ただし、スタックを使用する多エレレメントの固定局はさらに垂直面が狭くなり低

打上角になるため、よく言われるような近距離Esに弱いということかもしれない。

 


・あおり角30度*2              ・30mh5エレ

 

8.さいごに

 

さいごに、このシミレートはMMANAのリアルグランドという環境下で算出した

シミュレート結果に過ぎません。移動地の周囲の起伏、地質などの諸環境によって

大きくパターンが変化することが考えられます。あくまで一例ということであり、

自分のスタイルにあったアンテナを見つける目安として利用いただければ幸いです。



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