|
■ソニータイマー
1990年代前半頃に販売されていたSONYの特定小電力トランシーバーのICB-U100です。このトランシーバーはソニータイマーが働くことで有名で、故障の典型的な症状は、音が出ない、変調がかからない、電源が入らないなどの様です。今回はこのトランシーバのソニータイマーはいったいどんな物なのかを見ていきたいと思います。
■電解コンデンサー
今回は故障したICB-U100を3台分解したいと思います。
電化製品の故障は電解コンデンサーの液漏れが原因になることが多く、これまでも電解コンデンサーが原因の故障を多く経験しました。
ICB-U100の基板は、AF、制御、電源を扱うマイコンボードと、RF,PLL,VCO,IFなどの高周波を扱うシグナルボードの2枚があります。多くの故障原因はマイコンボードにあるようです。手元の3台は全てマイコンボードの電解コンデンサーC206(220uF 6.3V)、C207(220uF 6.3V)が液漏れしていました。

■交換だけでは治らない
まずはC206とC207の役割を確認します。C206はスピーカーへのカップリングです。C207はAF系統の電源平滑用です。
しかし、3台の故障は電源が入らない、音が出ない、変調が乗らないといった症状です。これを交換しても、1台の音が出る様になっただけで、電源が入らない、変調が乗らない等の症状は解消されませんでした。
■まずは電源から
このトランシーバーはCPUが起動しないと電源スイッチを押しても電源が入りません。電池やACアダプタが接続されると、CPUに電気が供給されて起動するようになっています。しかし、手持ちの2台は何らかの原因で起動しない模様です。
CPUには2つの水晶振動子があります。起動する個体の発振状態をオシロで確認すると、X202(32.768KHz)の水晶は所定の周波数で発振し、X201(1.9872MHz)の水晶の足には、0.5秒間隔でパルスが観察されました。起動直後は省電力モードになっているようです。電源の入らない個体は発振していませんでした。CPU自身が故障している可能性も考えられますので、確認のためにX202の足に32.768KHzの矩形波を注入してみると、X201に0.5秒間隔のパルスが発生するようになり、電源も入るようになります。CPUは生きていました。
電源の入らない故障原因はX202の発振不良となります。X202の位置は下の写真の黄色い矢印の先に位置します。液漏れを起こしたC207の裏側にあたります。

さて、発振不良の場合大抵は水晶を交換しますが、その位置が偶然にも「液漏れを起こしたC207の裏側」である事、水晶の実装位置は基板から遠いCPUの上に位置している事を考えると怪しいのは水晶付近のキャパシタです。
この近辺にハンダを当てると液漏れ独特の臭いがします。電解液が基板や部品と基板の隙間に入り込んでいると思われます。X202近辺のキャパシタの再半田と基板表面の掃除を行うことでX202が発振するようになりました。
■変調が乗らない
これまでの工程で電源が入り音が出るようになりました。しかし2台は変調が乗りません。この原因も上の写真から分ります。赤矢印の先の部品が変色しています。この場所はC206の裏側であり、変色した部品の回路はマイクアンプなのです。
変色した受動部品を取り去り、基板を掃除して再半田すると1台は機能が回復し、もう1台も機能回復しましたが30分後に再び変調が乗らなくなりました。オペアンプ(LM358)の足にハンダを当てると30分程度機能回復します。電解液の影響でオペアンプが故障している場合があるようです。オペアンプを交換することで変調が乗るようになりました。
■その他の不具合
C207の液漏れは、マイコンボードとシグナルボードを接続するコネクタにも影響を与えています。コネクタに接続されているフラットケーブルにも腐食があり、コネクタ内部の接触不良でSQLが効かないなどの症状がありました。
■まとめ
手持ちの3台の故障はC206,C207の液漏れの結果、裏側に位置する回路を損傷し色々な症状を引き起こしていました。多くの場合同様の事が起きているのではないかと思います。
|