インファナル・アフェア2 無間序曲 2003*中国


6.october.2004   
Director アンドリュー・ラウ
      アラン・マック

  Cast 
エリック・ツァン
      アンソニー・ウォン
      エディソン・チャン
      ショーン・ユー
      フランシス・ン


    *完全に結末に触れています*



香港ノワール完全復活!
そう言い切ってしまいたいほど見事な序章に仕上がっていた。
前作のようなヤンとラウの息詰まるような攻防戦はない。
派手な銃撃戦も、見せ場となる大きな山場的シーンもない。
だがこの序章には前作にない、暗黒社会の業のようなものがぎっしりと詰め込まれていた。
それこそがまさしく私の好きなノワールな世界だった。

潜入捜査官ヤンとマフィアのスパイ警官ラウが、なぜそのような状況を築いてしまったのか、
時をさかのぼり、知りたかった部分を私たちにみせてくれる。
ヤンの出生が実は香港マフィアのドンであるンガイ一家の嫡出子であったということが
大きなキーになっており、そのせいで、警察学校を退学になったという事実。
ヤンの父であるクワンの暗殺を仕組んだのが上司であるウォンだった、
そして手を下したのがラウであったという事実。
そこから派生した抗争で、格下だったサムが香港マフィアを牛耳るようになったという事実。
次々と明るみに出る絡み合った暗黒街の人間模様から目が離せない。
そこに生まれついたがゆえに、抱えて生きなければいけない運命がある。
そして、生きてゆくためには捨てなければいけないものがある。
ヤンはその出生に逆らい、「善人になりたい」と強く願う。
そのためには家族を捨て、裏切り者の道を歩むしかない。
ラウは貧しさを嫌い、上昇を望む。
求めても得られないものはあっさりと切り捨て、情を無くしていく。
彼らが何を捨てて、どう行き先を選択してきたのかが、少しずつみえてきたとき、
前作以上の重い無常感に包まれて身動き出来なくなってしまった。

そしてキャストがすごい。
今回の主演はサムを演じたエリック・ツァンと、
ウォン警視を演じたアンソニー・ウォンといえるのではないかと思うが、
特にエリック・ツァンの他を圧倒する個性にはまいってしまう。
父の敵を執拗に追うハウを演じたフランシス・ンは最も印象に残った。
知的で冷静な仮面の下に隠れる執念深さと野心を、ゆるぎない演技で見事に演じきっていた。
ウォンの親友で同士ルク、冷酷なハウの側近たち、四人のマフィアのボス、潜入捜査官、
なんとも味のある強い個性を持った俳優陣で、香港映画界の奥の深さを垣間見た気がする。
トニー・レオンやアンディ・ラウが姿をみせなくても、
このキャストであったからここまで惹きつけられたのかもしれない。
存在感たっぷりなカリーナ・ラウも相変わらずの強いまなざしも健在。
若き日のヤンとラウを演じた二人に関しては、
やはりどうしてもヤンとラウに重ねるのが難しいところではあったのだけど、
そのルックスのよさがこの男だらけの暗黒絵巻の中では一服の清涼剤。
ヤンにはもう少し似た人のほうがよかった気もする。
往年の香港映画を彷彿とさせるようなチープなクレジットや、
ややくすんだ画づくり、そして重さを増幅させる音楽も効果的。
なぜまたヤンは潜入を続けることになったのか、
ウォンとサムの確執の深まっていく様など、ここで解き明かされなかったことはまだある。
‘終極無間’が待ち遠しい。