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7人の男たちを次々と手にかけた実在のシリアル・キラー、
アイリーン・ウォーノスは性的虐待と暴力まみれの幼少期を過ごし、
ヒッチハイクによる売春によって生計を立てる日々を送っていた。
絶望的なまでにすさんだ生活の中で、彼女は孤独なゲイのセルビーに出会い、
惹かれあうが、一度の正当防衛の殺人から次々と男たちの命を奪うようになる。
生まれながら抱える問題や環境によって、自分ではどうにもできない生活を強いられたり、
うまく社会と適合できないために孤独にならざるをえない人たちがいる。
いくら努力しても的外れであったり、周囲と強調することがまったく出来ず、
たったひとりで生きていくことを余儀なくされる人たち。
アイリーンとセルビーも境遇は違っていても、
誰かを愛して愛されたい、という人間が持つ本能によって惹かれあう。
彼女たちがローラースケート場で初めて愛を確認しあうシーンがある。
だめなのだ、私はそういう出会いのシーンにはめっぽう弱いのだ。
おりしもそこで流れるのがジャーニーの‘Don't stop believin'’。
アメリカの80年代の持つバックグラウンドを思い出させるうってつけの曲なのだ。
「男も女も好きじゃない、あんたが好きなだけ。」というアイリーンの言葉には強い衝撃を受けた。
孤独な闇の中で生きてきた彼女がやっとみつけた愛に似た関係を失いたくない気持ち。
だが彼女は愛のために狂喜に駆られて犯罪を犯すわけではない。
最初の殺人でたががはずれたために男たちに対する感情を抑えられずに、
と同時に生活のための金と車を得るためでもある。
セルビーを養うために、現実的で冷静に自分の置かれた立場を理解しながらである。
生活力がまったくなく、人に依存しないと生きられないセルビー。
アイリーンの犯罪を知っていながらも、それに依存し、自分でもそのしたたかさに気がついていない。
殺人を容認する気にもなれないし、 アイリーンやセルビーに感情移入して同情する気にもなれない。
間違っているし、あまりにも弱すぎる。それはわかっている。
だけどいるのだ、実際にこの世界には転がるように間違った道に入ったまま逃げられない人たちが。
その事実をみせつけられるとき、私は悲しくて、悲しくてこみ上げてくるものを抑えられない。
自分の中にもある弱さ、一歩間違えれば、そちらの世界に行ってしまうかもしれない現実。
そうなりえるアイテムがこの世にはたくさん転がっているから。
セルビーに証言に立たれ冷たい視線を向けられて泣きながらも、
最後まで虚勢を張って汚い言葉を吐き続けるアイリーンの姿に、
「モンスター」でも何でもない弱い孤独な女をみて、 私はまた泣いてしまうのだった。
13キロの増量と特殊メイクでこの役に賭けたというシャーリーズ・セロン、
かすかに面影は残るものの、しみだらけのくすんだ顔とだらしないボディライン。
さすがの私も服を脱いだ彼女のたるんだ腹回りと太ももには驚いた。
本物のアイリーンの特徴でもあるだらしない口元から出る汚い言葉も堂にいったものだ。
確かに評判どおりの変身ぶり、しかしどうしても先行する情報ゆえに
「あのシャリーズ・セロンがやっているんだ」という醒めた目でみている自分がいる。
大きな見せ場はないが、エキセントリックで、繊細で、
自己中心的なレズビアンを演じたクリスティーナ・リッチは巧い。
また新しい彼女をみせてもらった気がする。
プルイット・テイラー・ヴィンスがアイリーンの客としていいところをみせている。
そして本物のレズビアンだという友人役のリアルな登場シーンも印象的。
両女優の入魂の演技には確かに激しく動かされた 。
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