〇涼宮ハルヒの憂鬱 第一話 (前編)           キョン ♂:  ハルヒ ♀:  谷口 ♂:  国木田 ♂&♀:  朝倉 ♀:        ___________________________________________________________________                      キョン(M):サンタクロースをいつまで信じていたか〜なんて事は 他愛もない世間話にもならないくらいのどーでもいい話だが、 それでも俺がいつまでサンタなどという想像上の赤服爺さんを 信じていたかと言うと・・・これは確信を持って言えるが、最初から 信じてなどいなかった。幼稚園のクリスマスイベントに現れたサンタは 偽サンタだと理解していたし、お袋がサンタにキスをしている所を目撃 したわけでもないのにクリスマスにしか仕事をしないジジイの存在を 疑っていた賢しい俺なのだが、はてさて。宇宙人や未来人や幽霊や 妖怪や超能力者や、悪の組織やそれらと戦うアニメ的特撮的マンガ的 ヒーロー達が、この世に存在しないのだということに気づいたのは 相当後になってからだった。・・・いや、本当は気づいていたのだ。 ただ、気づきたくなかっただけなのだろう。俺は心の底から宇宙人や 未来人や幽霊や妖怪や超能力者や、悪の組織が目の前にふらりと出て きてくれる事を望んでいたのだ。しかし!現実ってのは意外と厳しいっ! 世界の物理法則がよく出来てることに感心しつつ、いつしか俺はテレビの UFO特番や心霊特集を、そう熱心に見なくなっていた。宇宙人、未来人 、超能力者。そんなのいる訳ねー!でも・・・ちょっといて欲しい みたいな最大公約数的な事を考えるまでに俺は成長したのさ。 中学を卒業する頃には俺はもうそんなガキな夢を見ることから卒業して この世の普通さにも慣れていた。俺はたいした考えもなく高校生になり ・・・そいつと出会った。 ハルヒ:東中出身!涼宮ハルヒ!ただの人間には興味ありません! この中に、宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら あたしの所に来なさい!以上! キョン(M):・・・これ、笑うとこ?・・・えらい美人がそこにいた。 (周りが静まり返る。) キョン(M):・・・誰もが冗談だと思っただろう。結果から言うと、 それはギャグでも笑いどころでもなかった、ハルヒはいつも大マジなのだ! ・・・こうして俺達は出会っちまったぁ。 しみじみと思う!偶然だと信じたいと! キョン(M):涼宮ハルヒは、黙ってじーっと座っている限りでは 一美少女高校生にしか見えなかった。たまたま席がまん前だったという 地の利を生かして、お近づきになっとくのもいいかな〜と 一瞬血迷った俺を、誰が攻められよう。 キョン:なぁ、しょっぱなの自己紹介のアレ。 どのあたりまで本気だんたんだ? ハルヒ:しょっぱなのアレって何? キョン:いや、だから。宇宙人がどうとか。 ハルヒ:あんた、宇宙人なの? キョン:違うけどさ・・・。 ハルヒ:違うけど何なの? キョン:いや・・・何もない・・・。 ハルヒ:だったら話しかけないで。時間の無駄だから。 (昼休み) 谷口:もしあいつに気があるんだったら、悪いことは言わん・・・やめとけ。 中学で涼宮と三年間同じクラスだったからよく知ってるんだがなぁ、 あいつの奇人ぶりは常軌を逸してる。 国木田:あの自己紹介? 谷口:そう。中学時代にも訳のわからんことを散々やり倒していたなぁ。 有名なのが「校庭落書き事件」! キョン:なんだそりゃ・・・。 谷口:石灰で白線引く道具があるだろ?・・・っ、あれ何っつーんだっけ? ま、いいや。それで、校庭にでかでかとけったいな絵文字を 書きやがったことがある。しかも夜中の学校に忍び込んで。 キョン:その犯人が、あいつだったって訳か。 谷口:本人がそう言ったんだから間違いない。朝、教室に行ったら 机が全部廊下に出されてた事もあったなぁ・・・。校舎の屋上に 星マークをペンキで描いたり。学校中に変なお札を ペタペタ張りまくられた事もあった。 (ハルヒが屋上でテニスボールを屋根に向かって投げている) キョン(M):何やってんだ・・・?あいつ。 谷口:キョンシーが顔にはっつけてるようなやつな。 意味わかんねーよ・・・。でもなぁ・・・あいつモテるんだよなぁ・・。 なんせ、ツラがいいしさ。おまけにスポーツ万能で成績も どちらかと言えば優秀なんだ。ちょっとばかし変人でも、 黙って立ってたら、んな事わかんねーし。 国木田:それにも、何かエピソードがあるの? 谷口:一時期はとっかえひっかえってやつだったなぁ。俺の知る限り、 一番長く続いて一週間。最短では告白されてOKした5分後に破局してた、 なんてのもあったらしい。 ハルヒ(K):普通の人間の相手をしてる暇はないの! 谷口:・・・っ!聞いた話だって!マジで!なんでかしらねーけど 告られて断るってことをしないんだよ!あいつは!だからなぁ・・・。 お前が変な気を起こす前に言っておいてやる。・・・やめとけ。 キョン(M):やめとくも何も・・・そんな気はないんだが・・・。 (体育の授業中) 谷口:俺だったらそうだなぁ・・・。このクラスでの一押しはアイツだな。 ・・・朝倉涼子。一年の女の中でもベスト3には確実に入るね〜。 キョン:一年の女子全員を・・・チェックでもしたのか? 谷口:おうよ!AからDまでランクづけして、そのうちAランクの女は フルネームで覚えたぜ! 国木田:朝倉さんがそのAな訳? 谷口:AAランク+だな。あれはきっと性格までいいに違いない! (ハルヒが走る。その速さに皆驚く。) キョン(M):この時期、涼宮ハルヒもまだ大人しい頃合で俺にとっても 心休まる月だった・・・。しかしながらハルヒの奇矯な振る舞いは この頃から徐々に片鱗を見せていたと言うべきだろう。 という訳で片鱗その1、髪型が毎日変わる!月、火、水、木、金・・・。 曜日が進むごとに髪を結ぶ箇所が増えている。月曜日にリセットされた後は 金曜日まで一つづつ・・。果たして日曜日はどんな頭になっているんだぁ? 見てみたい気もする。片鱗その2、体育の授業は男女別に行われる。 着替えは女が奇数クラス、男が偶数クラスに移動してすることに なっているのだが、まだ男子が残っているにもかかわらず、やおら セーラー服を脱ぎだしやがった!・・・どうやら、男子生徒の事は ジャガイモぐらいにしか思ってないらしい。片鱗その3、 あきれる事にハルヒはこの学校に存在するあらゆるクラブに仮入部 していたのだった。運動部からは例外なく熱心に入部を勧められ、 その全てを断って毎日参加する部活動を気まぐれに変えた挙句、 結局どこにも入部することはなかった・・・。 何がしたいんだろうなぁ・・・こいつはよお! (登校中のキョン、後ろから谷口が来る) キョン(M):そんなこんなをしながら、 ゴールデンウィークがあけた一日目。 谷口:よぉ!キョン! キョン:よぉ。(M)ちなみにキョンってのは俺のあだ名だ。 いい加減にやめてもらいたいのだが・・・。 (教室に入るキョン。ハルヒの後ろ姿を見て) キョン:あぁ・・・。今日は水曜日か・・・。 (M)などと考えつつ、魔がさしてしまったんだろう。 それ以外に思い当たる節がない。 曜日で髪型変えるのは、宇宙人対策か? (M)涼宮ハルヒに話しかけていた!! ハルヒ:・・・いつ、気づいたの? キョン:んー・・・。ちょっと前。 ハルヒ:・・あっそ。・・・私思うんだけど、 曜日によって感じるイメージってそれぞれ異なる気がするのよねぇ。 色で言うと月曜日が黄色で火曜日が赤なら水曜日が青で、木曜日が緑、 金曜が金色で土曜が茶色、日曜は白よね。 キョン(M):初めて会話が成立したような気がする。 なんとなくわかるような気もするが・・・。 つーことは数字にしたら月曜が0で、日曜日が6なのか。 ハルヒ:・・・そう。 キョン:俺は、月曜は1って感じがするけどなぁ。 ハルヒ:あんたの意見なんか、誰も聞いてない! キョン:・・・そうかい。 (しばらく見詰め合う二人。キョンは段々嫌な顔になっていく) ハルヒ:あたし、あんたとどこかで会ったことがある?ずっと前に。 キョン:・・・いや?(M)きっかけ・・・。なんてのは、 大抵どーってことないものなんだろうけど、まさしくこれがきっかけに なったんだろうなぁ・・・。しかし、ハルヒがマトモな返答を よこしたことは驚きだ。てっきり、「うるさい」「バカ」「黙れ」 「どーでもいいでしょ、んなこと」と言われるものばかりだと 思っていたからなぁ。・・・だから、ハルヒが翌日。長かった髪を バッサリ切って登場した時には結構俺は動揺した・・。それにしたって、 俺が指摘した次の日に短くするってのも短絡的過ぎないか?おい? ハルヒ:・・・別に? キョン:(M)あれ以来、ホームルーム前のわずかな時間に ハルヒと話すのは日課になりつつあった。 ちょいと小耳にはさんだんだけどさ。付き合う男、 全部振ったってホントか? ハルヒ:何でアンタにそんな事言われなくちゃいけないのよ。 何を聞いたか知らないけど・・・まぁいいわ、多分全部本当だから。 キョン:一人ぐらいマトモに付き合おうとか思う奴がいなかったのか? ハルヒ:全然ダメ。どいつもこいつもアホらしいほどマトモ奴だったわ。 宇宙人でも未来人でも超能力者でもないし。 キョン(M):そりゃ、普通そうだろ・・・。 ハルヒ:あと、告白がほとんど電話だったのは何なのあれ! そういう大事な事は面と向かって言いなさいよ! キョン:まぁ・・・そうかなぁ・・・。 俺ならどっかに呼び出して言うかな。 (M)一応、同意しておこう ハルヒ:そんな事はどうでもいいのよ! キョン:(M)どっちなんだよ! ハルヒ:問題はね。くだらない男しかこの世に存在しないのか どうなのって事よ。ホントは中学時代はずっとイライラしっぱなしだった。 キョン:じゃ、どんな男なら良かったんだ?やっぱり宇宙人か? ハルヒ:宇宙人。もしくはそれに順じる何かね。 とにかく、普通の人間でなければ男だろうが女だろうが・・・。 キョン:どうしてそんなに、人間以外の存在にこだわるんだ? ハルヒ:そっちの方が、面白いじゃないの! (キョン、絶句。授業終了後、そそくさと教室を出て行くハルヒ) 谷口:おい!キョン!お前、どんな魔法を使ったんだ!? キョン:何の話だ? 谷口:俺、涼宮があんなに長い間しゃべってるの初めてみるぞ。 お前、何言ったんだ? キョン(M):さて、何だろう・・・。適当な事しか 聞いていないような気がするんだが・・・。 谷口:驚天動地だ・・・。 国木田:昔からキョンは変な女が好きだからねぇ・・・。 キョン:誤解を招くようなことを言うな。 朝倉:私も聞きたいな。私がいくら話しかけてもなーんも答えてくれない 涼宮さんが、どうしたら話すようになるのか・・・。コツでもあるの? キョン:わからん・・・。 朝倉:ふーん・・・。でも、安心した。涼宮さん、いつまでもクラスで 孤立したままじゃ困るもんね。一人でも友達が出来たことはいい事よね。 キョン:友達ね・・・。 朝倉:その調子で、涼宮さんをクラスに溶け込めるようにしてあげてね。 せっかく一緒のクラスになったんだから、みんな仲良くして いきたいじゃない?よろしくね。 キョン(M):と言われてもな・・・。 朝倉:これから何か伝えることがあったら、 あなたから伝えてもらうようにするから。 キョン:う〜ん・・・だが、待てよ! 俺はアイツのスポークスマンでも何でもないぞ! 朝倉:・・・お願い♪ 続く