〇涼宮ハルヒの憂鬱 第五話 (前編)           キョン ♂:  ハルヒ&ユキ ♀:  イツキ&管理人 ♂: _________________________________________________________________                       キョン(M):女子と肩を並べて下校する・・・。なんてのは、 実に学生青春ドラマ的で、俺だって、そういう生活を夢にみなかった かというと嘘になる。俺は現在その夢を実現させている訳なのだが・・・。 ちーっとも楽しくないのはどうした事だろう? ハルヒ:あ!あっちね!!・・・何か言った? キョン:いや、何も。・・・・はぁ。 (M)そろそろ、長門の住んでるマンションだなぁ・・・。 (マンションに着く二人) ハルヒ:朝倉は、ここの505号室に住んでたみたい。 キョン:なるほどね・・・。 ハルヒ:何がなるほどよ? キョン:いや・・・何でも。それより、どうやって入るつもりだ? お前、アレのナンバー知ってるのか? ハルヒ:知らない。こういう時は持久戦ね!・・・・! (マンションの住人が出てくる。それによって開いた自動ドアを 足を挟めて閉じさせまいとするハルヒ。) キョン(M):なんと!!? ハルヒ:・・・!早く来なさいよ! 朝倉がいつからここに住んでたか調べる必要があるわね。 キョン:もう、空き部屋なんだ。開くはずないだろ? ハルヒ:・・・うーん。 キョン(M):我ながら時間の無駄な事をしていると思う・・・。 ハルヒ:管理人室に行きましょう! キョン:鍵貸してくれるとは思えないけどなぁ。 ハルヒ:そうじゃなくて、朝倉がいつからここに住んでるのか聞く為よ! (管理人と話をするハルヒ) ハルヒ:私達、ここに住んでた朝倉涼子さんの友達なんですけど。 彼女ったら急に引越しちゃって、連絡先とかわかんなくて 困ってるんです。どこに引っ越すとか聞いてませんか? それから、いつから朝倉さんがここに入ってたのか教えてほしいんです。 キョン(M):こういう常識的な口の聞き方も出来るのか・・・。 管理人:(しきりに頷いた後)・・・はぁ〜? ハルヒ:朝倉涼子さんの引越し先と、 いつからここに住んでたか教えてほしいんです!! 管理人:あ〜、505号室の朝倉さんね。引越し屋が来た様子もないのに 部屋が空っぽになって、度肝を抜かれたわ。抜かれちゃったの。 ハルヒ:引越し屋が来てない? 管理人:転居先は聞いとらんなぁ。後から荷物や何か届いたら 送らにゃあならんのに、困っとるんだわ〜。 ハルヒ:いつぐらいから、ここに住んでたんですか? 管理人:3年程前だったかなぁ・・・。めんこいお嬢さんが ワシんとこに和菓子の折り詰め持ってきたから覚えとる。 ハルヒ:ご両親は?お父さんとお母さんは どんな仕事をしてたかわかりますか? 管理人:さーて・・・。そういえばお嬢さんの方は度々目にしたが 両親さんとはついぞ挨拶した事ないのぉ・・・。 ハルヒ:でも、このマンションって高いでしょう?子供を一人暮らし させる為にわざわざローンを組んで買うとは思えないんですけど。 管理人:いやいや〜。ローンでなくて一括ニコニコ現金払いじゃった。 えれぇ金持ちじゃと思ったもんじゃて。 キョン(M):上手く聞き出すもんだ。探偵にでもなればいい。 管理人:せめて一言別れ言いたかったのに、残念な事だぁ・・・。 ところで・・・あんたも、なかなかめんこい顔しとるのぉ。 ハルヒ:ご丁寧にありがとうございました。(そそくさと去る) 管理人:しょ〜ねん。 キョン:・・・ん? 管理人:その娘さんは今にきっと美人になるでぇ。取り逃がすんでないよ? (マンションを出る二人。マンションのすぐ外で長門と会う 手にはコンビニの袋を持っている) ハルヒ:あら? キョン(M):こいつも飯は食うんだな・・・。 ハルヒ:ひょっとして、あんたもこのマンションなの?奇遇ね。 キョン(M):どう考えても奇遇じゃないだろ・・・。 ハルヒ:だったら、朝倉の事何か聞いてない?転校したの知ってるでしょ? (首を横に振る長門) ハルヒ:・・・そう。もし、何かわかったら教えてよね。いい? (首を縦に振る長門) ハルヒ:・・・メガネ、どうしたの? (キョンを見る長門) キョン(M):俺を見られても困るんだが・・・。 ハルヒ:・・・・。 (帰ろうとするハルヒ。キョンもついていく) ユキ:・・・気をつけて。 キョン(M):!!・・・今度は何に気をつけりゃあいいんだぁ? ハルヒ:行くわよ! キョン:・・・はぁ。これからどこに行くつもりなんだ? ハルヒ:・・・別に。 キョン(M):・・・ノープラン。 ・・・俺、もう帰っていいか? ハルヒ:あんたさ、自分がこの地球で どれほどちっぽけな存在なのか自覚したことある? キョン(M):何を言い出すんだ? ハルヒ:アタシはある・・・。忘れもしない・・・。小学生の 六年生の時。家族みんなで野球を見に行ったのよ、球場まで・・・。 アタシは野球なんか興味なかったけど、着いて驚いた。 見渡す限り人だらけなのよ。野球場の向こうにいる米粒みたいな 人間がびっしりうごめいてるの。日本の人間が残らずこの空間に 集まっているんじゃないかと思った。でね・・・親父に聞いてみたのよ。 ここはいったいどれだけの人がいるんだって。満員だから五万人くらい だろうって親父は答えた。試合が終わって駅まで行く道にも 人が溢れていたわ。それを見てアタシは愕然としたの。こんなに いっぱいの人間がいるように見えて、実はこんなの日本全体で言えば ほんの一部に過ぎないんだって・・・。家に帰って電卓で計算してみたの。 日本の人口が一億数千万ってのは社会の時間に習っていたから、 それを五万で割ってみると・・・たった二千分の一。アタシはまた 愕然とした。アタシなんて、あの球場にいた人ごみの中のたった 一人でしかなくて、あれだけたくさんに思えた球場の人達も、実は 一掴みでしかないんだってね。それまでアタシは、自分がどこか特別な 人間のように思ってた。家族といるのも楽しかったし、何よりも自分の 通う学校の自分のクラスは世界のどこよりも面白い人間が集まってると 思ってたのよ。でも、そうじゃないんだってその時気づいた・・・。 アタシが世界で一番楽しいと思ってるクラスの出来事も、こんなの 日本のどの学校でもありふれたものでしかないんだ・・・。日本全国の 全ての人間から見たら、普通の出来事でしかない・・・。そう気づいた時 アタシは急に、アタシの周りの世界が色あせたみたいに感じた。 夜、歯を磨いて寝るのも、朝起きて朝ご飯を食べるのも、どこにでもある みんながみんなやってる普通の日常なんだと思うと、途端に何もかもが つまらなくなった・・・。そして、世の中にこれだけの人がいたら、 その中にはちっとも普通じゃなく面白い人生を送ってる人もいるんだ、 そうに違いないと思ったの。それがアタシじゃないのは何故? 小学校卒業するまでアタシはずっとそんな事を考えてた。考えてたら 思いついたわ。面白い事は待っててもやってこないんだってね。 中学に入ったらアタシは自分を変えてやろうと思った。待ってるだけの 女じゃない事を世界に訴えようと思ったの。実際、アタシなりに そうしたつもり。でも、結局は何もなし・・・。そうやってアタシは いつの間にか高校生になってた。少しは何かが変わると思ってた・・・。 (踏み切りが降り、電車が二人の後ろを過ぎてゆく) キョン(M):電車のおかげで俺は、ここで突っ込むべきなのか 何か哲学的な引用でもしてごまかした方がいいのか、考える時間を得た。 ・・・そうか。 (M):こんな事ぐらいしか言えない自分が、ちょっと憂鬱だ・・・。 ハルヒ:・・・帰る。 キョン(M):俺も、どっちかと言えばそっちから帰った方が 早く帰れるんだが・・・しかし、ハルヒの背中は無言で 「ついて来んな」と言ってる様な気がして・・・俺はただひたすらに ハルヒの背中が見えなくなるまで、その場に立ち尽くしていた。 何をやってるんだろうねぇ・・・。 (帰宅してきたキョン) イツキ:こんにちは。・・・いつぞやの約束を果たそうと 思いまして、帰りを待たせてもらいました・・・。 キョン:俺がどこに行ってたのか知ってるみたいな話し方だな。 イツキ:少しばかり、お時間をいただいてもよろしいでしょうか? キョン涼宮がらみで? イツキ:涼宮さんがらみで・・・。 続く