ヨコハマ物語 ヨコハマ物語
原作:大和和紀
全4巻(文庫版)

■私的評価

大和和紀作品というと『はいからさんが通る』と『あさきゆめみし』しか知らず、しかも読んだ事が無かった。 今夏、知人の薦めで一気読みを敢行、いずれも名作と称するに相応しい作品であったが、最も心に染みたのが本作だった

文明開化間も無い明治時代の横浜を舞台とした愛の物語。
登場人物の誰もが自分の想いよりも相手の気持ちを気遣ってしまい悩んでしまう奥ゆかしさ。それでいて ひたすら前向きに生きてゆこうとする強さ・・・これで感動できない人はいるのだろうか?
人身売買やアヘン問題、当時の日本とアメリカで残っていた人種差別にまで言及しながらも、高尚と感じさせずにエンターテインメントとしてストーリーを進められているところが 名作の誉れに値する。

脇役も含め登場人物全てのキャラクターが立っていて一切の揺らぎが無い点にも着目すべきだ。 『はいからさんが通る』でも感じた事だが、大和和紀の描く"オテンバ娘"が何と魅力的な事か(やはり女はオテンバに限る)!
麗花ばあさまや諫早の若、混血児の丈など「このキャラのサブストーリーをぜひ読んでみたい」と全員に対し感じてしまう作品は そうそうあるものでは無い。
*麗花ばあさまの(真面目な)セリフはどれもが心に染みる

技法的な部分では、服の細やかさと小道具の正確さ、そして目と口元と手が"語る"描画が大和和紀の特徴であろう。 写実性の点ではレベルが高い現代の作家もいるが、この質感を表す域に達している画は稀である。この質感を生み出す 仕事の丁寧さが作品としての"品"を押し上げている点に注目して読んでみるのも楽しい。

『はいからさんが通る』と『あさきゆめみし』という二大名作の陰になりがちだが、それらに決して劣らぬ満足感。 積極的評価を促したい作品だ。


P.S.『エースをねらえ!』でも 思ったが、なぜここまで精神性の高さを素直に作品に投影できるのか?と不思議とすら感じる。時代性なのだろうか?今後の 研究課題である。

■データ
・1981年「週刊少女フレンド」誌にて連載開始。最終回は1983年第16号。
・大和和紀は、1948年3月13日生まれ。北海道出身。未だ現役。
・デヴューは1966年『どろぼう天使』。当時北星学園大学短期大学の学生だった。

■大和和紀の作品
・はいからさんが通る
・モンシェリCoCo
・N.Y.小町
・虹のナターシャ (原作:林真理子)
・月光樹
・あさきゆめみし
・紀元2600年のプレイボール
・アラミス '78
・ヨコハマ物語
・レディーミツコ
・ラブパック
・天の果て地の限り
・菩提樹
・天使の果実 (原作:伊集院静)
・ハイヒールCOP
・眠らない街から
・にしむく士
・ハイヒールCOP
・ベビーシッター・ギン
・紅匂ふ





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