zero ZERO -The Man of The Creation-
原作:愛英史 作画:里見桂
既刊58巻 (2007年1月23日現在)

■私的評価

1990年代、後世に名を残す2本の美術系傑作マンガが発表された。1つは細野不二彦の『ギャラリーフェイク(1994年連載開始)』。 もう1つが本作だ。
奇しくも贋作を通じて本物の美への造詣を深めていく点でも酷似しているが、脅威の記憶力と分析力によりこの地球に存在する全ての物を「本物」に複製する創造主である主人公ゼロが 作家の心情や制作背景まで踏み込んでゆく本作はあくまでシリアスに進む。
 *『ギャリーフェイク』の俗物的雰囲気も大好きなので誤解の無いよう。

本作の主人公"ゼロ"が生み出すものは全て完璧なる本物。これは原作者の ストーリーセンスに拠る所が大きいのだろうが、読者はゼロが贋作を制作している現場を見ているにもかかわらず「本物」 と納得させられてしまう。これほど斬新なアイデア(=オチ)に溢れた作品が今まで存在しただろうか?
週刊誌の少ないページの中で全て1話完結。ここにドラマがキチンと存在するのだから恐れ入る。

と、原作者の手腕評価が先行してしまったが、作画担当の里見氏の力量も大変なものだ。
里見氏の作品を最初に見たのは、週刊少年サンデー『なんか妖かい!?』だったが、その時は「絵が上手いのに話がツマラない なぁ〜」と思ったものだ
里見氏の絵の特徴は、写実性と漫画的ディフォルメが高次元で融合している点だ。このページの末尾に里見氏の作品一覧を 記載しているが、作画担当作品の多さが証明するように彼の作画者としてのレベルの高さは一級品である。 世間の評判は実際のところ判らないが、私にとっては「遂に"釣り合い"が取れる作品に出会えたんだなぁ」という印象である。

あくまで本名を"ゼロ"と言い張り、受けた仕事は完璧に遂行する、法外な報酬を要求するが自分が正しいと思えた依頼者 としか取引しない・・・そう、ゼロは"美術界のゴルゴ13"なのだ。 (第55巻で遂にゼロの正体に踏み込むエピソードが特別編として収録されたが、これもゴルゴ模倣を感じる)。
ゴルゴと同様、 各エピソードがフィクションなのかノンフィクションなのか判らなくなる点が悩みどころだが(苦笑)、これは、それだけ真に迫った内容で ある事の証明。この水準を維持して長寿連載を継続して欲しいと願う。

■データ
・「Super Jump」誌にて連載中。
・里見氏の描く女性は全て細身で、悪人以外はほぼ全員タレ目気味の大きな瞳
 という傾向。実在人物に例えれば奥菜恵系。なかなかイイです。
・里見氏は、大島やすいち氏のアシスタントだった事がある。
・マジシャンのセロがメジャーになって以降、ゼロのオフ姿がセロっぽくなったと
 思うのは多分私の考えすぎ。

■里見桂の作品
・ハニーハンター (1979年〜1980年、全3巻、原作:石田豊)
・よろしく春平 (1980年〜1981年、全2巻、原作:武石正道)
・なんか妖かい!? (1982年〜1984年、全11巻、原作:きむらはじめ)
・チャンス (1983年〜1985年、全4巻)
・奪戦元年 (1984年〜1985年、全3巻、原作:火浦功)
・里見桂選集 (1985年)
・ないとバード (1985年〜1986年、全7巻)
・0の男 (1986年〜1987年、全3巻)
・スマイル for 美衣 (1987年〜1989年、全12巻)
・ジオポリスジョー (1989年〜1990年、全3巻)
・ノーサイド (1989年〜1990年、全4巻、原作:谷口いくよ)
・研修医古谷健一 (1991年〜1992年、全4巻、原作:永井明)
・ゼロ -The Man of The Creation (1990年〜 、原作:愛英史)
・タイムアンドアゲイン (1992年、全1巻、原作:黒沢哲哉)
・Jihad<聖戦> (1993年〜1995年、全5巻、原作:伊月慶悟)
・無国籍企業橘商会 (1991年〜1995年、全1巻、原作:吉村作治)
・J The Outlawyer (1995年〜1998年、全5巻、原作:愛英史)
・Haikara事件帖 (1999年〜2002年、全5巻、原作:黒沢哲哉)



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