携帯サイト[こちら] ![]() 馬車道でひろったキトキト 作:流石 流葉 |
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夜9時過ぎ
人通りは少なく
雨が降る馬車道
珈琲ショップの窓際の席
僕はアメリカンコーヒーを飲んでいた
ああ今年も理想の女性と出会うことなく歳を取っていくのか
もう来年は、40歳
40代って言うと女性は誰も恋愛対象としてみてないのだろうか?
シナリオは、ヒットしないし・・・
窓の外は人影がまばらに見え、人恋しい秋を感じさせる日であった。
そこへ「きゃーきゃー」と相場を壊すように、20代後半に見える、3人の女性が入ってきた。
彼女達は、多少酔っぱらっているようだ。
会話が、何気に耳に入ってきた。
3人の内、2人は横浜駅前のホテルに、残る1人は新横浜駅前のホテルに宿泊し、明日は静岡県に帰るようだ。
せっかく横浜に来たのだから、目一杯遊びたいらしい。
だが、あれこれと意見が分かれていた。
「ボーイズの店に行こうよ」
「女性向け出張性感マッサージがあるから、思い切って頼んでみようよ」
「クラブも行ってみない」
「もっと景色の良いバーに行こうよ」
「みなとみらいをもっと見たかったね」
「ワールドポーターズでゆっくり買い物したかったわね」
「3人で、また来よう」
「賛成」
「そうよ、来よう」
その時、1人が、椅子の背もたれに、体重を掛け過ぎて、僕の方へ倒れて来たが、反射的に受け止めたので、彼女は倒れなくて済んだ。
「大丈夫ですか」
「ごめんなさい。つい・・・」
「楽しそうですね。僕もご一緒したいな」
普段の僕なら、想像もつかない大胆な言葉を、口にしていた。
彼女達が、旅行者のせいかな。
その後、閉店まで、彼女達の他愛もない話しの仲間に入り、楽しい時間が過ぎた。
店を出る頃になり、横浜駅前ホテルに泊まっている2人が、タクシーに乗って帰ると言い出した。
そこで僕は再び、普段なら絶対に言えないセリフを口にしていた。
「横浜駅経由で新横浜駅まで送りますよ!」
何で、こんな事を、僕は言っているんだろう。
「きゃー嬉しい♪」
「優しい人、大〜好き」
3人は声を揃えて言った。
車を駐車場から出し、馬車道で待っていた彼女達を乗せ、横浜駅前の横浜ベイシェラトンホテル&タワーズへ向かった。
誰かが言い出した
「ねえねえ、コンビニでお酒を買って、ホテルの部屋で宴会しようよ。ホストも1人調達したし」
僕は、
「良いよ。オッケイ牧場」
「キャハッ」
「古ッ」
「きゃー」
「アハハハハ」
古すぎるギャグがバカウケした。
コンビニでお酒とツマミを買い、ホテルの彼女達の部屋に向かった。
部屋に入ると
「ねえねえ、みんな、改めて、ちゃんと自己紹介しようよ。
私は山瀬里夏です。K大学を卒業し、浜松のソフトウエア会社でOLをしています。
趣味は読書に映画鑑賞、食べ歩き、温泉旅行、パソコンいじりです。
血液型はおっとり型のO型です」
「えっとお、山田弥生です。浜松で父が小さな貿易関係の、会社を経営していて、そこで仕事を手伝っています。
一人っ子で血液型はB型。
あと、学校はG院を出ています。
趣味はテニスにスノーボード、スキュキューバダイビング。それ以外もアウトドア関係は、結構好きです。彼氏は、いません 」
その言葉を遮るように山瀬里夏が
「やだぁ。弥生ったら、彼氏が、いないなんて、わざわざ言うかなあ?」
「私は青井瑠奈です。N生命保険に勤めてます。学校はA学院を卒業してます。
趣味は旅行と温泉、スノーボード、食べ歩き、グルメです。
あと、スキーとスキューバダイビングも、これから覚えようと思ってます。
車の運転も好きです。
私の彼になるとドライブの時は助手席でのんびりと寝ていられる特典がありますよ」
全員が笑い出した。
次は僕の番(・・・ドキドキ・・・)
「えー、えーっと、ぼ・僕は」
誰かが、
「きゃぁ、顔が赤くなってる、チェリーボーイみたい。可愛いぃ」
全員、爆笑。
「えー、小野田淳平です。歳はかろうじて39歳で、近々40歳の大台になってしまいます。彼女いない歴は千年・・・」
3人は前のめりに倒れたり、ポンと手をたたいたりして爆笑した。
「でもってぇ、血液型はB型です、アバウトな性格のB型かな。
W大学に入学はしましたが、途中で演劇に目覚め、中退してから、ずーと、劇団や演劇の、シナリオ書きをやっています。
なんて言うと、カッコ良いが、まだまだメジャーになれず、地方のミニコミ誌のエッセイや折り込み広告等の記事を書いているのが実情です。
そして、生活費が捻出できない時は、ヒモを、たまにしてます」
3人はクスクス笑った。
山瀬里夏が、水割りとおつまみを作り、出した。
「小野田さんは、水割り、それとも買ってきたノンアルコールのビール?」
「車の運転だから、ノンアルコールで」
すると、青井瑠奈が
「残念、酔わせて誘惑しようと思ったのに」
僕は(・・・ドキッ・・・)
「そういう事でしたら、後日、個別にご相談をしてもらえれば、お相手します。
ただし、望み通りになるかどうかは、保証しかねますが」笑いながら返事をした。
3人は、中学と高校は同じで、大学がバラバラとのことである。3人とも、年齢は29歳で未婚。
結婚するチャンスは、3人とも、何回もあったらしいが、今ひとつ本気で結婚したいと思う男がいなかったそうだ。
「3人とも、シッタカビーだね」
「何それ?」と山田弥生が、聞いてきた。
「男を、何人も、何十人も知ってしまうと、冷静に男を見ることが出来るようになり、必然的に、何十人もの中で性格や金銭、セックス等の各人が一番良かった部分を見て、それが基準になり、全ての部分が高いレベルになり『知ったか』と言う言葉でまとめることが出来る。で、高学歴や高身長や高収入などを望むのを『タカビー』と言い、両方が合わさってシッタカビーに、なったのさ」
「いやだぁ、小野田さんて、勝手に日本語を創らないでよぉ」と、青井瑠奈が言った。
だんだんと酔いが回り、3人とも、昔の失敗談などで盛り上がってきた。
彼女達と、会話をしながら、改めて3人を観察した。
山瀬里夏は身長が160cm位。バストはボリュームがあった。
しかしバスト以外はスリムな感じで、言葉は控えめでおとなしい性格のようだ。
着ているスーツは、控えめな黒っぽい色。
髪はショートで高校生がよく好んでしているカットだ。
童顔で年齢が20歳前後に見えるくらいであった。
山田弥生は、お父さんが貿易会社を経営しているだけあって、ワガママで、自分が話の中心にいないと、気が済まないようだ。そして男に対し甘えは無いが、好きな男に対しては甘えたり、優しく接してくれそうな感じであった。見かけは、ブランド品で固め、まるでブランド武装している感じである。
ちなみに冗談で「今日のショーツとブラジャーとスーツと時計とネックレスと指輪とイヤリングを足すと、幾らになるの?」
と、聞いたら
「うーん・・・500万円ぐらいかな」
平然と、普通に返事をするので、こちらの方が焦ったくらいだ。
そして、浜松では、いつも、ベンツの2シーターを、乗り回しているそうだ。
今まで生活資金を稼ぐための、働く苦労は無く、美味しい物を食べ過ぎて、ちょっとばかり身長150cmの割には太い体型だ。
青井瑠奈は、スーツ姿が、一番似合っていた。
生命保険会社では、新商品等の開発セクションのチーフをしているそうだ。
身長は167cmで、スレンダー体型。
アメリカの、若い独身女性の体型にも近い感じでナイスな体であった。
自己紹介の時言ったように、アウトドアスポーツの好きな、活動的な女の子のようだ。
3歳年上の彼氏がいるそうだが、結婚するつもりは無いと言っていた。
ご飯や遊びに行く男友達が、もう1人と、彼氏では満足できないので、3歳年下のセフレも1人いるそうだ。
レストランは何処が美味しいだとか、ケーキは何処が良いとか、パンは、やっぱり元町の、Pドールが美味しいだとか、友人の彼氏は、ギャル男じゃない?とか・・・etc
女3人も、いると、話が止めどもなく続いていく。
そろそろ僕は話に飽きていた。
すると山田弥生が
「ふぁ〜。もう眠たくなっちゃった」
青井瑠奈も
「そうね。私も部屋へ行こうかな」
「じゃあ、山瀬里夏さんを送って帰りますよ。今日は楽しませていただき、有り難うございました」
山田弥生が
「いいえ〜。淳平さんがいたので、お酒が楽しく飲めました」
青井瑠奈が、ニヤッと笑い
「じゃあ、淳平さん、里夏と楽しんできてね」
僕は「ええっ?そんなっ・・・」
山田弥生が
「まあ、いいから・いいから。おやすみ」
車をホテルから出し、新横浜プリンスホテルへ向かった。
3人でいる時と違い、彼女は無口であった。そうだ、今度来たときは、ベイブリッジを案内しよう。
それなら、感激するだろう。いやまて、まだ付き合うとか、そんな事まで、分かる段階じゃないよ、
もう、これっきり、会えないかも知れないし、焦って話してもダメだし、何を話そうかな。
車は、三ツ沢グランドに、さしかかった。
でも、静かな沈黙が、車内を漂っていた。
何を喋ろうか、どうしようか、迷っているうちに、新横浜プリンスホテルに着いてしまった。
突然、沈黙を破り、意を決したように彼女が、小さな声で言った
「ねえ、お部屋で、お茶していかない?」
「えっ?・・・うん」
「じゃあ、駐車場へ車を入れるよ」
フロントでキーを受け取り、部屋へ向かった。
ドアを開けると、ベットが二つ並んでいる。
しばらく、扉の前で呆然としていると
彼女は察したように
「本当は、ここに彼氏が来る予定だったけど、3週間前にけんか別れしちゃって。
でもね。仲直りして、来れるかなって・・・かすかな希望が有ったから、キャンセルしないで二人分取ってあったの。
そんな所に立ってないで、こっちに来て」
彼女の突然の、思ってもいなかった言葉が、僕の耳から、頭の中に入ってきた。
否応なく、下半身が勝手に熱くなってしまった。
これは、完全に誘ってきてるよなあ・・・
「添え膳食わぬは男の恥」って諺もあるが、この事だよな、やっちゃって構わないよ。
心臓がドキドキバクバクいってる音が、はっきりと聞こえてきた。
これは絶対彼女にも聞こえてるよな心臓音が。
悩んでいるうちに、彼女はスルスルと着ている物を脱ぎ、裸になった。
唖然として、見ていると
「汗臭いからシャワーをしてくるね」
さっさとバスへ、入って行った。
山瀬里夏がシャワーを浴びている間、僕の心は嵐の海のように、うねっていた。
ワンナイト?
恋心は、あるのだろうか?
いや、会ってその日だから、付き合うつもりは無いかな?
もし、やっちゃうと、ワンナイトだよ!
セフレで終わってしまうよ、どうしよう?
心の中の悪魔が、
「女性の方から、下着姿を見せるのは勇気が要るはずだ。エッチしてあげなきゃ、可哀想だよ。
どうせ、彼女はワンナイトだけのつもりだよ。
愛が無くても性格が分からなくても、構わないさ。
彼氏と別れたばかりだと言っているんだし、遠距離セフレなら、都合の良い時だけ会えるし。
今日、ヤッテしまい、出来ればキープしておきなよ。
どうせ、今、ヤラないと、早かれ遅かれ、他の男とヤッチャウよ」
「早いとこ、ヤッチャイナ」
しかし、心の中の天使が、
「ダメだよ。彼氏と別れて、傷心の隙がある女の子と遊んじゃ! 今日は紳士でいなきゃ」
30分程すると、バスの中から
「おいでよ♪」
「気持ち良いよぉ」
「洗って、あ・げ・る」
バスの扉を半開きで、手招きをしていた。
彼女の白く、つんとした眩しいバストが見えた。彼女のフェロモンに、引き寄せられるようにバスへ入ってしまった。
「あー気持ち・・・」
布団と枕の感触や臭いが、何時もと違うので、ふと、目が覚めた。
がばっと、起きあがると、ソファーで里夏が、珈琲を、美味しそうに飲んでいた。
あっ、そうか、彼女の宿泊してる部屋に泊まったんだ。
「揺すって、起こそうとしたのに、淳平さん、全然起きないんだもの。お家は大丈夫?」
「うん。独身だよ。1人住まいだし」
「よかったぁ」
と、甘える様な声で、彼女は言った。
「会社勤めじゃないので、今日の予定は自由だよ。だから心配しないで」
「そっかぁ、淳平さんはシナリオ書き屋さんだもんね。自由な時間が取れていいなぁ」
「自由な時間は沢山有るけど、売れなければ何も出来ないから、たいしたこと無いよ」
「良いじゃない。私なんか、今日、3時の新幹線で帰り、明日は、朝9時までに会社に行かなきゃ」
「大変だね、会社勤めは。真面目じゃなきゃ出来ないよね。」
「とりあえず、朝ご飯、食べに行こうか?」
新横浜プリンスホテル1Fラウンジで朝食を取りながら、僕は、
「何処か、案内しようか?」
「えっ、嬉しい。ガイドまでしてもらえるの? でも、何も、お礼出来ないよ」
「いや、楽しい夢を見させてもらったから」
「イヤン。でもぉ・・・夢はまた見たいかな♪」
彼女はすぐに澄ました顔になり、
「プリンスPEPEで、お買い物したいな」
僕は「じゃあ、まずはお買い物だ。その後は国際競技場と横浜アリーナに、行く?」
「うん」
プリンスPEPEでウィンドウショッピングをしたが、彼女がゆっくりと見て回るので、11時半になっていた。
そこを出て、車をホテル駐車場から出し、国際競技場に向かった。
途中の、新横浜プリンススケートリンクにさしかかると、彼女は聞いてきた。
「ここで、スケートやってるの?」
「うん。フィギアとかアイスホッケーをやってるよ」
「ふーん。見てみたい!」
車を100円パーキングに入れ、新横浜プリンススケートリンクに入った。
そこでは中学生アイスホッケーの試合が行われていた。
場内では、自分の吐く息が白かった。
「パシーン」「バーン」とパックをシュートする音や、コーチの声が聞こえてきた。
中学生といっても、防具は大人と同じ格好で、体格も身長180cmぐらいの大きな子もいて、この中から、将来アジアリーグで活躍する人が出てくるのだろう。
スピード感も、大人顔負けで迫力満点だった。
スケートリンクを後にして、100円パーキングから車を出し、大きな病院の建物を抜けると、国際競技場が見えてきた。
今日は、試合が無いので、外観だけを見てもらい、新横浜駅方向に、向かいながら、
「そうだ、ラーメンは好き?」
「ええ。嫌いじゃないけど。どうして?」
「じゃあ、新横浜ラーメン博物館に行こう」
自動販売機で入場券を二枚買い、ラーメン博物館に入館した。
中は、やや暗い照明で、建物は昭和30年代の内外装がしてあり、北は北海道から南は沖縄までの人気ラーメン屋が十数軒テナントとして入っていた。
順番に、ゆっくりと見て回った。どの店に入ろうか決めあぐねていると里夏が、
「さっぱりした東京ラーメンが食べたいな」
そこで、彼女が選んだ店に入り、ラーメンをすすった。
「美味しかったね」
「うん。毎日来ても、飽きないくらいね」
「そうかも」
食後はラーメンの歴史や、インスタントラーメン袋で、昔からの物が展示されているのを見たりして回った。
お土産コーナーに来ると、彼女はラーメンの種類を見るのに気を取られ、無意識に手をつないできた。
ほんわかとした気持ちになった。
ラーメン博物館を出たのは、2時過ぎだった。
車は新横浜ラーメン博物館前の、100円パーキングに入れたままで、新横浜駅まで歩いた。
その後は、彼女の出発まで時間があったので、駅の珈琲ショップで、珈琲を飲んでいた。
「なによ〜。里夏ったら。やっぱり淳平さんを独り占めして。しかもゲットするなんて、狡いよぉ。今度私も、絶対、誘惑しちゃおう」
青井留名が、後ろから声をかけてきた。
びっくりした顔で、里夏は
「えっ。朝7時の新幹線に乗らなかったの?」
留名、
「うん、もう少しこの辺りを観光しようという事になって。そうだ、里奈にメールしたのよぉ、2回も!」
里夏、
「えっ、今日は朝から1回も見てなかった」
留名、
「そうよね、ラブラブだったもんねぇ。2人とも、そう、顔に書いてあるよ!」
山田弥生は、終始無表情でやりとりを見ていたが
「何時の新幹線なの?」
里夏、
「午後3時」
山田弥生、
「同じだ。天使の悪戯だ」
僕は、青井瑠奈の言葉が頭から離れないのと、里夏と一緒に居るところを、見られてしまったのが気恥ずかしく、妙な気分だった。
「男の本能だから、仕方ないよな」と言い訳を心の中でしていた。
里夏からメールが来たのは、新横浜駅で3人を見送り、家に帰り、洗濯や掃除をして一息入れた、夕方頃だった。
受信
「無事着きました。淳平さんと一緒の時間は、とても楽しかったです。気が向いたら浜松にも、遊びに来てくださいね。」
送信
「いいえ。僕の方こそ楽しかったです。早く、浜松に行きたいと思ってます。」
受信
「ぜひ、遊びに来てください♪」
里夏は、積極的なメールを送って来たので、ワンナイトの相手では無かったのだと、嬉しくなった。
まあ、嫌いなタイプじゃないし、流れに任せて付き合ってみるかな。
遠距離だから毎日は会えない。
普段はメル友だな。
僕が書いているシナリオは、ここのところ次の場面が浮かばなく、止まったままだ。
無理に書くと、観客が見ても面白くないストーリーになってしまう。
良い筋書は、このまま永遠に出てこないのではないか?
不安で一杯だ。
そして、このまま世の中に知れ渡ること無く、売れないで終わってしまうのか。
そう思うと、どんどん落ち込む。
そんな、ある日、友人でエージェントNに勤める新居一郎が、脚本を書けるかも知れないと知らせてきた。
新鋭劇団Dの脚本家が重度の胃潰瘍で半年ほど入院することになり、来月から半年間の、期間限定契約で、
公演のシナリオを新シリーズとして書ける、脚本家を募集していると言う知らせだった。
劇団Dは、メジャーではないが、そこの出身者でバラエティや司会業などに活躍している人は多数いる。
メジャーデビューの登竜門ような劇団でもあった。
ここ何年か前に、結成された劇団にしては、有名であった。
シナリオを採用されれば、人気が一気に上がるのが目に見えている。
劇団の主宰がシナリオを見て、3人程に絞り込んだ後に、1人1人面接し、最終的に1人を決めるそうだ。
丁度「2050年、銀河系M81星雲に地球と同じ環境の、惑星メディが発見され、
その国の王女と地球連邦の王子の、結ばれない恋愛物語」の書き下ろしたシナリオがあったので、それを出した。
選考の最終連絡日は今日10月3日だった。
その日は、朝から出かけないで家にいたが、とうとう、夕方まで電話は来なかった。
諦めて、馬車道へ気晴らしに行くことにした。
JR関内駅北口で降り、馬車道に向かいながら、そこを歩いている人たちをウォッチングした。
色々な人達が歩いていた。
銀行や会社関係のビルが多いので、経理・業務の人達が銀行に向かったり、営業マンが道を急いでいたりする。
経営者や自由業、フリーターらしき人達も歩いている。
日も暮れるのが、早くなったせいか、お水系の女性達が、出勤前の買い物等で歩いている。
カップルも、もちろん、沢山歩いている。
通行する人達を見ていると、色とりどりで飽きないものだ。
歩き疲れて馬車道十番館で珈琲を飲むことにした。
ここは古い建物だが天井が高く開放感があり、珈琲をたてている音や客の喋り声食器の音などが心地よく響く造りになっている。
珈琲を飲んでいたら、ケータイの着信音が重要な相手の時に鳴るメロディを奏でた。
「もしもし、小野田です」
「初めまして、こちらは劇団Dの主宰、松川秀樹と申します。
実は、あなたがオーディションに出されたシナリオが、最終選考に残りました。
この後、面接を受けて、3人の内1人を選出したいと思っております。
出来れば面接を今週中に行いたいと思っております。
明後日以降は、お時間空いておりますか?」
「ええ、明後日は、空いております」
「では、午後一時に劇団Dへ来て頂けますでしょうか?」
「はい。お伺いします。電話が夕方まで無かったので、諦めておりました。最終選考に残れて、とても嬉しいです」
「それは良かった。では、明後日、お会いしましょう」
「失礼します」
電話を切った後、最終選考に残り、あの有名な松川さんに、シナリオを見てもらえた充実感が、心地よく体に染み渡ってきた。
天国に登った時は、こんな感じ?
明後日、劇団D
約束の時間より30分早く到着してしまった。
近くの珈琲ショップでブラック珈琲を飲み、カフェインの刺激で、頭の回転を良くしておいた。
10分前に店を出て、約束の時間ジャストに、劇団Dの受付へ到着した。
「今日、松川主宰と、10時に約束をしました、小野田淳平と申します」
受付の若い女性が
「ちょっとお待ち下さい」と言って、奥の控え室へ行った。松川主宰のケータイにでも、電話をしているのだろうか?
しばらくすると
「大変お待たせしました。松川は、30分程遅れますので、こちらの方でお待ち下さい」
会議室に通された。
そこは10畳ぐらいの広さで、真ん中に会議テーブルが置いてあり、後は、何も調度品が無い殺風景な部屋であった。
頭の中では、機敏に話をし頭脳明晰に見せなきゃとか、はっきりとした自分の意見を言って、骨がある演出家に見せよう、とか、色々考えが浮かび上がった。
だが結局は、見栄を張ったところで、実際に公演が始まったら、実力が分かってしまうので、何時も通りの自分を見せれば良いのだとか、思っていると
「やあ、お待たせしてスマンな」
と言って、松川主宰が入ってきた。
見かけは、何処にでもいるような、気の良いお爺ちゃんだが、真っ直ぐ見る目は、物事の本質を見抜くような、鋭い光を放っていた。
新興劇団を、一躍、全国区にするだけの、オーラが全身から出ていた。
「小野田君でしたかな?」
「はい、そうです。よろしくお願いします」
「では、早速、面接をさせていただきます」
「小野田君は、女性が、本質的に好きですか?」
「ええ、大好きです。まだまだ分からないところがあり、もっともっと、奥深くまで知りたいと思います」
「そうですか、では、劇団に入りますと、若い男女が沢山いますが、その中の1人の女性を好きになってしまったとしたら、
あなたならどうします、付き合いますか?それとも、仕事と割り切って、付き合いませんか?」
「僕は、自分の心に素直に生きるタイプですから、間違えなく、付き合います」
「では、その女性と結婚しますか?」
「それは、相手との関係によります。そういう事は二人で培っていくものですから、付き合っていく過程で、
お互いが結婚したいと思うようになれば、そうしますし、そうでなく、ただ付き合うだけで、終わる場合もあると思います」
「では、相手が既婚者なのに、好きになってしまったら?」
「迷わず、仕事上の友人だけの、関係になると思います」
「では、仮に、あなたが既婚者なのに、好きになってしまった場合は?」
僕は笑いながら
「うーん。やはり、仕事上の友人に、なると言えるのですが。実際になったら、本当に友人だけでいられるのか、ちょっと自信は無いです」
「あなたは何故、劇団のシナリオ書きや演出をするようになったのですか?」
「観客に感動してもらい、多くの観客の束となったその感動の渦を、逆にもらうのが楽しみでやっています」
「劇団のシナリオ書きや演出家では、飯が食えない場合が多いです。
劇団Dも名前は売れてますが、実入りは、わずかなのは同じです。
それでも、あなたは脚本を書きたいですか?」
「先ほど申しましたように、観客の感動が、僕のエネルギー源で、お金はエネルギー源でないのです。
雑誌のエッセイや記事等で、お金は稼ぎますから、構いません」
「それならば合格です。多くの人は、劇団Dの脚本家や演出家になると、名声やお金持ちになれると思って来られて、
実際には、そうじゃないので、ガッカリされて帰られます」
あっさりと言うので、僕は一瞬、聞き違えか、空耳では無いのかと思い、念のため
「えっ?合格ですか?」と聞いてみた。
「おめでとうございます。半年間は劇団Dの脚本家です」
「あ・有り難うございます」
どうやら、他の二人は、もう面接が終わっていて、僕が最後の面接だったようだ。
馬車道の画廊喫茶K
昼休みの人通りが退いた午後1時半。
店内はマスターと僕だけ、
ひっそりとした静けさ、
心、安らぐ空間があった。
ケータイを取り出し、
少しドキドキしながら、
送信
「こんにちは、小野田です、元気にしてますか?今週の土曜日、午後1時頃、浜松に行きたいと思います。予定、空いてますか?」
メールの返事を、画廊喫茶Kで、空想をしながら待っていた。
彼女の返事は
「あなた。誰でした?」とか。
「ワンナイト」とか。
「きゃー嬉しい、土曜と日曜は開けておきマース♪」なんちゃって。
もてるなあ、僕は、とか。
「・・・・・無視」とか。
何時間でも、空想出来るような気がした。
しかし、1時間もすると、だんだん心細くなってきた。
マスターが、心配そうに
「先ほど来たときは、ニヤニヤ嬉しそうな顔だったのが、途中から険しい顔になってきたよ、体の調子でも悪いの、それとも、恋煩い?」
僕は、ばれたら仕方無いと思い 、
「2回目デートの誘いを、メールしたのですけど、返事が、1時間も来なくて・・・」
マスターは60歳代なので、人間関係のコミニュケーーションは、会って話すのが必須の世代のせいか、
「仕事で忙しいのかも知れないし、メールなんて、まどろっこしい事をしないで、直接会いにいきなよ!」
「ええ、そうしたいのですが、場所が、浜松なので・・・」
「何を、弱音言ってるんだい。俺なんか若い頃は、九州まで、女に会いに行ったぞ。
突然、遠くから来てもらうと嬉しいものさ、それに、彼女に何か予定があっても、好きな相手の為なら、
無理矢理でも会ってくれるさ、それを、しないようなら、惚れて無いから、サッサと諦めな!」
なんたる豪快な性格だろう。僕も、それくらい、ハッキリと決断できれば、女で、うじうじ悩むことは、皆無だろうな。
マスターが、羨ましくもあったのと、人は見かけに寄らず分からないものだなあと思った。
マスターから恋のレクチャーを受けるなんて思ってもいなかった。
マスターの、女とは・・・
うんちくを聞いていると、メールの受信メロディが鳴った。
受信
「メール頂いたのに、インプット作業が競っていて、返事が遅れてご免なさい。土曜と日曜は空けておきます。到着したらメールを下さい♪」
マスターに、画面を見せると、笑いながら
「男冥利に尽きるね」
「嬉しいッス」
決して、明るい照明とは言えない、画廊喫茶Kの中も、こころなしか明るく見えるのは気のせいだろうか。
毎晩、夜中まで、劇団Dで初公演の脚本を校正していたので、デートまでの日は、あっと言う間に過ぎ去り、土曜日になった。
朝7時に、自宅を出た。自宅は元町から川沿いに、南方向へ向かうと、川を境に右手が寿町、俗に言うドヤ街で
左手が山で、川から丘陵地帯にかけて、下町の住宅街がある。その中でも、築年数が古いアパートの1室が、自宅だ。
お風呂が有るだけ、まだましかも知れない。
冬場は底冷えがする、1階だから、カビが生えやすく、布団乾燥機は必需品であった。
元町から、首都高速吉野町インターに向かい、首都高速に入った、そこから保土ヶ谷バイパスに入ると、道路は渋滞していた。
渋滞を30分程で抜け、東名高速横浜インターから東名高速に入った。
今日は快晴で、富士山が絶えず右前方に見え、運転は気分が良い。
鼻歌が自然に出始めた。
そして浜松インターを降りたのは、12時頃だ。
送信
「今、浜松インターを降りました。あと20分ぐらいで浜松駅に到着します」
受信
「お疲れさまでした。浜松駅東口で、待ってます♪」
浜松駅に到着し、辺りを見渡すと、お嬢様風の女の子が、一人、歩道に立っていた。
よく見ると里夏だった、前回は、大人のスーツ姿だったので、見違える位だ。
「お待たせ」
「お疲れさま、高速は、空いてた?」
「うん、朝7時に出て、途中2回休憩したけど、渋滞も少なく、快適なドライブでしたよ」
「そう。良かった。車は私の住んでるマンションに止めることが出来るので、案内するわ」
彼女の住むマンションは、駅前の道路を1kmも走らないところにあった。
マンションに着き、駐車場に車を入れ、一息ついた。
「疲れたでしょう。
私の部屋で珈琲飲んで一服してから、遊びに行きましょう」
僕は、ワクワクしながら
「うん」
10階建てマンションは、近辺に戸建てが多い中では、目立って見えた。
お城のような造りで、いかにも、億ションという、出で立ちの建物だった。
部屋に入ると、女の部屋独特の、甘い香水のような石けんのような、心地よい香りがした。
思ったほど、調度品がピンク色や、ぬいぐるみ等が無く、男が住んでいるようにも、思える部屋であった。
しかし、部屋数は4部屋近くあり、リビングのサイドボードやソファー、壁に貼り付けてある大型プラズマ画面のTVや、
高級オーディオ、大理石のテーブルなど、豪華な内装であった。
リビングだけでも、25畳前後あるのだろうか?かなり大きな部屋である。
「3LDKなのかな」と聞いたら
「4LDKにサービスルームがあるわ」
「へえー、ま・さ・か パパがいるとか?」
「淳平君ったらぁ。いやぁね。いないわよ。本当の父が、朝早く出張に行くとき便利なので、買ってあったんだけど、
最近、出張に行くことが無くなったので、私が使わせてもらってるの。確かに、OLの部屋としては不釣り合いね」
珈琲を飲みながら、里夏は聞いてきた
「何処か行きたい所は?リクエストは?」
「リクエストは、里夏が欲しい」
彼女の隣に座り、覆い被さった。
里夏が、子供をあやすような声で
「夜まで我慢できないの?」
「うん、夜は夜でまた・・・」
彼女の返事を聞かずに、強引に彼女をたぐり寄せていた。
オークラ・アクトシティホテル浜松は、高速道路からも見える、高層タワービルだ。そこで、ランチをすることにした。
地元では「アクトシティ」や「アクトタワー」「アクトシティタワー」と言う略称で呼ばれているそうだ。
里夏、
「アクトシティタワー高層階に、スカイレストラン&ラウンジBがあるから、其処に行きましょう。
浜松市内を全貌出来て、リーズナブルな価格で、高級感を味わえる店なの」
30階でエレベーターを降り、レストランに入り、席に着くと里夏が、
「景色が良くて、気持ち良いでしょう」
「うん。そうだね。一緒にいる相手にもよってだけどね」
「そう。嬉しいありがとう。ここは景色を見たり、1人で珈琲を飲みながら、考え事をしたり、ランチをしたりするの」
僕は、笑いながら
「お嬢様の里夏でも、悩みがあるんだ?」
里夏は、ちょっと口をとがらせて、笑いながら言った、
「失礼ね」
僕は、
「お父さんはお金持ちなんだね、駅前のあんな所に、セカンドハウスが有るなんて」
「そうでもないわよ相続でもらった土地だから。セカンドウスの建物は月賦で買ってるし」
「ところで、お父さんは、どんなお仕事をしているの?」
「父は婿養子で、母が祖父の時代からやっているガソリンスタンドを4カ所と、父が母の資金を利用してコンビニを3カ所と、
父の兄に当たる叔父が、居酒屋を2店経営してますが、それに出資しています」
「やっぱり。お嬢さんジャン」
「私が大学を卒業するまでは、そこそこ業績も良く、お嬢さん出来ただけ。
最近、ガソリンスタンド、コンビニ、居酒屋も競争激化で業績が悪く、特に居酒屋が借金地獄の様子で、
父も母も心配だと話していたことがある。あらご免なさい、暗い話になって」
「いやいや、本当のこと、話してくれて嬉しいよ」
「午後から、近くをブラブラしたいけど、アクトシティの中にも、何か有るかな?」
「タワー内だとショッピングモールかな?後はプラネタリュームが近くに有るけど、お星様を見るのは、好き?」
「いいね、小学校以来かも」
「ここから、歩いて3分ぐらいの場所ですわ」
「じゃあ、店を出ましょうか」
「ええ」
浜松科学館は、自然、宇宙、音、光、エレクトロニクス、力の6つのテーマでつくられていて、
45分の間、夢中になって観ていた。
そこを出た後、浜松駅回りの繁華街をブラブラと、目的もなく、散歩するように、二人で手を繋いで歩いた。
里夏が
「面白かったね」
「うん学生時代に戻った様で、楽しかった。ところでこの辺り、夜は綺麗な女性達が居る店や、飲み屋さんが多いね。
たまには飲みに行くのかな?」
「うーん。前彼と、よく飲んだかな」
「ふーん」
僕は、彼女の男性遍歴が、どんなだったのか聞いてみたい気が沸き起こった。が、気軽に聞くことは出来なかった。
ぶらぶらと駅近くの繁華街をウィンドゥショッピングし、夕方になった。
里夏は、小さな声で
「今日は、私の部屋に泊まるんだよね?」
「うん。泊まるよ」
「すき焼き、作ってあげる♪」
僕は、笑いながら
「へーえ。お嬢様も料理なんかするの?アクトシティで、ディナーでも良かったのに」
また、里夏は口をとがらせながら言った
「失礼ね。い・じ・わ・る」
繁華街を抜け、浜松駅を通り、彼女のマンションへ、歩いて20分程で到着した。
すき焼きを作りながら、TVを見ていたら
「セカチュウのDVDあるよ、見てみる?」
「僕、泣き虫だから、涙ボロボロになるかも」
「うっそぉ。見てみたい、淳平さんの泣いているところ」
「それを見て、好きになっても知らないぞ」
「いいもん、もう、恋しちゃってるから」
「泣かすかも?僕って遊び人だぞ」
里夏は、優しい顔をしながら、ワザと怒った目をして言った
「止めさせるモン」
僕は
「もうそろそろ、野菜の上にお肉を載せないとダメじゃない?」
里夏は甘えた声で
「あーん、意地悪するから。忘れちゃったじゃない」
セカチュウのDVDを見ながら、すき焼きを食べ、ゆったりとした上質の時間が過ぎていった。
食事の後、僕が、サイフォンで、珈琲を、入れてあげた。
「美味しいね。この珈琲」
「この豆、いつ買ったの?」
「1週間前かな」
「そうだね、豆が煎った後2週間以内だったのと、ミルで轢いているので、美味しいんだよ」
彼女が落としたスプーンを拾う時、前屈みになり、胸の谷間が見えた。
思わず、本能が活動状態に、なってしまった。
里夏は、目線を感じて
「あらまあ。元気なこと!」
「シャワーしてからね」
「うん、一緒に入ろうか?」
思ったより軽く、里夏が返事をしてきた。
「いいよ♪」
バスルームは、思っていたより大きく。
6畳間程あり、TVが付いていた。
シャワーを浴びながら、里夏が突然聞いてきた。
「淳平さんの理想の女性ってどんな人なの?」
「そうだね、見かけは太ってもなく痩せてもなく、身長は僕より低ければ良いが、性格が合えば、見かけは関係ないかな。
束縛をしない人で、精神的に自立していて、波長が合う人が良いかな」
「わぁ難しい・・・私は落第?」
「今回は、特別に許可しましょう」
「やっだぁ。それって、私、落第なのに、義理でオッケイしたってこと」
「ねえねえ。ちょっとイイって言うまで、あっち向いててくれない」
僕は意味が、分からないので
「えっ?だって里夏の裸は、先程からイッパイ見ているのに、今更、恥ずかしい?」
里夏は、溜息をつきながら
「もぉ。淳平さんは、素直に言うことを聞かない、だだっ子なんだからあ。膣洗いする姿は、男の人に見られたくないの!」
僕は、何も考えないで
「大丈夫。平気平気」
里夏は、ニヤッと笑いながら
「知らないよ。気絶しても」
実際のところ、想像はついていたが、気絶するよと言われると、一瞬、ひるんでしまった。
彼女が、しゃがんだ格好で、両足を100度以上開いて、シャワーを膣に向けてあてがい。
洗っている姿は、異様な感じで、想像を絶していた。
もう少しで興醒めするところだった。
見ない方が良かったかな。
バスから、じゃれながら出て、コークを飲んでいたら、里夏が静かになった。
そして、じーっとし始めた
顔を見ると里夏が目をつむった
目をみて
口をみて
バストをみて
お臍をみて
キスをして
息が・・・
ベットで眠りについたのは、夜中であった。
翌朝、掛川に行くことにした。
浜松インターから掛川インターに向けて走っている間、他愛もないことを喋っていた。
そして、掛川城を見学したが、その時も二人で、小さな時の事、小学校の時の事、中学生の時の事・・・
お互いの事を、より知りたくて話をした。
お城のことは後になって何も思い出せなかった。
せいぜい、山之内一豊が築城したのと、屋根が三層だった・・・かな。
夕方、浜松駅近くまで戻り。アクトシティで夕食をして、横浜に帰ることにした。
「せっかくの土日を、僕のために潰しちゃったね」
「そんなこと無いですよ、楽しかったですよ」
「また会いたいね」
「ええ、私も」
「僕の、彼女になってもらえるかな?」
里夏は、クスッと笑いながら
「もう。そうさせられてますけど」
「そうだよね。嫌いだったら二日間も、一緒にいないよね。鈍感だね、僕は」
里夏は、白い綺麗な歯が見える程、笑った。
「じゃあ、時間になっちゃったね。車まで一緒だと、帰りたくなくなるから、アクトシティを出たところで、バイバイしようね」
里夏が、笑いながら
「淳平さんって、純なのね」
僕は、不満に思い
「そうかなあ」
「いやだぁ。そうやって顔に出てるの、子供みたい」
「君の前だと、子供の様に素直になれるかも」
2Fのレストランを出て、アクトシティの前まで来た。
「横浜に着いたらメールするね」
「うん」
それから半年程、彼女が来たり、僕が行ったり。
一ヶ月に1〜2回、お互いが行き来した。
夜中の1時頃
受信
「大変なことに、なっちゃった」
送信
「どうしたの、こんな夜中に大丈夫、何かあったの?」
受信
「お家が取られる」
送信
「ど・どうして。何が起こった?」
受信
「お父さんのグループ会社で、叔父さんがやっている居酒屋チェーン店が、不渡りを出しそうになり、
お父さんが、尻ぬぐいで保証人になったりして、お金も援助して再生させようとしていたが、
父に内緒で叔父さんが、それ以外に、サラ金や商工ローンに、3億近くも借金を作っていたの。
それが、発覚した、そのせいで、父も、共倒れに成りそうなの」
送信
「自己破産したの?」
受信
「それがまだなの、あの世代の人は世間体を重視するから、ダメみたい、借金を死ぬまで帰そうとしてるの」
送信
「弁護士さんに相談は?」
受信
「S会議所メンバーで信頼おける弁護士がいるから、明日相談してくる」
送信
「そうか、大変なことになったな。気をつけて頑張って。僕、明日、行こうか?」
受信
「ありがとう。まだ様子を見てみるだけだから、気持ちだけ受け止めておく。本当に大変になったら、助けに来てくれるよね♪」
送信
「うん、いいとも」
受信
「(笑)受け狙ってない?」
送信
「ストレス発散、してもらおうと、思って(笑)」
受信
「じゃあ、明日また、結果をメールするね。おやすみ♪」
送信
「おやすみ」
布団に入ったが、寝付かれなかった。
どうしたら良いだろう。
会社の経営なんか、した事ないし。
ましてや倒産や民事再生や会社更生なんて、知ってる分けないし。
僕は、里夏に何をしてあげられるのだろうか。
こんな時、会社に勤めて、勉強していれば役に立ったのだろうけど。
僕は、せいぜい、劇団のシナリオのネタに、してしまうぐらいしか、出来ないし。
倒産したら、里夏は、1人で生きていくのだろうか?
いやいや、イカン、そんな事、考えちゃ、まだ倒産した訳じゃないし、そんなこと考えると、本当にそうなってしまうよ。
妄想が、どんどん出てきて止まらなくなった。
ふと、窓を見ると、明るくなっていた。
たぶん、朝4時頃だろうか・・・
何時しか、眠りに入り、昼近くに起きた。
昨夜の、考え事のせいか、顔が腫れぼったい。
こんな時、会社員は寝不足でも、朝7時に起きて、8時半か9時までには出勤するんだろうなあ、大変だな。
里夏は、会社に行っただろうか?
パソコンに向かい、シナリオを書こうかと、思ったが、一向に筋書きは浮かばない。
頭の中は、里夏の事でイッパイだ。
タクシードライバーや電車の運転士でなくて良かった。
考え事したままで、絶対、事故を起こしているよ。
怖い取り立て屋が来て、お父さんの代わりに、支払い出来ないなら
「体で払って、もらおうか」
「しばらく、俺の女になりなよ」
「内蔵売りなよ」
「外国へ売り飛ばすぞ」
と言われてないだろうか?
嫌な妄想が、どんどん出てくる。
胃が痛くなりそうだ。
テレビ番組なんかでは、不法金利で、やっているところは、弁護士が正式に出向いていくと、元金さえも、返さなくても良くなる、とか言ってるので、大丈夫だよ。
そうだ、朝から、と言うより、昼に起きてるが、まだ、何も食べてないよ!
今日は、自分で作るのが面倒なので、外食にした。
オンボロ車を出して、本牧食堂に行き、オムライスを注文し、食べた。
コックさんの作るオムライスは、手作りの素朴な味がして、食べると、口の中がほんわか美味しい味で充満し、幸せな気持ちになる。
心寂しくなると、時々来ている。
しかし、生まれて初めてだよ。こんなにメールが来るのを、ドキドキしながら待つなんて。
恋愛小説なんかで、どうしてあんなに待ちこがれるんだよと馬鹿にして読んでいたこともあったが、意味が、やっと分かった。
夜8時頃。
里夏からメールが来た。
受信
「お父さんと叔父さんを連れて、古田法律事務所に行って来た。街金から20社、借りていて、金額もハッキリ覚えてないみたいだった。
叔父さん曰く、最初の1億円は、銀行で運転資金が足りないから、何となく借りたが、その後は、銀行の手続きが面倒だし、
金は天下の回り物だし、商工ローンの人は愛想が良いし・・・最悪な話だった」
送信 「大変だったね。お疲れ様。ゆっくり寝てください、お休みなさい」
アドバイスなんか、出来ない自分が、歯がゆかった。
受信 「淳平さんに、相談出来るから、助かってます。これから愚痴メールが増えると思うけど、気にしないで聞き流してね」
送信
「僕は、商業の事は何も知らないから、役に立てなくて申し訳ないと思ってる」
受信
「話を、聞いてもらうだけで、良いのよ。お休みなさい」
送信
「うん。おやすみ」
翌日は、週刊誌のエッセイを書いていたが、なかなか筆が進まなかった。
締め切りが、今日なので、早く書き上げて、持って行かないと、雑誌社は開いていても担当者が帰ってしまうと、渡せなくなる。
僕の様な売れてない者だと、原稿は取りに来てもらえない。
そして、こちらから持って行かないと没にされ、別の記事になってしまう。
だから、夕方4時には自宅を出ないと間に合わなくなる。
そこまでして、1日何十ページ書いても、ファミレスバイトが8時間稼ぐ日当と、変わらないくらいである。
それでも、何も仕事が無いよりは、もらえるだけでも有り難いと思わなければ、いけないが、空しさと、
このまま埋もれるんじゃないかと恐怖におののいたり、悔しさでイッパイになり、涙が出てくる。
そんな時、里夏から、メールが来た
受信
「うーん。叔父さんも父も、人が良すぎだよ」
送信
「どうしたの。あきれて」
受信
「借りたお金の返済をするのに、先付け小切手を発行させているし。契約書も交わさないで貸し付けしている。かなり知能犯の業者だった」
送信
「小切手って、取り消しできないの?」
受信
「盗難とかで、それを証明するものが無いと、銀行は取りやめにしてくれないのよ。
それも、貸す時に、たとえば、現金で100万円手渡したとすると、3ヶ月後の日付で149万円を、小切手の額面に、させているのだけど、
契約書も無いし、貸す時が現金渡しだから、仮に裁判にしても、5年前に渡したので、金利は5年で割れば、法定金利以内だと言い張れる魂胆だ。
そんな業者20社から、1億円近く借りたみたいよ」
送信
「かなり、ヤバそうだね」
受信
「昨日は、黒っぽい背広の恐そうな人が、マンションに来て、父の名義なのか、確認していった」
送信
「気をつけてね」
受信
「自己破産した方が、莫大な借金を返さなくて済む。そして、今の年齢なら、年金が、もう、受給出来るので、
年金もらっったほうが、生活が楽になる。だだ、大きな家に住めなく、借家になるのが、両親にとって屈辱なのかな?」
送信
「そうだね。僕だったら、さっさと自己破産処理するな。それよりも、そんなに借りたくても、貸してもらえないが(笑)」
受信 「それと、叔父さんは、5年前から年間2千万円、延べで一億円を、法人カードで、外人ホステスに貢ぐのに使用したらしい。
結局、その穴埋めで、商工ローンを借り、金利が金利を呼んで、3年前ぐらいから3億円にふくれ上がったみたい」
送信
「おおっぴらには言えなくここだけの話だが。大型ダンプの前で、突然、右折して衝突し、即死してしまう人の中には、
高額な保険に入っていて、会社が倒産寸前や、借金で追われてる経営者がいるらしい。
不景気になって、増えているそうだと、保険屋さんが言っていたが、大丈夫、お父さんは?」
受信
「父ではなく、叔父さんに、早く自殺して、借金を全部返して下さい。と、言ってやったわよ」
送信
「そりゃ・・・スゲーこと言ったな」
受信
「当たり前よ。お父さんのほうが大事だもん」
送信
「そりゃあ、そうだが」
それから1ヶ月後のある日
受信
「弁護士さんが20社と折衝し、借金の返済は3%の金利に変更し、契約書もとれたそうよ。
で、会社の土地建物と自宅、私の住んでいるマンションを売却すると、父が保証人になった、
借金の3億円が、残り3千万円になるそうなの。
後は、会社と自宅を、借家に引っ越して、頑張って営業していれば、5年で返済できそうだって。
父は自己破産しなくて良くなりそう」
送信
「やったね!良かったジャン。お父さんが、無傷になりそうで。叔父さんは?」
受信
「父が保証をしてなかった分が、1億円近くもあり、弁護士が圧縮したけど、5千万円は商工ローンと折り合いとれず、自己破産になった」
送信
「そう、残念だったね」
受信
「外人相手に浮気して。天罰よ」
送信
「あっさりそう言うか、自業自得って」
送信
「倒産騒ぎも、落ち着いたので、今度の土曜日、浜松へ行きたいが、どう?」
何時間待っても返信がないので
送信
「忙しいのかな?連絡無ければ、明日、直電するよ」
その日は、メールが待っても来なかった。
翌日の朝早く
受信
「ゴメン、言うのが遅くなって。私、今、東京に住んでいるの」
送信
「へっ。マジ。何処に?」
受信
「いろいろあって、向こうの会社も辞めて、大田区の梅屋敷に引っ越してきた」
送信
「じゃあ、今度から、会いたくなったら、直ぐ会えるジャン」
受信
「それが・・・」
送信
「どうしたの、何を言っても怒らないから。言ってごらん。ストレス貯めると、お肌がボロボロになるよ。それとも、会ってから話す?」
受信
「でも、話すと淳平、カンカンに怒るから。もう理由は聞かないで・・・」
送信
「待ってくれよ。ちゃんと理由を聞かない限り、ヤダよそんなの、逆に怒るよ」
受信
「じゃぁ。会ってからじゃ怖いから、今話す。両親が離婚して、母親の方へ、ついていったけど、行った先の、母の新しい彼氏に強姦されたの。母には黙って出てきた・・」
目の前が真っ白になると、言うことは、聞いてはいたが、本当になるのを、始めて知った。
里夏は29歳になるまでに、何人か知らないが、愛した男に抱かれた事が、あるだろうが、
それは彼女が愛した相手だから、僕は認めることもでき、それは、ちょっぴりジェラシーとなり、
恋のスパイスとなっていた。が、これは違う!
強引に彼女の中に入ったなんて・・・
考えただけでも気が狂いそうになり
その男を許せなくなった
その男を八つ裂きにしてやりたい
その男を地獄に落としてやりたい
今すぐ永遠に葬り去りたい
頭に血が上り、メールを打つ手が震えて、ボタンが押せない。
何時間経ったか知らないが、平常心が戻ってきたので、里夏にメールした。
送信
「よーく考えたけど、訴えた方が良いと思う、第2の被害者が出る前に」
受信
「私も考えたけど、母が会社倒産騒ぎの時、ノイローゼになったのを、父は根性が悪いと言って、相手にしなかった。
その時、母の中学時代からの友人で、お茶園の跡継ぎ息子で、未だに独身の人が、親身に相談してくれたの。
精神病院に入らなくて良かったのも、彼のお陰なんだ。だからプラスマイナスゼロ。と、言うことで、家を出てきたの、
今度、他の誰かにしたら、訴えるつもり」
送信
「里夏が後悔しないなら、それでも良いが、ちゃんと、病院で検査はした?」
受信
「念のため、性病検査と体液の血液型鑑定は、してもらった。後で、どうとでも出来る様に。だから、嫌になっちゃったでしょ」
送信
「不可抗力の事故だよ。忘れよう」
受信
「ありがとう♪」
送信
「ところで、仕事は?」
受信
「急に引っ越してきて、お金も入り用なので、とりあえず稼げる、スナックでアルバイトしてる。
知り合いの、静岡県出身のママの店だから、安心して居られるし。
でも、いずれコンピュータ関係の会社の、募集があれば、そっちに転職するから」
送信
「相談して欲しかったな」
受信
「あまりにも、短期間で大変なことが起こり過ぎて、相談出来なかったの。ご免なさい。それに、なけなしの原稿料を、分捕るほど、悪女じゃ無いモン」
送信
「痛!」
受信
「仕事が落ち着いたら、会いたいわ。それまで、待っていてね♪」
梅屋敷に来て1ヶ月程経ち、やっと落ち着いた。
そろそろ淳平さんに会ってあげないと。苛ついて、待っているかなぁ。
スナック由香のママも、来ているお客さんも良い人が多く、なんだか、ずーっと、この仕事しちゃいそうで怖いなぁ。
早くコンピューター関係の仕事を見つけなきゃ。
でも、条件が色々折り合い付かないのばかりなんだよなぁ。
「お水」の仕事って、ズルズル止められなくなるって、聞いていたけど、本当だよね。
しかし、今夜はどうしようかなあ・・・
神田裕二さんは、今夜も来てしまうかな?
彼は、私が初日に、緊張しながら仕事をしていた時に、たまたまフリーで店に入ってきて、席に着いたお客であった。
その日から、三日と開けず、来店して指名してもらえるのは、バンスが出るこの店では、嬉しいのだが・・・
体や心を、許すつもりは無かったが、毎回、他の子には目もくれず、通って指名してくれ、
そのけなげさと、言うか真面目さに、言葉には、表せない気持ちが起こり、なんだか、可愛く思う様になっていた。
そしてある日、店外デートをしてしまった。
その時、1番好きなエルメスのエールラインをプレゼントしてくれるし、食事をした後も求めたりはしないし、紳士的に家まで送ってくれた。
翌々日も店を終わってから、食事に誘われ、つい、ついて行ったら、欲しかったコーチの赤色のバックも、プレゼントしてくれるし。
こんなにプレゼントしてもらって、何て、お礼をして良いのやら、困ってしまい、彼の前で
「私どうして良いのか、分からない!」
と言った時の、彼の嬉しそうな顔と、欲望がみなぎった目で見られた時は、体を求められたら、もう、オッケイして良い気持ちになっていた。
今度はバーキン
なんて思うとゾクゾクしちゃう。
ふふっ・・・
私は悪い女。
彼は、結婚して奥さん子供もいるのに、生活臭が全くしない人だ。
スリムな体。
でも、痩せてもなく、腕の中に顔を埋めたりすると逞しい筋肉の感触が良い感じだし。
かといって、マッチョほどでもなく、そこそこバランスがとれてるかな。
顔も20歳代の時は、ハンサムだったんだろうなぁ。
仕事はインターネット関係の技術者派遣業で、勝ち組に残った社長らしい。
遊び上手だ。
今日は夜9時頃から混んできた。時計を見ると、もう11時45分だ。 裕二さんは何時も、12時頃来る。
にもかかわらず、4人組のスケベなオッチャン達が、一緒に席に着いた祐子と、私のお尻を、べたべた触ってくる。
スカートの中どころか、下着まで手を入れてきて、閉口していた。
先程から祐子と共同作戦で、濃いめの水割りを飲ましているが、酒が強く、なかなか帰らなくて困っていた。
その最中に裕二さんが来た。
裕二さんには、麗子が席に着き、相手をしている。
麗子の話しかけには、上の空で返事をしている様子だった。
時々、ジェラシー目線を、こちらに向けて来るのが、痛いほど分かる。
20分程で、やっとスケベなオッチャン達は帰った。
慌てて彼の席へ着いた。
「ごめんねえ。嫌らしいオジサン達に引っかかっちゃって」
「ううん。平気だよ。もてない人達にも、夢を与えるのが仕事だし、頑張ってたよ。お疲れ様」
無理して、理性的に言ってくれてるのが、余計、胸にキュンと来てしまった。
ああ、何されても良い
この人なら
遊ばれたい
私って遊び女
抱かれたい・・・
裕二さんは察したように、
「今日、店を終わった後、記念のセレモニーがあるけど、体験する?」
私はドキドキしながら返事はせず、下を向いたままで、首を縦に振り、流し目で彼を、ちょっとだけ見た。
仕事が終わり、店を出て、待ち合わせの場所に向かって歩いていると、路上に彼のサードカーである、白いフェアレディが止まっていた。
私は、
「セレモニーって、もしかしてドライブ?」
「そうだよ、横浜まで行こう」
私は、ちょっと戸惑いながら
「やったあ♪」
羽田から首都高速に入り、羽田横浜線を25分も走ると、久しぶりにランドマークタワーが見えてきた。
横浜が見えてくると、淳平は何しているかなと思った。
「近々、会うから待っていてね」と、言ったきりだし、ゴメンね。
たぶん私は、今日、浮気をしてしまうみたい。
でも絶対、分からない様にするから、苦しめたりしない、大丈夫よ。
車は、港が見える丘公園へ到着した。
100円パーキングへ車を入れ、公園の展望台へ来た時。
裕二さんが、突然肩に手をかけてきた
「綺麗だね、ここの夜景は! 氷川丸方向が一番綺麗だ」
「うん」
周りはカップルがベンチに座り、景色など見ないで、キスに夢中になっていた。
静かな沈黙が続いた
裕二さんの顔が被さって来た
私は目をつぶった
彼は上手だった
何とも甘い感触
体がグニャグニャに・・・
手を繋ぎ、歩いて車に戻り、インターコンチネンタルホテルへ、向かった。
予約してあったらしく、直ぐキーを受け取り、高層階のスイートルームに入った。
中は20畳ほどの部屋が二つあり、ベッドルームも別にあった。
夜景がとても綺麗に見えた。
窓際に、三脚付きの小さな天体望遠鏡があった。
何を見るのだろう?
「向のホテルの客室かな?」
裕次さんが笑いながら
「それじゃのぞきジャン」
「お星様?海?」
「いやいや、愛を見るのだよ」
「結局、それものぞきジャン」
話ながら裕二さんとじゃれていたら、スカートの中に手が入ってきた。
このまま、しちゃっても良かったが、初Hだし、ふしだらだと、思われたくないから
「ダメッ!シャワーしてから♪」
裕二さんは
「今すぐ。ね、いいだろ」
「だめ〜恥ずかしい〜」
裕二さん
「・・・・」
私
「あっ・・・ん」
翌朝、朝日が窓から差し込んで、眩しくて、目が覚めた。窓の下は海で、気持ちの良い快晴だった。
ケータイのメールが5通も入っていた。
裕二さんは、まだ寝ていたので、ベッドから静かに出た。
隣の部屋に行き、メールをチェックした。
3通は仕事の連絡メールであった、1通は昨夜11時頃、淳平からだった。
受信
「おーい元気?もう東京の生活は慣れたかな。時間が取れたら、会いたいな」
1時間後の深夜0時に、追加のもう1通が
受信
「あれ。まだ仕事中かな。酔っぱらいに絡まれてないかな。大丈夫?」
やばい!
送信
「ゴメンね、メールが遅れて。仕事だったよ。帰ったのが夜中の1時過ぎで、すぐ寝たから気がつかなかった。酔っぱらいに絡まれては無いから、心配しないで」
受信
「其処は、お酒だけの店だよね?」
送信
「大丈夫よ。お酒の相手するだけよ。それ以上の事は、無い店よ」
受信
「そう、それなら良いが、お客さんに口説かれない?心配だ」
送信
「大丈夫よ。私は淳平だけよ♪それとも、お客に口説かれた方が良いの(笑)」
受信
「ぜーーーーったいヤダ!今度、その店に行っても、良いかな?」
送信
「来ても構わないよ。ちょっとだけ、お客さんに触られる事もあるかも、それを見ても平気なら、来て良いよぉ」
受信
「やっぱり、やめとく。ジェラ男に、なりそうで怖い」
送信
「こう見えても、オンリーワンよぉ」
受信
「今度の日曜日は、会える?」
送信
「うん。何処で待ち合わせする?」
受信
「12時に梅屋敷駅」
送信
「わかった。12時に梅屋敷ね」
約束の日曜日。
12時。
梅屋敷の駅。
淳平が20分遅れて、やってきた。
「ゴメン。第1京浜がすごい渋滞で」
私
「東京に来て、今まで、逢うのを待たした罰かな」
淳平は、笑いながら
「いやいや、たまたま渋滞しただけだよ。罰だなんて」
「今日は、梅屋敷の遊園地に行って、ジェットコースターに乗ろうよ」
遊園地は住宅地の中にポッツリと、其処が、穴場のように、存在していた。
狭い敷地の中で、絡み合うように乗り物が、ひしめき合っていた。
場所のせいか親子とカップルが、ごちゃ混ぜで来ていた。
梅屋敷で夕方まで、乗り物に乗ったりして遊び、その後、横浜に向かい、車は第一京浜を走っていた。
車の助手席から見る、淳平の横顔は、凛々しく引き締まっていて、とても素敵に見えた。
一緒にいると、楽しいし、心が安らぐし、この安心感は淳平じゃないと、味わえない感じだ。
あと、何も喋らなくても幸せだし。
淳平も劇団Dの脚本がヒットし、人気が出て、毎日、劇団は大入りだそうだ。
だんだん遠くの人になりそうで、ちょっと恐い気もする。
懐具合も、以前より良いらしく、今日のディナーはインターコンチネンタルホテルで奮発するそうだ。
淳平の仕事の話を、聞いているうちに、車は横浜市内に入り、インターコンチネンタルホテルの駐車場に入った。
少し焦ったが、先週、裕二さんと来ているところを、見られたわけでもないし、まあ、いいっか。
夜になりラウンジで食事をした。
ワインで乾杯をしようとした時、淳平が
「今日は、僕の仕事が、劇団Dの主脚本家になった報告と、自分へのご褒美として、お祝いの食事なんだ。
そしてこの後は、なんと、スイートルームを取ってあるんだ」
私は驚いたのと、もしかして、裕二さんと入った、同じ部屋だったら嫌だな、と思った。
食事をしながら、劇団Dの今後の公演内容を、話してくれる、淳平の目は輝いて見えて眩しかった。
「そういえば、内緒の話だが。劇団Dの主演人気女優、ライラ、本名、神田ミサは、内緒で亭主がいるんだ。
籍も入れて神田になったんだが、亭主は、神田裕二と言う名前で、コンピューター関係の人材派遣企業の勝ち組社長らしい。
仕事も出来るが、プレイボーイで有名らしい。僕も主宰や劇団員と一緒に、飲みに、何回か行ったことがあるが、
確かに女を口説くのは上手そうだ。噂によると、金に物を言わせ、プレゼント攻勢で、女性を口説き落とすのが、特徴らしい。
で、毎年、何人かの女性を、取り替えて、遊んでいるらしい」
食事をする手が止まってしまった。
淳平は、知らずに
「どうかした、具合でも悪くなったの。顔色が悪くなったみたいだが?」
「ううん。ちょっと仕事の事を、考えてた、ゴメンね」
淳平から、裕二さんの話が出るとは、思ってもいなかったので、驚いてしまった。
その後、淳平は後援会のが出来た等の、話を始めたので、ホッとした。
フロントで淳平がキーを受け取り、エレベーターに乗り、スイートルームに向かった。
嫌な予感が当たってしまった。
やはり同じ部屋に、当たってしまった。
裕二さんの余韻が、まだ残っているようで、変な感じがした。
何も知らない淳平は、部屋に入るなり
強く、私を抱き寄せ
「ずーと待ってたんだぞ」
「もう、我慢できない」
私「ああ、シャワー・・・」
キスで口をふさがれ
私「んぐ・・・」
まるで、先週のプレイバック。
ここ2週間、僕が劇団Dの仕事が忙しく、里夏への、メールの連絡も、少なくなっていた。
スナックが終わる頃、突然行って驚かそうと、店の近くまで来た。
もう夜中の1時なので、出てくる頃だろう。
と、その時店から、何組かの、カップルになった、客とホステスが出てきた。
店がはねて、アフターなんだろう。
ところが、その中の光景を見て驚いた。
ええ?
自分の目を疑った。
なんと、神田裕二が里夏と、手を繋いで、出て来たでは無いか。
しかも、里夏は、神田にもたれかかるようにしている。
体がぶるぶると震えだした。
どうしたことだろう 。
夢であってほしい。
ほっぺたを思いっきり抓れば目が覚めると思い、抓るがダメだ。
飛び出していって、神田をブン殴るか。
話し合いなんて、まともに出来るか?
メラメラと嫉妬の炎が燃えだした
奴が、里夏を抱いている姿が脳裏をよぎる。
喉がカラカラに・・・
どうしようか・・・迷っていると。
神田は手をあげ、タクシーを拾い、里夏と乗り込んだ。
後ろめたい気もしたが、急いで自分の車に乗り、タクシーの後を追った。
さいわいタクシーの運転手も気がつかないようで、夜の道は空いていて、尾行は楽であった。
車は首都高速に入り、みなとみらい21で降りた。
そして、予想していた通り、最悪の事態になった。
2人はランドマークタワーでタクシーを降りた。
仕方がないので、自分の車は道路に止め、静かに後をつけた。
神田はロイヤルホテルニッコウのフロントで、キーを受け取り、2人で手をつなぎ、エレベーターに乗った。
その後は、どうしたのか、頭が空白になっていたらしく、気がつくと、三浦半島の三浦海岸の砂浜で、朝日を見ていた。
たぶん、里夏が神田に抱かれている時間を、頭から消し去りたくて、空白になったのかもしれない。
その後、劇団Dの仕事が、午前中あるのを思い出し、あわてて横浜横須賀道路を飛ばし首都高に入り、渋谷に向かった。
ちょうど劇団Dの、最終公演の打ち合わせに追われていたので、その事は忘れることが出来た。
しかし、その日の夜、家に帰ると、心がギシギシと痛み出した。
このまま、心が砕け散ったらどうなるだろう?
振られた彼女の気持ちを取り戻そうと、犯罪を犯したり、
振られた彼氏への当てつけにリストカットや自殺してしまう人の気持ちが、分かるような気がする。
いや、そんなことを考えちゃイケナイ。
また、今日も行くのだろうか、祐二の元へ。
抱かれている姿を、考えただけでダメだ。
ああ・どうすれば良いのだろう・・・
そのまま、何日も公演が連続し、彼女とは連絡を取らず、悩んでいた、ある日
受信
「元気ですか。お仕事忙しいですか!たまには遊んでください♪」
どうしよう、問いただしても良いが、追いつめて、終わりにしたくない。
でも、彼女が他の男に抱かれているのを、僕は、騙された振りをして、平気で見過ごせるのか?
送信
「公演が忙しくて。でも今度の日曜は会えるよ」気持ちとは裏腹に、優しいメールをしてしまった。
約束の日曜日
「やあ、久しぶり」
「淳平、公演中、女性に囲まれているから、イッパイ誘惑されなかった?私、心配」
そうか、自分が浮気してると、相手も同じような気がして、心配になるのかなと思った。
その日は、ワールドポーターズのマイカルワーナーズで、サンダーバードを観た。
そして、いつものようにホテルに誘った。
僕は、意地悪のつもりで、立ちんぼの良く利用する、川沿いのラブホに入った。
しかし、彼女は、其処が初めてのせいか、ブラックライトや、バスの中で、マッサージが出来るように、マットレスが、あるのを見て、きゃーきゃー、無邪気に騒いでいた。
でも、その日は、神田より上手に抱かなきゃと、変な競争意識にとらわれ、何時間もいたぶるように焦らし、攻めるように抱いた。
しばらく、彼女は動かなくなり、20分ぐらいしたら、やっと喋れるようになり。
「今日の淳平さんは、いつもと違うよ。どうかしたの?」
僕は
「しばらく、してなかったからだよ」
彼女を、問いつめることは、止めた。
一応、彼氏として扱ってもらえているから、最後まで、騙されようと。
もし、セフレだとしても、良いじゃないか。今が、楽しければ。
その時、里夏は思っていた。
静岡の実家を出て来た時は、この先どうなるのかと毎日考え込んでいたが、仕事に慣れてきたら、何とかなる様な気がして気分的には楽になった。
スナック勤め
淳平と裕二
しばらくは、この生活で良いかな・・・
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