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連載SF恋愛小説 恋愛はテレパスで
連載 SF恋愛小説 題名:恋愛はテレパスで
作:流石 流葉


登場人物
  ・僕 お茶の先生=古河祐二 彼女=???

  ・元カノ=鈴木摩季 ・新カノ=佐藤優香 ・優香のフィィアンセ=高瀬伸吾 ・金型製作所の跡継ぎ息子=野田拓也

  ・アメテレ機密IT機動部隊
   横浜支部
     所長:元親先生の大山拓也 
     議長:大迫仁史 
     テレポーター指導員:乾隆義 
     隊員:田中英美・大山貴史・柿谷祐子・佐山祐介
     横浜地区、みなとみらいブランチ、隊員米田俊介
    ※世界遺産登録推進委員会=アメテレ連合国機密IT機動部隊の秘密みなとみらいブランチ
  ハワイ支部
     事務局長=トム・ヤンクス
     職員数人
  ・アメテレ連合国
    + アメテレ連合国国防長官=ブッシー
    +
アメテレ連合国 神奈川議会
       アメテレ連合国議会・議長大迫仁史

  ・ロシライン特別諜報部
    + ロシライン特別諜報部極東地区将軍=キューズ・バッキウ
    + ロシライン特別諜報部USAハワイ地区
       将軍=イワン・ノバカール
       その手下数人
    + ロシライン特別諜報部第32部隊
       隊長シンジー・ドペス
       その手下数人
    + ロシライン国の不吉なテレパス数人
       その手下数人



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横浜みなとみらい 横浜 公園 横浜スウィート 横浜クインズ 横浜港 横浜夜景


第一話 お題はチャイナドレス

チャイナドレスの想い出は?そう聞かれたら・・・

 俺の名は古河祐二、これでもお茶の先生をしている。
大学時代に彼女に誘われて裏千家に習いに行ったのが始まりで、彼女と別れたその後もなんだかズルズルと習っていたら、いつの間にか師範になっていた。
親先生は80歳にもなる女性だ。
彼女は年の割には背中もシャンと伸びて、お茶を点てるときも綺麗な姿勢だ。威厳がありそれでいて優雅な雰囲気だ。未だに僕にはそんな雰囲気は出せない。先生としての威圧感だけは、なんとか醸し出せるようになったぐらいだ。

 摩季(まき)とは誕生日のお祝いを、お台場で夜景を見ながら食事をする約束だった。
その日はゴールデンウイーク翌週の土曜日だったが中華街は観光客で混雑していた。
新しく出す店の物色をしていて、中華街近くの松影町のビルを見て回ったら昼になってしまった。関帝廟通りの周りにある小さな店は、地元の人や通の人が昼飯や晩ご飯代わりに行く店が多かった。 その中の一軒に昼飯を食いに行く途中、チャイナドレスの店の前を通ったら、なぜかグリーンの迷彩色のような地味な色のドレスに目が釘付けになった。チャイナドレスというと赤やピンク、青、白などの鮮やかな色が多いけど地味な色合いが気に入った。価格も5千円とリーズナブルだ。
ふと気がつくと「これください身長153cmだと何号ですか?」と言っていた。
店員は手際よくプレゼント用に包んでくれた。
夕方には仕事を終え横浜駅の崎陽軒前で待ち合わせ、お台場にお誕生日祝いで食事に行った。


 摩季とはセフレの関係でもあった。
出会ったのは、地元若手経営者が集まるセミナーだ。
そこで、友人の地元では有名な金型製作所の跡継ぎ息子の野田拓也から紹介された。
紹介されたとたんに「もう付き合って、その後の別れのシーンまで想像できた」

デジャブ?
いや
テレパス!

彼女は、それを発していた。
僕は、その人との出会いから別れまでわかってしまうテレパスがあったが、相手にテレパスがないと、お天気で言えば曇天のように感じるだけだった。
 このとき初めて知ったのだが、テレパスがある相手だと、晴天のように「ピッカーン」と来るのだ。
でも、地元の財界で噂になったらダメだ。
そんな自己制御力が働き、そのときは彼女が「こんなので終わって良いの?」と別れ際に、言葉では無くてテレパスで会話を求めてきた。

それから5年後、僕はその地元若手経営者が集まるセミナーを卒業し、単調な日々を暮らしていたら、やはり、予定通り彼女から連絡が来た。

「ケータイ買い換えしたいけど。相談に乗って」

それは、全くの口実だとは、テレパスでわかっていた。
しかも、彼氏が居るのに彼女は欲張りで、絶えずもう二人セフレが居ないと生活ができなくなるくらい、セックスに対してどん欲なのもテレパスで伝わってきた。
その一人と喧嘩別れして性格が合うセフレを探し出すのも。
そして5年前若手経営者セミナーで僕が紹介されたのを思い出すのもわかっていた。
結局、運命には逆らったが、5年間が精一杯だった。

彼女とランドマークタワーで逢い、逢ったら最後、下部になるのはわかっていたが、結局、会いに行ってしまった。
彼女は性癖が凄く、大人のおもちゃからペニスフェチ、アナル、コスプレ・・・ありとあらゆる性愛と快感を僕に求めた。
そんな2年半が過ぎ、彼女もわかっているだろうが、最後の誕生日となった。
半年後に別れてしまうのも、彼女はテレパスやデジャブ未来透視で知っているはずだ。

 プレゼントを渡すと彼女は手洗いに立った。
戻ってきたらプレゼントしたチャイナドレスを着ていた。
はち切れんばかりのジューシー感が体からでていた。
彼女の体全体が光っていた。
お台場のデックス東京ビーチを歩いていても、すれ違うカップルが本来は自分達の世界で他人なんか目に入らないはずが、彼女を思わず何だろう?と見つめる。
そう、目には見えないオーラと光線で光っているのだ。

 デッキに降り立つと、摩季は手すりにもたれかかるように、遠く海に向かってうつろな視線を送り、黙って眺めていた。
そして夜のレインボーブリッジを遠く眺めるような視線のままで
「このドレス、もう誰も見ることは無いのね。でも、あなたは又見るのよ」

ええええええええ〜

おれのテレパスでは、摩季とは、もう逢わないのだが・・・・


第二話 チャイナドレスを脱いだとき

 お台場で会った後も、仲好しカップルのように毎週逢っていた。
セフレとしての欲望をお互い分かち合い、とうとうお約束の半年が来た。

予定通り摩季のケータイもメールも通じなくなった・・・

 ここで、テレパスが無い人たちのために説明しておくが。
マジにテレパスを発表してしまうと、そうじゃない人たちが自分たちが分からない間にテレパスで悪巧みでもされたら怖いので抹殺してしまえとなってしまう。そしてそのテレパスがない人達の中にも、普段は隠れているが、実はテレパスができる人達がいる。
で、ある日そいつらがテレパスを多く発して錯乱させ、裏切り者をとっ捕まえてしまうのだ。
中世、ヨーロッパ中心に魔女狩りが多くされた時期があったが、あれは実際にテレパスを持ってそうな人間狩りでもあった。

 それ以来テレパスを世の中に発表しようとする人間は、テレパスのポリス的立場(強力なテレパス保持者)により捕獲され抹殺されてしまうのだ。
自殺と見せかけるのはいとも簡単にテレパスでできるから、恐ろしいことに、抹殺された後も、特に、犯罪にならないで終わっている。
そうやって、世間にテレパスはあくまで空想上のものだと思わせていた方が身の安全が確保できる。と言うのがテレパス使い達の常識となっていった。

 それでいくと本質的に僕も危ないのだが、実際にはテレパスの波長を微弱に流しているので発見不可能なのです。
僕のは特に弱いテレパスなので相手から分からないと思う。
実際のところは微弱に出すと言うよりも、まだテレパスが不完全と言えばよいだろう。

 彼らが錯乱させるため一斉に強力なテレパスを出す日は、焦ったりしないでシャットダウンすれば100%見つかりっこ無いのだから、普通のテレパス使いは。
何故かというと、テレパスにも欠点があり、人類全部のテレパスを把握するのは不可能なのだ。
興味があったり、その人をじーっと観察してないと分からないのである。
だからシャットダウンしたり微弱だとなおさら分からなくなる。

 摩季はテレパスを微弱にしたか、テレパスバリアーを張ったのかと思っていた。
だから永遠に連絡はなくなるものと思っていた。
そして半年後にはそのことはほとんど忘れかけていた。

 ある日、宅配便が「送り主、摩季」で送られてきた。
箱は30cm四方で非常に軽い布かインテリアのような気がした。
梱包をほどくとリボンもしてあり、明らかに贈り物だった。
フタを開けると、あのときのチャイナドレスだった。
甘酸っぱい想い出が一気によみがえってきた。
甘くジューシーなイチゴジャムを口の中に入れた時、
カレーの後に酸っぱいらっきょうをほおばった時、
そんな感傷に浸っていた。
でも、次の瞬間は現実に戻り、
また、摩季の性欲対象になってしまったのか?
それとも気まぐれで送ってきたのか?
僕の心の中は、静かだった鏡のような湖畔の水に、強風が吹き抜け大きなさざ波が立つようにざわめいた。

でも、幾ら精神統一しても摩季のテレパスは来ない。

どうしてだろう?

テレパスを微弱にしているのか、シャットダウンしてるのか、バリアーを張っているのか不明だ、反応がない。

 宅配便の住所をたどって訪ねることにした。
そこは、世田谷の閑静な住宅地の奥にあるひっそりとした低層マンションだった。
だが部屋の前に立つと表札の姓は佐藤になっていた、名前は記入されてないので摩季がいるとも分からなかった。本来なら摩季は鈴木の姓だ。
もしかしたら結婚でもしたのだろうか?
いや、そうならうれしさのあまり油断して僕にもテレパスが飛んでくるはずだ。少なくとも3年はセフレだったが濃密な関係でもあったのだから。
でも、こんなに近づいたにも関わらずテレパスが感じられない。
どうしたことなんだろう、不思議だ。

 突然、理由がない恐怖感が僕を襲ってきた。
本当の真っ暗闇は知っていますか、天も左右も分からない真っ暗な場所。
そんな場所にいると気が狂いそうな恐怖に駆られるときがあるが、そんな恐怖を感じていた。
嫌な予感がしてきたが、それが何か、はっきりとしない。
もっとテレパス力が強大なら分かるんだがなあ。
こんな時に中途半端なテレパスがあるのを悔やむ。

 カメラ付きのインターフォンのボタンを押すと「ピンポーン」とごくありふれた音がした。

だれも返事がない。

もしかしたらカメラで様子をうかがっているかもしれないと思い、少しにこやかな顔をして胸を張ってカメラに目線をやった。
しばらくしても反応がないので、またボタンを押してみた。
全く人の気配がしない。


仕方なく駅に戻りカフェで時間をつぶすことにした。

第三話 チャイナドレスは死へ・・・

夕方までカフェで過ごした。

 お客を観察していると、色々な人が出入りするのが分かった。
一番多いのが住宅街なので主婦が多い。
それも裕福な感じの主婦だ。
主婦同士でジムや遊びに行く待ち合わせや帰り道でのおしゃべりだ。
その次は年金生活だろうか?
年配の男性。これは単独が多い。新聞を読んだり雑誌を見たりする。
その次は男性の背広姿。
仕事の途中で一服なのだろうか?
手帳を見たり記入したり、ケータイメールのチェックに余念がない。
珈琲を3杯も飲み、タルトとサンドイッチも食べてしまい時間をもてあますようになった。
夕方になったのもあり、店を出て摩季のいたマンションに向かう。

「ピンポーン」
人の気配はする。
物理的にも窓に明かりが漏れているし、ガスや電気のメーターが廻っている。

インターホンのランプが点き
「どなたですか?」
聞き慣れない女性の声がした。
明らかに摩季ではない。
「あの〜古河祐二です」
暫く間があき
「どんなご用件でしょうか?」
明らかにとまどった声が聞こえてきた。
「摩季のことで伺いました」
また30秒ほど間が空き戸惑っていることが分かる。
意を決したような声で
「すぐ開けます」
ドアが開くと、摩季と同じ年齢の女性が立っていた。
彼女はテレパスが無いが、僕の顔を見たとたんにホッとした表情を見せた。
僕が彼女の好きなタイプだというのが透視できた。
「ビックリしました。もしかして摩季の彼?」
「いや〜そんなに、もてた覚えは無いですが」
「とにかく中に入ってください」

中は2LDKの間取りで、とても綺麗に掃除や整理され、リビングには観葉植物や大型液晶画面のPC&TVがあった。
20歳代の生活としては優雅な方だろう。
リビングの真ん中に白いムートンが敷かれ、その上に漆で縫ったような黒いちゃぶ台があり、椅子は丸い風船のような健康器具に出てくるような低いスツールであった。
そこに座らされ、ローズティが出てきた。

 彼女は佐藤優香と言った。
身長は160cmだがなかなかのグラマーだ、バストは優に90cmは有るだろう、しかもウェストがミロのヴィーナスよりくびれている。世の中、茶髪が多い中、黒髪で、まるで学生のようなおかっぱ頭だった。
目は茶色の中に銀が混じったような冷たい目をした子だ。
祖先にロシアの血が流れていそうな、ぬけるような白い肌でもあった。
ローライズジーンズにピンク色の刺繍や飾りのヒラヒラが付いたタンクトップなので、ケツの割れ目やバストの谷間、お臍とウェストラインに目線が行ってしまいそうで困った。
なるべくTV辺りを見たり、窓の外を見るように喋った。

優香から
「住所はどうして分かったのですか?」
「宅配便でチャイナドレスが送られてきたからです」
優香は考え深そうな顔で
「そうか。摩季はそうしたのか」
「僕の話は摩季がよくしたのですか?」
「うん。結構好きだったみたい。前彼と別れてからは祐二さんに夢中だったみたいよ」
「えー僕は遊ばれているだけだと思っていた」
「そんなこと無いよ、祐二さんの話をするときの摩季は輝いて見えたもの」
優香と摩季は同級生なのか?
テレパスではそう感じるが僕のは微弱なので、相手がテレパス使いじゃないとハッキリは分からない。
聞いてみた。
「失礼ですが摩季とはどんな関係のお友達ですか」
「ああ中学時代からの仲良し同級生」
「そうか。じゃあ摩季のこと僕より知ってるね」
優香は何かを思い出したように笑いながら
「そうね。男性には話せない失敗談なんかも」

 その時、ものすごい殺意を感じた。
それは部屋の外からだった。
もしかしたら、テレパス狩りの連中。
僕は摩季のことを思うと、つい、癖でテレパスを最大限に発して摩季に届けようとしていたみたいだ。
「優香さん、誰か来ても僕や摩季は居ないことにしてください」
彼女は、別の意味で、分かったわよと言う顔でウィンクをし
「大丈夫。絶対言わないから。任せて」

この時点で僕は摩季のことを考えるのを止めた。
彼らのテレパス狩りの連中に見つからない一番の方法、好きな物や人を考える事をした。
目の前の優香をどうやったら脱がしてエッチ出来るかだけ考えた。
そうすると微弱な僕のテレパスは、ほぼ強力な人のバリアーかシャットダウンに近い状態と同じになる。
強大な何十人ものテレパスがこの近辺をサーチし始めた。
恐ろしい。
恐怖心がテレパスで出そうになったが。
それを必死に振り払い、頭の中では優香を全裸にしディーブキスをしている状態を考えていた。

「はい、どちらでしょう」
マイクから
「こちらには佐藤摩季さんは居ませんか?」
「はい、彼女は2か月前にここに住まわれていたようですが引っ越しましたよ」
「行き先は分かりませんか?」
「さあ、不動産屋さんにでも聞いてみてください。私はその方がどういう方か知らなくて、時々そうやって来られて迷惑してます」
「そうですか失礼します」

優香は得意満面の笑みを浮かべ
「やったね。追い返したね」
僕は一応嬉しそうな顔を浮かべ
「うん。ありがとう」
だが、このまま摩季の話をしたら、あいつらに捕獲されてしまう。
しつこく何時間かはこの近辺をサーチするだろうから。

もう、死の臭いが近づいて来ているような予感が走った。
ただ、命の助かる線もテレパスで見えていた。
それは優香と濃密な関係を何時間かすることなのだ。

「摩季ごめん」と思ったら最後なのだ。

幸いなことに優香は僕に良い感情を持っている。
というより好みのタイプなのだ。
だから誘惑すればオッケイするだろう。

摩季への感情を殺し優香を・・・

第四話 優香のためらい・・・

パシッ
思いっきり平手で頬をたたかれた。
優香は本気で怒った顔をして
「何するの!いくら何でも馬鹿にしないでよ。今日会ったばかりでしょ」
想定外のことが起こってしまった。
ヤバイ!
優香と濃厚な時間が過ごせないと殺人テレパス軍団に気づかれてしまう。

「私がそんなに軽い女に見えて。確かに摩季は日本から離れて、もう帰ってこないかも知れないけど。代わりのセックス対象は嫌よ」
「ゴメン。君があまりにも魅力的だったので本能的に・・・しかし摩季が日本を離れたって、どこに行ったの?」
「ロスよロサンゼルス!」
「そうか、でも今時間がないのだよ。 信じがたいだろうけど、実は僕と摩季はテレパス使いで言葉を発しなくても相手と意思の疎通ができたり、そうでない人の心を読んだりすることができるのだが、それを世間に発表しようとすると、魔女狩りみたいにテレパスを殺してしまう軍団があり、僕たちは、そいつらに殺されるかも知れないのだ。 今訪ねてきた男がその一人なのだよ。 だから僕が摩季のことを心で思っていると、彼らに読まれてしまうので、君のことを考えたのだ。それも彼女と同じぐらいのことを考えたりやったりしないと彼らにばれてしまい、まずいから、お願いだから命を助けると思ってセックスしてください」

優香は悩んでいるようだった。

しばらく無言が続き
「わからない。嘘を言っているとは思えないのだけど、やっぱり体目的の気がする。でも心を読むのなら私の気持ちはばれてしまってるのよね。そうだとしたら恥ずかしい。どうして良いのか私にも分からない」
もう間に合わない、彼女をたぐり寄せ、舌を絡めるディーブキスをした。
彼女の目ははっきりと開いたままで、びっくりしていたが嬉しそうでもあった。

「ピンポーン」チャイムが鳴った。
体の力が抜けグニャグニャなっていた優香がシャンとしてしまった。
にこっと笑い
「誰か来たみたい、ちょっと待って。あなたを信じてこの後好きにしていいから」
「どちら様ですか?」
「分かってるぞ。そこに摩季という女がいるだろう」
「いや、いません」
急にヤクザが喧嘩を売ったり脅しにはいるときの声で
「あけろ」
「本当にいません。しかもどこの誰とも分からない人に」
「いま、かばっている人間がいるのは分かっているのだ。俺たちはあんたの心が読めるんだよ。人間じゃないのだ。テレパスと言う人間の発展系の者だ。だから痛い目に遭う前にドアを開けなさい」
優香は助けを求める目で僕を見た。
僕は「ダメ」とテレパスではなく首を横に振った。
彼女が返事をしようとしたとたん

「バリバリッ」

ドアが蹴破られた。
何人か男が入ってきて彼女と僕は取り押さえられてしまった。
何かチクッと痛みが腕に走ったと思ったがそこから意識は遠のいていった。
これで僕の人生が幕を閉じるのか?
でも、なんだか暗闇に向かっていない?
テレパス出来ているのか?
そうだとすれば弱いながらも予知が出来たのか?
それとも長い眠りについたのか?

でも、あっけない人生だったかな・・・

第五話 尋問

「祐二さん、祐二さん起きて」

どこか遠くで声が聞こえてきた。
目を覚ますと真っ白な部屋の中だった。
辺りを見渡すと優香がいた。
しかし全裸で手術時のベッドのようなものにベルトで手足を縛られて足は大きく開脚されていた。
何をされたのだろう?
恐怖心といやらしい想像とがごちゃ混ぜになって心が混乱した。
「祐二さんのエッチ」
声ではなくテレパスが来た。

ぎょっとして彼女の方を向いたら口は動いていなかった。

優香は「しょうがないなこの男は・・」そんな感じの顔をして
「そうよ、テレパスよ。そして、今、私を性欲の対象にしたでしょ」
僕はうろたえ
「ゴメン。あまりにも綺麗な体だったので。でもどうして?あのときは使わなかったの?」
優香はちょっと困った顔をしながら
「だって、どちらの関係者か分からなかったんだもの」

「どちらって?」
優香
「あれ?テレパスが少し弱いから誘われなかったのかな?それともリストに載ってないのかな?昔からロシライン国派とアメテレ連合国派があり、争いは人類が始まったときから続いているのよ」

「へ〜知らなかった。テレパスの人間がそんなにいることも今日初めて知った」
優香
「私達はアメテレ連合国派で、この捕らわれて、連れて来られた場所はロシライン国派の秘密の場所だと思う」

「僕達どうなるの?」
優香
「私は先ほど尋問されたわ」

「大丈夫だった?」
優香
「ええ、こうやって生きているからね」

「尋問は恐ろしいの?大変なことを受けるの?」
優香
「私のこの姿で分かるでしょ」

「うわー・・・・」
優香
「もー。祐二さんって本当にエッチね。そうその通りよ」

「わ・話題を変えよう」
優香
「そうね。ところで祐二さんは摩季の彼氏なのよね?」

「ええ。まあ。そんなところだね」
優香
「いいのよ。オブラートに包まなくても。どうせ透視してしまうから。祐二さんのは、すぐばれてしまうのよ。今度、教えてあげるシャットアウトの方法」

「あはっ!そうだね、セフレみたいな者だよ。シャットダウンは是非教えてほしい」


その時ドアが開いた。

黒背広の男達が5人、入ってきた。
その中の一人が
「おお、そっちのまだ青二才のお兄ちゃんも目を覚ましたか」
もう一人が、何と、鎖と鞭を手に持っていて
「さてと、あんちゃんも少しは情報を持っているだろうから、早くゲロしな。でないと痛い目に遭わすことにもなるから」
「バシーン」
音がしたとたん優香から悲鳴が上がった。
「ぎゃー」
彼女のおなかの辺りに赤い一筋のみみず腫れが出来た。
その男が、黄色くなったヤニ臭そうな歯をむき出しながら、いやらしく笑いテレパスで会話してきた。

「さて、おにいちゃんは摩季って女を知っているよな」

いかん、心の中を透視される。
優香のあそこを想像しシャットダウン的な事をしなきゃ。
いやらしい想像を始めた。

その男は冷たい目をしていた、黒目の部分が銀色のオオカミのような目であった。
「そうかい、それなら、まずこの薬を注射するか。その後は鎖か鞭かな」

「何ですか薬って?」
男はいやらしい笑い声で
「気持ちよくなる薬だよ。いーひっっひ」

優香と僕に注射を打った。
なんだか体が火照ってきた。
先ほどまでの恐怖感が無くなってきた。
見るモノが全て可笑しく思えてきた。机も寝台も天井の照明も。
「あはは、あはは」
優香も変な笑いを始めた。

男達は優香と僕のベルトを解き、そのまま部屋から出て行った。

すぐさま優香は僕に抱きついてきて。
とろーんとした目で

「しよ!」

僕の心の奥底に冷静な自分がまだ残っていて。
このままでは獣になってしまう。
奴らの思うつぼだ。
なんとかシャットダウンする方法は無いのか考えていたが、彼女のバストや下半身のふくよかな丘の感触が伝わると、脳は本能だけになってしまった。
「やりたい。優香を抱きたい〜ああああああ」

それよりも、あいつらに、優香がシャットダウンしていた心を読まれてしまう。

どうしよう!
このまま優香とセックスしたら最高の気持ちだが・・・・

第六話 とうとう入ってしまった

誘惑に負けそうな自分と戦った。
でも下半身はとっくに戦闘状態。
もう本能の部分はどうしようもなく、あきらめて、完全に薬の虜になりインフォマニア化した優香のなすがままにされようと思った。
優香が僕のを思う存分楽しむ事が出来るように、防御していた手を離した。
優香は嬉しそうな娼婦のような目つきで僕を見て、観念したのを確認し、熱い息を吐きながら抱きついてきた。

ああ、とうとう、禁断の実を食べてしまうのだ。僕は。

「ドーン」
「ばばばばばっ」
「バリバリ」
「ガシャーン」
「ダダダダッ」
「ドーン」
「ズバーン」
「ジャジャジャジャ」
「ギャー」
「ゲッ」
「グエッー」
「ドドドドッ」

凄い音がドアの外でした。10分間は続いただろうか?
優香が僕のを入れようとしたが、僕は力ずくで取り押さえ、息を潜めた。

静けさが戻った。

先ほどと全く違うテレパスが飛んできた。
「ガイヤはいるか?」

「ガイヤ?」

「君は誰だ?」

「優香の関係者です」

「だが君はアメテレ連合国リストに無いぞ。ロシラインのスパイだな」

「今、優香と僕はロシラインの者に淫靡薬のような注射を打たれ、尋問されていた」

「そうか。ロシラインの刺客は制覇したので安心しろ」

「たぶん奥の部屋だと思いますが閉じこめられてます。助けてください」

「カシャ」
扉が開いて全く別の男達が入ってきた。
先ほどテレパスを送ってきた男が会話してきた。

「ああ〜優香。くそっ!こんな事されて」

そして僕の方を見て
「どうやら優香を助けてもらったみたいだ、ありがとう。フィアンセの高瀬伸吾です」

「いや。僕も助けられてます。今までテレパスが微弱にしか出てなかったみたいですが、彼女のおかげで、今日はっきり出せるようになりました」
高瀬
「そうか、それで君はリストになかったんだ。おめでとう今日から我々の同士だ」
どうして返事をして良いのやら困った気もしたが、高瀬という男は誠実そうだし、この仲間に入っても良いなと気を許した。
高瀬がテレパスで
「どうやら。僕たちの仲間に入る決心をしてくれたみたいだね」

「ええ。優香さんの友人の摩季の彼氏だったので、何かの縁だし。今後ともよろしくお願いします」
すっかり、気が和らいだとたん裸だったのに気がついた。
高瀬も察したらしく
「二人ともちょっと待ってろ。着替えを探してくるから」

改めて高瀬や他の人たちの服装をよく見たらSWATではないか。
移動の車中で高瀬に聞いてみた
「SWATの中にもたくさんのアメテレの人達が居るのですか?」
「ええ。だいたい全国で千名はいます。僕たちはその中でも約2000名の特殊部隊で名称はIT機動部隊と言います。SWATのメンバーもこの部隊のことは、テレパス使い以外は誰も知らないです。 ただし困ったことにロシラインのスパイもSWATの中に200名はいると思われるので油断は出来ないです。だからテレパスも組織内でなくて外で使うようにしています。今から行く支局も気をつけてください。テレパスは出さないように。

「先ほど命に関わる状態になったとき、シャットダウンと封じ込めを覚えました」
高瀬
「それは良かった。極限状態にならないとテレパスがあると気がつかない人も多くいて。我々も潜在的に持っている人達を探しだし、なるべくアメテレ連合国に取り込もうとしています」
ちょうどそのとき優香のテレパスが通常に出るようになり、トロンとしていた目も普通の輝きに戻り。
「ああ。私、変なことしなかったかな?」

「大丈夫だったよ」
優香
「ありがとう。守ってくれたみたいね」
その後は高瀬と優香の人目をはばからない抱擁とテレパス交信が到着まで続いた。当てられそうなので放っておくことにした。

SWATの基地に入り車から降りた。
そして案内されたのは、極秘部隊でもあるIT機動部隊に案内された。
そこで所長と面談することになった。
所長室は白い廊下を何分も歩き建物の奥にあるようだ。
途中には暗証番号以外にも静脈認証、網膜認証、声認証など映画でしか見たことの無いような最先端の厳重な警備装置があった。

所長室の扉を高瀬が開けると、重圧な革張りの応接セットがあり、その向こうに、これまた重圧な木製の両袖デスクがあり、向こうの景色を眺めている老人の背中が見えた。
高瀬
「所長。失礼します。この者がリストに無く、今まではヒューマンだった摩季の彼氏です」

「古河祐二と申します」
窓の外を見ていた所長はこちらに振り向きながら
「久しぶりだな。古河」
僕はそのとき心臓が止まったと思った。

死んだはずの先生だった。

第七話 不吉な男

お茶の親先生であったが、数年前タイでテロに巻き込まれなくなられた。とTVや新聞で大きく取り扱われ報道されていたので絶対死んでいたと思っていた。
和服が似合い、背筋がすーと伸びて、でも和服の下には筋肉質な太い腕があり、身長も180cm近くで体型も格好が良かった。
女性の先生がが多い中で、唯一の男性先生でもありました。
その仙人のような風貌と柔らかな物腰と話を聞くのがうまい性格が、女性の師範やおばさん達には人気があり、無くなったと知ったとき何人もの生徒が声を出し泣いてしまったくらいだ。
名前は大山拓也

「あのタイで起きた爆弾テロで死んだと思ってました。お元気そうで何よりです」
「そうだね。あのときタイの警察がロシラインの者を僕と間違えて検死したのだよ。 実は、あれは宗教の違いのテロと見せかけ、僕をねらったのだ。 それで死んだとしておけばSWATの仕事もやりやすくなるし、奴らに狙われなくて済むので、ちょうど良かった。 いま摩季が当時の僕と同じように狙われていて、日本にいては危なくなりロサンゼルスへ逃れたのだよ」
「ええっ。では突然、僕の前から去ったのもそのせいですか?」
「そうだと思う」
「今、どこですか?」
「君はそれを聞いてどうするのだ?会いに行くのか?」
「うーん。今は、ただ知りたいだけです」
「どうしても必要になったら知らせる。今はなるべく人には知らせないようにしているので。君が行く気になったら、ボディーガードもしてほしいと思うので、いつでもいいぞ」
「はい、ではそのときはよろしくお願いします」

内心は、今すぐにでも会いに行きたかった。
ドロドロとした恋愛。
いや遊びが嫌で仕方なかったのに今は何故か会いたいと思っている。
自分の気持ちとは裏腹に心の感情は会いたがっている。
男の本能もムクムクともたげ始め、摩季を自分のものにしたいと欲している。でも気持ちとは正反対の、そのときはよろしくお願いします、なんて言葉をはいてしまった。

「君も、今回の件で面が割れ、ロシラインのリストに載らなければ良いのだが。しばらくは様子を見てもらう。その後ロシラインが気がつかなければ、強力な戦力になるので機密IT機動部隊を手伝ってもらえないだろうか?」
「僕自身としては大して実力もないのに手伝うなんておこがましいと思うのですが。でも機密と言われるとなんだか凄いことをしているのだと自尊心をくすぐらやってみたいのですが。こんな僕でも勤まるのでしょうか?」
「最初からみんな精鋭ではないのだ。何回も何回も失敗や成功を重ねて覚えていくので大丈夫だ。それまでは経験者が君をサポートするから」
「はい。そういっていただくとやる気がわいてきました。ぜひ参加させてください」
「ではそのサポート役を優香になってもらおう。彼女は今婚約中で愛する人への思いが何倍もテレパス力をアップさせているので勉強にもなると思う。優香大丈夫かな?」
優香は何か考えている様子だったが、意を決した感じで
「あっ。はいっ。大丈夫です」
「では、古河君をよろしくたのむ。潜在パワーが相当ありそうだぞ彼は。やりがいのある仕事となるだろう。では以上で頼みたいことは終わりだ、二人とも下がって良いぞ」
もう見つめ合ったりしないでテレパスで優香と示し合わせ、所長室から出てきた。

その時SWATの出動警報の音が鳴り響いた。

「ビボーン・ビボーン」

その音と同時にテレパス号令が飛んできた。
「みなとみらい地区ドックヤードガーデンでロシラインらしき男がテレパスを使い誰かを誘拐しようとしています。IT機動部隊みなとみらい地区担当は至急出動せよ」
「みなとみらい地区担当って?」
優香にテレパスをとばしたら
「私たちと、もう3組の男女組よ」
「すぐ、みなとみらい駅改札で待ち合わせね」
「行きましょう」
「うわー僕はまだ心の準備が出来てないのに」

そこへ不吉なテレパスが飛んできた。

「おまえ達は死ぬのだ」だと。

嫌な予感がはしる。
どうやら、それは誘拐犯の男からのようだ。

第八話 血の祭典

「ぴーぽーぴーぽー」
救急車がドックヤードガーデン前の、さくら通りで停車した。
それは優香と僕が感じていたテレパスが途切れた場所だ。
一番近くにいたので先発隊として、先に到着していた田中英美と大山貴史であった。
彼らのテレパスは10分前から消失していた。
多勢に無勢ならば一時的にシャットダウンや微弱にすることはあっても、たった一人の誘拐犯みたいなヤツにそんなことはするはずがないし。

あの、嫌な予感が走った。

救急車が怪我人をストレッチャーに乗せたとき顔が見えたが、目と鼻、口、耳から血が吹き出ていた。
その姿は助からないだろうと誰もが思うような出血でもあった。
それを見て優香の顔が強張った。

「おい、どうしたんだよ」
「あの人達・・・英美と貴史」
「ええーホントかよ」
「間違えないわよ。何回も会って打ち合わせした相手だもの。でも誘拐犯に殺されたみたい」
「そうだよな。あの出血は普通じゃないのは僕にも分かる」

考えている間もなく、また強烈なテレパスとテレパスが対立するのが伝わってきた。
明らかにロシラインのモノではなかった。
だが、その邪悪なテレパスに抵抗しているのはアメテレの一員だった。

また、嫌な予感が走った。
またアメテレの誰かが死んでしまうのか?
怯えた気持ちで優香に聞いた。
「誰だろう?」
「2組目も死んだみたい。柿谷祐子と佐山祐介」
優香の顔はみるみる暗くなっていくのが分かった。
もしかしたら未来予知出来たのか?
「大丈夫か?顔色が悪いけど?」
思い詰めた顔をして返事を何分もしなかった優香のテレパスが飛んできた。
「私、今、このみなとみらい地区で殺されるみたい。でもアナタがそれを遮蔽する事も、もう一つの予知で感じるのかな?助けて」
僕は具体的に有利な策など思い浮かばないし。
優香に聞いた
「どうすればよいんだよ?」
「私にも分からない」
このままでは危ないと思い、ここから離れることにした。
優香の肩を抱くようにしてパンパシフィックとヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルがある国際橋の方に逃げて、国際橋の中央にさしかかったとき。優香の足が止まった。

不思議に思い彼女をよく見ると、足の太ももから血が垂れてきた、まるで生理の血が流れてしまったみたいだ。
「大丈夫?」と聞いた。
優香はおなかを押さえながら橋の欄干に手をやり、海を見ていたが、振り向いたとき目に血の涙が流れ出しているのが分かった。

優香は不意に欄干を超え海に身投げしようとした。
瞬間的に僕は、優香を抱え込み彼女に覆い被さるように、守るように海へ転落してしまった。

水中で血は真っ赤に広がり、本来なら浮かび上がるはずの体が、二人とも沈んでいく一方な事に気がつく。

ああ。

これで、彼女の言っていた「殺されるかも」の意味が分かった。
まったく別のテレパス、しかも強烈なモノで攻撃されているのに気がついたがもう遅かった。

体は沈んでいく。そして海底が近くに見える。

相手は優香なのか?
摩季なのか?
幻なのか?
これが走馬燈なのか?
二人っきりのお茶の席が楽しかったのが思い浮かぶ。
親先生が、駄目な僕を何回も何回も辛抱強く、点て方の指導をしてくれた。
母親が母乳を飲ませてくれた。
卒業式の嬉しかったこと。
どんどん思い出してくる。

さようなら皆様。
お母さん・・・
優香・・
摩季・

第九話 知らなかった

沈んでいく途中で、僕の心の中の怒りが爆発してしまった。
「お前はなんぼの者なんじゃい。世界を制覇するつもりなのか!そんなヤツは天罰を下してやる。ましてや僕を殺すなんて。逆に叩き切ってやる。ウリャー!」
「ギャー」
悲鳴が聞こえた気がする。
体が浮き上がり、水分も吹き飛んで優香と僕は、元の橋の上にいた。
今のは幻だったんだろうか?
優香は天使のようなほほえみで言った。
「ありがとう。やっぱり私を救ってくれたのね」
僕はとても照れてしまい、何でもないようなそぶりをして。
「別に。なんか知らないが必死になって考えたら元に戻っていた」
その時、驚くことにアメテレ連合国国防長官のブッシー氏からテレパスが入った。
「今まで防御不能の新テレパスに対してバリアー&攻撃を始めてしてくれてありがとう。君たちの連携テレパスが最大の防御と攻撃になることが証明されて今後のお手本になった。命が助かった初めての事例だ。命がけのパイオニアの活動は、我が国の誇りであり、永遠にこの事は語り継がれるだろう」
なんだか恥ずかしいのと照れくさいのが混じった気持ちで優香に言った。
「罪のない人を殺す相手に怒りを感じ、ただ君の命を救いたくてやったのに、国防長官に感謝されると照れくさくて」
「いいえ。アナタは私の命の恩人でアメテレ連合国の誇りなのよ。自信を持ってね」
「そう言われても、なーんか実感が沸かなくてね」
嬉しい気持ちが心の中で「じわー」っとわいてきたが、反面、あいつはどうなったんだろう?不安になる気持ちも出てきた。だがいくらサーチしても、あの邪悪なテレパスが消えてしまっている。

本当に消えて死んでしまったのだろうか?
僕の新テレパスが、そんなに強力なモノを出すのだろうか?
これでその気になっっても良いのだろうか?

優香が言ってくれた。
「私の記憶が薄れかけて死んでしまう時に、あの邪悪な新テレパスの何十倍もの新テレパスが私の体を抱きかかえている人から発しているのは感じたので本当よ。祐二さんはまだ自分の力がどれくらいか知らないのよ。私も、その新テレパスを、もっと知ってみたい」
その話には、なんだか恋愛感情も含まれているような気がした。
すかさず優香からテレパスが飛んできた。
「そうお見通しの通り、私は祐二さんの虜よ」
「僕も君のことは好きなんだけど・・・」
「いいわよ。まだ摩季さんの事が心の中で一杯あふれてるもんね」
なんだか図星を言われてしまい、どう返事をして良いか迷いながら
「いや。友達として生きているかどうか心配で」
「隠さなくてもいいのよ。もう一度言うけど、まだ摩季のことが好きなのは分かっているから」
まったく、心の中を優香に読まれてしまっている自分に腹が立ってきた。
でも、まだまだ、誰が本当に好きなのか自分でも決めることが出来ないことにも苛立ちを感じていた。

優香が優しい顔とテレパスで
「祐二さんが決心するまで、私、待つわ」
この言葉というかテレパスは僕の本能を直撃し。
「優香を抱きたくなってしまった」
彼女は察して目をつぶり僕の方に顔を向けたままになってしまった。

思わず僕は口を優香の口に近づけ・・・

第十話 議会

「おい。二人とも、そんな場所で見つめ合ってないで死んだ仲間の家族への連絡や本部への報告の手伝いをしてくれ」とランドマーク辺りからテレパスが飛んできた。
優香と目を合わせて、慌ててランドマーク方向に歩き出した。

連絡をしてきた相手は米田俊介であった。
テレパスは6歳の時から26歳になるまで使っているベテランだ。
八王子近辺のまだ武蔵野原野の趣が色濃く残る広大な敷地を保有している前澤大学という学校がある。
ここは政治経済・宗教関係・国際学部が専門で小学校から大学までエスカレーターの様に入学したら卒業までいられる学校で有名だ。
だがその中の心理学部の人間心理科がアメテレの日本校だったとは誰も知らない。
テレパス界では普通にみんな入学する学校だ。
米田はそこを主席で卒業し、機密IT機動部隊に入隊した。

結局、優香との甘いキスは、お預けとなった。

いや、このまま彼女とは結ばれないような運命も微かだが感じる。
だが、まだ自分のテレパスは未熟のようでもあり、予知も不安定な感じなので、結ばれない運命を感じるのが間違えであることを祈った。

ランドマークタワーの、とある階に「世界遺産登録推進委員会」と言うNPO法人がある。
ここは表向き表札通りの活動をしているが、実態はアメテレ連合の横浜支局の下部組織の一つ、みなとみらいブランチでもあった。
そこに到着すると、すでに何十人かの人たちが応援で集まってきた。

田中英美と大山貴史、柿谷祐子と佐山祐介の遺族の方々もいた。
自然災害や殺人事件の現場独特の、静かだが異様な雰囲気と負のエネルギーが満ちあふれ、普段では感じられない慌ただしさが漂っていた。

アメテレ連合、神奈川議会の議長が隣のミーティングルームで緊急議会を開くと宣言し、8割方の議員は集まったらしい。
優香と僕は、目撃者および証人として出席せざるを得なくなった。

「本日は予てから予知で察していたとおりの大惨事となってしまいました。本日なくなられちゃ方々とご遺族の方々に哀悼の意を表します。そして黙祷をしたいと思います。皆さんご起立ください」
1分間の黙祷の後議長は
「それでは議会を開催いたします。本日の議長を務めさせていただくのは私大迫仁史と申します、そして議事録は人間型ロボットの書記君第63854号です。早速ですが、防御しきれなかったモンスターテレパスについて新たな展開が発見されたので説明いたします。カップルで防御すれば1檄で死んでしまうモンスターテレパスに打撃を与えるどころか致命傷に近い打撃も追わせることが今回発見されました。これは男性側が女性に対しての何らかの愛情や好意を抱いていると防御と攻撃が何倍かにパワーアップするようです。それと彼は遺伝子の一つに陽明家と言う祖先をもつ種族だと言うことがわかりました。どうやら好意を抱いている人とペアを組んで事を行う場合、その種族だとモンスターと戦うことが出来るようです」
議会の人A
「その祖先以外だと何故ダメなんでしょうか?」
議長
「現在のところ科学的には不明です。なくなられた方達は縄忠家・高砂族・北海族の方々で、日本国の1割がこの家系です」
議会の人B
「日本には、その陽明家の方々は何人いらっしゃるのでしょうか?」
議長
「先ほどコンピューターで調べた限りでは日本国内で1万人前後だと思われます。世界中でも10万人が限界かと思われます」
議界の人C
「では、どんな戦いをされているのですか?」
議長
「実際に戦われた古河祐二さんと鈴木優香さんにオブザーバーとして議会にお招きしましたので、その件につきまして、ご説明お願いしたいと思います。ではどうぞ」

なんだか気恥ずかしく、偉そうに説明するのは苦手であったが、亡くなられた方々の冥福を祈るのと共に、これ以上犠牲者を出したくないと思う気持ちが強く、説明しなきゃいけないという義務感が勝り、うまく説明できる自信はないが喋り始めた。

第十一話 スーパーテレパス

「えー優香さんが橋から転落しそうになった時は夢中で引き上げようとしましたが、テレパス以外の強力な力のようなモノが、水中に僕もろとも引きずり込み、しかも浮かび上がらないように沈む力が働きました。それで怒りと優香さんを助けてあげられない不甲斐なさと悔しさとが入り交じり、怒りが爆発したら、ギャーと言うテレパスと共に元の橋の上に戻りました・・・」
突然、数人の議員が倒れてしまった。
亡くなった隊員と同じよう口や鼻から出血をし始めた。
僕は、ヤバイと思い、とっさに大声で声にして叫んだ。
「皆さん、今すぐテレパスはシャットアウトモード、微弱にでもダメです禁止です。声で伝達してください」
「議長、これは僕たちが受けた異常に強力なテレパスと同じです。ヤツはまだこの近辺に居るようです」
議長は苦悩の顔で
「怖さが良くわかった。それよりも倒れた議員を病院に運ぼう。みなとみらい病院が近いから誰か連絡してくれ」
倒れた議員を看病していた米田隊員がつらそうな顔で言った。
「議長、3人とも亡くなりました」

僕は、怒り・悔しさ・憤りが最大値に達し、やってはいけないテレパスを発射してしまった。
また「ギャー」と声がした。
が、今度は凶暴なテレパスが襲ってきた。
耳が「キーン」となり気圧が変化した時に聞こえる耳鳴りが聞こえた。
鼻血が出そうになるくらい痛くなってきた。
また僕の怒りが爆発した。

「ギャー」

しーんと静まりかえってしまったが、数秒後。
今までとは又別の邪悪なテレパスが話してきた。
「君はいい根性をしている。スーパーテレパス部隊の隊員を2名も抹殺してしまうなんて。俺はロシラインの特別諜報部極東地区将軍キューズ・バッキウだ。君と1対1で決着をつける時が来た。日本丸の前で待っている」
ロシラインのキューズ・バッキウとのテレパス会話の内容を、声でみんなに話した。
そして今から日本丸前に行くと話した。
議長は声に出して
「僕たちは何も助けてあげることは出来ない。君は100年前の魔女狩りの時、殺害に加わっている邪悪なテレパス軍団の主催者達を一網打尽にした、伝説に伝えられているアメテレ救世主の子孫だ。必ず邪悪なスーパーテレパスに勝つであろう。幸運を祈ってる」

日本丸に向かって歩き出すと優香が腕を取って言った。
「私も行かないと。力が発揮できないよ」
「いや、ぎりぎりの戦いになり相打ちする可能性があるから君は残ってくれ。もしもの時は今後のアメテレの守護神になってくれないと困る」
「そんな。嫌・・・祐二が死ぬときは私も一緒。でも二人で戦えば絶対大丈夫」
「ヤツは1対1を望んでいる。それに2対1で勝ってもテレパス騎士道に反するし」
「じゃあ必ず帰ってきてね」
後ろ髪を引かれる思いで優香を後にして日本丸に向かった。

相変わらず横浜マリタイムミュージアム前は観光客でにぎわっていた。
その真ん前の造船所跡1号ドックに日本丸は浮かんでいる。
ここで凄惨な殺し合いが先ほどあったとは知らず、みんな楽しそうに歩いている。
ドックの周りに張り巡らされている手すりのところまで歩いてきたら、またあの強力なテレパスを感じた。
嫌な予感も出てきた。
二度と味わいたくない感覚だった。
耳が劈かれる感覚がして

「キーン」

ふっと気がついたら海の底に大の字になって沈んでいた。
海水浄化装置の泡が遠く見えて海の上の景色がかすんできた。

遠くで声がした
「ふふふ。お前もこれで終わりだ。まあ楽な相手だったな」
景色が霞んできたが力を振り絞り聞いた。
「何で無差別に殺さなきゃいけないのだ。殺したって意味がないだろう」
無機質な返事が帰ってきた。
「意味はある。邪悪なアメテレは全員抹殺されなければ世界平和は訪れない」
「僕たちも争いはしたいと思ってない。話し合えないのか?」
「もう話し合いをしても無駄だ。お前達は全くロシラインを邪悪扱いしている」
「そうじゃないよ」
と言いかけたとき凶暴なテレパスが僕の喉を締め付け窒息させようとした。
しまった、あの怒りを出しても、あの力が出てこないではないか。
失敗したか、優香がいないと力は発揮できないのか?
視界の四隅が暗くなってきた。
海底から日本丸のマストを見ると、突然、総帆展帆となった。

ああ
視界が真っ暗となり・・

第十二話 テレポーター

気がつくと機密IT機動部隊の会議室に居た。
体がびしょびしょだった。
しかも塩臭かった。
これは海水のようだ。
僕はどうしてここに来たのだろうか。
自分でも分からなかった。
海底に沈んでいった時、その後の記憶がない。
まるで、睡眠でも取っていたようでもある。
ただ言えてるのは恐怖と怒りとみんなを助けなければいけないという責任感が、爆発したように充ちていたのと、助かったことは確かなようだ。
そしてキューズ・バッキウのテレパスは届いてこなかった。

ガシャ

扉が開き、お茶の元親先生でもある機密IT機動部隊の所長大山拓也と佐藤優香、そのフィアンセ高瀬伸吾、米田俊介が部屋に入ってきた。

大山
「おお。無事で良かった。やっぱり君はテレポーターだったか。努力すればエスパーの称号を得られる選ばれた人達の一員になれる人だったか」
僕は意味が良くわからなくて所長に聞き返してしまった。
「テレポーターとは瞬間的に移動できる能力のことですか?」
大山
「ああ、そうだ。テレパス使いの中には本来の心を読んだり、気持ちをしゃべらないで遠方の相手に伝える能力以外に、予知能力と瞬間移動能力を持った者が、数千人に一人出てくる。その瞬間移動が出来る人間をテレポーターと呼んでいる。君のことだ。そしてその3つの能力を持つ者をエスパーと読んでいる」
そうだとすると優香を抱え込んで海底から橋の上に戻れたのもその能力のおかげだったのだろうか?
僕の気持ちを読み取って所長が言った。
「そうだ。優香を助けたのもテレポートが出来たおかげだ。他の隊員がキューズ・バッキューにやられてしまったのはテレポートが出来なかったからだ」

「そうでしたか。そういえば体が熱くなったとたんに、そうなった事は覚えています。相手もテレパスが届かない空間に行ったか、テレパスを遮断したか、とにかく別の場所に移動した感触も覚えています」
大山
「感触を思い出してくれ、どうすればそれが出来るかを。エスパーは自分でその感触を勉強して能力を磨いていくと聞いているので。そしてそのエスパー能力のいかんによってアメテレ連合国の優劣を握っているから」

この言葉はとても重い言葉ではあったが、TVに出てくるスーパーマンやスパイダーマン、あるいは映画に出てくるアイアムレジェンドの主人公の気持ちが初めて分かったような気がした。
俺は世界を助けるのだと言うヒーロー的な気持ちと、どうだ凄いだろうという、自己満足の気持ちとが入り交じって妙な気持ちになった。


「わかりました努力します」
優香
「助かったのね。よかったわ。すごく心配したもの」

「前回は、優香と二人の力で出来たと思うよ。君が居なかったら、今回の一人での戦いも上手くできなかったかも知れない」
優香
「そんな謙遜しなくて良いのよ。祐二の力で出来たのよ」

その時、高瀬伸吾のジェラシー混じりの、言葉ではないテレパスが飛んできた。
僕はなるべく優香のことは考えず摩季のことを思いながらテレパスを返した。
彼女は世界一すばらしい隊員であり、美人でもあり性格も愛らしく優しく素敵な女性だと思っている。その隊員の相棒としての愛はあるが、彼女としての愛はまだ生まれてないので安心しろと。
その時は高瀬も納得したが、これが命がけの事になるとは、この頃の僕には予知できなかった。

第十三話 テレポーター

僕は思いっきり不機嫌な感情を込めて
「こんなビルの5階から飛び降りて、もし失敗したら即死だよ」
隆義「たかだか15m、失敗しても骨折ぐらいだよ。本番なら即、死に直結なんだから」
僕「そんなこと言ったって、無理なものは無理だよ」
隆義「別に嫌なら、やらなくても構わないさ。ただ今でも世界で誰かがロシライン国のスーパーテレパスの餌食になっているだけさ」

バットがあったら殴り殺したいと言うのはこのことなのか。
ものすごくむかつく言葉であった。
こんなヤツが何で指導員になれるのか不思議に思うくらいだ。
育てるどころか、やる気をなくさせるのではないかと思う。
とうとう、感情が爆発してしまい。
「それなら、先生がお手本を見せてもらわないと納得できない」
言ってから、隆義の顔色が変わったのに気づき、ああ、言い過ぎたと航海したが、もう後には引けなく、謝罪もしなかった。

あっというまに隆義の姿が消えると、道路の迎えのビルの屋上に姿が見えた。
意図も簡単にコントロール出来るんだ。
驚くのもつかの間、姿が消えたと思ったら、後ろに人の気配がした。
振り向くまもなく、後ろから「ドーン」と突き出された。
一瞬、体が空中にふわっと浮かんだ。
しかし、真っ逆さまに地面に向かって落ちていってしまった。

あーこのまま地面に落ちたら死ぬ

「死ぬ時は走馬燈のように自分の幼少からのコトを思い出す」とよく言われるが、本当に、小さかった頃、隣の「けいちゃん」とお医者珊瑚超した事や、幼稚園を抜け出し近所の遊園地に遊びに行き、園長先生に、しこたま怒られた事・・・

ああ地面まであと3m...

優香
「どうしたの。急に現れて。良かったじゃない。テレポートの練習だったの?」

 辺りを見渡すと、研究所の中だった。
優香はバイオテクノロジー研究所の職員であった。
どうやら、その研究所にテレポートしたみたいだ。
部屋は畳で言うと50畳は有るだろうか、かなり広い。
白い天井に白い壁、白いテーブルが20個ぐらい整然と等間隔で並んでいる。そのテーブルには赤い布地の洒落た椅子が置いてあった。
1カ所だけガラスの間仕切りで10畳ほどの広さに仕切られていて、そこにも赤い布地のゆったりとしたソファーが4個ある応接セットがあった。
いかにも、近未来を連想させる研究所だ。
僕 「うん、練習していた。教官が僕をビルの屋上から突き落とした。一派間違うと即死だった。とんでもないヤツだよ」
優香「でも、人から聞いただけだけど、エスパー候補の人じゃないと、そんな手荒な事をすると死んでしまうのでやらないと聞いているわ。祐二は絶対、救世主になるのよ。昔から強いライオンは我が子を谷底に落とすと言われているのとおなじよ」
僕「全然、そんな大それた事は出来ると思えないのだけどね」
優香「私の予知能力は訓練されて強くなったのよ。そしてこれでもアジアで予知能力ランキングナンバーワンなのよ。その私が祐二君は救世主になると予知できているのだから大丈夫よ」
優香の言葉を聞いているとなぜだか、ライオンで言えば百獣の王、モビルスーツのガンダムになったような気がする。
優香に聞いてみた
「おまえ、もしかしたら、テレパスと予知能力意外に何か持ってるんだよな?」
優香「ええ。エスパーの人と至近距離にいると、エスパー能力を倍増させるか、攻撃を受けたときに2人の周りにテレパスバリアーを張れる特殊能力があるの、だからエスパーとならばテレポートできるの」
僕「そうか、それで所長達は、海底から橋の上に戻ったのを知って、無理矢理にでも、僕を機密IT機動部隊に入れてしまったのか」
優香「そう、その通りよ。だから戦うときは私はあなたと1組になるよう命ぜられたの」
僕「じゃあ、あのとき僕のテレパスがスーパーにならなかったら、僕と一緒に死んでいたの?」
優香「そう、だから、あのときはとても怖かった。私はあの時、死んだも同然だったもの。あの時ステルス能力を持ったスーパーテレパス使いが来ていると部隊の誰もも知らなかったから。でも祐二さんがエスパーでラッキーだった」
僕「ふーん」
優香は僕を焦らすような、小学生が悪戯をするときのランランに輝いた悪戯っぽい目で僕を見ながら
「だから私の体は祐二さんのモノよ。好きにして良いのよ」

あ〜

また、あの胸騒ぎが始まった。
この後、僕たちはどうなるのか優香には予知できているのだろう。
だからあんな悪戯っぽい目で僕を誘ってきているのだろうか?
下半身が暴れ出したので、ばれないように考えないことにしたが手遅れだったようだ。
優香「祐二さんのエッチ」

僕にも理性があり、それが、暴走しそうな下半身に言い聞かせるようにイカンイカンと言っている。
「でも、君にはフィアンセがいるだろう。そんな誘惑をしちゃ・・・」

優香の唇が・・・

第十四話 トレジャー

とんとんと僕の肩を何者かがたたいた。
優香と共にビックリして振り向くと、テレポーター指導員の乾隆義が、笑いながら立っていた。
何で、ここが分かったのだろうか?
どうして来られたのだろうか?
疑問が夏の青空にモクモクと現れる、入道雲のようにもたげかけてきた。
「あれ?どうして、ここがわかったのでしょうか?先生もテレポートしてきたのですか?」
乾 「そうです。君のテレポートの軌跡を追ってテレポートしたのだよ」
僕 「ええ。そんなことが出来るのですか!」
乾 「みんな一人一人テレポートするときの波動が違うのだよ。それで空間が入れ替わるときの行き先を判断することが出来る。訓練すれば違いが分かるようになるのだ」
僕 「怖くないですか。自分の空間を目的地の空間と置き換えるとき、別の人のテレポートとクロスしてしまうと、電子と電子がぶつかり合い、爆発して、二人とも死んでしまうと聞いてます」
乾 「その空間が閉じる前に、ぴったり張り付く形で追従するので、クロスは起こらない。ただ何十万人もテレポーターが出入りする場所があるとクロス爆発は起こりうるかも知れないな」
僕 「早く、追跡テレポートが出来るようになりたいな」
乾 「まあ、君ならすぐなれるさ。実戦で育つタイプのようだから、事件があればすぐだよ」
僕 「そうですね」
乾 「では、優香さんには悪いが、祐二君はトレーニングの場所に戻ってもらいます」
優香は、驚いたままで、あっけにとられながら僕たちの会話を聞いていた。
そして、首を縦に振って承諾するだけで、何もしゃべらなかった。

乾 「先ほどの場所に戻るが、僕の空間の後ろに貼り付けるようだったら、追跡テレポートしてみてくれ」
「はい。分かりました。がんばってみます」

元気に返事はしてみたが、まったく、追跡できる自信はなかった。
全神経をトレーナーの動きに集中した。
消える瞬間に、指導員のテレポート先が透視できた。
な・なんとテレポート先は、ロシラインの特別諜報部極東地区将軍キューズ・バッキウの執務室ではないか。
迷ったが、そのまま追跡してテレポートしてしまった。

そこは、20畳はあるだろうか、かなり広い部屋であった。
壁は白壁で、腰高から下はニスを塗ってある木の板を張り付けてあり、かなり重圧だ。
床も、木目のニス塗りの、これまた重圧な感じである。
木目の立派な本箱が、片側の壁全てにあった。
そして、革張りの両肘ハイバックシートにゆったりとキューズ・バッキウが座っていた。
テレパスで会話してきたが、これがロシア語のテレパスなので、さっぱり分からなかった。

ただ、こちらを見る目は、不意をつかれて驚いている様子だった。
乾指導員にテレパスで
「殺されますよ」
乾 「来るつもりが無かったのだが、変だね。まるでキューズ・バッキューをオチョクリに来たかと思われるだろうな。すぐ戻ろう」
そういうテレパスが来て、テレポートの瞬間に指導員の口や目、鼻から血が噴き出したのが見えた。

そして、体が熱くなってきた。
ヤバイ、あの時の感触だ。

一瞬の判断で、どうせやられるなら、キューズ・バッキウと相打ちをするつもりだった。
キューズ・バッキウの空間に、クロスしてテレポートをした。

「グワーアアアア。ギャー」

何かが、はじけた音がした。

ふと、足元を見ると、キューズ・バッキウが、血の海の中で息絶えていた。
僕が殺したのだろうか?
膝っこぞうがガタガタ揺れていた。
そうか、足が震えているのに気がついた。

人殺しをしてしまった。
もう、後には戻れない。
これから先、僕は、こうやってアメテレ連合国の戦士として、何人も人殺しをするようになってしまうのか。
僕の両親はこんな事を喜ぶのだろうか。
良心が咎めている。
でも、殺さなければ、自分が殺されていただろう。
これは、まさに戦争なんだ、平和な日本なんて見せかけだったのか。
政治家が、民間企業と癒着や、官僚が大きな金額の接待を受けているのも、強盗団が増え続けているのも、人ごとだったはずだ。
なのに、僕は、今、人殺しの訓練を受けて、実戦してしまっている。
これで、良いのか。
「戦争は反対」と昔は、酒の席や、世間話の時、自分で言っていたじゃないか。

そんなことを考えながらも、とにかく、アメテレ連合の、どこでも良かった、テレポート出来れっばよかった。
でも、キューズ・バッキウに、神経をずたずたに攻撃されて、相当、疲労していたようだ。
アメテレ連合の事務局に、無事、テレポートした途端に気を失った。

田中英美と大山貴史、柿谷祐子と佐山祐介が、駆け寄ってきた。
あれ、黄泉の世界から、復活できたのか?
会ったことが無い相手なのに、予知のおかげで、顔を見ただけで分かっていた。
大山 「ありがとう、君のおかげで僕たちは復活できた」
柿沼
「明日から、また、私たち機密IT機動部隊の活動が出来るのね。嬉しい」
田中 「ありがとう大好きよ。祐二さん」
佐山 「祐二、とうとうエスパーになれたな」

遠くから誰かが呼んだ
「祐二・祐二・・・・」
目を開けると、真っ白な天井が見えた。
夢だったのか。

窓からは青空がのぞいていた、カーテンも真っ白だった。
どうやら医療室のベッドの上だったようだ。
心配そうに、のぞき込むように、僕を見ていたのは優香だった。
気を取り戻したのを確認すると、ホッとした顔をして、その後、怒ったような顔もした。

あれから、どれくらい経ったのだろうか?
「今、何時?」
優香 「もう、夕方5時よ」
母親が子供に優しく言い聞かせる時のように、優香はしゃべった。
「祐二さん、立派に戦ったのよ。スーパーテレパス使いに勝ったのよ」
「そうか。助かったのか。で指導員の乾氏は?」
優香は悲しそうに窓の外を、遠くを見つめるように見た。
目線は虚ろでもあった、それで、何が起きたか、テレパスを使わなくても分かった。
優香 「キューズ・バッキューの断末魔のテレパスと相打ちしたそうよ」
「そうだったか。テレポートの練習中の事故だったのか?キューズ・バッキウに、吸い寄せられるようにテレポートさせられたのか?二人とも死んでしまったので、今となっては不明だ」
優香 「そうね。でも、誰も勝てなかったので、大きな前進が出来たのよ」

心がウキウキしてきてしまい僕は
「やったね」

第十五話 hawaii(摩季)

 日本で言えば、6畳間ぐらいの広いバスルームで、シャワーを浴びた後、姿見の鏡を見ながら思った。
鏡の中の私は、相変わらず、ウェストはくびれ、バストもプリッっと張って、まんざらでもない。
大方の男性は、この顔と体で本能をくすぐられイチコロだわ。
こんな顔と体に、生んでくれた母親に感謝しなきゃ、と思いながらメークを落とした。

 ハワイでの生活とテレパスが出せないことは、もう、慣れてきたが、日本に残してきた祐二のことが、気になってしかたが無い。
何故、ロサンゼルスじゃないって?
それは、内部のスパイが居ることも想定して、アメテレ連合国内でも私はロスに行ったことになっている。
知っているのはSPとアメテレ連合国ハワイ支部事務局長だけだ。

 部屋は3LDKで、部屋は白色が基調となった装飾が施されていた。
木目の手すりや、金メッキの金属類で、高級な感覚のマンションの7階である。
日本の感覚だと、1人住まいとしては広くて贅沢なくらいだろう。
 アラモワナショッピングセンターもバスに乗って20分の場所にある。
ハワイだとバスの座席を、男性が、すぐ譲ってくれるので、もっぱら自動車を運転して行くより、バスの利用が多かった。

 優香から、テレパスが飛んできた。
それも、これ見よがしな、祐二とキスをしたときの「うっとり」としたテレパスだった。
「あーん。もう優香ったら、祐二を、まるで自分の彼氏のようにしちゃって。まったく!私がテレパスを出せないのをいいことに」
みなとみらいでは大変なことが起こっているのは、怒濤と恐怖と憤りのテレパス飛び交い、修羅場なので、こちらにも傍受できるくらいの強力なテレパスなのが分かった。
自分が、応援で参加できないことが、じれったく、悔しい限りであった。
しかも、優香が、明らかに祐二を誘惑しているテレパスまで飛んできて、なお一層、焦れったさを増した。
ハワイでは、両隣の部屋にSPに当たる頑強なエスパーが住み、完全にガードされていた。
だが、英語はなかなか慣れなくて不自由していた。
日本人の友達や友人が懐かしくなってきた、誰かハワイに住んでくれないかな。

固定電話の電話のベルが「りーん」と鳴った。
液晶表示に出た番号は、アメテレ連合の事務所からだった。
ロシライン国の刺客に、居所を探られなくするため、もっぱら、連絡はテレパスではなく固定電話であった。
ケータイも傍受されるおそれがあるので、あまり使用しなかった。
普段、表向きは貿易会社の事務所だが、実態はアメテレ連合のハワイ支部であった。
事務局長のトム・ヤンクスからだった。
「ハロー、マキ。イージーニ、ヤッテルカイ」
「ハロー、トム。ええ、元気よ」
「ワルイシラセダ。サクジツ、ハワイキョクインガ2メイ、コロサレタ」
「ジーザス。誰が」
「ジェシカ、テリー」
私は何も返事が出来ず、ただ、
「オーノー」
「ドウヤラ、ニホンノ、ヨコハマデ、オコッタ、ジケント、オナジヨウダ」
「えっ、スーパーテレパス?」
「ソウダ、キミヲ、ネラッテ、キタノカモシレナイ」
「そうだとしたら。ここには勝てる相手が居ないのでは?」
「ユウジヲ、ヨブカ?カレハ、スパーテレパスニ、カッタラシイ」
今、優香からのテレパスは、このことを予知し、祐二は、もう私の者よと言いたかったのだろうか?
「うーん。それしか方法がないのなら」
「リヨウカイ。サッソク、ニホンノ、ミナトミライシキョクニ、レンラクスル」
その時、電話口の向こうでは、とんでも無いことが起こったみたいだ。
「ギャー」
男性の断末魔の様な、絞りきったような悲鳴が聞こえた。
「ガシャーン」
「イワン・ノバカールだ!」
そして何かが倒れた音もした。
「また電話する」
数人の職員からの緊急事態のテレパスも飛んできた。
その後テレパスは全て途絶えた。

第十六話 DNA(トム・ヤンクス)

私はトム・ヤンクス。
生まれはカルフォルニアだが5歳の時にハワイに引っ越してきた。
その年、両親と海に遊びに行き、波打ち際で遊んでいたら、高波におそわれ海中に引きずり込まれ、息ができなくなり、もう少しで意識が無くなるときテレポートを初めてした。
両親は大騒ぎで海難監視員を呼び、海の中を探し、夜まで、泣き叫び探したが僕を発見できず、夜中にあきらめ悲嘆に暮れて自宅に帰り、テレポートをした僕を見て驚いた。

その翌日からマスコミが自宅に押しかけたが、国家保安局の特殊部隊、あるいみアメテレ連合国の新入会員のベーシックトレーニング委員会の委員がやってきて、マスコミをすべてシャットアウトし、両親にエスパーの説明をして、僕をベーシックトレーニングに参加させることを承諾してもらったそうだ。

その後は、普通にジュニアハイスクールに進み、ハイスクール、大学も普通に卒業し、国家保安局の職員として表向きは働いている。
でも、5歳からベーシックトレーニングに参加し、歴30年もたつと、英才教育のおかげでエスパーとして誰にも負けない能力を身につけることができた。
そして、有事の際は、特殊部隊隊員の指揮をとる役職になってしまった。


そんなある日のことだ。

職員がテレパスを使わないで叫んだ。

「ロシラインだ」

別の職員が叫んだ。

「逃げろ、急げ。イワン・ノバカールだ」

数人の職員が非常口から外階段で逃げようとしたが、途中の踊り場で倒れた。
倒れた職員を抱きかかえたが、その職員の目や鼻、口からは血が噴き出していた。
もう助からないと思った。
突然、頭に痛みが走った。
強烈なスーパーテレパス波が脳を襲っている。

テレパス使いは、皆さんが、よくご存じの遺伝子の突然変異によって生まれてくる。
その突然変異によって、使われていない脳細胞を、100%以上の能力が出るようになった者が、テレパス使いだ。
そして、10〜100万人に1人の率で出生するように、遺伝子に組み込まれている。

だが、現代科学では解明されていない。

解明されている部分だけを説明すると、遺伝子は染色体で、その成分は核酸で出来ている。
その核酸の中でも、糖の違いによって、2-デオキシリボースを持つデオキシリボ核酸 (DNA)リボースを持つ リボ核酸 (RNA) とがある。
そのDNAの中にも種類があり、その中の一つ、DNAポリメラーゼに秘密があったのだ。
DNAポリメラーゼは大きく分けると7つの分類があるが、完全には解析されてない。
その1つに、テレパシーやテレポート、未来予知できる遺伝子を作成できる情報が組み込まれている。
だが、現在の電子顕微鏡の倍率では、もしその遺伝子により、その機能を持つ細胞が出来たとしても、それを発見することが出来ない。
その100%以上の能力を出す細胞は、透明な状態といえば良いだろうか。
100億分の1秒単位で現れ、遺伝し消えていく。
細胞の遺伝サイクルが早すぎて発見出来ないのが、現状だ。

その、過敏な脳細胞を、強力な破壊波を出せるテレパスかエスパーが出現した。
突然変異の、新種のテレパスかエスパーだ。
とにかく、今までのテレパスやテレポーター、予知能力者達には、脅威な相手だ。

階段を降りながら、意識が朦朧(もうろう)として、足がふらついてきた。
あと、もう少しで地面という時に、急に強烈なスーパーテレパスが消えた。
何故だろう?
とにかく、助かったみたいだ。
しかもイワン・ノバカールのテレパスが、間近に、感じられない。
テレポートをしたのだろうか?
ステルス状態なのだろうか?
静かさが、逆に、恐怖を引き立ててしまう。

「怖い」

人生初めての、死ぬほど怖い、恐怖を味わった。
そのまま、そこに何十分、居たのだろうか。
だだ、突っ立っていた。
時間が経ち、ヤツが来ないというのが、はっきりしてきた。
そして、落ち着きを取り戻したら、思わず、

「摩季。無事か」

テレパスを飛ばしてしまった。
あっ。
ヤバイ!
そう思ったときは手遅れだった。
やっぱり、摩季の声が、テレパスで伝わってきた。

「ギャー」

その後、テレパスで何回呼びかけても返事がない。

殺されただろうか!

いや、彼女はスーパーテレパス使いが、怖がっていたとも聞く、超人だから大丈夫だよ。
そんな気持ちと、自分の不注意で彼女を見殺しにして、責任を取らされるだろうな。
都合の悪いことが、次々と心に浮かび上がる。

第十七話 油こゆるり(摩季)

誰も居ない部屋の中に、突然、人の気配を感じたの。
声を掛けてみた「誰?そこにいるのは」

スーッと姿がフェードアップするように現れたわ。

何人ものロシライン特別諜報部の職員とイワン・ノバカールだった。
たぶん、テレポーターの能力を、皆、持っているのだろう。
彼らは黒いスーツを着ていて肩幅が張っている、ランバンの黒メガネが似合いそうな男達だった。
イワン・ノバカールだけが黒のダブルのブレザーに紺色のズボンをはいていた。
ブレザーのボタンは18金で出来ているようで豪華であった、そして、腹が出て貫禄があった。
手には何も武器は持っていなかったわ。

たぶん、選りすぐりのエスパー達なんだろう。

武器が無くとも、戦うことは、わけないことなんだろう。
私は、変に動くと大変なことになりそうなので、悲鳴も上げず、じっとしていたわ。
黒背広のリーダーらしき男が、いやらしい目つきで、私の足から舐めるように顔までを見ながら、イワン・ノバカールに言った。
「どうしますか。辱めをしますか?隊員も溜まってますので。げっへへ」
世界一脂ぎった顔とは、こんな男の事を指すのだろう。
どうしたら、こんな犬畜生より下の、いやらしい人間が生まれるのだろうか。
しかもエスパーだとさ。
別の意味で腹が立ってきたのね。
でも、なるべく押さえたわ。
「あれ」が始まったら、また、大量殺戮をしてしまうからだ。
しかも、自分の理性が、全く制御できなくなる状態で、記憶にも残らない恐ろしい事になってしまうからだ。
その、汚らわしい男が近寄ってきたとき、次元が少しねじれてきたようだわ。

空気がギシギシと音を立て始めた。

イワン・ノバカールは全てを察したらしく、その汚らわしい男、シンジー・ドペスに言った。
「まて、その女性は、予言に出てくるシンドローネだ」
汚らわしいドペスは、また、厭らしい目で私の体を眺め、
「そんな風には見えないのですがねー。将軍」
「数年前の日本で、ロシラインとアメテレの兵士達が数百人、一瞬にして殺された事件を知らないのか?」
相変わらず、舌なめずりをするような唾を飲み込むような、厭らしい音を立てながら
「いや。知りませんでした。将軍様」
「それは、醜い争いをしていた兵士達がシンドローネを自分たちのモノにして、彼女を利用し、相手陣営を殺そうとした時に発生した」
イワン・ノバカールは押さえるような口調で、更に続けてしゃべった。
「彼女は、世界のエスパー達に全員アクセス出来る、神様だからだ。そして殺そうと思えば、世界のエスパー達を全員殺せる力を持っている、マスターエスパーだ」
まだまだ、信じられないという顔でドペスは
「まさか。そのシンドローネが、目の前にいる、何ともない女ですか」
イワン・ノバカールは、ドペスを諭すような声で
「そうだ。だから手を出すな。全員死んでしまうぞ」
ドペスはよっぽどの馬鹿か自信があったのだろうか、私の服の胸元を手で引きちぎるように引いた。

あっという間に胸が出てしまったの。

イワン・ノバカールも隊員達も目を開けたまま、まるでDVDの再生を一時停止したように止まっていた。
たぶん、この男は次元を止められるのだろう。
私には、この次元を、また、動かすことは出来ない。
そのまま、力には勝てず、ワンピースをはぎ取られてしまった。
ブラジャーもその下もはぎ取られ、何が何でも欲望を満たしたいようだったわ。
彼がそれだけで満足するのであれば、そんな事は、朝起きて、用を足すくらい何ともないことだ。
だが、ドペスがそれをしながら、ナイフで体を切り刻んだり、首を絞めて、何百人もの女性を殺していたのが、体を通して透視できた。

胃の中の黒い一点が痛くなったような、熱くなったような気がした。
そして、その一点が原子爆弾のキノコ雲のように、大きくふくらんできた。そして、大きな怒りがこみ上げてきた。
今まで殺された彼女たちの怨念が私の心にチャージしてきた。
まずいわ。
あの時の感触と全く同じだわ。
もう止められないかも。

怒りの感情が最大限になってしまったわ。
私には、もう制御不能みたい。

「きーん」
「ぎゃー」
「グシャ」
「グエッ」
「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーー」

第十八話 魅惑の優香

ここは、クイーンズのアット2だ。
観覧車も窓から大きく見え、遠くにはベイブリッジ、左にはインターコンチネンタルホテルが見える。夜景は横浜で一番良い景色だ。

シアトルにフランチャイズ本部があり、アメリカでは200店舗以上展開しているシーフードの有名店が、日本上陸したときの第1号店が、ここにある。
何故か、その店で、優香と二人っきりで食事をしている。

食事が終わった後、これから僕たちどうするのだろう?
どこに行くのだろう?
そして何をするのだろう?
優香の吸い込まれるような目は、何を考えているのだろう?
思い切って聞いた方がよいかな?

「この後は何したい?ボウリング、それとも万葉クラブ?映画?ドライブ?」
優香は、意味深な微笑みを浮かべ、何も返事はしない。
どうしたらよいのだろうか?

心の中の悪い友達がそそのかす。
「かわいい子じゃん。やっちゃいなよ。彼女も待ち望んでるぞ」
また別の良い友達が諭すように言う。
「まだ初めてのデートじゃないか?何もそんなに急いで口説くことはないよ。それよりも摩季のことは良いのか?浮気は駄目だよ」
僕は思わずつぶやいてしまった。
「そんな気持ちで食事をした訳じゃないのだ」

優香は怪訝な顔をして聞いてきた。
「大丈夫?何か考え事?大変なんだったら私に話して。気が楽になるかも」
「いや、何でもない。仕事のことを思い出して。こんな時に仕事のことを考えるなんて。僕、もてないよな」
優香は、いつもの明るい軽やかな笑いで
「いや〜だ。祐二さんて。でも摩季のこと考えてたんでしょ」

油断していたら、完全に、心を透視されてしまった。
僕の心の中のやましい部分を見透かすように優香は言った。
「いいのよ、体、目的でも」

僕は動転してしまい
「・・・・・・」
そのとき、口の中のロブスターの殻が刺さり、ゲホゴホとなってしまった。
優香は心配するかと思ったら、げらげら笑い出す始末。

いつも、肝心なとき、失敗するんだよな、俺。
落ち込んで、トイレに行って心を冷静にしようと思った。
優香からテレパスがきた。

「そんな祐二さんが可愛い。大好き」

もう、心は透視されまくってるし。
こうなれば、行くところまで行くしかないと心を決め、テレパスを返した。
優香はちょっと恥ずかしそうな顔をして、下を向きながら、うんとうなずいた。

男はこんな時、何故か無上な喜びが、わき起こるのだ。
これって本能のなせる技なんだろうな。
つまらないことを、また考えながら、ロブスターの中身をフォークでつまみ、口に放り込んだ。うまい。

優香がニコッと笑いながら
「じゃ、とうとう祐二君が落ちる日になったのね」

えっ。逆?

第十九話 魅惑の優香

気がつくと、救急車が何十台も右往左往していた。
ADEを取り出して、蘇生をしている人々も見えたが、もう、何を施しても無駄だった。
超高周波が細胞単位で破壊しているから、心室細動を止めるADEでは役に立たなかった。

「何十人も心肺停止状態になったそうだ」と通行人が怖いものを見るような目で、救急車を見ながら、言っていた。

オーマイ・ゴッド!
また、やってしまったわ。

怒りが、ある一点を超えると、その怒りの原因を作った人間をすべて、心肺停止状態にさせるテレパスを出してしまうのは、自分でわかっていた。
以前も自分に危害を加えようとした100人近くのエスパーを殺してしまったのが、トラウマとなっていた。
封印していたつもりだったが、やはり、同じ状況になったら、自分が制御できなくなり、以前と全く同じだったわ。

 記憶をたどって、先ほどの監禁された場所に行ったら、シンジー・ドペスが口から血を垂らしながら倒れていて、心臓が飛び出るほどドキドキしているのが自分でもわかったの。
その手下と思われるエスパー達も倒れていた。
でも、そこにイワン・ノバカールの姿は無かったの。
事前に察知して、遙か遠くの距離へテレポートした様子だったのよ。
本音を言うと一番死んでもらいたかった相手でもあったが、心の中の純粋に真面目な部分は、いくらロシラインとアメテレの対立相手といえども、人間を殺戮するのはいけないと、理性が訴えてもいたわ。

こんな時、祐二が居てくれたら
「君のせいじゃないよ。組織の対立が悪なんだよ。自分を責めては駄目だ」
そんな、優しい心と、暖かい言葉に飢えていた。
祐二にテレパスを出したかった。
でも、出せなかった。
出せばロシラインの、また別の部隊が出てきて、同じ殺戮の繰り返しになってしまうのは目に見えていた。

でも、会いたかったの。

どうすればよいのだろう、こんな時。
クラブにでも行こうかな。
少しは気持ちが楽になるのかしら?
でも、ナンパされると面倒だし。女一人で行ったら、絶対ナンパ待ちに思われるもんね。

そうだ、テレポートは大丈夫だったはず。
周りのロシラインの者は避難してほとんど居ないし。
テレポートの形跡を読まれる事もないだろう。
祐二のテレパスが出るのを待って、その地点にテレポートしちゃおうかな。
心の中の、悪い誘惑の嵐に勝てず、祐二のテレパスが出るのを待った。
タイミング良く、祐二が誰かにテレパスを発信したので、その場所にテレポートした。

なんだかホテルの一室にテレポートしたらしい。
窓を見るとコスモクロックとランドマークタワーが見える、最上階に近い高層ホテルのようだった。
スイートルームらしく、何部屋もあり、奥の部屋から楽しそうな話し声が聞こえてきたの。

「あ〜。嫌・嫌」

もうテレパスを感じたが手遅れだったわよ。

楽しそうな会話もとぎれた。
シーンと静まりかえった部屋の扉を開けると、優香と祐二が居た。

第二十話 メランコリー

「どうも。久しぶりね。でも、ちょっと、おじゃまだったかしら?」と摩季の声がした。

うっ!

しまったと思ったが、もう後の祭りだ。
優香と摩季が、面と向かって会ってしまうことになった。
ホテルまで来たが、まさか摩季がテレポートしてくるとは思ってもいなかった。

最悪の場合は女の戦いが始まるのか?

あるいは、二人に責められて大変なことになるのか?

 この二人はエスパーの中でも強力なサイコシスネスの保持者なので、戦いになったら、大変なことになりそうだ。
何事もなく、3人の友人としての会話で終わるのか?
いろいろな事を想像してしまった。
だが、二人からはテレパシーが出ていなかった。
完全にシャットアウトして、他人に心は読めなくなっていた。
これなら、摩季も優香も、僕との関係を相手から読めないので好都合だった。
「ほっ」としたら、心を二人に読まれてしまい。
摩季と優香が同時にしゃべった。
「あら。何をホッっとしてるの。何か疚しいことでもあるの?」
おっと、いけない、テレパシーが出てしまった。
最近は、咄嗟(とっさ)に言い訳がスラスラ出てくるようになり、浮気者能力がアップしているようだ。
言葉で「いや。摩季がロシラインの奴らにやられなくて、ホッとしただけだよ」

 摩季が不審な顔をしながら聞いてきた。
「ここは、ホテルで、しかもスイートルームじゃないの?」
どうしよう、本当のことを言ったら、摩季とは終わりになってしまうだろうか?
そんなことは無いよ、まだ、会うことはできると思うよ?
今までは、こうやって迷っていると、心を読まれてしまったが、テレパシーをシャットアウトする能力が、絶体絶命の事態になったことで発揮せざるを得なくなり、完全にできるようになったらしい。
迷いは、二人に読み取られてない様子だ。

言葉で言うことにした。
「優香が、まだインターコンチのスイートルームに行ったことが無いと言うので、友達が支配人なので、空いているスイートを、一寸だけ見学させてもらっていたのだよ」
優香は何故か口裏を合わせる感じで、真面目な顔で言った。
「そうなんです。無理を言っちゃって。こんな事になると思わなかったので〜びっくりしました」
 摩季は完全には納得していない顔で
「まあ、事前にテレパシーでアポイントも取らないで来た、私も悪かったわね。よろしくね。で、お名前は?」
 優香は、他人行儀に摩季に対してしゃべった。
今まで友人でも無かったような態度だ。
まるで、初めての赤の他人に対して言う言葉で言った。
「実は、今、アメテレ連合で一緒に組ましてもらっていて。祐二さんには、いろいろ教えていただいて助かってます。」
摩季は、全然、他人行儀な顔で
「そう、知らない間に、そうなっていたの。じゃあ、祐二のこと、これからも、よろしくね」

 普段、窓からの景色は、西側の大きなフィックス窓から見えるランドマークタワー、
東側のフィックス窓からは赤レンガ倉庫やベイブリッジが見え、最高の景色だが、今日は最悪の景色だ。
 この後、どうしたらよいか案じていた。
とりあえず摩季の状況を聞いた方がよいと思い。
「ハワイに避難していたのに、どうして、こんな所にテレポートしてきたの?」

第二十一話 ダブルス

とりあえず3人でお茶をすることになった。

 白い色の光沢があり、上品な金色の縁取りがあるドアを開け、廊下に出た。
扉は、閉まる時も、「ガシャ」とか「バタン」のような安物の音はせず、高級な感じの小さく「カシャ」と音がした。
廊下の絨毯は毛足が長く、足が「ふわっ」っと浮くような感じがするくらい、毛足の腰もしなやかだ。
外部の音が全く聞こえてこないホテルの廊下の独特な雰囲気があった。
高層ホテルのエレベーターは、下に下がるときも、上にあがるときもコンピューターが制御しているので、降下する時や上昇する時の、あの、嫌な感覚が全くなく動き出す。
空気をかき分けるような「シュー」という音だけが聞こえてくる。

エレベーターの中は3人だけ。

気まずい空気が流れていた。
こんな時、気が利いた会話ができれば良いのだが、いつも、ちぐはぐな事を言って、相手とコミュニケーションが上手くいかない。

「天気は良かったかな?」

優香と摩季はどちらに聞かれたか分からないような目でお互いを見て、そのまま、返事をためらっていた。
ちょうど、途中の階で、団体旅行の人達が入ってきて、気まずい雰囲気は中断した。

 天井が高く、1階のロビーから2階までは通常の倍以上の距離があった。
その2階まで伸びている、幅が広い段数を上った先に、1階から2階まで海が見える側の窓が、壁はなく全てガラス張りで、とても景色がよい。
その全面ガラス張りの窓を見ながらお茶ができる場所がある。
そこに、優香と摩季が海側を背に座った。
海の景色と、摩季と優香は見事にとけ込んで馴染んでいた。
自然の景色を背景にしても引き立つ二人であった。

まったくテレパシーを発せず摩季は言葉でしゃべった。

「ロシラインの精鋭部隊が、避難先のロスまで待ち伏せしていると言う情報が行く前に入ったので、みんなにはロスに行くと言ったまま、ハワイに行っていたの」
「そうだったんだ。テレパシーでのアクセスが、全く無くなったので、心配していたよ」
「そうね。それを出すのをロシライン側は待っていたので、出来なかったわ」
「そうか。大変だったのかな」
摩季は優香の方を挑戦するような目に変わり、見ながら言った。
「ロシラインの事はそんなに恐いとは思ってなかったけど、優香さんと祐二のテレパシーのやりとりは傍受出来ていたので、一寸心配だったかな」

ああ!

あの、やりとり、その気になったときの、あれ。
全て摩季にばれていたのだろうか?
心臓が一瞬止まりそうな気がした。

やばい、やっぱり、戦いは始まるのかな。
ホテルを破壊するほどのエネルギーをこの二人は出しかねない、底知れないパワーがあるのは、僕の能力が増せば増すほど分かるようになっってきたので、マジにやばいと思った。

摩季は意外と冷静な声で言った。
「優香さん祐二のこと好きなのですか?」
優香は予定通りの事のように、これまた普通に会話をした。
「ええ。アメテレの特殊部隊の同僚として信頼おける人ですし。最初の頃は祐二さんのエスパ能力アップのコーチ役でしたが、途中からは命も救ってもらったり、一心同体状態で仕事をしているうちに、素敵な人だなと思うようにもなりました」
摩季は真面目な顔で、
「はっきり言って愛してますか?」
優香は、どう返事をして良いか困った顔になり、
「まだ、プライベートで、そこまで祐二さんのことをしりませんので。摩季さんは、祐二さんの彼女なのですか?」
摩季はいとも当たり前なような声で
「ええ。そうよ」

僕は、この後どうして良いか分からなくなってしまった。
ただ、大変な事が起こらないのを祈ってばかりだった。

ん?
摩季と優香の二人の間で、微弱な何かが流れたような気がしたが、それは一瞬であった。

第二十二話 欲望

 摩季は、可愛いい大きなため息をつきながら
「祐二は、私と優香さん、二人とも付き合いたいと思っているでしょう」

 いままで迷っていたのが吹っ切れた気がした。
僕は欲望に素直に従っていたのだ、理性的に考えたり本能を押さえていなかった。
摩季の、あまりにもすごい性欲に圧倒され、セフレだと思っていたが、他人から見れば、摩季は彼女だろう。
それなのに優香の誘いに乗ろうとしていた自分は駄目な男だ。

 優香が横槍を入れるような感じで喋ってきた。
「摩季さん、まだ祐二を愛してるんですか?」
摩季は、その大きな目をジーと優香の方に向けて数秒間見ていた。
「祐二次第で、あなたと生死をかける戦いになるか、二人で祐二を共有するか。そんなお馬鹿な考えを起こす女ではないから安心して」
そして摩季は顔色一つ変えないで、

「ええ好きよ。愛しているわ」

優香は摩季に対して困ったなと言う顔をして、
「でも、今日の祐二さんは、二者択一なんて出来る心境じゃ無いみたいね」
摩季も、もう一度大きなため息をついて、
「ええ。そうね」

その言葉を聞いて僕はホッとした。
それもつかの間、嫌な予感が走った。
案の定、優香のケータイが「おもちゃの兵隊のマーチ」を奏でた。
「はい。優香です」
それはアメテレ連合国機密IT機動部隊からの電話だった。
優香の顔は、みるみる曇った顔になってしまった。
「はい。すぐ向かいます」

第二十三話 無差別

 優香は曇った顔で
「アメテレ大山所長から。小田原で、また数人殺されたそうよ、スーパーテレパスだわ。それもイワン・ノバカールらしいの」
やっぱりそうか、やつは生き残ったか。
あの時、瞬時にテレポートしたのだ。
「やつはガイアを察知することが出来るのだ。それだと優香や摩季のスーパーテレパスでは殺せないのか」
摩季はまだ知らないらしく、聞いてきた。
「ガイア?」
「昔、テレパス同士が相手の心を読み合って、最終的には普通の人間と同じように銃やナイフなどで殺し合っていたのだが、ある時、ガイアって女が、突然変異でスーパーテレパスを出すようになり、武器を持たずにエスパーを殺せるようになった。その後は彼女の名をもらい、スーパーエスパーには称号としてガイヤと言うようになったのだ」
「そうなんだ。優香さんや私がそうなの?」
「そう、優香はだいぶん前に知らされて訓練を受けているが、君のはガイアの中でも波長が巨大すぎて、まだ自分自身でコントロールが出来ないのだよ、だから訓練を受けないようにしていたのだが、ロシラインにばれてしまい、それで狙われるようになったのだ」
僕は
「じゃあ、優香と行ってくるから。何かあったら知らせて」
「私も行く」
「駄目だ所長から止められている。横浜ブランチで待っていてくれ」
摩季は全く納得していない顔で
「わかったわ。待っている」

 テレポートするとロシラインの奴らに察知されるので、徒歩で行くことにした。
みなとみらい、日本丸メモリアルパークを右手に見ながらサクラ通りを抜ける。
旧八菱造船所跡地に出来たのがメモリアルパークだ。
日本丸は、その旧ドックの中に浮いている。

道の左側はドックヤードガーデンになっていて、旧ドックの水は抜いてあり、途中に穴を開けたように通路があり飲食店がたくさんある。
さくら通りの真ん中ほどに広場があり、そこでは、大道芸等のイベントが行われる。

その広場を抜けクイーンズの建物に入る。
クイーンズと地下鉄みなとみらい駅は吹き抜けでつながっており、そこを空中都市に上がる感覚で、長いエスカレーターに乗って行き。
エスカレーターを3回乗り換えるとビジネス棟に入る。

 表向きは世界遺産登録推進委員会の表札になっているが、アメテレ連合国機密IT機動部隊の、みなとみらいブランチの事務所である。
巨大なフィックス(窓)からは、眼下にアット2の広場が見え、買い物客や観光客が楽しそうに歩いている。
グレーと濃紺の無機質な壁とカーペットタイルが広い空間を作っている。
ある意味、近未来的な場所にも見える。

 事務所は50人前後の人が、仕事を出来るスペースがある。
どこにでもよくある事務所の風景だ。
窓際の立派な両袖机の前まで3人は歩いた。
 外の景色を見ていた大山所長が椅子を回し、こちらに向き。
「また、大変な用事が続く。人類のため、任務を引き受けていただきたい」
優香が引き締まった顔になり言った。
「大まかなことは電話で所員から聞きました」
大山所長は大きなため息をふーっと吹き出し。
「では、その補足だが、今回は学習塾が狙われた」
そうあってはほしくないと思ったが、事実は変えられないだろうと思いながら聞いてみた。
「もしかして、子供達が狙われた?」
所長は遺憾に思いながら、言っている感じであった。
「その通り、今まではお互い子供達だけは争いに巻き込まないという、掟みたいな、暗黙の了解があっのを、今回は破られた」
優香は、みるみる頬を震わせ怒った顔になり
「何歳の子達だったのですか?」
大山所長は言いたくなさそうな困った顔をしながら
「中学生だよ、塾の最中に先生共々」
やはりそうか、まだテレパシーが発することすら自分でコントロールできないような子を殺すなんて、許せないと思った。
心の中から黒々としたモノが沸々と湧き出てくるのが自分でも分かった。
「小田原では普通の塾に混じってテレパスを教えている学校は他に何校あるのでしょうか?」
大山所長は、お茶を点てる時のような威厳のある顔に戻り
「あと4校あるそうだ。イワン・ノバカールに勝ったのは君たちだけだ。それで君たちに、彼らを守りに行ってもらいたい」
テレパスを交わせずとも、優香と顔を合わせアイコンタクトができた。
「では気をつけて行ってきてくれ。幸運を祈る。そこに現金とカードがある。それを持って行ってくれ」
「はい分かりました」
摩季は一部始終聞いていて、納得したようだ。

 みなとみらい線の駅に降りるエスカレータに乗っている時に、摩季が言った。
「優香さんと私の事はこの事件が終わったらゆっくり考えましょう」
優香も後ろで聞いていた。

改札口にスイカ翳し通った時、それ以上入ることが出来ない、お見送りの摩季は、優香に言った。
「優香さん、いくら仕事で一緒だとしても、小田原で祐二をベットに入れちゃルール違反よ」
優香は何も顔色を変えず
「ええ。分かったわ」

 電車が来るまで、ホームの椅子に座った。
上を見上げてみると、クイーンズの建物と吹き抜けで繋がって、SF映画に出てくる未来都市の駅のようでもあった。
横浜駅まではみなとみらい線だが、そこから先は東横線に接続されており渋谷に繋がっている。
車内は、今から渋谷に遊びに行く若者のカップルが目についた。
とても幸せそうに、会話している。
「マルキューでヒロシが待っているんだぜ」
「ええ〜ウッソーマジで」
「そう。やばいくらい」
「じゃぁ。盛りあがろ」

今からエスパー戦争に行く自分たちとは大違いだった。

第二十四話 碧い海

 横浜駅は昼間だというのに人でごった返していた。
人混みに押され、優香と離ればなれになりそうな状況だ。
その時なんと優香が腕を組んできた。
しかも頭を僕の胸に付けるように。
他人が観ていたら、仲の良いカップルに見えるだろう。
でも、妙に気持ちが良かった。
「どうだ、彼女は綺麗だろう。俺の女だぜ」
そんな気持ちにさせてくれる。

 彼女から、ほのかにエルメス・アマゾンの香りがしてきた。
その香りが僕の脳をイチコロにした。
「雄」の本能が目覚めてしまい、今すぐにでも、横浜駅のラブホに連れて行きたくなった。
「優香。寄り道していく?」
彼女が僕を見上げるような目で見たが、その目はとろけるようなトロンとした目であった。
もう僕が何をしたいかテレパスを発しなくても気がついているようだ。
返事はなく、甘ったるい声で「うん」とうなずいただけであった。

とうとう優香とSEXしてしまうのか。
そう考えただけでドキドキしてきた。

 優香の流れるような、コカコーラ瓶を連想させるボディを、想像してしまった。
どんな顔で乱れるのだろうか?
どんな声を出すのだろうか?
もしかして、いきなり馬乗りになってきて、じゃじゃ馬だったりして。
いや、ぎゃーぎゃー騒いでいるが、いざその時は、おとなしくなったりして.
ありとあらゆる事を想像している。この瞬間が好きだ。

 岡田屋モアーズの脇の道を歩いた。
橋を渡る辺りまで、人が多い。
昼間の時間は、会社の仕事関係と学生が多かった。
ドトールコーヒーを過ぎた辺りから、少し人通りが減る。
その先の大通りを突っ切るとホテルが点在する地域だ。
その中の白い大きなお城のようなホテルに入る。

 自動扉が開くと、ラブホテルの独特な臭いがした。
絨毯のクリーニングした時の、消毒の臭いと男女の香水の入り交じったような、何とも説明しがたい臭いだ。
それと、愛のすれ違い、ぶつかり合いの粒子が、ラブホテルの空気中に漂っているような気もする。
何回、嗅いでも、嗅ぐのをやめられない、癖になる臭いであった。

 受付で部屋の内装の写真が張ってあるメニューを見て、その写真の下にある部屋の番号ボタンを押し、エレベーターに乗った。
優香はずーと下を向いたままだ。
悪戯心が出てきて。
優香のあごを手で持ち、こちらを向かせ、いきなりディーブキスをした。
優香はまったく抵抗せず、むしろ待ち望んでいたごとく、舌を絡ませてきた。
この時点で、僕の下半身は期待が大きく膨れあがってしまい、爆発寸前であった。
彼女の体にそれが当たったらしく。
密着していた体を離しふくよかな笑みを浮かべ。

「楽しみは後でゆっくりね」

 部屋は無駄に大きくもなく、かといって狭くて「セックスだけをしに来た」って雰囲気でもなく、ちょうど良い広さだった。
ベッドは4人は寝られるほどの巨大なダブルベッドだった。
しかし、いつも不思議に思うのだが、ベッドの枕元のコントローラー。
何故、こんなハイテクな時代にアナログなグルグル回す音量調整ボタンや明かりのコントロールなんだろう?
PCのコントローラーとか、液晶表示のタッチパネルに出来ないのだろうか?
特注でコストが高く、元を取るまでに年数がかかるからだろうか?
いままで、ラブホテルオーナーに知り合いがいなかったので、聞くことが出来なかったのだが、こんど時間があったら受付のおばちゃんに聞いてみようか。
いや、おばちゃんじゃ、まったく分からないのではないか?

 設備機器に興味を持って行かれている私を見て、矛先を変えようとしたのか?
優香が「あ〜カラオケがある」
僕は「おお歌おう!」
二人並んでベッドを椅子代わりに腰を掛け、巨大液晶画面を見ながらデ゙ュエットを歌っていた。
目と目を合わせて歌うシーンに、なんと、優香が目をつむってしまった。
引き寄せられるように、口を近づけ。
優香の腰を引き寄せ・・・

その時、何かが「ふっ」と消えたような気がした。

第二十五話 教師

 横 優香のテレポート軌跡をを追ってテレポートした。
テレポートした後は何秒かは機敏な動きが出来ない。
体の細胞同士の馴染む時間がかかると言えば良いのだろうか。
とにかく、この時、攻撃されると弱いので敵の中には行きたくない。

ココはどこだろう?
小さな一人用の机が沢山あるので、教室だろうか?
白い天井に壁。
窓は、天井まである大きな開口部だった。
カーテンは無いので、やはり、教室だろう。
外側の袖看板に小田原塾と書いてあるのが見えた。
それも嫌なことにイワン・ノバカールの手下達の真っ直中に入ってしまった。
やはり優香は拉致されていた。
また全裸だった。
どうしてイワン・ノバカールの手下達は、皆、スケベなのだろうか。
そして、下品なんだろうか。
後ろ手に縛られている優香の胸は強調され、前に突き出ている。
しかし、優香は、なんという綺麗なプロポーションをしているんだろう。
こんな時に見とれている場合じゃないが、紐で縛られ眉間にシワが寄った優香はより美しくなる。

人間、心の中に悪魔が居るとしたら、こんな時にそいつらが出てきて。
「優香が縛られ犯され殺されるまで、ゆっくり観覧してようぜ」と囁くのだろうか?
なんだか、そんなふしだらな事を考えたりしたのを、恥じたり、思っただけで犯罪だよと、自分を戒めていた。

 突然、手首と肩に痛みが走った。
下を見たら、自分の太ももに血が垂れている。
椅子に座ったままで縛れれている自分に気がついた。
しかも、縄がきつく縛られて、出血するくらいだ。
やっと、テレポート後の何秒かが過ぎて正常になった時は、すでに遅かった。

 窓際に二人の男性も縛られて、椅子に座っていた。
全く動かなく、頭は前に垂れたままだった。
死んでるのだろうか。
ここからでは分からなかった。
その横に、縛られ座らされてみて分かった。
小田原塾長の吉野隆だった。
もう一人は10代なので生徒だろうか。
顔はスイカのように腫れ上がっていた。
何をされたのだろうか。
殴られたのだろうか。
それともスーパーテレパスの攻撃でなったのだろうか?
どうせ捕まってしまっているからテレパスを二人に出してみた。
反応がなかった。
もう、死んでいるのだろう。

優香からテレパスが入った。
「そうよ。こいつらが殺したのよ」
僕は怒りに包まれて問いかけた。
「殺そうと思えば出来るのに。何故?」
「イワン・ノバカールにテレパスを封じ込められている」
「そうか分かった。何か良い方法を考えてみる」
その会話に割ってはいるようにイワン・ノバカールのテレパスが来た。
来た途端に頭が割れそうに痛くなった。
脳みその中に、千枚通しを入れられ「チキチク」と刺されるような痛みだ。
優香も裸の体をねじって、眉間にしわを寄せ、痛みに耐えている。
より妖艶な色気が湧き上がってきた。

イワン・ノバカールが突然消えた・・・
優香の方を振り返って見ると縄だけが床に落ちていた。

全神経を集中したらイワン・ノバカールか優香のテレポート跡が微かに感じられたので跡を追った。
なんと、そこはランドマークタワーのドッグヤードガーデンであった。
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