act.16 告白







「おはようございまーす…、あ、どうも。ぉはようございますっ」


俺はどんより重い気持ちを抱えながら、番組収録前の楽屋に向かった。


翔くんはもちろんだけど、和に会うのも気まずい。

あれは浮気になるんだろーか。いや不可抗力だったもんな。
でも浮気すんなって言われたばっかりだったのになぁ。
やっぱり正直に打ち明けた方がいいよね。
これからのこともあるし。

あぁ…、言うのやだな。和と翔くんはどうなるんだろう。


ぐるぐるぐるぐる同じことばっかり考えながらネームプレートを確認し、ガード
マンが立っている扉の中に入った。
楽屋までは2つ扉をくぐらきゃならない。二番目の扉の五歩手前まで来たときだ
った。


「…翔ちゃんそりゃ引くわ〜」

小さかったけど相葉ちゃんの声が聞こえてきた。

翔くんいるのかっ?

壁にぴたっと張り付いて中の様子をうかがった。

「だけどリーダーモテるな〜。ジュニアでも結構ファン多いらしいよ」

「…ファンじゃないし」

「ニノがライバルじゃ翔ちゃん望みないわ」

「お前真面目に聞けよっ」

「真面目に聞けるかよ〜。勘違いじゃない!?翔ちゃんっ、ねぇ翔ちゃんっ」

「…勘違いじゃない。勘違いで男とキスできるか?」

「…したの…?」

「昨日…、家まで押しかけて」

「リーダーの家で?!」
「違うっ!近くの公園で」

……相葉ちゃんにも知られちゃったよ…。
ますます入りづらい雰囲気だ…。



「ふ〜ん…。キスねぇ…」



聞き慣れた声に、バッと後ろを振り向いた。

そこには腕を組み顎をつまんだ和が、ぴったりと俺の背後にくっついていた。


「か、かずっ…!」



アワワワっと慌てふためいた。

「今の、聞いてた…?」

「翔さんの気持ちはなんとなくわかってたからね。…で、彼とのキスはノリノリ
だったわけ?」

青ざめて首をぷるぷる振りながら、じんわり涙がにじんでくるのを感じた。
和はじぃっと俺の目を見つめて言葉を待ってる。

「…ちがう…」

絞るように出した声はかすれていた。
するといきなり、和がプッと吹き出した。

「わかってるよっ」

俺の口にチュッとキスした。

「どーせ、ぼーっとしてたんだろっ。いつまでも立ち聞きしてないで中入るぞ」

嬉しさに胸が締め付けられた。

和ぅ〜。


和が俺の手をパッと取って楽屋のドアをガチャッと開けた。


「はよー」

俺たちが普段と変わりなく手をつないで楽屋に入ると、固まって俺をみる2人と
目が合った。

「おはよ」

ぎこちなく笑顔を返して和の後に付いていった。

「俺腹痛くなっちゃたな〜っ!トイレトイレ」

固まり続ける翔くんを残して相葉ちゃんがそそくさと逃げた。
何の動揺もなくソファに腰掛けてゲームを取り出す和に寄り添って座った。

楽屋内が緊張した空気に包まれていた。

…そのままの状態で何分かたった時。

翔くんが動いた。
俺たちの前に立つと、翔くんはニノを真っ直ぐ見つめた。

「ニノ、俺は智君が好きだ」


しょっ、翔く〜んっ!

翔くんの宣言に頭を抱えたくなった。

和はゲームから目を離さずひょうひょうと答えた。

「知ってるよ〜。翔さんすげー分かりやすいもん」

「たぶんずっと前から好きだった。俺は臆病だから見ない振りしてただけで…。
出遅れたけど、遠慮しねーから」

和はやっとゲームから目を離し翔くんを見上げた。

「その宣戦布告、受け取ってやるよ」

そう言うと、手のひらに落としたキスをフッと翔くんに吹き飛ばした。


見えないゴングが鳴り響くのを聴いた気がしていた。