act.1 キス



リーダーは無口だ。
会話をしても、こんこんと何かを語りあうとか、討論するとか、そういうことは今までしたことがない。
聞いてもらうだけでいつも充分だし、感謝してる。

近寄りがたさなんて微塵もなくて、俺はからかってるつもりでもいつも甘えているだけなんだ。
子犬が母犬にじゃれてまとわりつくように・・・。







大歓声を背中に受けながら、俺は汗が流れる額をタオルで拭った。

楽屋に戻る少し薄暗い通路。スタッフの真剣な掛け声。この瞬間が好きだ。だけどソロが終わった後はいつも一抹の不安を感じる。
十年後、今の俺を見ても恥じることのない自分でいたい。
ファンの前ではいつも最高の二宮和也でありたい。



明りがともった控室に入った時。


出番を一人静かに待つ細い背中を見た。

「リーダー」

声をかけてみたけど返事がない声が小さかったのかもしれないl。

少し丸めた背中でパイプイスに座る彼の横に、俺もどかっと腰かけた。

「リーダァー?」

あ…、っと思った。

様子が違う?

緊張、イヤ…、集中してる。

邪魔するべきじゃない。

軽口を後悔して、大人しく隣に腰をかけていた。
端正な横顔。多彩な才能。穏やかな人柄。
ファンじゃなくても見とれる。

そういえば『辞める』を口にしなくなった。
人のことはいえないけど、ときどき口にするその言葉に少し物悲しくなったものだった。

だけど辞めさせるつもりは全くなかったけど…。
あんたはこの場所でこそ輝く。きっとそれが分かり始めてきたんだ。
そう信じてる。

「なに。終わったの?」

ハッと気づくと綺麗な顔が俺を横目で見ていた。