act.4 フレンチキス







リーダーを食事に誘った。


デートはまず食事からってわけじゃないけど、気まずい空気を払拭したかった。

どこに行きたいか聞いたら『フランス料理』なんていうから、スタッフやタレント仲間に聞きまくって、フランス料理通の間で有名なお店に予約を入れた。

忙しい時間を縫って頑張る自分を、意外とかわいい奴だったんだな、なんて思って照れた。
予約席はほかのお客からは死角になる、少し個室めいた席だった。

俺はドラマの撮影が終わった後、待ち合わせの時間より早く来て、席について彼を待ってた。

心臓がドクドクいっている。今まで一体俺はリーダーにどうやって接してたんだろう。
第一声はなんて言おうか。フランス料理ってどうやって食べるんだっけ。カッコ悪いところは見せたくない。
ぐるぐる考えてる。

「いらっしゃいませ」

ウェイターの声にびくっと振り向いた。



「や、・・・やあ」


俺が緊張でぎこちなく手を挙げると、彼は盛大に顔をしかめた。

「やあって…、なに?」
「え?なんか俺変?」
「へん」
「どこが」
「なんでフォーマルスーツ…」
「フランス料理っつーから」
「…いきなりこんな高そうな店にさそったり」
「たまにはいいじゃん」
「…襲われそう」
「襲うか!」
(デート初日から!)


「まさか本当にフランス料理おごってくれるとは思わなかったからな。何食うかな」

ウキウキと席につきメニューをめくるリーダーを見ていたら緊張していた自分がバカらしくなってきた。

ジャケットをバサリと椅子にかけ、ネクタイを荒っぽく緩めた。

ふんぞり返った俺をみたリーダーが口の端で笑った。

「なに笑ってんだよ。いっとくけど、コースででるから!メニュー見たところで選べないから」
「そうなんだ」
「すいませーん、始めちゃってください」
「いきなりガラ悪くなった」
「・・・」
「・・・」

「今度から智って呼んでいい?」
「・・・は?」
「つーか、呼ぶから」
「テレビ的に…」
「いいじゃん、2人の時にしか言わないし」
「…2人になる時なんてそんなないでしょ」

これからその時間を作りたい…、そう言おうと思ったけど取り敢えずやめておいた。