act.19 オフ







久々の休日。

智と突然オフが重なった。
前の晩、ひたすら2人布団の中でいちゃいちゃべたべたしてたら、次の日の昼過
ぎ急にゲーム欠乏症に陥ってしまい…。

俺は智そっちのけで目の前のテレビ画面に夢中になってた。

さっきまで釣りの本やルアーを眺めていたハズのヤツは、突然キッチンでウロウ
ロし始めたかと思うと話しかけてきた。

「カズ〜、なに食べたい?」

ピコピコピコ…。
「…何でもいい」

「俺魚でもさばく?」

ピコピコピコ…。
「骨があるならいらない」

「新あんかけチャーハンもうまいかも」

ピコピコピコ…。
「量は少なめでね」

「ほらっ、見ろよ、カズっ。この新鮮なレタス!」

ピコピコピコ…。
「実はそんなに腹減ってない」


……よしっ!うまく倒した!えーと次は…。



もみもみもみもみ……。


いきなり尻を揉みしだかれて、ビクッとテレビから目を離してしまった。

「ちょっ…、なにしてんだよっ!」

ばしっと手をはたき落として、またテレビ画面に目を戻した。


ピコピコピコ…。

あっ、チクショー!
おかしなことになってるじゃんかっ。


…しばらくすると、今度は背中にピタッとくっついてきた。

足が俺の両サイド、両手が俺のお腹を抱えてるってことは、抱き込むような格好
だな。

いきなり力を入れて抱き締められたら…。

「離れろよ。手元が狂う」

「カズ…」


体育座りの俺の腰に硬いものが当たる。


「…っ。1人で発情してんなよ!」

「俺みてよ」

「昨日充分見た。また黒くなってた」

「……」

お腹にあった両手が、さわさわとシャツの中をまさぐった。


…飽くまで邪魔する気か?
…絶対止めないからな。

片手は肩に、もう片方は腰に手を回して抱き締めてくる。

ピコピコピコ…。
よしよし、オッケー。


首にヌルッとした感触がはしった。
智が舌で俺の首を舐め、ちゅうっと吸った…、みたいだ。


「あとつけんなよ」

「うん」


そう上の空で返事してから、またちゅうちゅうレロレロ首や鎖骨を口で愛撫し、
次第に顎まであがってきた。


ちょっ…、頭が邪魔で視界がっ。


文句を言おうとした唇に唇が覆い被さってきた。

「ん〜〜っ!!!」


見えないっ!

必死で智の頭の上からテレビ画面を覗く。

「カズ好き」
「わかったからっ、待てっ…んんっ、って!」


言葉で抵抗するのも駄目だと言わんばかりに、唇で俺の唇を覆って、口の中を舌
で掻き回す。


あ、ヤバい…、気持ちイイ…。

だけどここで流されたら、セーブもしてないのに今までの苦労が水の泡…。




プルルルル。プルルルル。




「…俺だ」

突然の着信音に智が俺から離れて、テーブルの上に置いてあった携帯をとった。

ほっとして、またゲームに意識を戻した。


だけど…、智に三割くらい意識が削がれたためになんとなく集中できなくて、智
の声に耳を傾けていた。


「船?今日は行かない。……うん、…うん、そう、恋人と一緒にいたいから。…
でもまた今度でいい。ははっ、うんそう、恋人選ぶ」


「…………」



幸せそうに話す智の声を聞いて、セーブもしないでゲームの電源を、プツッと切
った。


電話を終えた智が俺に近づきながら消えたテレビ画面に気付いた。


「あれ?止めたの?」

「うん」

んー、と思いきり伸びをした。

「腹減ってさ。智の新あんかけチャーハン食べようと思って」

「そっか」

へにゃへにゃっと嬉しそうに笑う智に苦笑した。

「…やっぱこういう時間は一人で楽しんでちゃいけないよな」

「ゲームのこと?…あれはあれで楽しかった…」

「……」

「…うそ」

…嘘じゃねーだろ。


「とにかくまずは腹ごしらえっ。手伝うよ。新あんかけチャーハン」

「和、食わなすぎなんだよ。もうちょっと太って」

「そう?…だってあんま腹減らねーんだもん」

「ファンが心配するよ」



何気ない会話を楽しみながら、明るい日差しに照らされた部屋の中を眺める。


最近ずいぶん智の私物が増えてきて少しこそばゆい。
今度お揃いのカップでも買おうか。
そうすれば、2人でいるのがきっともっと楽しくなるような気がする。


楽しそうにレタスを洗う智に心が暖かくなるのを感じながら、俺は今日も幸せを
かみしめていた。