act.12 流星に願いを(前)


※N視点
※性的表現が含まれます。結構露骨な表現するので、苦手な方はスルーでお願いします。
※オリジナルキャラ出現(笑)Oさんと某ドラマで共演した子供ってことで




「ニノ…、妊娠しねぇかな」




「………は…?」




俺のマンション。

仕事から帰ると合い鍵で入り込んでたおーちゃんがリビングのソファでくつろいでた。

俺は「ただいまー」とそのままシャワーを浴びて、のどが渇いたから冷蔵庫のスポーツドリンクを飲んでいたんだけど…。。

そこへ来ていきなりの妙な発言。
思わず飲み物を吹き出しそうになって!


なんかクッション抱いてボッヘーとしてるなとは思ってたんだよ。

たっぷり間をおいてから聞いてやった。

「………どういうこと?」

ぼーっとしたまま答える。

「俺、ニノと俺の子供がほしーんだよ」

「智くん、生物って勉強しなかった?」

「…あんましてない」

にへらっと崩した顔を俺に向けた。

うっ…、可愛いけど…。

「じゃあ教えてあげよう。股にナニがついてるオスは、子供は生めないんだ。だから妊娠することもない」

「…そんなこと知ってるよ」

口をとがらせた智が、まだ上半身裸のままの俺のところにソファを飛び越えて来ると、虫みたいに背中に引っ付いてきた。


「ニノこそしんねーんだよ。マリア様は処女なのにキリストを生んだんだぞ」


智は俺の首もとにほおずりしながら、お腹や胸のあたりをスリスリと触った。

「愛があれば神様がゼッテー子供くれるよ。俺のがんばりがまだまだたりないのかもしんねーし。毎回子供できろ子供できろって念じてんだ。…まだつわりとかないよね?」



ボカッッ!


頭に一発いれてやった。
イッテー、と殴られた頭を両手で抱えた。


「あんたが勝手に妊娠すればいいだろっ!」


いきなり何を言い出すのかと思ったら人を女扱いしやがって!


……最近…確かに…、智があんまりうまいもんだから、ベッドの中ではずっと女役してたんだ。

今思えば…、ゴム使わないし、回数多くていい加減疲れたこともあった。

まさかそんな意図があったなんて気付かずに!



「今日もう寝よっと」

パジャマを着こんで寝室のベッドの中にもぐりこんだ。
知らん顔して背中を向けてると、ズボンを脱いでTシャツとパンツ姿になった智が後ろに潜り込んできた。

「ひでーよ、ニノ。俺母ちゃんとの約束すっぽかして会いに来たのに」


クスンと呟いて後ろから俺の背中に抱きついた。
フンと無視して寝たふりしてたら、人を抱き枕にして俺より早く寝息をたて始じめた。

すやすや眠る寝顔を見ていたら小突きたくなった。


ったく、なんなんだ!?
時々突拍子もないこと言い出す人だけど、それにしてもありえない発想だ!
しかも思い起こせば結構前から考えていた節がある。

ハマるとしつこいところあるからなー。

でも俺はいくらなんでも、一緒に子作りしようねなんて言うほどバカにはなれないぞ!

ムカムカする気持ちを抑えきれずに、パシッと顔をはたいてやった。


「…う゛、うーん…、むにゃむにゃ…」


ヘッ、ザマーミロ。

俺は取りあえず、その話題にはあえてふれないことにして眠りについた。






ピピピッ、ピピピッ。



パチ。



目覚まし時計をとめて半覚醒の頭を振った。


今日は確か…、ドラマの撮影…だな。

手で隣を確認すると空振る。


…智…、いない…、帰った……?


ぼんやり見上げるとベッドサイドに智が立っていた。

「行ってくる」

上から下まで釣りスタイルに完璧に固めた奴が俺を見下ろしている。

クローゼットにいつの間にか一式揃えて置いてあったアレ、着たんだ。

「行ってくる!」

俺はがっくりと布団の中でうなだれた。
…ったく、このひとは、もー…。

「行ってくる…」

俺はうなだれたまま、智に人差し指をチョイチョイと振った。

誘いのまま、顔を近づけた智の唇にキスした。


「いってらっしゃい。元気に帰ってきてね」


智はさっきまでの寂しそうな顔を一転パァァァと輝かせた後、両手で俺の顔を引き寄せて、唇を思う存分むさぼった。


満足すると、ウキウキしながら釣りに出かけていった。


…っかっわいいなぁっ…。
俺の怒りなんて保って二時間だな。

智を見送った後、今日も一日頑張るためベットの中から飛び起きた。






「ニノじゃん」

飛び起きてから二時間後−。


俺は撮影現場でおもいっきり顔をしかめていた。

「思ったよりかっこよくねー」

彼女をアイドルにとられた一般人の男とか、嫉妬にまみれた三流俳優とかなら空気みたいに無視してやるところだけど…、無視できずにマジマジと見つめてしまった。


なぜならそこにいたのは…、世間では素直の代名詞とされる、子供、だったからだ。

子供は仕事で何度か相手をしているが、実はあんまり得意じゃない。

しかもコイツは俺の嫌いなタイプだ。身の程知らずで図々しい。

5才…くらい?生意気そうな目してら。まあ…、顔はいいか。将来ジュニアになれそうな感じだ。
周りを見渡すと、親らしき人はスタッフと話してる。エキストラできてんだな。

「ママのとこ行きなさい」

なるべく相手にしないのが一番だ、うん。

「大ちゃんはこいつのどこがいいんだ」


…ん?

「…おい、大ちゃんて誰のことだよ」

「ニノのくせして大ちゃんの親友のオレを知らねーのかよ!」

「知らない」

「俺は、大野智の一番、タクヤだ!!」


……。

智の知り合いか。
最近まで子供と共演してたしな。それにしても一番なんて聞き捨てならない。

「…一番って、お前どれくらい仲いいの」

フンと腰に手を当て、優越感を漂わせた。

「この間海に連れてってくれた」

「釣りじゃないの」

「…釣りは…、俺がいるからって、連れてってくれなかった」

ははっ。
子供連れじゃ集中できないもんな。

「ニノだって行ったことねーだろっ」

「俺基本海は嫌いなんだよっ」

なんだかだんだんムカムカしてきた。

何であいつこんな奴と海なんか行ってんだ。

人のこと初対面で呼び捨てにするわ、かっこよくないとか言うわ、挙げ句の果てに俺は大ちゃんの一番だと?(実はそれが一番イヤ)

「俺の方が大ちゃんと仲がいい!」

まだいうか…。

「ちょっと!この子のお母さんは?」

「ニノは二番なんだよっ」
「あいつは俺んだ!!」


しーん…。


…しまった。
思わずムキになって声を荒げてしまった。
辺りの注目を集めてしまってる。

子供相手に本気で喧嘩してたなんて、噂にでもなったらいいイメージダウンだ。


「う……、うう…、うわぁ〜んぁん!!」


大声で泣き出す目の前の生物をぼーぜんと眺めた。



あぁ…、最悪だ。



「お母さん!タクヤくんのこと見ててくれなきゃ。連れて行って!」

スタッフが慌ててかけつけてきた。


ありがたい!早く連れて行ってくれ!

「あらあらどうしたの?珍しいわね」


母親に連れられてその場を離れるヤツ、…タクヤを見送る、と、その去り際、ん?と思った。


…一瞬こっちを見て、ニヤリと笑ったような気がしたから。


まさか…ね。

「すいません。普段はわりと大人で、あんまり困らせる子じゃないんですけど…。演技もうまいし」

謝罪するスタッフに、いいよいいよと手を挙げた。

この先あいつとあまり関わることなく無事撮影が終わりますように…。



心配をよそに、その後撮影は順調に進んでいた。



タクヤはエキストラではなく、一話分このドラマの中でチョイ役として出演していて、まだ絡みはないけど、見ていて才能ある子役だとわかった。

そして疑惑が確信へと変わっていく。



さっきの大泣き…、あれ演技だな。

どうせ智のことだから、子供相手にニノが一番好きだとかなんだとか言ったんだろう。

それにしてもプライベートな時間使ってまで子供と遊ぶなんてホント珍しいな。


老若男女にモテるからな〜。



「タクヤだ」




……え!?



突然の声に、ビクッと後ろを振り向いた。

「今度はニノと共演してんだ」

智が一瞬スタッフと間違えてしまうようなラフないでたちで立っていて。

驚いた…。なんだよ、今朝あれだけうきうきしてたくせに。

「なにしてんの。…釣りは?」
「海が思ったよりシケてて船がだせなかったの」

不満そうに呟く。
そういえばさっきからスタジオ内がかすかにざわめいていたような気が…。

キャップかぶって全身黒っぽくまとめてるけど…、まあ、目立つよな。

「…注目されてるよ」
「うん。何もすることがないならそばにいたいからな」

欠伸を噛み殺す調子でのほほんと返す言葉に、ドキッとした。
男っぽいのに可愛く微笑むその顔になんだか改めてときめいていて、どれだけ好きなんだと心の中で苦笑してた。


あーぁ…、昨日ひねくれずに智と寝ておけば良かった。こんなとこじゃキスも出来ない。


俺は自分の席の隣にパイプイスを一つ用意した。

「まぁ座ってよ」
「うん」
「よくここわかったね」
「マネージャーに聞いた。…場所調べるよりスタジオに通してもらうほうが苦労した」
「そうなの?」
「コンビニで雑誌買って警備員に見せた」
「うはは」
「信じねーんだもん」


共演者やスタッフそっちのけで2人でクスクスと盛り上がっていた時。


「大ちゃん!!」


タクヤが智を見つけた。ぶつかる勢いで智にすり寄ってきた。

「タクヤ久しぶり」
「俺見に来たの?!」
「いや、ニノに会いに来た」
「ー…」

笑顔で答える智に、見物だとタクヤを見た。

予想外にタクヤは笑顔を返しただけだった。

「ニノ、こいつ泣かねーし、しつこくないし、オレ好きなんだ」


ニコニコ笑う智を横目で見た。
ふ〜ん、…泣かない…、ねぇ。


「大野さん、どうもっ。お久しぶりです」
「あ、どうも」

どこかから現れたタレントのマネージャーかなにかが智に話しかけ、二人で愛想し始めて…。

自動的にとクソガキと二人きりになってしまったけど、俺は無視を決め込んでパイプイスに座り直した。

視界の端で、タクヤが靴ひもを直すためにかがんだ…、みたいだった。

そして再び立ち上がる瞬間、足に激痛が走った!。


ガンッ!!



「いいっっ、いってぇ〜〜〜…!」

足を抱えながら、走り去るクソガキを目で追いかけた。

あいつ!絶対今わざと蹴ったな!絶対わざとだよな!


一人だけ俺の様子に気付いた智が、おろっと近づいてきた。

「どうしたのっ?どっか痛いの?」

「いや…、何でもない」

笑顔でタクヤを好きだという智の顔を曇らせたくない。

痛みをこらえて出来るだけ平然を装った。

「もうすぐオレ出番だし、リーダー帰んなよ」

「…見てたいんだけど…」

「一旦家帰って約束すっぽかした穴埋めして、また今日の夜来てよ」

ひどく心配げな顔をしてみる智に、恋しさをこめて微笑んだ。

気づけよ。
…キスしたいんだ。触りたいんだ。いちゃいちゃしたいんだ。

意味を理解した智が少し照れたみたいだった。…けどまだ腑に落ちない表情。

「…なーんか引っかかんだよな」

「なにが?」

「さっきすごい痛そうだったけど…」

「ちょっとつっただけだって」

「さっきタクヤ…」

「いーからいーから!帰んなって!じゃあな!」

半ば強引に出口まで送った。

あんたの好きなタクヤはきっとまだ俺になんかやってくる。
そんな予感がする。
そんなの見たらきっとショックだろうから…。

しぶしぶでていく智を確かめてから、さて、と振り返った。


次はあいつとのシーンだ。

予感が当たらないことを願いつつ、カメラの前に足を踏み出した。