act.6 step up







「休みがない」


トランプをきりながらニノが突然言い出した。

番組収録前、いつもの控室。

俺も含めたニノ以外のメンバー4人は彼のほうを振り向いた。


「なに、突然」

気配りの松潤が様子を伺った。

「ありがたいことじゃん」

「でも休みがほしい。恋人との時間がなんもない」


内心、げっ、と思った。

ニノ、ずっと考えてんのか…。





1週間くらい前、俺とニノは恋人同士になった。
ニノのことは昔から好きだったし憧れていた。

でも特にそうなりたいと思ってたわけではないんだ。
異性を想うように彼を想っているとは自分でも気付かなかったから…。

自覚したキッカケは、コンサート中のニノのキスだった。

最初は冗談だと思って何も感じなかったんだけど、時間がたつにつれて何度も繰り返し思い出すようになってきた。

思い出す度胸がせつなくて、たまらなくなって、もう一度ニノとキスしたくなってた。


俺がニノを好きで目で追うのはいつものこと。
でもそれにキスしたいが+され、俺からキスしてもニノは俺を嫌いにならないかだけが気になってた。

恐る恐る…、様子を伺いながら。

1度目は重ねただけ。
2度目は深く。

俺からキスした。


笑う顔とか、少しひねくれた話し方とか、そのくせ本当は誠実で、格好良くて、頭がいいとことか…、好きだ。


俺の大好きな人。


俺からキスすると、彼は1度目も2度目も戸惑っていた。

引かれたかと思って青ざめた1回目だろ、…あと、ビシッとキメたフォーマルスーツを崩した姿とか、俺の絵を見て真剣に語っている姿にノックアウトされて…。

強行した2回目のキス。



最初は唇を重ねるだけで様子を見た。
ニノはポカンとしていた。
唇の端っこにシャーベットがついてたからペロンと舐めてやった。


でも次の瞬間変わった。
目と目が合って見つめられた後、彼の唇が俺の唇に覆い被さってきた。


ああ、そうかって思った。

これがニノの本気のキス。


炎みたいに情熱的で攻撃的。
舌と舌をねろっとあわせたり、ちゅうっと吸い込んだり、角度を何度も変え、俺が舌を引っ込めようとすると追ってきてあっという間に絡め取られる。

気持よかったけどいい加減酸欠が心配になってきたとき、ニノが俺を離した。


店員が横を歩いて行くのを見て、あれっ、ここってそういえば店の中だっけ?なんて思ってたんだったな、うん。

仕方なく俺を離したニノは、顔は赤いし息はあがってるし、唇は濡れて色が鮮やかだった。

つまり興奮しているニノは色っぽくて…。




「ねえ?リーダー」


ハッと白昼夢から目が覚めた。

「え、なに」

相葉ちゃんが俺を見ていた。

「だからさ〜、誰かとラブラブなのはいいけど、写真撮られないように気を付けなって話!」

「まあ、そう、かな」

「なに、そんでデートのためにでも休みがほしいの」

翔くんが少し驚いた表情でニノを伺う。

「そういうこと」

「でも俺たちに決定権ないからな〜。社長に直談判しなよ」

半分冗談の翔くんの言葉にみんなが少し笑った。

「むしろ仕事増やされんじゃない?」

相葉ちゃんが屈託なく笑いながら言う。

「だからお願いがある」



ニノがテーブルに広げたトランプの1枚を取って手で遊んでいた。

「俺と相葉君が行くロケが二日あんじゃん。だれかその日代わってくんない?」

「マネージャーに聞いてみないとわかんないけど…、たぶん俺は無理だな。けっこうスケジュールびっしり。リーダーは?」

松潤は眉間にシワを寄せて俺に聞いてきた。

…ああ、俺はその辺はたぶん休みだな。

「俺は、」

「ダメダメ。リーダーのスケジュールは聞いてあるんだ」

ニノがスペード5のカードを口に当て、答えを遮った。
あ、そっか。俺との休日をとるための交渉だっけ。ごめんごめん。

「…じゃあ俺しかいないのか。たぶん空いてはいないと思うけど…。なんとかしてみよっか?」

「マジで!?」

「まあその代わりになる日を俺も相談したいんだけど」

「するする!翔くん恩にきる!後でお礼もする!!」

「ニノはこんなこと滅多に言わないし」

「ありがとう!決まりだな!」


ニノは手元のカードを俺に投げた。

パシッと受け取って何気なくカードを見たら、ハートのAに変わってた。


スゲーな、ニノ…。


スタジオへ向かうまでの道、3人にだいぶ遅れて俺たちは一緒に歩いた。

「…俺は温泉かなー」

「海」

「やだ。釣りなんかして1日終わってたら翔くんに無理言った意味ねーよ」

「なんかってなんだよ」

「あくまでデート、今回はデートなの」

ニノはちらっと後ろを見た。

なんだ?と思って後ろを振り向くと誰もいない。
また前を向こうとしたとき、ニノが指を俺の手にちょんと引っ掛けて、俺の口にチュッとキスした。

つないだ手はすぐに離したけど、心は寄り添っていた。


……そうだよな。俺も同じ気持ちだよ。
人の目があったり、別々に仕事してたり、なかなか思うようにならなくてもどかしい。

好きだっていう気持ちが抑えきれなくなっても、抱きしめることもキスすることもできない。



俺もいつも、恋しい。
ニノ。


………・でも、男同士で、俺ってばうまく最後まで出来るのか?



まあニノは器用だから任せとけば大丈夫か。



俺はとりあえず、数日後の温泉旅行に胸躍らせた。