ここでは仮説に基づき、形而上=架空の艦船に関する独自の研究・考察を行っています。
仮想戦記(火葬戦記?)に登場する架空艦船などについても言及していきたいと思います。



<みらい>の謎T 2000.05.18

 DDH-182<みらい>。週刊モーニングに連載されている「ジパング」に登場する海上自衛隊の最新鋭イージス護衛艦の名称である。
 「ジパング」自体の内容は周知の通り、南米で発生した騒乱で邦人救出に派遣された護衛艦隊の1隻である「みらい」が、途中嵐に 巻き込まれ気づくと1942年の世界にタイムスリップしたという話。
 拙者も毎週購読しているが、仮想戦記でよくあるタイムスリップ(最近は少なくなったネタだが)を題材とした 作品では緊迫感のある作品だ。火葬戦記のようにいきなり日本軍に協力して米艦隊を叩きのめすわけでもなく、専守防衛を貫こうと する自衛官たちが意に反して歴史が動いて行くことに苦悩する。人間描写の焦点に比重が多く掛けられていて、戦記マニアを狙った 作品ではなく大人の読者向けの作品でしょう。
 まあ、一般読者を狙ったそのためか、各方面で<みらい>について指摘する声がある。
 一般読者は誤魔化せても、知識のある者(マニア)たちの目は誤魔化せなかったということでしょう。(笑)

 今回はそんな<みらい>について、出来るだけ好意的に解釈したいと考えております。

外観

 <みらい>の外見上の特徴である巨大な艦橋構造物や特徴的なラティスマストなど、<こんごう>級イージス護衛艦を叩き台にしていることが 一目で分かるが、より正確には次期中期防衛計画で建造が予定されている7,700t型DDGに酷似している。
 <こんごう>級の原型となった<アーレイ・バーク>級イージス駆逐艦が、フライトUA型呼ばれるヘリ塔載型に移行した時点で、 おそらく次に造られる海自DDGも<こんごう>級のヘリ塔載型になるのだろうなと、だいたいあたりはつけられていた。 海自から発表されたイメージ図を見たときは「まさに」という感じであった。

 ただし、<みらい>と次期新型DDGが同じであるとは限らない。
 <みらい>は「DDH」なのである。つまり「Helicopter Destroyer」 ... ヘリ塔載型護衛艦の略称である。
 確かに<みらい>はヘリを塔載してはいるが・・・。
 次期中期防衛計画には新型DDHも合わせて建造される予定だが、そちらは艦橋前後が飛行甲板となった従来型の 護衛艦とは一線を画した13,500tの艦艇が予定されている。
 どこからどう見ても<みらい>は改<こんごう>型DDGである。

 多分、かわぐちかいじ氏のイージーミスだろう(爆)。とりあえず、今のところ他に理由が見当たらないし。
 しかし、今さら「DDG」に表記を変えるわけにもいくまい。総計600万部発行した単行本や、読者プレゼントのキャップに入った 「DDH」を消す事は出来ない。こういった点が、かわぐち氏の初期段階でのリサーチ不足を指摘する声の 要因となっている。
 ただ、「初歩的なミス」ではつまらないので、何か理由があるのではないかという考察を後で記す。

主要項目・兵装

 「ジパング」2巻の末巻に掲載されていた<みらい>の主要項目と、7,700t型DDGの要目とを並列する。


項目\艦名
DDH-182 <みらい> (2503号艦)
7,700t型DDG (2317号艦)
基準排水量 7,735t 7,700t
満載排水量 9,998t
全長・最大幅 171×21m
主機械 COGAG LM2500ER ガスタービン4基 COGAG ガスタービン4基
速力 30kt以上 30kt以上
主要兵装 OTOメララ 127mm54口径単装速射砲1基
VLS 前部29セル 後部48セル
SM-2ER SAM スタンダード・ミサイル
RUM-139 VL-ASROCアスロック
BGM-109B トマホーク(対艦ミサイルHE弾頭)
BGM-109C トマホーク(地上攻撃用HE弾頭)
RIM-7F 短SAM シースパロー
68式三連装短魚雷発射管2基
RGM-84 ハープーンSSM4連装発射筒2基
CIWS(20mm多銃身機関砲)2基
OTOメララ 127mm54口径単装速射砲1基
Mk41VLS 前部29セル 後部61セル
SM-2MR SAM スタンダード・ミサイル
RUM-139 VL-ASROC アスロック
90式対艦誘導弾4連装発射筒2基
68式三連装短魚雷発射管2基
CIWS(20mm多銃身機関砲)2基
艦載機 多目的哨戒偏向翼機<うみどり>MVSA-32J1機
哨戒ヘリ SUH-60EJ 1機
哨戒ヘリ SH-60K 2機
乗員 241名 内航空要員25名
同型艦 DDH-180 ゆきなみ
DDH-181 あすか
DDH-183 第2504号艦
2隻建造予定

※7,700t型DDGは可能な限り収集した現時点での資料に基づく。

 項目を見比べると、排水量など個艦性能に類似点は多い事が、武装には相違点が多い。。
 VLSの数の違いもあるが、そこに塔載されたミサイルが違いすぎる。
 イージス艦の本分とでも言うべきスタンダードミサイル。<こんごう>級や7,700t型が装備を 予定しているのはSM-2MRブロックUと呼ばれる中距離用である。対して、<みらい>が装備してい るERは、ブースターを装着して射程を延ばした長距離用である。当然がこちらの方が高価だろう。

 他にもある。これが両艦の決定的な違いだろう。<みらい>はBGM-109 トマホークを装備しているのである。
 おどろくことなかれ、列記とした巡航ミサイルである。もうこれは劇中で専守防衛だ何だ言う前に、大問題である。 対艦型ならまだ説明もできるが(厳しいけど)、BGM-109C(対地型)はどうやって調達したのだろう。S民党やK産党の猛反発や、 中国・韓国が侵略がどうのこうのと文句をつけられるに違いない。
 専門家によっては、巡航ミサイルは有効な防衛兵器になりうるという意見もある。事前に敵のミサイル や飛行場を破壊し「予防」となるからだ。正しい意見かもしれんが、周りから過剰防衛だと言われれば それまでである。いきなり巡航ミサイル塔載と書かれても、そこに至る過程が理解できない。これは無茶である。
 正面兵器を優先調達する自衛隊であっても、一発ン億円する巡航ミサイルをそう易々と平時から 揃えているとも考え難い。90式戦車ですら遅々として整備が進まないのに。

 SSMについてもRGM-84ハープーンを未だに装備し続けている。新鋭の護衛艦<むらさめ>型から国産品 の90式対艦誘導弾の標準装備が始まっているにも関わらず、<むらさめ>よりも後に建造されたと思われる <みらい>はRGM-84ハープーンを使用しつづけているのは何故だろうか。
 それにこのハープーンにも問題がある。劇中ではガダルカナル島に上陸した米軍に対して、警告として 食料集積所に撃ち込まれた。「サジタリウスの矢」と呼ばれていたが何故、対地攻撃にハープーンを使用 したのだろうか? それに、終末誘導が角松2佐ら上陸部隊によるレーザー誘導・・・。
 私見ではあるが、このハープーンは我々が知っているものとは違うのかもしれない。

 シースパローを装備しているのも気になる(このあたりがDDHなのか?)。
 ちなみに、7,700t型の127mm54口径単装速射砲は、OTOメララ社製ではなく本家アメリカが使用している Mk-45 127mm54口径単装速射砲になるという話もある。さらにいえば、DDG-81 <ウィンストン・チャーチル>が 試験している62口径の新型砲が採用される可能性だってある。

考察

 武装からも見てと取れるように、<みらい>と7,700型は似ているようで全く違う艦である。
 かわぐちかいじ氏の研究不足なのだろうか? とも取れる内容の数々、説明のしにくい設定など。

 ここで私はある一つの仮説をたてた。

 「ジパング」の世界と我々の世界は「並行世界」なのではないかと。

 並行世界 ――― つまり、同じ時間軸上には存在しない別の世界である(「可能性」とも言い換えられる)。
 よくに似ているが(あるいは途中まで一緒)違う世界であるならば、その疑問のほとんどは解消される。
 では何故「ジパング」が別の世界の話であると結論づけられるのか。

 「ジパング研究序説」という本の中に、<みらい>がやってきた年代を推察する証拠として、桃井1尉の 居る医務室に張られたカレンダーの日付(曜日の並びと比較して)から推察して「2004年」であると 結論づけられている。わずか2年後の話である。この時点で、我々とは違う時間軸を歩んでいることが 推測できる。
 では<みらい>が完成したのはいつであろうか?
 それを知る手がかりとして、津田大尉が初めて<みらい>に乗艦した際、艦内の消化設備に書かれた 「平成13年検査」という文字を見てショックを受ける描写がある。平成13年検査ということは、この消化器具は平成13年には 存在していた(使用)されていたということだ。備品点検に厳しい自衛隊にあって、艦内の消化設備が出荷の際の点検だけで、 取付後には点検されていないとは考え難い。ここは「平成13年検査」という字が取付後に検査されたものと解釈する。
 ということは、<みらい>は平成13年(2001年)以前に建造されたものであると推測ができる。
 さらに、<みらい>は<ゆきなみ>型護衛艦の3番艦であり、先に2隻が完成しているわけである。
 <こんごう>級は1993年に1番艦<こんごう>が就役以来、毎年1隻づつ、計4隻が完成している。一度に複数が完成しないのは、 やはり予算の関係である。<こんごう>級は1隻約1,200億円、新型DDGも1隻約1,500億円の予算が計上されている。
 <ゆきなみ>級DDHもその装備からいって1隻1,500億円程度はすると思われ、年1隻のペースで予算が組まれていたと推測 する。<みらい>が就役したのが2001年だとすると2番艦<あすか>は2000年、1番艦<ゆきなみ>は1999年に 就役したと考えるのが順当である。計画年次に至っては90年代前半、ひょっとしたら80年代末期かもしれない。
 この時点で「ジパング」世界は、我々の知る世界とは大きくかけはなれている。我々の世界では、少なくとも<ゆきなみ>級護衛艦の ような艦は計画されていても就役はまだされていない。

 以上が、私見ながら「並行世界」説を唱える根拠である。  ジパング世界は我々の世界によく似ている。敗戦を経験し、驚異的な経済成長を遂げつつもジレンマ を抱えている。我々の80年代中頃までと同じ歴史を辿ってきたのが「ジパング」世界なのだ。

 では「並行世界」である「ジパング」世界がどういうものであるか推察し、<みらい>の疑問点を好意的に解釈してみる。

 

<みらい>の謎Uに続く

架空艦の定義とは 2001.11.06

一般的に言われる「架空艦」というものの定義を仮に決めるとすれば、
「実際に建造されていない艦船」
が第一に挙げられる項目であろう。
 ただ、実際に建造されてはいないが「計画が存在した」ものは中に含まれない。
 この場合は架空艦ではなく「未成艦」というのが正しいと思われる。
 例えば、日本で言うならば改<大鳳>級空母や改<阿賀野>級軽巡、アメリカの<モンタナ>級戦艦、 イギリスのI級戦艦、ドイツのH44級戦艦などがそれにあたる。

 未成艦を細分するならば、起工されたもの起工されなかったもの、建造中に改装されて本来の 姿にならなかったものに分類できる。
 軍縮条約によって廃棄された八八艦隊やダニエルズプランの戦艦群、起工されはしたが戦局の変化に伴い中止された <大和>級4番艦、終戦までに完成しなかった独空母<グラーフツッペリン>などが起工された未成艦である。
 建造途中で改装され完成しなかった未成艦としては、戦艦<信濃>や重巡<伊吹>があげられる。見方によっては、 <インディペンデンス>級軽空母に改装された<クリーブランド>級軽巡の一部も未成艦ということにもなるのだ。

結論

 「架空艦」とは、製作者の意図により、その想定戦況の都合に基づいて内容が決められたオリジナルの艦船のことを指すべきであろう。