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広島総合病院眼科 二井 宏紀 部長 (2005. 5. 9 作製) |
*手術前に精読しておくようにといって受け取ったものを写しました。
眼の底には視神経(外の景色を脳へ伝える神経)があります。眼の
中を循環し栄養する水(房水)の眼の外への排出が障害され、眼圧
が高くなることで視神経が圧迫され死んでゆく病気が緑内障です。
視神経が死ぬと、死んだ部分は見えない(視野が狭い)という状態
になり、進行すると失明にまで至ります。多くの場合、中年以降に
発症し、進行性で、40歳以上の人には約6%の頻度で認められます。
視神経に負担のかからない眼圧(健常眼圧)に下げれば進行は抑え
られるとされますので、健常眼圧にもっていくのが治療の目標です。
個人個人の視力・視野・年齢・生活の様式により手術の時期は一概に
言えませんが、基本的に、点眼やレーザー治療で眼圧コントロールが
不可能で、視野障害が進行するようなら手術を考えます。緑内障は、
早期発見・早期治療が必要な病気ですが、概して進行は緩やかで
適切な治療を受けていれば失明することはまずありません。しかし
白内障と異なり、進行すれば失った視野・視力は取り戻せないので、
手遅れとならないうちに眼圧・視野の経過を十分検討した上で手術
を行います。しかし、手術を行うことでかえって視力が低下したり視野
が狭くなる等の合併症も少なくないため、手術は最終手段です。
合併症が起き得る事に納得が得られなければ手術は行いません。
緑内障手術は、眼圧を下げる手術で、線維柱帯切開手術(眼球(強膜)
に穴を開けて房水が眼外に流れ出るようにするー穴が塞がらないように
穴の周囲に抗がん剤を術中使用:全身への影響はありません)、線維
柱帯切開術(隅角を切り開いて自然な房水の流出を取り戻すー抗癌
剤は使用しない)、隅角癒着解離術(隅角に癒着した虹彩を剥がし
自然な房水の流れを取り戻すー抗がん剤は使用しない)など多くの
術式があり、それぞれ長所・短所が異なり、これが決めてといえる手術
は現在のところありません。このため、眼圧降下効果と合併症を勘案
し個々の症例で使い分けています。おおざっぱに言うと、眼圧が良く下
る手術は、手術による視力低下や感染症などの合併症をおこしやすく、
逆に安全な手術は眼圧の下がりが少ないです。
手術時間は、局所麻酔で60分程度です。また、緑内障手術が必要
な人は白内障を合併していることが多く、緑内障術後に白内障の悪化
が多いことから白内障・緑内障同時手術も積極的に行っています。
緑内障単独手術では視神経が弱っており、残念ながら狭くなった視野
が拡がることはありませんし視力が改善することもありません。手術
が問題なく終わってもしばらくは術前より視力が低下することが多く
手術前の状態に戻るのは術後3カ月以降です。たとえ白内障手術
を同時に行っても視力があまり改善しない場合もあります。
術後に眼圧は上がったり下ったり変動しながら低下することがあり、
一回一回の眼圧に一喜一憂しないようにしましょう。
また手術の方法によって違いますが、おおざっぱに言って、術後
5年経つと2〜3割の確立で再手術が必要です。もちろん1回の
手術で10年以上良好な経過の方もたくさんおられます。
恐いのは感染症と出血で、最悪の場合失明してしまいます。抗
癌剤を使用した場合、術後も生涯にわたり毎年1%弱の確立で
眼に細菌感染をおこします。手術自体が眼に穴を開けたり切り
開く手術ですので出血は必発です。失明するほどの大出血を
起こす率は0、2%程度です。また、1%弱の確立で、中心部分
の視神経が死んでしまい視力が高度に低下すること(低眼圧
黄班症や中心視野消失)があります。
また緑内障術後に白内障の悪化は大なり小なり発生します。
緑内障手術は、他の眼科手術(白内障や網膜剥離など)と
異なり術後の管理が非常に重要で、再手術が必要な事も少
なからずあり、生涯にわたる治療が必要です。このことをよく
理解してください。
術後の眼圧調整のため2週間程度の入院が必要です。術後
眼圧が不安定でしたら更に入院が延びる事もあります。
手術日を含め、安静は殆ど要りませんので付き添いは不要
です。
以上