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注)原告、旭堂小南陵は、平成18年8月18日付けで、四代目旭堂南陵と改名

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. 平成15年(ワ)第3234号 地位確認等請求事件
口頭弁論終結日 平成17年6月16日

判決
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原         告 旭堂小南陵 ****
同訴訟代理人弁護士 中北 龍太郎
村本 純子
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被         告 旭堂南左衛門 ****
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被         告 旭堂南鱗 ****
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被         告 旭堂南北 ****
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被         告 旭堂南華 ****
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被         告 旭堂南海 ****
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被         告 旭堂南湖 ***
被告ら訴訟代理人弁護士 大川 哲次
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主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
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事実及び理由
第1 請求
. . 被告らは、原告に対し、各自50万円及びこれに対する訴状送達日(旭堂南
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.. 左衛門こと****及び旭堂南華こと****については平成15年4月16日、その余の被告については同月15日)の翌日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
..  本件は、上方講談協会に所属していた原告が、同会会員である被告らに対し、被告らが、上方講談協会の関係者らに対し、平成15年3月5日付で、連名で、原告に会員としてふさわしくない行為があったので原告を同会から除名した旨が記載されている書面を送付したことが、名誉毀損に当たると主張して、被告らに対し、不法行為に基づき、各自慰謝料50万円及びこれに対する訴状送達日の翌日から支払い済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求めた事案である。

1 争いのない事実等(当事者間に争いがないか、証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。)
(1)当事者
.  原告は、講談師である三代目旭堂南陵に師事した講談師であり、昭和53年、旭堂小南陵を襲名して真打に昇進し、大阪文化祭奨励賞、大阪府民劇場奨励賞及び芸術祭優秀賞等の各賞を受賞し、平成元年7月から1期、参議院議員を務めた者である。

 被告旭堂南左衛門こと****(以下「被告南左衛門」という。)、被告旭堂南鱗こと****(以下「被告南鱗」という。)、被告旭堂南北こと****(以下「被告南北」という。)、被告旭堂南華こと****(以下「被告南華」という。)、被告旭堂南海こと****(以下「被告南海」という。)及び被告旭堂南湖こと***(以下「被告南湖」という。)は、いずれも旭堂南陵門下の講談師であり、別紙1記載のとおり、原告の弟弟子にあたる者である。

(2)上方講談協会による除名処分及び同処分の公表
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.  原告や被告らは、旭堂南陵を会長として、他の南陵一門とともに上方講談協会という団体を構成していたところ、被告らは、平成15年3月5日付で原告は同会から除名されたとして(以下「本件除名処分」という。)、原告に対し、同会会長旭堂南陵及び被告らの連名で、その旨が記載された同日付書面(甲7(枝番がある場合は、特に表記をしない限り枝番を含む。以下同じ。))を送付した。

 また、被告らは、同会関係者に対し、同会会長旭堂南陵及び被告らの連名で、原告に会員としてふさわしくない行為があったので原告を同日付で同会規約に基づき除名処分とした旨が記載された書面(甲8)(以下「本件除名通知」という。)を送付した。

2 争点
(1)本件訴えが司法審査の対象となるか。
. (原告の主張)
ア 原告は、旭堂小南陵を襲名して以来、幅広く活動を続け、その信用を築き上げてきた。芸能活動を社会生活の基盤としている原告にとって、その信用の維持はもっとも重要な事柄である。

 しかるところ、被告らは、原告を除名し、本件除名通知を広く上方講談協会関係者に送付した。このことによって、原告の芸能活動における信用が毀損され、原告の経済活動や社会生活の基盤を覆すような重大な権利侵害が行われた。

 したがって、本件訴えは、単に上方講談協会内部の問題にとどまるものではなく、一般市民法秩序と密接な関係を有する問題であり、司法審査の対象となる。


イ 被告らは、上方講談協会は純然たる親睦団体であり、原告が除名処分になっても、殊更に各種利益や便宜を受ける権利を喪失したり、芸能人としての営業を不可能又は困難ならしめられたものでないから、本件除名処分
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.
. の有効無効の判断に司法審査は及ばないとする。そして、これを前提とする本件訴えも司法審査の対象とならないなどと主張する。

 しかし、同会は、「上方講談を聞く会」といった講談会を開くなどしており、単に純然たる親睦団体であったとはいえない。そして、同会を除名されたことにより、芸団協関西協議会(以下「芸団協関西」という。)が開催する「芸能サロン」に上方講談協会会員として参加できなくなったし、芸団協関西の所有する稽古場を上方講談協会会員として使用することもできなくなった。また、同会は、大阪府から助成金を受け、芸能活動の費用に利用しており、社会的にも認知されている。

 また、同会は、対外的には旭堂南陵一門の会であり、南陵一門の芸能活動は同会を通じて行われてきたものであるところ、原告は、本件除名処分により、同会を通じて芸能活動を行うことができなくなった。講談界における南陵の名の著名さにかんがみれば、原告がかかる南陵一門の対外的活動に参加できなくなることの不利益は甚だしい。

 このように、本件除名処分によって原告が被った芸能活動上の不利益は著しいものであって、本件除名処分そのものに関してみても原告が被った被害は重大であり、司法審査の対象となるというべきである。


ウ また、本件除名処分自体が内部的な問題に止まるとしても、被告らに対する不法行為に基づく損害賠償請求権の存否の前提問題として、除名処分の適否について判断でき、その限りでは司法審査の対象になる。


(被告らの主張)
 一般的に、自立的法規範を有する任意団体内部の制裁処分等については、一般市民法秩序と直接関係しない内部規律の問題にとどまる限り、団体としての自主性、自立性を尊重すべく、団体の自治に委ねられ、原則として司法審査の対象とはならない。

 ところで、上方講談協会は、会員相互の親睦を図ることを目的として、わ
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. ずかな人数の会員によって構成されている全く任意的な団体である。また、同会は、主に会員の親睦的活動のみを行い、上方講談師であっても加入するかどうかは自由であるなど、団体としての結びつきは極めて弱く、一般市民法秩序とは直接関係しない分野に属する団体である。

 そして、同会は、上記のように任意加入の団体であり、また、同会を通じて会員個人の芸能人としての営業活動や宣伝行為等も一切行っていないから、同会を除名されたからといって、殊更に各種利益や便宜を受ける権利を喪失したり、芸能人としての営業が不可能や困難になることもなく、本件除名処分によって特段の不利益を生じるものではない。

 原告が仮に破門されたとするならば、それまでの芸能人としての活動において使用してきた「旭堂小南陵」という芸名が使用できなくなり、その活動への影響は避けられないと考えられるが、上方講談協会の除名と南陵一門からの破門とは全く無関係であり、原告は南陵一門を破門されたわけでもないのであるから、本件除名処分によってその活動に不利益は生じていないし、仕事の量も何ら減少していない。

 以上のような、上方講談協会の団体としての目的や性質、同会による除名処分による不利益の程度等からすれば、原告に対し同会がした本件除名処分についても、原則どおり、団体内部の問題として、その自治に委ねられ、司法審査の対象とはならない。

 そして、これを前提とする本件請求も司法審査の対象とはならない。

(2)不法行為の成否
(原告の主張)
. ア 被告らは、上方講談協会の役員会における本件除名処分の決議に基づくとして、同会関係者に対し、被告ら連名の本件除名通知を広く送付した。このことによって、上記関係者の間に、原告が代表幹事をしている芸団協関西に使途不明金を発生させたため除名されたなどといった風評が流れて
.
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. おり、原告の名誉は著しく毀損された。

イ 被告らは、上記役員会においてされた本件除名処分の決議につき、有効にされたものであると主張するが、以下のとおり、不存在又は無効というべきである。

. (ア) 被告らが行った上記決議は、同会会長であり役員である旭堂南陵及び同会役員である原告と全く協議をせずにされたものである。
 
 したがって、同会規約8条6項が定める役員協議の上除名するとの手続を履践していない。上記決議自体、不存在というべきである。


(イ) また、上記役員会は、同会会長である旭堂南陵が招集したものではなく、持ち回り決議しかされていない。

 そして、副会長の要職にあった原告に対し、弁明の機会を意図的に与えずにされたものである。上記役員会に先立つ総会において、上方講談協会除名の前提となった関西演芸協会の除名理由を開示されていないから、弁明の機会を与えられたことには到底ならない。

 これらの各点において手続き的に瑕疵があり、上記決議は無効である。


(ウ) 被告らは、上記決議につき、旭堂南陵から事前及び事後の承認を得ていると主張するが、旭堂南陵の承認の意思表示には明白に瑕疵がある。

 *****************************************************************。また、被告らは、旭堂南陵と被告らとの間において、同年2月24日、筆談により事前の協議をしていると主張するが、この筆談中には、旭堂南陵に対して「小南陵が不祥事を起こし」「南陵一門全員も怒り上方講談協会の方も除名にしたい」と申し向けている部分がある。前者は作為的な説明であるという問題があるし、後者は、南陵一門である原告の弟子を含めておらず、誤っている。そして、同年3月8日に筆談でしたという事後の協議についても、「南陵一門の総意で除名し
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.
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. た」などと旭堂南陵に申し向けている部分があるが、上方講談協会の総会が開催されたわけでもないし、南陵一門である原告の弟子は本件除名処分に反対の立場でもあったから、この点も瑕疵がある。

 なお、同月24日付の旭堂南陵名義の文書には「講談協会全員の意見は私にもどうにもなりません。小南陵を除名します。」と記載されているが、これも上記のように虚偽の事実を告げられた結果というべきであるから、この意思表示にも瑕疵がある。


(エ) 被告らは、上方講談協会除名の理由として関西演芸協会からの除名を挙げるが、同会からの除名は被告南左衛門、被告南鱗、被告南北が同会に嘆願ないし働きかけたことが奏功したものであり、自ら作出した事由により上方講談協会除名の理由とすることは著しい背理であって、除名理由たり得ない。

 また、被告らは、上方講談協会が南陵一門の親睦を目的とする団体であるにもかかわらず、原告が、同会の他の構成員に対し、種々の芸能活動の妨害や嫌がらせを度重ね行ったなどと主張しているが、そのほとんどが原告の妻貴美子の行為をあげているにすぎず、また、いずれも事実と異なっている。

(被告らの主張)
. ア 上方講談協会は、単なる旭堂南陵一門で構成される少人数の親睦団体にすぎず、かつ、同会自体は営業活動も行っておらず、何らの事実上の影響力も持たない。

 したがって、同会を除名されたからといって、原告自身の信用が失墜したり、名誉が毀損されるなどということはありえない。

 客観的にみても、原告は、本件除名通知により何ら信用を失墜したり、名誉を毀損されたりしてはいない。

 すなわち、本件除名通知の送付先は芸団協関西関係がほとんどであるが、
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. その通知後も原告は同会の理事に再任されている。本件除名通知の送付先である講談協会会長で人間国宝の一龍斎貞水や、同会副会長の宝井馬琴も、本件除名通知後であるにもかかわらず、原告の主催する講談会に出演を承諾している。また、その会場となった「ワッハ上方」にも本件除名通知を送付しているが、本件除名通知による影響は出ていない。さらに、インターネットで公表されている原告の出演予定を見ても全く影響は出ていない。

イ 被告らが、上方講談協会の関係者らに対して本件除名通知を送付した行為には、以下に述べるとおり、何ら違法性もない。

. (ア) すなわち、本件除名通知は、上方講談協会の関係者に対してのみ送付されたものである。上方講談協会の関係者以外の者に対して広く配布されたり、何人でも閲覧することが可能なインターネット上で公表したわけでもない。

(イ) さらに、原告は、平成15年3月5日に上方講談協会役員会がした決議により、真実、除名されているから、被告らが上方講談協会の関係者に対し、本件除名通知にて伝えた内容には何らの事実に反する記載はない。

 原告は、上記決議の有効性を争う。しかし、上記決議は、以下のとおり、手続き的にも実態的にも何らの問題はなく、有効なものである。

. a 上記役員会の決議事項は、原告の人的問題に関する事項であり、原告は同決議に利害関係を有していた。そのため、同会への出席を求めなかったものであり、同決議をするに当たり、被告らのうち役員であった被告南左衛門、被告南鱗及び被告南湖が原告と協議をしなかったのは正当な理由に基づく。

 仮に原告に出席を求めたとしても、原告が、その決議に反対であるとして出席を拒み、又は出席した上で決議に反対することは明らかである。原告の出席がなければ役員会を開催できないなどといった規約
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. 上の規定もないし、出席した原告が決議に反対したとしても、原告以外の役員がこれに賛成し、結果として過半数の役員の賛成に至っていた。

 なお、旭堂南陵に対しては、上記役員会の事前及び事後に被告南左衛門らとの間で協議がされ、承認が得られている。


b そもそも、規約は「違反した会員は役員協議の上除名する」と規定するにとどまり、「役員会」を招集し、その「役員会」で除名について協議し、「役員会」の決議として除名処分をすべきなどということ自体、どこにも規定されていない。


c 上方講談協会では、総会にしても役員会にしても、会長である旭堂南陵が、全会員や全役員に対し、あらかじめ召集通知を出すなどしたことはない。そして、そのような運用の実態について、原告を含む上方講談協会の会員や役員から不満や文句が出されたこともなかった。

 これは、原告を含む上方講談協会の会員及び役員全員が、規約の存在はさておき、その時々に応じた総会、役員会の実施運営でよいと了解していたということである。

 そのような運用実態に異議を唱えたことなどなかった原告が、上記決議に限って規約と異なるなどとしてその効力を否定することは許されない。


d 本件除名処分は、原告が、平成14年11月13日、原告の所属していた元相被告関西演芸協会(以下「関西演芸協会」という。)から除名処分を受け、上方講談協会の名誉を傷付けていることにつき、謝罪はもとよりそれに対する誠意ある回答もされなかったこと及び上方講談協会が南陵一門の親睦を目的とする団体であるにもかかわらず、原告が、同会の他の構成員に対し、種々の芸能活動の妨害や嫌がらせを度重ね行ったことに照らし、除名理由として規定されている会員と
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.
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. してふさわしい行動をとらなかったものといえると認めてされたものであり、理由があるものである。

  以上によれば、上方講談協会のした本件除名処分は、法的にみて明らかに有効なものである。


. (ウ) 被告らは、単に事実を事実として、上方講談協会の関係者らなど送付するべき者に対し、本件除名通知を送付したにすぎず、被告らには、本件除名通知を送付するに当たり、原告の名誉を害そうなどといった意図もなかった。


(エ) 以上のとおり、本件除名通知に記載された内容はすべて真実であり、講談師の親睦団体である上方講談協会が上記各送付先に本件除名通知を送付した行為は公共性が強く、社会的相当性を有し、何ら違法性を有するものではない。


(3)損害の発生及び額
(原告の主張)
.  原告は、旭堂小南陵を襲名して以来、数々の賞を受賞するとともに様々な役職について幅広く活動し、その信用を築きあげてきた。しかるところ、被告らの前記行為により、上方講談協会の関係者らの間に、原告が代表幹事をしていた芸団協関西に使途不明金を発生させたため除名されたなどという風評が流れるに至っており、これにより原告の信用は失墜した。

 このことによる原告の精神的苦痛は計り知れず、これを慰謝するには各被告につき50万円を下らないということができる。

(被告の主張)
.  争う。


第3 当裁判所の判断
. 1 前記争いのない事実等に加え、証拠(甲1、9、18、23、34〜45、53、54、丙1、2、4〜6、10、11、26、38、41、原告本人、
11 .
.
. 被告南左衛門本人、被告南北本人)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められ、かかる認定を左右するに足りる的確な証拠はない。


. (1) 上方講談協会は南陵一門により構成される非営利の団体であり、その目的は、規約(丙5)によれば、上方講談の発展及び会員の利益と地位の向上を図ることとされている。


(2) 同会は、終戦後間もなく、二代目旭堂南陵と三代目旭堂南陵らの手により発足し、昭和40年ころ、二代目旭堂南陵が死亡した後は三代目旭堂南陵が会長となり、以降、同人の下、発展してきた。

 同会の会員は、原告が本件除名処分を受けた平成15年3月5日当時、原告を含めて15名おり、いずれも三代目である旭堂南陵の弟子か孫弟子に当たる。南陵一門以外の会員はいない。


(3) 同会の主たる活動としては、「天満講談席」「上方講談を聞く会」を月1回開催することや、講談師の育成と芸の向上、親睦等を図るために講談の素人を対象に「講談道場」を開くことなどがあげられる。もっとも、「天満講談席」「上方講談を聞く会」については、さほどの観客がいるというわけではない。

 そのほかの活動としては、芸団協関西主催の公演であり、年1回開かれている「芸能サロン」への参加や、南陵一門が行う「南陵一門マラソン講談会」、「親子講談会」等の主催がある。

 同会は、各会員についての営業活動や宣伝活動などは、特段、行っていない。


(4) 同会は、昭和54年ころに、11箇条からなる規約(丙5)を作成している。その内容は、別紙2のとおりである。

 もっとも、同会の規約によると、同会の総会である大会は、年1回、会長が招集の上開くこととされており、開催に際しては開催の日時、場所等必要な事項を開催の2週間前まで通知することとされているが、招集は、師匠である旭堂南陵が適宜、電話などで呼びかけてこれを行っており、招集の通知
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.
. を出すなどといったことまではしていない。そして、大会等の会合も、一門の忘年会や新年会等と併せて行うような形で行われ、役員会も正式な形で行われたことはなく、総会における会計報告は基本的には行われていたものの、行われなかった年もあった。なお、議事録は、通常は作成されていない。

 また、同会の規約によれば、会員は会費を負担することになっているが、実際には会費は徴収されていない。

 なお、南陵一門の者は、旭堂南陵の許可を得た後、楽屋の中で他の一門に対する紹介を経ると、すべて同会へ入会したものと認められている。


(5) 上方講談協会の会員となると、同会が芸団協関西の参加団体となっているため、上方講談協会会員として芸団協関西主催の前記「芸能サロン」に参加する機会を持つことができる。

 また、芸団協関西の持つ稽古場を上方講談協会会員として使用することができる。


(6) 同会は大阪府より芸能文化振興補助金という補助金を受けているが、これらの補助金は「天満講談席」や「上方講談を聞く会」の赤字分の補填や慶弔費等に用いられており、会員たる個々人に分配されてはいない。

 そこで、以上の事実をもとに各争点につき検討する。


2 争点(1)(司法審査の可否)について
.  前記争いのない事実等によれば、上方講談協会関係者に対して送付された本件除名通知には、原告に会員としてふさわしくない行為があったため、同会から除名した旨が、同会会長旭堂南陵及び被告らの連名により記載されている。

 ところで、除名処分は、団体がその構成員に対してする不利益処分の一つであり、本件除名通知の上記記載内容からすると、同通知は、読者をして、原告に当該処分を甘受させるに足るような会員としてふさわしくない行状があり、そのために原告が、上方講談協会から除名という不利益処分を受けるに至ったと認識させるものであるということができる。
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.  そうすると、本件除名通知を同会関係者らに対して送付することは、原告にそのような不行状があったものとして社会的評価を低下させるものであるということができ、原告は、本件除名通知を送付されたことによって、その名誉を毀損されたということができる。

 この点、被告らは、上方講談協会の目的や性質、除名処分による不利益の程度等からすれば、本件除名処分は団体内部の問題としてその内部的自治に委ねられる問題であり、同処分を前提とする本件訴えは司法審査の対象とならない旨主張する。

 そこで検討するに、前記のとおり上方講談協会は、上方講談の発展及び会員の利益と地位の向上を図るという同会の目的のため、会長である旭堂南陵とその弟子らによって運営されている私的団体であり、構成員数はわずか15名程度で、団体規約は11箇条程度の簡素なものしか存在していない。また、同会が任意加入の団体であって、同会を通じた各会員の営業活動や宣伝行為等は特段行われておらず、会費の徴収もされていなかったこと、現実の同会の運営にあって、上記規約が必ずしも厳密に履践されず、会長である旭堂南陵の意向に従って、適宜意思決定がされていて、忘年会等と兼ねて総会等が行われるなどし、招集通知や総会議事録といった書面は通常作成されていなかったことは、いずれも前記認定のとおりである。このような上方講談協会の目的や規模、性質、活動実態、従前の慣行に照らすと、同会は、旭堂南陵の下に集まる弟子らが、任意で構成している親睦団体に過ぎないというべきであり、その団体の内部運営については、原則として内部的自治に委ねられるべきであり、裁判所により司法審査が無制約に及ぶと解することはできない。

 しかし、本件訴えの内容は、原告が、被告らにおいて本件除名通知を上方講談協会の関係者らに対し送付したことが、原告の名誉を毀損する不法行為であると主張し、慰謝料の支払いを求めるものであって、問題とされる被告らの行為は団体外部に向けて行われたものであり、また、それによって侵害されたと主
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張される権利も、個人の名誉という、団体外部の一般市民法秩序の下で保護されるべき権利である。

 そうすると、本件訴えは、本件除名通知が原告に対する不法行為を構成するか否かを判断する観点から、司法審査の対象となるということができ、本件除名通知の方法・対象が相当であるか否かという観点からは、全面的に検討すべきであるが、本件除名通知が真実を伝えたものか否かという観点からは、本件除名処分が著しく不合理・不相当なもので、真実、除名処分がされたといえないようなものであったか否かを検討すれば足りると解すべきである。

3 争点(2)(不法行為の成否)について
(1) 前記争いのない事実等に加え、証拠(甲3〜10、16〜20、23〜25、28、55〜57、乙1〜5、丙1〜7、10、11、13〜20、22、26、33、35、37、39、41、関西演芸協会代表者桂福団治こと黒川亮本人、原告本人(第2回)、被告南北本人)及び弁論の全趣旨によると、以下の事実が認められ、かかる認定を左右するに足る証拠はない。



. ア 原告は、芸能人で組織し、会員相互の親睦や慶弔等を行う団体である関西演芸協会から、平成14年11月13日の同会役員会の決定に基づくとして、除名処分を受けた。その除名理由は、下記@ないしEのとおりである。


. @ かねてより他の協会から原告に対して不満、抗議が殺到する責任として原告を除名せよと要求される。

A 原告は、関西演芸協会の推薦によって芸団協関西の代表幹事になっているのに、関西演芸協会には無断で推薦母体を上方講談協会と表明し、代表幹事を継続している。

B 原告を除く旭堂一門から、原告が一門の妨害になることが多く、一門にとって精神的苦痛となっていること、原告とともに芸能活動はで
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. きないことを理由として、原告の除名の嘆願がされている。

C原告に対して、関西演芸協会や他の協会からもあまりにも不評、不満が多い。

D 原告は、関西演芸協会の名誉を著しく傷つけた。

E 原告は、関西演芸協会、そして外部の協会との親睦の妨げとなる。

なお、上記役員会には被告南鱗及び被告南北が出席しており、原告の除名を陳情している。


イ 上記除名処分の決議の後、関西演芸協会は、原告を除名したことを同会会員に知らせるともに、関西演芸協会が加入している日本演芸家連合に対し、平成14年11月25日付の文書により、その旨の通知をした。

 そして、日本演芸家連合は、同会からの上記通知をうけて、その機関誌である平成15年1月1日付「演芸連合」第79号に、原告が関西演芸協会から除名された旨掲載することとし、かかる機関誌は、同団体関係者に頒布、公表された。


ウ 被告らは、平成15年3月5日午後10時より、大阪市北区区民センターにおいて、上方講談協会定例総会を開催することとし、同年2月15日、原告に対し、上記日時場所において総会を開く旨、議題は原告の関西演芸協会からの除名についてとする旨記載された書面(丙4の1)をファクシミリで送信して通知した。

 そして、平成15年3月5日午前10時ころ、大阪市北区区民センターにおいて、上方講談協会定例総会を開催し、原告に対し、平成14年11月13日付で原告が関西演芸協会から除名処分を受けた点につき、説明を求めた。

 これに対し、原告は、大要、関西演芸協会会長である桂福団治との感情のもつれがあったところ、被告らが除名を嘆願した、桂福団治は謝っていた、使い込みはしていないなどとその言い分を述べた。
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. エ 上方講談協会の役員であった被告南左衛門、被告南鱗及び被告南湖は、同日午前10時45分ころ、被告南北を書記、被告南華及び被告南海らを立会人として、大阪市内の喫茶店「喫茶ビクター」において協議し、原告は同会の名誉を傷付けたことに対する謝罪はもとより、誠意ある回答も示していないとして、原告は「会員としてふさわしい行動をとらなければならない」との規定(規約8条5項)に反しているなどとし、さらに欠席している旭堂南陵からは既に持ち回りで承認を得ているなどとして、同条6項の規定に基づき原告を除名するとの決議をした。そして、同会関係者に対して、会長名を差出人とし、旭堂南陵の弟子が連名の上、本件除名処分があった旨を通知する書面を送付することとする旨の決議をした。

 上記決議当時の上方講談協会の役員には、被告南左衛門、被告南鱗及び被告南湖のほか、旭堂南陵と原告もなっていたが、上記決議に同人らは出席していない。


オ 被告らは、上記決議の後、原告に対し、同会会長旭堂南陵及び被告らの連名で、その旨記載された平成15年3月5日付書面を送付した。

 また、被告らは、同会関係者に対し、同会会長旭堂南陵及び被告らの連名で、本件除名通知を送付した。


カ 被告らは、上記決議に先立つ平成15年2月24日、医療法人興世会が開設する介護老人保健施設「石きり」に赴き、同所に入所していた旭堂南陵を訪ねた。そして、原告が関西演芸協会から除名処分をうけていることを告げ、さらに筆談で、原告が不祥事を起こし関西演芸協会に迷惑をかけた旨及び上方講談協会にも汚名を着せたということで南陵一門も怒っている旨を申し述べ、原告を上方講談協会からも除名したい旨を述べた。

 これに対し、旭堂南陵は、「仕方あるまいな」「仕様あるまい、しょうがない、ウン」などと述べた。


キ また、上記決議後の平成15年3月8日、被告南左衛門、被告南鱗及び
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被告南湖は、再度「石きり」を訪ね、原告を同年3月5日、上方講談協会総会において南陵一門の総意により除名した旨を報告し、その確認を求めた。

 これに対し、旭堂南陵は「承知。南陵 2003年3月8日」と書面に記載して回答した。


ク 被告南左衛門、被告南華及び被告南北は、平成15年3月24日、再度、「石きり」を訪ね、原告に対し除名処分をしたことにつき、再度の確認を求めた。

 これに対し、旭堂南陵は、「講談協会の全員の意見は私もどうにもなりません。小南陵を除名します。平成15年3月24日 旭堂南陵(浅井美喜夫)」と書面に記載して回答した。



ケ ****************************************************************************************************

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(2) 以上の認定事実をもとに検討する。本件除名処分は、原告に招集通知が出されておらず、かつ、原告の出席していない役員会で決定されたものであり、かかる役員会は、本来、規約により招集権者とされている旭堂南陵により招集されたものでもない。しかし、少なくとも総役員数の過半数である3名が協議して本件除名処分に賛意を表していたものであり、前記1(4)によれば、上方講談協会は従前から正式に役員会を開くというような方法で意思決定を
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してきたことはなく、規約に旭堂南陵に支障がある場合の事務代行者の明確な定めも設けられてはいないところ、旭堂南陵が上記のような病状にあり、議案が、副会長であった原告その人の利害に関するものであったことからすると、旭堂南陵と原告を除くほかの役員に於いて、役員会を招集することとしたとしても、かかる判断には一応の合理性を認めることができる。

 そうすると、確かに、原告には、告知及び聴聞の機会は十分与えられていないものの、本件除名処分を決定した上記決議の手続き過程が、前記上方講談協会の性質、規模等に照らし、著しく不合理・不相当であったとまでは認め難い。


(3) 次に、本件除名通知の方法・対象について検討する。

 本件除名通知は上方講談協会の関係者に対してのみ送付されているところ(丙7、被告南北)、本件除名通知は、原告に会員としてふさわしくない行為があったため、同会規約に基づき平成15年3月5日付をもって本件除名処分をしたことを知らせ、同会関係者に対し、原告と同会とが関係なくなったことを周知するものである。上方講談協会が本件除名処分を行った客観的事実があることは前期認定のとおりであるところ、一般的に、団体が、その構成員に変動があった場合に、当該変動の事実を関係者に伝えることは必要な行為であり、また、その情報は、関係者にとっても、当該団体とのかかわりを持つ上で必要かつ有益なものである。本件除名通知が、同会関係者のみに対し発出されたものであって、原告に会員としてふさわしくない行為があったことを理由に除名処分をしたという事実のみを伝えるもので、殊更に、「ふさわしくない行為」の具体的な摘示をせず、客観的事実のみを告知する内容であることにかんがみれば、本件除名通知の方法・対象は、相当であったということができる。


(4) 以上によれば、本件除名通知の公表は、公益を図る目的から、真実を伝えたものということができ、被告らが本件除名通知を送付した行為が違法で、
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不法行為責任が発生すると評価することはできない。


4 そうすると、原告の請求は、その余の点について判断するまでもなくいずれも理由がないので棄却する。


大阪地方裁判所第12民事部

裁判長裁判官 瀧 華 聡 之
裁判官 堀 部 亮 一
裁判官 芝 本 昌 征

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記載の***は、原告及び被告の現住所、氏名であるので、伏字にした。
記載の***は、被告の氏名であるので、伏字にした。
17記載の***は、三代目旭堂南陵の当時の病状の為、伏字にした。