今月は、『口入屋』でございます。別に、特殊な夢を見たからとかでは、ございません。単に、こんなんが、空いてたというだけの話です。近ごろは、もう、出ているネタが多くなってまいりましたので、ご紹介していないものを選ぶほうが、大変でございまして、失礼をばいたします。お寒い季節、しっかりと笑って過ごしてみとくれやす。
冒頭の場面は、演題どおり、口入屋さんの店先でございます。と申しましても、ただいま、なかなかに、分かってもらえるお方も、すけのうございます。今でいうところの、職業斡旋所・紹介所てなもん。我々の業界、京都市内では、いまだ健在の部分がありまして、調理師紹介所なんていう所が、チラホラございます。もちろん、厚生労働大臣認可ですけれども。近所でも、ホステスさんの派遣てなものもございまして、クラブやとかバーに、ヘルプの女の子を、送り込むわけですなあ。昔の商家が、お得意先の口入屋さん、奉公人の出代わり月にもなりますというと、おなごしさんで、溢れておりますな。一段高い所には、結界を引き回しまして、番頭さんが、帳面を付けております。年頃の、若い娘さんばっかりでっさかいに、ペチャクチャ、ペチャクチャと、ようしゃべる。中には、南京豆の皮ほかして、散らかしてる奴もある。「あんた、どんなとこ奉公したいねん?」と、番頭はんは、聞いておりますけれども、なかなか、おもろいもん。仕事が楽で、給金が高ぅて、月に二へんほど、芝居へ連れて行ってもらえるとこ。って、あるかっ!仕事ですがな。こっちでは、旦さんとご寮さんと二人暮らしで、ご寮さんが、病気がちな家がエエと。ご寮さんの代わりに、一生懸命に働く…。わけではなく、ご寮さんが病気やと、旦さんが、箸マメにならはる。つまり、女の人の不自由になって来ますというと、おなごしさんに、お手が付く。悋気を起こして、ご寮さんの病が重とうなった所で、ゴロッといかはる。そこへ、ズルズルべったりで入り込んでしもうて、ご寮さんの、着物もかんざしも、皆もろて、おなごしの二人も使うて、“お清・おもよ”いうて、左うちわで暮らす。って、もひとつえげつない、お家横領やがな。こっちは、小商人(こあきんど)の家がエエて。さすが、商売の勉強をしようという魂胆。でもなく、小商人の家やったら、小遣いに不自由せえへん。って、盗人やがな。一人として、ろくなもんおれへん。
ところへ、入ってまいりましたのは、横町の十一屋の丁稚さん。今日は珍しい、できるだけ、べっぴんのおなごしさんを、世話して欲しいて。いつも、不細工なんをと、注文してきはんのにね。「わて、何も、番頭はんに十銭もろて、べっぴんなおなごしをと、頼まれてしまへんで。」って、また、正直に言うてしもたわ。「番頭はんに、十銭もろて、頼まれたんやろ。ちゃ〜んと、顔に書いたある。」「誰が、書きよったんかいなあ。」って、まだまだ子供ですな。「ほんなら、おっさん、杢兵衛どんが、ワカメ嫌いやしいうので、今日の昼、揚げ昆布でご飯食べたん、知ってるか?」「知らいでかい。ちゃんと顔に書いたある。」って、そんな話は、どうでもよろしいねん。おなごしさんを、連れて帰らないかん。おもろい顔の娘も、おりますけれども、キレイそうな娘を選んで、お店へ。番頭はんが、後で、証文を巻きに行くというので、とりあえず、話を決めに、お目見えに、十一屋さんへ。道々、話をしますが、一日と十五日、ご飯に、お魚が付く時、尾っぽの、大きい身を、この定吉っとんに、付けて欲しいて。ホンマ、そこら、まだ子供ですな。それでも、男の子でっさかいに、女中さんと一緒に歩いてんのん、他の丁稚さんに見られたら、丁稚仲間はぶかれると、とりあえず、先に、自分の店の中へ。
「使い上手とは、貴様のことじゃ!」と、いつものように、こちらは、十一屋さんの番頭さんに、怒られますけれども、それでも、今日は、番頭さんの用事で、口入屋さんへ。「ほんで、べっぴんな、おなごし居たか?」「べっぴんさんだっせ。十銭おくなはれ。」「顔見てからじゃ」「当節は、どなた様も、現金で…。」って、子供の言うこっちゃ、あらへんがな。「ほな、十銭やるけど、おなごしは、どこやねん?」「もうそこまで」「アホ!それを先に、言わんかっ。」っと、番頭さん、急に、慌て出しますわ。そら、初対面ですからな。亀吉っとんに、羽織を出すように言い付けたり、この前、夜店で買うたと聞いてる、杢兵衛どんの鏡を借りたり。ヒゲも、剃っといたら良かったと、店のもんが、一同並んで、お出迎え。は、おなごしさんのほうも、入りにくい。男ばっかりですからな。のれんの間から、頭とお尻と、七三に振りながら、入ってまいります。番頭さんが、おざぶ持っといでと、給金の決め。お上・奥の話は別として、店のことは、この番頭はんが一切を決める。うちは、給金が安いと。半期が五円にしかならん。しかし、そこが、十円にでも、二十円にでもなる手立てがある。というのが、ここの商売が、古手屋さん・古着屋さんですねやね。前にある帯でも、十円は、下らんようなエエ帯。メチヤと符牒が記してあって、元値が四円八十銭。安いなぁと思えども、それでも、奉公人の身分では、なかなか買えへん。ところが、前に、丹波の園部から、おもよどんという、おなごしさんが来てたんやが、これが、来る時は、風呂敷包み一つで、帰る際には、柳行李に二杯てな、物持ちで、帰ったて。ヒマさえあったら、店へ出て来てたんを目に止めて、この帯、五円に負けといたげる。しかし、五円てな大金。エエがな、いっぺんに払わいでも、入れ掛けにしといたげるさかいに、自分の部屋へ持って行きと。しばらくすると、これ、こないだ、ちょっとお使いへ行た時の、おためで、五十銭だけ内金に。そうか、帳面の端にでも書いとこか。またしばらくすると、三十銭内金に。二十銭・十銭…、と、五・六っぺんも払うたところで、帳面は、筆の先で、ドガチャガ・ドガチャガと。こら、番頭はん、ならではですな。こんなこともあった。郷から手紙が来たので、読んで欲しいと。番頭はんが読んでみると、母親が病気で、十円の金の無心。かわいそうなので、店のうちから、遊んでる金を十円持たして、送ってやった。返事が来て、お礼を言われたところで、小遣いのうちから、五十銭の内金にと。後は、三十銭・二十銭…、と、帳面は筆の先で…。ウマイことなってまんねんなあ。
と、話は、ここからですがな。番頭はんも、来年は別家さしてもろうて、一家の主。ところが、決まった女の人も無い。さあ、ややこしなりまっせ。この番頭はんに、悪いクセがあって、夜中に目覚まして、便所へ行た帰り、ちょいちょい、部屋間違うて、人の部屋へ入ったりする。そこで、キャーとか何とか言われたら、来年の別家もワヤになる。そこはまあ、「魚心あらば、水心。水心あらば、魚心。」「稲川、土俵で会おう。」って、芝居ですがな。おなごしさんと、給金の決めをしていたはずですが、とうに、うちら入ってしまわはった。ここに居んのは、杢兵衛どんが、風呂敷かぶって、おじぎしてるて。ややこしいところへ、ややこしいもんが、筆の先で、ドガチャガ・ドガチャガ。って、みな、聞かれてしもたありますがな。
奥では、ご寮さんと、おなごしさんが、お目見えということになりますが、どうも、いつもと違うて、べっぴんさん。聞いてみますと、定吉っとんが、「今年は、梅雨に照って、土用に降ったさかい、おなごしの出来がエエ。」って、お米やがな。下の、お店の奉公人のほうの用事を、させようとしておりましたが、べっぴんさんだけに、上の、奥の用事も、してもらおうということになりますなあ。「あんた、お針のほうは?」「亡くなりました母に、ほんの手ほどきを、受けただけでございます。袷(あわせ)が一通り、単(ひとえ)もんが一通り、綿入れが一通り。羽織に袴、襦袢(じゅばん)に十徳…、こうもり傘の修繕。」って、エライとこまで行きますなあ。旦さんが、御酒をお召しになった際には、お三味線も弾いて欲しいて。「地唄が百五十、江戸唄が二百…、あほだら経。」あほだら経までですか。ちっさい木魚持ってねえ。「鳴物も、大鼓(おおかわ)、小鼓、締め太鼓…、半鐘の叩き分け。」火事の時、便利やね。「書は御家流でございまして、カナは菊川流。お点前は裏千家…、のろしの揚げ方。」「ふぇ〜い、番頭はん、ご注進。」「なんじゃい」「あの、おなごしっさん、エライおなごしさんだっせ。のろし揚げる言うたはりまっせ。今晩の手水行きは、鎧兜(よろいかぶと)だんな。」って、分かってるだけに、おもろいですがな。聞き応えがあって、おもしろい場面です。
このおなごしさんは、元々京都の人。寺町の万寿寺で、両親共に、早くに死に分かれ、大阪は、心斎橋の八幡筋にある、叔父の家に厄介になってたて。しかし、叔母さんのほうは、口では、大きいことを言う、至って、おなかのちっちゃい、お方で、何かにつけて、目で切って見せられるのがつらさに、奉公に出て来たというわけ。ですから、今晩から、この家に泊めてもらいますと。これを聞きまして、またまた、定吉っとんが、ご注進。「あの、おなごしさん、京都の人でっせ。寺屋の饅頭屋、言うたはりました。」って、なんのこっちゃ?叔父さんが、心配無しで、鉢巻きしたはるて。いよいよ、分からんがな。叔父さんが仏さんで、叔母さん化けもん。口のおっきい、おなかのちっちゃい、目で顔切って、イタイイタイ。何ですねん?とりあえず、今晩から泊まらはると。それが肝心ですがな。これ聞くなり、番頭さん、店閉めてしまいます。早いこと、表を掃除させますわ。定吉っとんも、向かいの友吉っとんに、早仕舞いの報告。べっぴんの、おなごしが来たんで、早仕舞い。夜中に、ゴジャゴジャと…。いらんこと言うてんと、明るいうちに、大戸も閉めてしまいます。今度は、神棚の神さんに、お灯明を点けますわ。「上げたら、しめして回れ。」って、今、点けたとこでんがな。「油一升、何ぼする思うとんねん!」って、今も昔も、変わりまへんな。今度は、早う寝てしまえて。「ご飯食べてしまへんがな。」「いっぺんぐらい、食わなんだかて、死なへんわい!」っと、早いこと、せかされながら、ご飯も食べまして、布団敷いて、寝てしまう。寝られへんがな。手紙書いてたら、極道もんやて。寝られへんにゃったら、安治川へ荷出しに行ってもらう。「おやすみやす」と、皆、寝てしまいます。「寝たか?いびきかけ。」って、いびきの催促やがな。「これ」「ガー」「これこれ」「ガッガー」いびきで、返事してなはる。そう思うと、子供は正直なもん。昼間に、番頭はんからもろうた、十銭を、枕元に置いたままで、寝てて。今のうちにと、また番頭はんも、取り返しにかかりますが、「どなたも、物騒な晩でっせ〜。」って、起きてんねやがな。と言うてるうちに、番頭はんも、根負けしたと見えまして、寝てしまいます。
「久七っとん」って、さすがに、まだ起きてるもんも居る。今日来た、おなごしさんは、さすがに、この界隈でも、代表する、べっぴんさんであると。横町の、ぼて屋のおなごしと、どっちがキレイかて、寝間の中で、コソコソとしゃべり出しますわ。あの、ぼて屋のおなごしは、紅や白粉(おしろい)塗りたくってるけれども、今日の人は、生地なりやて。そのままでんがな。早速に、漬けもんの重しが、重とうて、持ち上がらんのを、手伝うてあげたて。“おおきに、はばかりさんどす〜。”って、やっぱり京都の人でんなあ。“お名前は?”“久七です”“まあ、おなつかしゅうございます。”というのも、いっぺん、縁付いたはって、その夫の人の名前が、久七さんやったんですと。挨拶をした拍子に、久七っとんのお尻と、おなごっさんのお尻が当たった。“何も、あての、おいどが、そない、いっかいおいどやいうたかて、そうお突きなさらいでも、よろしいやおへんか。”と、お尻を突き返してきた。“何も、突いてしまへんがな。”ぼ〜ん、ぼ〜んと。「やかましい」って、番頭はんに、怒られてしもた。
まあ、最初のうちは、やいやい言うておりましたけれども、昼の疲れが出たもんと見えまして、そのうちに、皆、寝静まってしまいます。夜中、一番に、目を覚ましましたのが、二番番頭の杢兵衛。「あ〜」と、ここで、下座からボーンと、時の鐘が鳴りまして、いよいよ、ややこしい場面になってまいります。番頭はんが、コロッと忘れて寝ているのを確認しつつも、一番槍の功名をと、寝床から、台所へ起き出してまいります。色っぽい、『いろめき』でござりまするな。『お玉牛』なんかにも、出てまいります。おなごしさんの部屋は、二階でございまして、梯子段で、上へ。っと、ここで、ゴロゴロの戸が閉まっておりまして、頭を打ってしまいます。しかも、錠が下りてるて。ご寮さんが、けったいなことにならんように、閉めとかはったんでしょうなあ。要するに、階段上がった先、二階の部分に、引き戸がございまして、これが閉まっておりますので、二階へ行けんと。それでは、走り元から、膳棚を足場へ、木山へと。膳棚、要するに、箱膳なんかを仕舞ってある棚を足掛かりにして、その上の、木山へ入り込んで、二階へ上がろうという魂胆。元来は、薪を仕舞っておく場所やったんでしょうけれども、これが、二階の床下部分と、一緒になってまんのやさかいに、入り込めますわいな。お分かりですか?古い家でっさかいに、うちらまだ、見てもろたら、よう分かりまんねけどねぇ。とりあえず、膳棚を足場にと、力を入れたところが、腕木が腐ってたもんと見えまして、膳棚が、肩の上に、ガラガッチャン・ガッチャンっと。えらいこっちゃ、膳棚片っぽ、担げてしまいなはった。このまま、放っぽり出すと、エライ音しまっさかいに、大騒動。どないしよかいなあと、思うておりますうちに、二番目に目を覚ましましたのは、一番番頭。これも、ゴロゴロの戸で頭打って、膳棚から木山へと勘定を付けよった。片方が、外れているもんですから、もう片方に、力を入れますというと、これも、ガラガッチャン・ガッチャンと。「そこへお越しになったんは、番頭さんと違いますか?」っと、お互いに、助けてもらおうといたしますが、そらでけん。二人して、膳棚てな、重たいもん、担げてなはんねやさかいに。動いたら、音がするので、どうしようも無い。醤油のビンがこけて、中から醤油が流れて、背中へ入り込む。やいとの皮がむけたとこでっさかいに、しみて、痛い痛い。てな、騒動を起こしておりますうちに、三番目に目を覚ましましたのが久七。これも、ゴロゴロの戸で頭打って、今度は、井戸側へ上って、そこから天窓の紐を引っ張って、ターザンみたいに、弾みをつけて、木山へと、勘定を付けよった。しかし、初めて来た家、昼間、おなごっさんが、天窓を閉め忘れていたもんと見えまして、この紐が、張っておりませんので、力を入れた拍子に、紐が緩んで、井戸の中へ、ズーッ。
こら、膳棚どころやおまへんわいな。紐が切れたら、命に関わりますさかいになあ。番頭に杢兵衛どんは、膳棚の係り、久七っとんは、井戸に浸かりかけ。そら、大きな声も出ますわいな。この騒動で、起き出してまいりましたのは、ご寮さん。手燭を持ちまして、台所へと、下りてまいります。もう、どうしようもない。見つかったら、大目玉ですし、咄嗟のことで、番頭はんが、「いびきかけ」と。三人がいびきを、かいておりますと、天窓の紐が井戸の中へ、落ちているのに気付いた、ご寮さん、中を見ますというと、久七が落ちている。「何してんねん?」「スイカの身振り」って、んな、アホな。また、怪しげなことを考えて、井戸へ、はまってしもたんやと、お店の衆を呼ぼうと、辺りを見回しますというと、番頭はんに杢兵衛どん。二人とも、膳棚担げて、いびきかいてなはる。「何してんねん?」「へぇ、宿替えの夢を見ております。」と、これが、サゲになりますな。咄嗟のことで、いびきをかいたもんの、どうしようもなくなって、苦し紛れに、宿替えの夢を見てますと。いうたかて、膳棚の、棚までは、引っ越しに持って行きませんけどね。よく出来た、おもしろいサゲでございますな。
上演時間は、短くても、二十五分ぐらいは、掛かるでしょう。だいたい、三十分ぐらいの、結構な、長丁場でございます。聞き応えもありますし、全編通して、笑いも多くございますので、たっぷりと演じられるには、持って来いかと存じます。説明しないと、時代にそぐわない部分も、たくさんございますけれども、それはそれで、良いと思いますし、また、今でも、ニュアンスだけですが、十分、通用するとは、思いますねけどね。冒頭は、演題の通り、口入屋さんでの場面。わちゃわちゃと、おなごしさん連中と、口入屋の番頭さんが、しゃべるあたりも、よくでけておりますな。それから、事件の根本となります、十一屋の丁稚さん・定吉っとんの登場。番頭はんに頼まれまして、べっぴんなおなごしをと、エエのを選んで帰ります。道々、おかずの話をするのも、子供らしいですわな。店では、べっぴんさんが来るというので、大騒動。番頭はんが、期待しておりますところで、おなごしさんが登場して、給金の決め。おもろい場面ですな。帳面は、筆の先で、てな話。ここらも、ようでけております。時代は変われども、今でもね…。そして、夜中の手水行きが出るあたりなんか、ラストに持って行く上でも、なかなか、さりげないですな。って、前に居るのは、風呂敷かぶった杢兵衛どん。おなごしさんは、奥で、ご寮さんと、給金の決め。この、リズム良くしゃべるあたりなんか、聞きどころでもございます。しかし、よう考えたある。また、それを、所々、間違いながら、番頭はんに報告するちゅうのも、おもろいとこですわいな。『質屋蔵』みたいなもん。おなごしさんが、今晩から泊まるというので、早速に、早仕舞い。掃除して、お灯明点けては消して、ご飯食べて、寝るて。寝間へ入りながらでも、これまた、なかなか寝えへんあたりなんか、おもしろうございます。っと、夜中に目を覚ましたところで、いよいよラストの場面。いわゆるところの、夜這いちゅうやつですわ。でも、いやらしさは感じませんな。この台所の位置関係ちゅうのが、ちょっと、お分かりにくいかも分かりませんけれども、分からんなりにでも、それなりに、ご理解いただけると、楽しんでいただけると思います。ま、実際に、見ていただくのが、一番、よろしいにゃけれどもね。京都市内、そこそこの大きさの、街なかの商家ですと、うちらみたいに、結構、そのまま残ってるとこ、ぎょうさんありますねんけどね。膳棚を片方ずつ担げて、もう一人は、天窓の紐引っ張って、井戸の中へて。昔やったら、ようウケたことやったと思います。そこで、ご寮さんがお出ましになって、咄嗟の判断で、番頭さん以下が、いびきをかいて、サゲになると。筋がありますので、よく出来たネタであると思いますね。笑いも多いですし。
東京では、『引越しの夢』の題で、演じられております。内容といたしましては、ほぼ、変わりませんが、何かやはり、スッキリとした感じがいたしますね。ま、し過ぎる感じも、しないでは、無いんですが、上方式に、くどくどとする場面も、少ないです。所有音源は、故・桂文枝氏、故・桂枝雀氏、笑福亭松枝氏、桂あやめ氏などのものがあります。文枝氏のものは、好きでしたわ〜。ご寮さんが、話の中で、締まった感じを出してはってね。また、番頭さんも、気持ちが良く分かりまして。どれを取っても、好きな、おもしろい人物ばかりでした。また、笑いも、多かったですし。枝雀氏のものは、爆笑ですわ。こらもう、笑い転げました。五十分ぐらいあるものも、聞かせていただきましたが、しかし、おもしろかった。寝る場面で、見台に、頭ひっくり返して、見せてはりましたな。最後に、久七っとんなんか、紐持って、必死で、叫んだはりましたもんなあ。松枝氏のものは、これまた、筋の運びの良い、おもしろいものでした。ラストの三人が、三者三様、とぼけた味がありましてね、印象に残っております。あやめ氏のものも、笑いも多いですし、番頭さんの性格が良く出ておりまして、結構なものでござりました。
わたしゃ、好きですねんけどねぇ。このゴテゴテした感じがありつつも、筋が運んで行くという。笑いも多いですし、聞きどころも、たくさんありますので、ぜひとも、たっぷりと、聞かせていただきたいものですな。
<23.2.1 記>
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