あけまして、おめでとうございます。どうぞ本年も、よろしくお願い申し上げます。申し合わせましたように、こんな干支のネタが、まだ残っておりました。『馬の尾・馬のす』でございます。今年は、午歳でっさかいにね。天高く馬肥ゆる、景気の良くなる年に、なりますかどうか。とりあえず、なんともいえん話です。これが噺といえるのか、一席としてエエものかどうか。そやけど、どないもならんちゅう、お話でございます。
とあるご主人、釣り好きと見えまして、これから、釣りに行こうとするところ。道具立てを調べまして…。アレ、浮きやら、おもりやらは、どうもないけれども、どうも、テグスがいかん。切れてしまいます。これから、釣り道具屋へ行って、それから釣りへ行くのも、面倒な話。フイと見ますると、表には、馬が一匹つないである。馬力で、荷物を運んでおりました時代の話でございます。近くに馬方は、おりません。目に入りましたのは、馬の尾。こらちょうどエエと、馬の尻尾を抜きまして、調べてみますと、丈夫なもん。
二・三本も抜きましたところで、友達に声を掛けられる。「お前、今、馬の尾抜いたな。エライことしたなあ。わしゃ、見なんだことにしとくわ。気の毒に。」と妙なことを言われます。こら聞き捨てならんと、友達を家へ引っ張り上げまして、馬の尾を抜いたら、どないなんのかと、聞き出そうといたします。しかし、なかなか教えてもらえません。「一杯飲ますか?」と、奥さんに、銚子を二本ばかりつけさせまして、教えてもらおうと。友達のほうは、飲みたかったらしく、おちょこやのうて、湯呑みに並々と注ぎまして、飲み始める。ウマイなあ。そらそうですわ。昼酒は、よう回りますが、ウマイもんでっさかいに。横手で、奥さんが湯がいておりました枝豆が、出来上がりました。酒のアテには、持って来いですがな。この枝豆を、サヤから出しながら、美味そうに食べますわ。
あっ、一本空いた。「馬の尾抜いたら、どないなるか?」言いながら、いらんこともゴジャゴジャ混じって、とうとう二本、しかも、枝豆も、食べてしもたがな。「おおきに、ごっつぅはん。さいなら。」って、帰ったら、いかんがな。こっちは必死で、「馬の尾抜いたら?」「教えたろ、馬の尾抜いたらな、馬が痛がる。」と、これがサゲになりますな。どないなんのんかいなあと思うて、結局、どないもならんちゅう話の、代表格ですな。
上演時間は、十分前後ですか。寄席向きです。これが、噺といえるのかどうだか、難しいんですが、それでいて、一席なのであります。噺自体は、他愛もないものですので、馬の尾を抜いたら、どないなるかを、引っ張って、引っ張って、これが、なかなか難しいんでしょう。お酒を飲むのも、おいしそうですが、やはり、枝豆を食べるしぐさが、重要ですね。他の落語に、案外、あまり出てまいりませんので、かえって、これが、おいしそうに見えるん。
東京でも、同じですが、やはり、故・八代目桂文楽氏の口演が有名ですな。所有音源は、桂米朝氏、故・初代森乃福郎氏のものがあります。米朝氏も、おいしそうに、枝豆食べてはった。福郎氏のものは、私の聞き間違いかも分かりませんが、たしか、居酒屋で、枝豆を頼んで、酒を飲むというものだったと思うのですが。初めて聞かせていただいた折には、こんな噺も、あんのんかいなあと、感服させられました。なんともいえん、おもしろみがございました。しかし、こんな噺で、今どき、金返せ言われへんやろか?
<26.1.1 記>
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