それでは、先月の続きでございまして、今月は、『色事根問』で失礼をいたします。『稽古屋』など、重複する部分が、かなりございますので、そこは、ご容赦ください。ホンマは、これだけで、一席で、結構、おもしろいんですけどね。
表から、おもろい男が、飛び込んでまいりますと、お話の始まりでございまして。女子を追い掛け回すのに忙しいて。要するに、モテまへんにゃわ。昔から、“一見得、二男、三金、四芸、五精、六おぼこ、七ゼリフ、八力、九肝、十評判”てなことを、いうたあると。「一見得」「市兵衛て、何だんねん?」て、人の名前や、おまへんで。身なり容(かたち)、着てるもんでも、小ざっぱりしてたら、女子にモテると。こら、アカン。手足が出て、身に合うてない着物を着てる。弟のやて。それも子供もん。四つ身やがな。
二番目は男。男前やったら、女子も惚れる。しかし、エライ顔や。親戚からもろた、ぼた餅が、あんまり、おいしないんで、置いてあった。これを食べようと、ネズミがやってきた。そのネズミを、猫が追いかけて、棚の上の、ぼた餅が、下へ落ちた。拍子の悪い、魚屋が入って来て、これを長靴で、踏んだ後みたいな顔やて。また、回りくどい。あっさり言うたら、ブリのアラ。骨太で脂ぎって、血なまぐさい。血なまぐさい顔て、想像するだけでも、おもろいですがな。
三は金。ちょっと貯めてるやて。「どのぐらい?」「そんなこと言えますかいな。」と、なかなか言わへん。それが知れて、強盗にでも入られたら、一巻の終わりやて。それでのうても、奥で、ゴソゴソ音がしてる。奥さんですがな。それでも、近所でしゃべる恐れがあると。わざわざ、奥さんを風呂へやりまして、今度は、いよいよ、なんぼ貯めたか?猫がいるて。これも、追いやりまして、三年間、夜の目も寝んと、一生懸命に貯めた高が…。一銭玉で十八枚。十八銭!んな、アホな。女子が惚れますかいな。
四芸で、芸事。これやったら、三つある。コタツの上から、とんぼり返りするて。子供やがな。次は、アツアツのうどんを、鼻から食うて。しかも、このうどんを、口から出す。汚いな。これでは、女子は惚れん。「そんなもん、芸とはいわん。」「そやかて、ゲー言いまっせ。」言うけれどもな。最後は、踊り。宇治の名物・ほうたる踊り。こら、宇治のおっさんから習うたて。着物をクルクルッと、脱ぐ。ふんどしも外して、体じゅうに、墨を塗る。真っ黒けですがな。赤い手拭いで、ほうかむりをして、お尻に、ロウソクを挟む。要するに、ホタルの格好。これで、座敷じゅうを飛び回った後で、最後に、ロウソクの灯りを、屁で消すと。ウマイことでけたある。この前、松っちゃんとこの新築祝いでやって、最後に、屁で消すところを、実が出て来て、大騒ぎ。そらそやわ。
五精というて、精出して、働いてたら、惚れる女子もいると。しかし、のらくらしてまっさかいになあ。六は、おぼこいほうがエエと。エエ加減ませて、おっちょこちょいの世話好き。七がセリフ。挨拶や、ケンカの仲裁で、ええセリフ言えたりしたら、女子が惚れる。この前、米屋と酒屋の、ケンカの仲裁をしたて。しかし、よう聞いてみると、犬のケンカですがな。そんなんでは、アカン。
八は力。双蝶々なんかでは、相撲取りが、湯呑み茶碗を、握り潰したりする。「湯呑みぐらいなんだんねん。わて、この前、すり鉢割った。」「握ってかいな?」「落として」て、誰でも、割りますわいな。九肝で、肝っ玉、度胸が据わってたら、女子が惚れる。この前の日、雨が降って、心地悪い日があった。その夜中、行かんならん所がって、一人で行って、帰って来たて。そら、大したもん。「どこへ行ったんや?」「小便へ」て、そらアカンわ。
最後に十。評判て、これもあんまり、エエ評判が立ってない。風呂屋で、下駄履き替えたちゅう噂が、立ってるて。こら、大きな間違い。柾目のエエ桐の下駄、これを、履いて行ったんかいなあと思いのほか、履いて帰った。それやったら、噂どおり。「ほな、お前の履いて行った下駄わいな?」「わて、裸足で行きましてん。」と、サゲを付けるとすれば、これぐらいでサゲられますね。つまり、履き替えたのではなくて、初めから、履いて行ってませんねやがな。
上演時間は、これだけですと、十分か十五分ほど。しかし、これだけで、一席にされることは、あんまり、ありませんね。マクラ代わりで。しかし、十分に、おもしろい話ですので、寄席なんかでは、時間の都合で、使いやすいかも分かりません。要するに、一から十までの、女子に持てる方法を、紹介していく、根掘り葉掘り聞いていくという形式です。演者によりまして、演出も違いますし、いろんなもんを入れて、もっとふくらましも出来ますので、上記のものは、参考程度に。ただやっぱり、おもろいもんですな。特に、宇治の名物・ほうたる踊りなんかね。ホンマかいなあ思いますやん。でも、ゴールデンボンバーやったら…。
東京でも、いくつかの噺と一緒に、引っ付けて、やられたりいたします。所有音源といたしましても、述べにくいんですけどね。ただ、今も昔も、色事は、なかなかに…。
<26.7.1 記>
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