九月になりました。夏休みも終わりまして、幾分か、暑さも一段落と言いたいところですが…。暑うおまんな。ま、それでも、一時よりも、ましで、もう真夏の暑さではございません。取り立てて申すことも無いのですが、今月は、『首の仕替え』を選びました。珍しいといやあ、珍しい。けったいなといやあ、けったいな。不思議な話です。

 「こんにちは」「何をバタバタしてんねん。忙しそうに。」「おなご」という、いつものパターン。要するに、『色事根問』と、最初は一緒の入り方です。ご存知無い方は、そちらのほうをご参考に。『稽古屋』とか『いもりの黒焼き』なんかでも申し上げましたので、ご承知かも分かりません。案外、この部分を使われているものが、ちょいちょいあるんですな。いくつか述べました後、それでは、おなごにモテそうなはずが無い。どうも、土台がいかんのちゃうかと。要するに、見映えが悪い。顔が悪いと。この横町の、赤壁周庵先生、首の仕替えをしてくれはるというので、いっぺん、行って、こましな首に、替えてもろたらどないやと。おもろそうな話ですな。

 この男、なんぼかを借り受けまして、お医者の先生のところへ。玄関には、書生さんが、留守番をいたしております。「あんた、何じゃ?」「人間じゃ」「どちらから?」「あちらから」「どうして?」「歩いて」「よいよい」「こりゃこりゃ」って、話になりまへんがな。要するに、首を仕替えに来たて。奥へ事情を伝えますと、「どのような首がご所望か?」と、先生が出てまいります。おなごにモテる顔がエエというので、棚の上の首を見せてもらいます。俳優さんの名前や、歌舞伎の役者はんの名前、こら、いろんな時々のスターさんの首が並んでおりますな。しかし、何千万とするような、高い値段。こらどうも、具合が悪い。もうちょっと安いので、野球選手の首。しかし、これも高い。外人さんのも、ありますけどな。

 一番安いので、上方の噺家の首が並んでる。ここで、いろんな噺家さんの話となりまして、最後には、演者自身の首。こら、ようモテるて…。そら、どや知りまへんけどな。とりあえず、これに替えてもらいますと、早速手術。目をつぶっておりますうちに、スパッと切って、新しい首へ。ニカワをたっぷりと引っ付けまして、手術成功。「ありがとうございます。」「おい、治療代を置いていかんか。これ。」「アホらしい。お金は、前の首から、もろとくなはれ。」とか、「頼んだ人と、首が変わってます。」とか、「首切られたんでっさかい、金貰うのは、こっちのほうでおます。」とか、これぐらいがサゲにされておりますね。

 上演時間は、十五分か二十分程度。そんなに長いものではございません。寄席向きですな。ま、『色事根問』の間で、何に入るか、考えながらしゃべるという手もありますのでね。前半は、その『色事根問』の部分、いつ聞いても、おもろいもんですけどね。宇治の名物、ホタル踊りなんて、誰が考えはったんでしょうなあ。それから、首を替えてもらうという、突拍子も無い話へ。ここらは、『犬の目』なんかと、趣向が似てますな。そして、お医者さんで、首の並んでいるところで、その時々の笑いを入れていくというのも、なかなか、おもしろいものでございます。噺家さんが出てくるのも、演者自身が出てくるのもね。首を替えてもらって、最後にサゲとなると。

 東京では、『首医者』の演題が残っているらしいのですが、詳しくは、私も存じません。所有音源は、故・桂文紅氏、笑福亭三喬氏のものなどがあります。珍しい話ですが、文紅氏は、前半だけではなく、後半も、十分に笑いを取ったはりました。首が並んでいるあたりでね。軽い感じの語り口調で、テンポよく。三喬氏も、首の並んでいるところで、よくウケておりましたね。韓流スターの首なんかも、入れたはりました。故・桂米之助氏とか、故・笑福亭松喬氏なんかも、やったはったらしいですけれども。ちょっと軽い感じで、なかなか、おもろい話なんですよ。


<27.9.1 記>


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