取り立てて、意味もございません。出すものが少なくなっておりますので、今月は、『法華坊主』でご機嫌を伺います。滅多に出ません。お珍しい噺でございます。

 とある村に、法華宗のお寺がございます。この村で、若い後家さんが出来ます。要するに、若いうちに、旦那に死んでしまわれた。とりあえず、七日ずつのお逮夜に、四十九日・百ヶ日、一周忌。のうちに、おぼんさんと、仲良うなってしもた。男女の関係ですわなあ。ある晩のこと、二人が寝ておりますというと、一番鶏が鳴く。コケコッコー、トウテンコウーというやつですな。「はいはい。法華の坊主は、ここにおります。お呼びになったのは、どなたでございますかいな?」って、寝ぼけてますねやがな。『コケコッコー』が『ホッケボウズー』と聞こえたんですな。しかし、これも、鶏の鳴き声が、この人の身を責め、お祖師さまが、戒めをなされているに違いない。村のもんに知れると、寺におれんようになるし、後家さんのほうも、面目なかろうと。「南無妙法蓮華経。私は寺へ帰ります。今日限りの縁じゃと思うてくれ。」「まだ夜は明けきっておりません。そんなに慌てて。」「もはやこれまで」と帰ってしまう。

 後に残りましたのは、この後家はん一人。もう頼る人もおらず、どないしようかしらんと。ぼんやりしながら、外へ出ますと、鶏がウロウロ。「あんなとこで、鳴き声を立てるもんやさかい、あの人、帰ってしもたやないか。腹が立つ。」そばにあった、いかき(ザル)を放り投げますというと、鶏が飛びのいて、ゴケッコワコワ(後家怖い)、ゴケッコワコワ。と、これがサゲでございます。鶏の鳴きマネで、サゲになりますな。

 上演時間は、十分そこそこですか。寄席向きです。マクラを引っ付けて、十五分ぐらいにはなると思いますので。噺というよりも、小噺程度のものですな。世俗の人ではない、ご出家の立場などが感じられましたら、お慰みでございます。昔は、こんな話、あったんでしょうなあ。

 東京にも、あるんでしょうか?詳しくは存じません。私も、故・桂米朝氏のものしか存じません。実に、ものものしく、しかも、ばかげたように、演じたはりましたわいな。まあ、こんなんで、金取れへん言われたらかなんので、なかなか出来ませんわな…。


<29.6.1 記>


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