
暑中お見舞い申し上げます。久々に、タイムリーな話題で、演題を決めました。『大名将棋』でございます。藤井四段の二十九連勝てなニュースが、世間を賑わわしておりましたのでね。しかし、珍しいネタでございます。
とある、お城の城主・お殿様のお話。太平の世の中とみえまして、ご退屈。“退屈の虫が…”ちゃいまっせ。お側に控えております、菅沼を呼んで、将棋の相手。茶坊主が、盤と駒を持ってまいりますが、これとても、我々、庶民のものではございません。塗りの盤に、象牙の駒ちぇな豪華なもん。「将棋というものは、先に出るのと、後に出るのと、どちらが得じゃ?」「先でございます」「それでは、余が先手じゃ。」って、イヤ言われへん。やっぱり、先手が有利なんでしょうなあ。「遠慮なくまいれ」って、そんなもん、まいられへんがな。「その歩を取ってはならん!」て、駒取れへんがな。菅沼さんが、王手で、詰んでしまうと、王を盤の下に隠してしまう。こんな将棋、どないしまんねや?「私の負けでございます」言わな、しょうがない。「負けた者は、領地没収、その身は切腹。」って、んなアホな。その代わりにバツといたしまして、鉄扇で眉間割り。血出てきた。
こらかなわんわけですけれども、その日からというもの、お殿様は、ご家来衆を呼んでは、将棋の相手をさす。無茶を言うては、鉄扇で叩かれる。そら、お殿さんに、勝つわけいけしまへんがな。負けなしゃーない。ある人なんか、侍やめて、城下の外れで、焼き芋屋でも始めようかとしてる。皆が、ワイワイ言うておりますところへ、入ってまいりましたのが、石部金吉郎という、堅い堅いお侍。しばらく、病気で休んでおりましたが、昨日、全快届けを出しまして、二十日ぶりのご登城。この噂を聞きますというと、烈火のごとく怒り心頭。あれだけ強い菅沼さんでも、負け続けて、頭腫れ上がって、もう、腫れてんのか、腫れてへんのか、分からんぐらいに、頭大きなってる。それでは、この石部がと、お殿様の御前へ出まして、早速に将棋のお相手。
お殿様も、イヤな奴が来たなとは思えども、将棋を指しますわ。「その歩を取ってはならん」なんて、聞く人かいな。待ってももらえへん。お殿様、たちまちに負けてしまいます。お約束ですので、石部さんに、イヤちゅうほど、鉄扇で頭を叩かれる。「余も、城下外れで、焼き芋屋をいたす。」と、笑福亭仁鶴氏は、サゲたはりました。「将棋盤を片付けぃ。明日より、将棋を指すものは、切腹申し付ける!」と、これが東京でのサゲになりますか。『将棋の殿様』ですな。ただ、上方式には、まだ続きがあって、この後、お殿様が、落とし噺・落語、お笑いに凝る。あまりにも、しょうむないものばかりですが、笑わんとしょうがないので、また鉄扇で頭叩かれると困るので、仕方無しに笑って退出する。ある噺の途中で、厄払いが登場する。口上を言って、最後のところ、「西の海へさらり」で、『厄払いましょう』というところを、「笑いましょう」と言ってサゲになるらしいです。私も聞いたことがございません。桂小春團治氏が、この辺りまで行って、「頭の中が痛うなる」かなんかで、サゲたはりましたかね。
上演時間は、二十五分前後でしょうか。噺だけですと、もっと短く出来ると思います。でも、基本的には、将棋を、多少の駒の動かし方ぐらいは、知っているほうが、笑いは倍増しますわなあ。全く知らないと、おもしろくないかも分かりません。槍が宝蔵院流とか、八艘飛びであるとか、おもろい場面がありますしね。どうなんでしょう?昔の人のほうが、将棋の知識はあったんでしょうか?現代人でも、そう捨てたもんでは無いようにも思うのですが。古くて新しいゲームといやあ、ゲーム。勝負といやあ、勝負ですわな。先に申しました、仁鶴氏と小春團治氏のものを、聞かせていただいたことがございます。よくウケておりましたが、つられて笑っておられる方も、多いかも分かりません。個人的には、私も、よく将棋を指しておりましたので、おもしろいなあと思って、聞かせていただきましたが。残念ながら、女性の方には、少ないかも知れませんね。
<29.8.1 記>
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