押し詰まりました。忘年会なんかも、年々、少なくなりつつありますけれども、とりあえず、出てなかったネタで、『寄合酒』をお届けしたいと思います。上方を代表するようなネタでもあり、他愛も無い、何事とて無いネタでもあり。

 若いもんが集まりますというと、飲もうという話になりますわなあ。そうなりますと、出し合い。ヘソやドスや、おまへんで。割り前・割り勘で飲もうということ。一人前が五十銭。それが、財布忘れたや、中の銭忘れたやら。懐に手入れたさかいに、あんのかいなあと思いきや、パッチの紐ゆるめたやて。誰も無い。そこで、今日は、持ち寄り散財にしょうかと。要するに、家へ帰って、ばんざいもん、おかず一品ずつでも持ち寄って、それを肴に、一杯飲もうと。若いもんばっかりでっさかいに、すぐに話は、まとまりまして、それぞれ帰る。

 とりあえず、「酒が一升あまりや」て、桶に一杯。普通、徳利に一杯ですねけどね。家へ帰るなり、徳利の底抜いて、桶の中に入れて、酒屋へ持って行た。向こうのおやっさん、近目で、目が悪い。無精な話で、一升量らいでも、一升徳利に、一升以上は入りますかいなと、酒を入れる。底が抜けてまっさかいに、なんぼでも入る。一升二合ほども入ったところで、『この徳利、よう入りますなあ』と言われたところで、詰めをして、徳利を上げる。『そこの米屋に、用事があんねん。帰りしなに、銭払うさかいに。』と言うて、酒の入った桶持って帰って来たて。

 次は、鯛。「高かったやろ。」「さあ、高かったやろなあ。」って、こんなんばっかり。横町で、魚屋が、荷おろして、料理してる。そこへ、金物屋の赤犬が来て、荷の中から、鯛くわえて、走って行く。跡を付けて行くと、曲がった所で、喰おうとしているので、石拾うて、ぶつけると、『くわん』ちゅうて、鯛離しよった。犬が喰わん鯛、皆で喰おうかて、ムチャクチャですがな。

 次は、棒ダラ。これも、品名もんがタラで、値段がタダ。乾物屋の前へ立ったら、向こうのおっさん、新聞読んでる。そこで、棒ダラ一本かたげた。顔上げた拍子に、反対側の手で、もう一本かたげた。『おっさん、この棒ダラなんぼや?』『二円五十銭』『高いな。今、向こうの市場で、二円で買うて来てん。そない値が違うねやったら、もういっぺん、向こうで買うて来よ。』て、棒ダラかたげた来た。

 それを横で見てた男が、乾物屋のおっさんに、『早幕で、小豆一升量ってくれるか。』て、カズノコの上へ、風呂敷広げた。『あんた、店間違うてまっせ。小豆やったら、向かいの雑穀屋へ行きなはれ。』『すまん、すまん。』言うて、風呂敷直したら、ぎょうさん、カズノコ付いて来た。って、掴んで来はったんですがな。次が、鰹節二本。帰りがけ、鰹節屋の子供に会うた。よう知ってんので、『鬼ごとしまひょか』と誘うた。鬼になるには、角が要るので、鰹節二本持って来なはれと、鰹節持って来さした。『ぼんぼん、かもか。』『おっちゃんこわい』と、追い詰めて行って、最後に大きな声で、『ぼんぼん、かもか!』『こわい』言うて、逃げて行った。「これみんなで、かもか。」って、んな、アホな。

 他にも、味噌の包みやら、根深やら大根やら。「道に落ちてた」って、そら、車かなんぞで、置いたあるんねや。配達かなんかでっしゃろな。ま、とりあえず、一杯飲む段取りをつけようといたします。男ばっかりですからな。まずは、鯛の料理。「ウロコよう、ふいときや。」「ぞっきんか、ふっきんで?」違うがな。「ウロコ起こすねや」「ウロコさん、起きなはれや。」違いますがな。ウロコ取りますねや。パリポリ、パリポリと。目に入って、魚眼レンズに…、なりますかいな。横から金物屋の赤犬が来て、『ウー』っと。『シー』と言うたが、離れへん。「どうしたらエエ?」「頭でも尾でも、ボーンとくらわせ。」尾をやりますが、まだ離れん。今度は頭。それでも離れん。「胴体くらわせ」「かめへんのんか?」「ボーンとくらわせ」って、なんにも、無いようになってしもた。「犬向こうへ行った」「鯛の料理に掛かり」「鯛、あれへん。」って、そらそうですわいな。犬どつくの違うて、鯛の身くらわせたんですから。

 さいぜんから、バタバタと煽いでおりますが、一向に、火がつかん。「火の種は?」「そらまだや」って、火起こりますかいな。横手は焦げ臭い。カズノコ炊いてるて。そら、塩で揉むのやがな。「根深塩で揉んでます」って、こまこう刻むのやがな。「棒ダラ刻んだ」て、順々に、間違うてなはる。「酒の燗は?」「上燗でっせ」と、すでに酔うてる。毒見に飲みすぎたんですがな。「ダシでけた」って、いかきに一杯。そらダシがらや。「あの湯、要るか?」おかしな具合でっせ。知らんもんとみえて、ダシにフンドシ漬けて、洗う…。んな、アホな。

 とりあえず、味噌が残ってんので、この味噌をすろうと、すり鉢を持って来ますが、そこは、気の効かん話。すりこぎが無い。細長い棒で…、火吹き竹や爪楊枝と間違いながらも、頭を濡らして。自分の頭濡らしてなはる。というようなところで、ワアワア言うております、『寄合酒』でございます。特に、サゲは、ございませんかね。普通は、この程度で終わられます。ただ、正式には、これから、『田楽喰い』になるとされておりますが、これはこれで、別の噺として、扱われることが多いみたいですね。続けてというのは、私も、勉強不足で申し訳ないのですが、よく存じません。

 上演時間は、十五分から二十分前後。おもしろいネタで、どこでも切りやすいので、寄席向きですな。やりやすいし、ウケやすいのも確かです。ただ、近年では、故・六代目笑福亭松鶴氏が、まとめられた、十八番ネタでもありますな。もちろん、それ以前も、以降も、あるのですが。前半は、友達仲間が集まりまして、一杯飲もうという算段。若いもんですから、今も昔も、金は無い。出し合いするところから、おもろいですわな。それから、中盤は、持ち寄り散財ということで、話は決まりまして、それぞれが、品物を持って来るというか、せしめてくるというか。なお、おもろい。後半が料理の場面。男ばっかりで、これも、ウマイこといかん。スカタンばっかり。お笑いに満ち溢れたネタでございます。

 東京では、そんなに聞きませんが、また、今なら、形を変えて、演じられているでしょう。どう考えても、上方ネタでございます。所有音源は、故・六代目笑福亭松鶴氏、故・桂米朝氏、笑福亭松之助氏、故・桂春團治氏などなど、いろいろな方のものを聞かせていただきました。それこそ、大御所から若手まで。やりやすいネタですからな。おもしろいですし。今現在でも、品物や、やり方を変えて、また、おもしろいものになるかも分かりませんね。

 また、来年も、よろしくお願い申し上げます。どうぞ、良いお年を。良い


<29.12.1 記>


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