やっと念願でありましたHP自体の更新を、ちょっとだけさせていただきました。『索引ページ』もございますので、ゆっくりと見とくれやっしゃ。ということで、今月は、先月の『鷺とり』で予告いたしておりました通り、『商売根問』をお届けいたしますわ。

 あいも変わらん、何してんのか分からんような男が、知恵者の元を訪ねるという、おきまりのパターンですな。腰落ちつけてんのは、座布団の上、寝起きすんのは、布団の上。てなこと言いながらも、今は、十階の身の上やて。高いとこに住んでんのかいなあと思うと、これが、よその二階に厄介になってるさかいに、足して十階。どっから、そんなこと思いつくねやろ?何かやってんのかいなと聞かれると、寝る前に、そば一膳。何か手職はで、あかのエエ手燭。そんなん違いますがな。どないして食べてんのかと聞かれると、右手に箸、左手に茶碗。その御飯は、お櫃、釜、米かし桶、米櫃の米やて。ほんで、その米は、米屋が持って来て、その払いは倒す。て、んな無茶な。銭もうけは、爪楊枝削りの内職。「そら、元の細い商売やなあ。」「いや、元は太うて、先が細い。」爪楊枝の形違うがな。

 しかし、それでは儲からんので、最近は、鳥捕りてなもん考えてるて。一時に、五十羽・百羽の雀を捕まえる方法。みりんのしぼり粕・こぼれ梅と、殻つきの南京豆を用意する。こぼれ梅て、昔、よう夜店やなんかで、売ったはりましたな。今、あんまり見ませんけど。雀がたくさん集まる所を知ってるので、その庭一面に、こぼれ梅を撒いとく。すると、庭の木に雀が集まって来て、ゴジャゴジャ相談する。うまそうなもんを人間が撒いて行ったけど、何か仕掛けがあるように思えて、皆、なかなか食べに降りられへん。ところへ、はるか巽の方角から一匹やってきたのは、江戸っ子の雀。ホンマかいな?意気地のないことと、一番に降りて、ちょいとつまんで、バタバタバタと、元の木の上へ。なかなかおいしい。皆が順々に降りて、食べてしまう。と、みりん粕でっさかいに、アルコールが少し入ってる。エエ気持ちになって、歌の一つも歌い出した後は、うつうつっとしてくる。そこへ、今度は、庭一面に殻つきの南京豆を撒く。そうそう、あのひょうたんみたいな形のくぼみが、雀の頭にちょうどエエ。つまり、枕。いびきの一つも出た所で、ちりとりとほうきで、雀を集めて回る。ホンマに、うまいこといくのかいな?やってみたところ、こぼれ梅までは良かったが、南京豆撒いた時に、その音に驚いて、雀が逃げてしもた。何じゃかんじゃで、エライ損。

 この損害を取り戻そうと、今度は、鶯捕り。知り合いの家に、鶯がよう飛んで来る。洗濯糊に、墨やら絵具、いろんな色入れて、まんだら色にして、これを手から腕に塗る。つまり、これが梅の古木。台所の天窓にはしご掛けて、この手に御飯粒をつけて、天窓の上から、手の部分を差し出す。ほんで、これを梅と間違うて、御飯粒食べる鶯を手で捕まえるて。これも…。実際にやってみたて。朝早うから、はしごのぼって待ってたが、なかなか飛んで来うへん。昼頃になって、やって来て、鶯がこの手に止まった。動き回るのが、コチョコチョして、こそばい。いよいよ御飯粒食べ出して、ギュッーと握ろうとしたが、指が曲がらん。そらそうですわ。朝から待ってて、糊乾いてもた。必死で動かそうとする拍子に、足が乱れて、はしごから落ち、医者や薬で、エライ損。そらそやわ。

 この損害を…。て、もうよろしいか。今度は、ガタロ捕り。つまり、河童ですな。『代書』の川さらいも、ガタロといわれてますが。子供時分、本町に住んでて、“橋の下にはガタロがいる”と親からいわれてたんで、本町の橋の下へ。ガタロは、人間の尻子玉を抜くとかいいますので、誰ぞに、お尻だけ貸してもろて、手伸ばしてくるところを捕まえようとしたんですが、誰も尻貸してくれへん。しょうがないので、自分で着物まくって、ガタロを待ってたて。なかなか現れへん。ふっと橋の上見たら、ぎょうさんの人。中の一人が、『何してなはんね?』と言うさかい、『ガタロ釣ってまんねん』言うたら、皆が笑うて、その笑い声でふらふらとしてしもて、川の中へドボーン。ぬれねずみになって、川から上がってきたら、子供が、『うわぁ。ガタロが出た。』て、反対にガタロにされてしもた。

 こんなんもある。鯖と鯵を魚屋として、振り売りで売り歩いた。しかし、どういうわけか、鯵だけ売れて、鯖が売れん。そこで、『鯵ない鯖や』と売り歩くと、よけ売れへんかったと。つまり、“味ない鯖”やて。三つ葉を売りに出たんやが、売りもんの名前、つまり、何売ってんのか、自分で分からん。て、んなアホな。長いことかかっても思い出せへんうちに、三つ葉がしおれてきた。どうもしょうがないので、天満橋の上から、しおれた三つ葉ほかしてしもたったら、水含んで、シャキッとしてきた。ここで、三つ葉思い出したて。慌てて川の中入って、拾い集めようとしたんやが、間違うて、上手へ泳いで行ってしもて、三つ葉が皆、下手へ流れてしもた。アホやがな。

 人に世話してもろて、余ってる茶と柿と栗と麩を売りに出たんやが、たてまえ、売り声をどないしてエエか分からん。『チャックリカッキフ』と売り歩くと、子供がぎょうさんついてくるわ、ちんどん屋の『ドンガラガンのプー』ちゅう音がよう合うわ。一人で楽しんでたが、何売ってんのか分からんので、さっぱり売れん。また、竹の先に飴つけたら、キリギリスが捕れると教えられて、捕りに行く途中、知り合いに、「今からイギリス捕りに行くねん。」「何で捕るねん?」「アメリカで。」とかいうのもありますな。“金が金を呼ぶ”ということわざを聞いたんで、金持ちの家の塀の外から、釣竿に銭つけて中へ放り投げる。銭が倍ぐらいになってるかと思うて、しばらくして引き上げると、つけたった銭がない。「ああ、エサ捕られた。」なんかもありますね。

 ま、この辺で、たいがいのものは終わりとなります。サゲをつける場合は、上記の『イギリス』や『金つり』の小噺なんかで終わりますかな。ガタロの件り、『ガタロが出た』でも、サゲにされる場合もあります。というか、雀・鶯・ガタロぐらいで、サゲなしにされているのが、今は主流のように思いますけど。どれといって、決まったサゲはないようですので、あしからず。

 上演時間は、そら幅の広いもんで、十五分前後から、一時間近くになることも、昔はあったようです。たしか、桂文紅氏が、ラジオ番組かなんかの中で、四十分近くやったはったとか、故・六代目笑福亭松鶴氏も、長々とやったはったとか、噂だけ聞いたことありますねけども。だいたい、十五分か、二十分前後と違いますか。俗にいう“前座ネタ”とされてはいますね。最初から最後まで、特に笑いの多いネタですので、前座ネタの中でも、演じられると、特なほうのネタではないかと思います。いわゆるところの、“根問物”といわれるものの中の一つで、『浮世根問』とか、『絵根問』なんかと同様、たいがいが二人だけの会話で進みますな。つまり、根掘り葉掘り聞いていくので、“根問”ですね。桂都丸氏の創作で、『近鉄根問』ちゅうのなんかもありますけど。近鉄ファンやったんでね。上記のうちで、全て演じられることは、そんなにありませんで、いくつかの程度で終わります。順序も別に、そんなに決まってるわけではありませんが、それは、それなりに工夫されるようです。

 なぜ、こんなに、いくつもあるのかというと、それは、時間を延ばさなければいけない時なんかのためですね。たとえば、寄席で、次の演者が、まだ来ていないとか。それで、このネタの後に、先月の『鷺とり』や『天狗さし』なんかをやったひにゃ、一時間越しますしね。ですから、都合も良く出来ているんでしょう。でも、短くても、十分、おもしろいですよ。ただ、あんまり力入れすぎると、次々と話題が変わりますんで、ついていけない感じが出るといけませんので、順々とやっていかれるほうが良いですかな。東京でも、同じ題で、同じ趣向ですが、そんなに演じられてはいないみたいですね。そこら、やっぱり、商いは、大阪が本場ですし。

 所有音源は、桂坊枝氏のものがあり、他に、桂米平氏、桂吉坊氏などなど、たくさんの方のものを聞かせていただいております。坊枝氏、ホンマ、アホというか、間抜けというかの人物像を描くのがウマイですなあ。この時のは、私、ホンマに腹かかえて笑いましたもん。特に、ガタロの件りで、主人公が川からヌッと上がって来る所やなんか。桂米平氏のものなんかも、爆笑に継ぐ爆笑でありましたわ。おもろかった。桂吉坊氏のものは、お二方が、たしか、雀・鶯・ガタロやったのに対して、三つ葉と茶栗柿麩が入っていて、これまた、おもろかった。私より歳も下なんで、ぜひとも、これからも、期待してまっせ。

 大それたネタでは決してありませんけれども、このネタを始めて聞いた時のおもしろさ、忘れられませんね。私、意外と、好きですねん。

<17.2.1 記>


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