20本ほど所有している5687を出力段に使用し、小出力の全段差動アンプを製作しました。回路図はここです。
一見複雑な回路ですが、ひとつひとつ読み解けば至ってシンプルな回路です。5687の動作点は150V30mAでOPTは10kΩで出力は1.125Wです。(理論値)
5687は相互コンダクタンスが高く、発振しやすいとの事なのでグリッドには発振防止用の1kΩを入れてあります。
出力段の定電流源は、当初CRDを3本並列で30mAを得ようとしていたのですが、温度特性が悪く動作が安定しません(温まるほど電流値が下がってしまう)でした。またCRDの動作抵抗は一本あたり数十kΩで、3本も並列にした場合更に低くなってしまうため、検討の結果LM317Tに変更しました。動作抵抗は実測値で500kΩ程度に高められました。
2.デザイン
今回、この様に異様な形相となってしまったのは必要充分なB電圧を得られるトランスがなかったためです。200Vタップから得られる交流をダイオード整流すると√2倍で約280Vが得られます。有難いことにPTは目減り分を見込んでかなり巻き足しがしてあったので、えらく高い電圧となってしまったのです。整流管を使用すればもう少し低く押さえられますが、いずれにせよ高すぎるためドロップ用の抵抗が必要になります。なので、ここは開き直ってドロップ用の抵抗オンリーで済ましてしまおうと考えました。
ドロップ抵抗で消費される熱量は両チャンネルで約5Wとなります。25W型の抵抗を使えば何とかなるだろうと、当初はシャーシに直付けしていたのですが甘かったです。あっという間にシャーシ全体に熱気がモワモワーっとなりました。そこでこれだけはやりたくなかったのですがPentium用のヒートシンクを使ってドロップ抵抗をシャーシからアイソレートしたのです。結果、シャーシの熱は気にならないレベルになったのですが見た目はこんなことになってしまいました。(;;)
真空管から出る熱も馬鹿にはできません。5687はヒーターだけで一本辺り5W強の熱をだすので放熱のために下に沈めることにしました。この辺は一生懸命デザインしたので自分でも結構気に入ってます。(出力管の方が低くなってますが、気にしない気にしない)
3.周波数測定
測定した周波数特性は以下の通りです。低域は10Hzで歪が大きく(波形がなまってしまう)ー2dBまで測定する気になれませんでした。段間の容量を増やせば、更に改善すると思います。出力は8Ω負荷でクリップ寸前のp-pで7V(rms=2.47V)です。なので出力は2.47^2/8=0.76Wと設計時よりも小さくなってしまいました。
4.感想
実はこのアンプ、すでに解体済みで存在しません。3台目のアンプの部品取りをしてしまったのですが、単に部品が欲しかったのではなく、満足の行く音が得られなかったためです。
定位は全段差動の評判どおり非常に良かったのですが、どう表現していいのか、「線の細さ」がありました。これは、プチアンプと言う出力の不足から来るものでは無く、ボリュームを上げれば我が家ではうるさいほどの音量を得られました。ところが、例えばTV音声を入力した時に、2A3sではとても明瞭に聞き取れるのですが、このアンプでは逆にテレビのスピーカーからそのまま聞いたのと変わらない感じでした。帰還量を変えたりしてみたのですが最後まで払拭できませんでした。
OPT(TANGO U13-10)の役不足かとも思ったのですが、そうではありませんでした。解体後、3台目の6BM8全段差動に使用したところ、量感たっぷりの音が得られたからです。いまのところ出力段に使用した5687の限界、ということにしておきます。
今回、特性としては満足の行く結果が得られなかったのですが、お金をかけずに理想を追求するには、プチアンプはもってこいかもしれません。プチアンプの利点は、1.製作の容易さ、2.低価格化にあると思います。小出力であるが故に、OPTやPTが小型のもので良くなり、シャーシにも自由度が増します。また製作の際、シャーシをひっくり返すのも軽々と行えます。前作はトランス類が重く、高く予算交渉にも難航し製作に1年近くを要しましたが、今回は構想から完成まで3ヶ月かかりませんでした。回路上で何かを試してみたいと思ったとき気軽に手を出せるのは初心者にとっても非常に良い環境であると思います。
その一方、こういう低いB電圧を要求するアンプ用の電源トランスが無いという問題があります。真空管アンプ用の電源にこだわらず、B電源用、ヒーター用と分ければ良いのかも知れませんが、もう少しスマートに済ませたいものです。最近になって知ったことですが、ノグチトランスから販売されている、PMC-190Mは、180Vタップを備えており、数少ない選択肢の一つになると思います。
おまけ・恒例ハラワタ画像!
今回は綺麗なハラワタを目指したのですが。。。(でも前よりはましか)
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