電磁石用電源 筆者 福島 貫 目次 概要 このページのTOPへ 電磁石用電源は、静磁界を利用するため本質的には直流電源です。(脱磁器を除く) 通常の直流電源の設計については、多くの文献が出ているのでそちらを参考にしてください。 電磁石用電源が、通常の直流電源と異なる点は、電磁石が他の電気機械に見られない様な非常に大きいインダクタンス成分を有することと、強磁性体の磁化曲線がヒステレシス曲線であるため、残留磁気が発生して、「ワークが離れない」「鉄粉が吸着する」等の問題を起こすため、これの対策が必要となる点にあります。 残留磁気の除去法としては、理論的には温度をキュリー点(鉄の場合は600℃程度)以上に上げる方法も考えられますが実用的でなく、一般には逆方向の電流を流す方法が用いられています。 残留磁気を十分に小さくしようとする場合には電磁石に流す電流の方向を変えながら、徐々に電流を小さくする方法を用いる必要があり、実用的な電流の反転回数として10〜30回程度の値が用いられます。 このとき問題となるのが、電磁石のインダクタンスによるサージ電圧の発生であり、単に電磁石の電流を遮断しようとすると殆どの場合電源に使用している主要部品が破壊されます。 電磁石用電源では、長年このサージ電圧の抑制に関する研究が行われてきましたが、このことについて書かれた文献は見当たらず、カット&トライや経験での設計を行っている技術者が多いように思われます。 筆者は、1985年に世界で始めて主回路にリレーを用いない完全半導体化自動消磁装置の開発に成功しました。 以来、サージの吸収について計算にのせるべく初歩的で一般的な方程式の適用を試みており、現在サージ電圧では全く問題が発生していません。 これに基づいて設計されたトランジスター方式(トランジスターモジュールの廃品種化によりIGBTに変わってきている)の電源は、約27年の実績があり、高性能を必要とする脱磁器用電源にも使用されています。 電磁石の電流遮断に伴うサージ電圧の発生は自然現象によるもので、電磁石の電気的な等価回路を抵抗RとインダクタンスLの直列回路ですから、これに電圧eを接続して構成される閉回路の電流方程式は(1)式でとなります。 但し、e:印加電圧 R:電磁石のコイル抵抗 @:電流 L:インダクタンス t:時間 この回路に磁石と直列にスイッチを接続して電流を遮断できるようにしたとき(図1)、スイッチの抵抗をRsとすればこの時の方程式は(2)式のようになります。 但し、e:印加電圧 Rs:スイッチの抵抗 R:電磁石のコイル抵抗 @:電流 L:インダクタンス t:時間 (スイッチ完全OFF時のRs=∞) (2)式から明らかなように急激に電流を遮断するとdi/dtが非常に大きな値(電流が減少するのでマイナス)となり、 印加電圧 にインダクタンスに発生する電圧(サージ電圧)を加え抵抗の電圧降下を引いた電圧がスイッチにかかることになります。 このスイッチの抵抗Rsは完全遮断状態では∞となりますが、回路に電流が流れている状態でスイッチをOFFしたときは、スイッチの接点部分の抵抗は大きくなろうとしますが、この部分に非常に高い電圧がかかることになり、放電現象を誘発して∞にはなりません。 この時スイッチの接点部分は、抵抗が大きい状態で電流が流れおり、接点部分に非常に大きな電力消費が発生しています。 このためスイッチの接点が溶けます。 一般にインダクタンスに蓄えられるエネルギーは、次式で表されます。 但し、W:蓄えられるエネルギー L:インダクタンス I:インダクタンスに流れる電流 磁気回路に飽和がない場合のインダクタンスは、(4)式で表されます。 但し、L:インダクタンス Pa:磁路のパーミアンス N:コイルの巻き数 サージエネルギーの最大値は実測で求める このページのTOPへ (3)式及び(4)式で問題なるのはインダクタンスで、インダクタンスは磁束の関数となりますが、電磁石は磁束を飽和させた状態で使用するため磁気飽和の影響を受けます。 このことは、ワークの状態や励磁電流の大きさでインダクタンスが変わることを意味しています。 また電磁石の使用状態ではワークの状態が特定しにくいという問題があります。 この「サージエネルギーの大きさが特定しにくい」と問題については、次のような解決方法が考えられます。 電源の設計ではサージ電圧による機器の破壊を問題とします。 このため、サージエネルギーの最大値に対応する抑制策が講じられていればよいことになります。 磁石が決まった時、電磁石の吸引面より大きなワークを想定すれば、電磁石の磁束はそのほとんどがワークを通ることになります。 電磁石に蓄えられるエネルギーは吸引面の空隙の関数となり、通常の電磁石では吸引面の磁束密度が1.2〜1.4 [T] 程度となる時が最大となると考えられます。 この付近の条件で、サージエネルギーの測定を行えばサージエネルギーの最大値が把握できます。 サ−ジ電圧の抑制は、電磁石用電源を製作する上で最も重要なものです。 従来一般に行われてきたサージ電圧抑制法には、次のようなものがあります。 1)
サージアブソーバ等のサージ吸収素子を用いる。 2)
抵抗を用いる。 3)
コンデンサーを用いる。 これらは、非常に古くから用いられてきた方法ですが、経験的に用いられることが多く、理論的な解明があまりなされていないように思われます。 サージアソーバと呼ばれるサージ抑制素子があり、広く使用されています。 しかし電磁石の蓄積エネルギーは非常に大きく、これらの素子の容量では間に合わない場合が多く、極小容量のものにしか適用できません。 抵抗を用いてサージの抑制を行う時は、電磁石と並列に抵抗Rsを接続し入力を遮断する方法を用います。 このときの方程式は次式となります。 但し、R:コイル抵抗 L:インダクタンス(電流の関数になる) Ra:サージ吸収用抵抗 発生するサージ電圧は 但し、Vs:サージ電圧 I:電磁石に流れていた電流 Ra:サージ抑制用抵抗 コンデンサーと電磁石で閉回路を作った時の方程式は 但し、c:コンデンサー容量 この時のコンデンサー電圧の上昇分Vcは となります。 永久磁石の着磁には大きな電力が必要ですが、一度着磁すると電力を加えなくても磁力が保持されます。 このため、大電力を短時間供給できる電源が必要です。 数十年前は、永電磁式磁石の電力供給の方法として大容量のコンデンサーを充電して、貯まった電荷を一気に放出する「コンデンサー放電式」の電源が好んで使用されました。。 (この電源は、スタジオ用の容量の比較的大きなストロボ用電源に酷似しています。) しかし、大容量のコンデンサーとなると、価格、大きさの問題から「電解コンデンサー」を使用することになり、寿命が問題になり、また複数回逆励磁を繰り返すことが困難になります。 筆者は、マグネットにも工夫を加えサイリスター式の電源を用いてきました。 現在は、サイリスター式(小容量のものではIGBT式)が主流となっているようです。 |
||||||||||