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電磁石の設計について

筆者  福島 貫

目次    1.概要

           2.マグネットホルダー

           3.研削盤用電磁チャック

           4.切削用電磁チャック

           5.電磁式リフマグ

 

1.概要

電磁石といわれるものには、

       マグネットホルダー

       研削盤用電磁チャック

       切削用電磁チャック

       リフマグ

等があり、下のもの物ほど起磁力が大きく(ギャップに対して強く)なり、マグネットに蓄積されるエネルギーも大きくなります。

 

吸引力や電源に大きな影響を与える蓄積エネルギーの関係から見ると1のマグネットホルダーは他のものとは全く別物のように小さい値です。

 

このことは、マグネットの大きさや強さから想像される通りですが、設計に使用される基本的な計算式は同じものです。

 

電磁石は一般に磁路構成が単純なものほど漏洩磁束が少なく強力なものができます。

 

電磁石は、強磁性体にコイルを巻いた構造となっており、電磁石の設計は磁路の設計コイルの設計からなります。

 

1.1電磁石の磁路計算

コイルの巻き数をN[]、コイルに流れる電流をI[A]としたとき

  起磁力NIN×I [AT]  ----------------------------(1)

として計算します。

このとき、磁気抵抗[WbAT]と磁束Φ[Wb]と起磁力の間には

  ΦNI   -------------------------------------------(2)

の関係があり、これは電気回路におけるオームの法則と同じものです。

(磁束が電流に、起磁力が電圧に、磁気抵抗が電気抵抗に対応する)

この意味で、電磁石の磁路計算は非常に易しいと言えるでしょう。

 

しかし、磁気回路は、電気回路と異なり、強磁性体の透磁率と非磁性体の透磁率の差が少ないため、主磁路の磁気抵抗とともに非磁性体部分に漏れる漏洩磁束を計算する必要があります。

磁路計算簡易計算法 参照)

 

コラム

実際の電磁石の磁路には、一般的な研削盤用電磁チャックの様に非常に複雑なものがあります。

以前には、研削盤用電磁チャックに独立ポール型といわれる構造のチャックがありました。

 

次に、単ポール型と呼ばれる現在研削盤用電磁チャックの主流となっている構造の電磁チャックが考え出されました。

 

この型のチャックは「作りやすい」というメリットがある反面、

1.ワークが大きくなると単位面積当りの吸引力が低下する

2.吸引面の場所によって吸引力が異なる

という問題があります。

 

これらの問題は、単ポール型のチャックが「磁石は計算できない」とされている時代に「経験と実験」のみの設計から生まれたものであり、また吸引力の試験法として、テストピース(JIS)という小さい試験片が用いられたために発生したものと考えられます。

 

このためユーザーに「研削盤用の電磁チャックは弱い」という印象を与えており、吸引力が問題になることも少なくありません。

 

独立ポール型の電磁チャックは単ポール型のような問題はなく、切削用の電磁チャックが出来るまでは、単ポール型に比べて吸引力が強いため、軽切削用としても使用されていたようですが、

1、作りにくい

2、チャックの温度が高くなる

等の問題から研削盤用としては現在あまり作られていません。

 

しかし、独立ポール型の磁路は、吸引力の点では非常に有利です。

 

単ポール型の磁路構成をもつ永電磁チャックでは、電磁式のものより吸引力が小さくなり、単ポール型電磁チャックの問題点もそのまま残りますが、独立ポール型の永電磁チャックではテストピースでの吸引力は小さいものの、ワークの吸引面積が100mm□程度の実用的な大きさになると、単位面積あたりの吸引力が単ポール型の3倍以上になり、吸引面の場所による吸引力のばらつきも余りありません。

 

この原因は、単ポール型では面板の磁路の一部の磁路断面積が小さくなり、この部分で磁気飽和が生じるため、ワークの吸引面積が大きくなると十分な磁束の供給ができなくなることにあります。

 

漏洩磁束が大きいことも原因の一つです。

 

吸引力を増加させるためには、「マグネットの磁路に飽和が生じないようにすること」と、「漏洩磁束を小さくすること」が必要で、切削用や、リフマグ等大きな吸引力を必要とするものは単純な磁路とするのがよいようです。

 

 

1.2コイルの計算

コイルは、起磁源であると同時に発熱源です。

コイルの発熱の大きさは、チャックの熱変形や絶縁破壊の原因となるため用途によって決められます。

 

    ----------------------------------------(3)

       但し θ:温度上昇  W:消費電力  λ:放熱係数  Sh:放熱面積

 

このうち放熱面積と放熱係数はチャック構造によりきまるものです。

放熱の問題は複雑となるため、通常は経験上から得られた起磁力を目標にした計算が行われます。

(このとき、発熱の問題があることに注意する必要があります。)

 

通常は、次式でコイルの抵抗値を求め、電源電圧と抵抗値から電流と起磁力を計算するという方法が用いられています。

 

       -----------------------------------------(4)

   但し R:コイル抵抗  ρ:導体の固有抵抗  N:コイルの巻数  L:平均コイル長

  Sc:導体の断面積

 

       ----------------------------------------------------(5)

       但し I:電流  V:電圧  R:コイル抵抗

 

     -----------------------------------------------(6)

 

    但し NI:起磁力  N:コイルの巻数  I:電流

 

2.マグネットホルダー   目次へ

吸引面の直系がφ50以下程度の小さいマグネットをマグネットホルダーと呼んでいます。

このマグネットは、リフマグと呼ばれる大型の吊り上げ用マグネットと同じ構造をしており、設計の基本もほぼ同じものです。

 

しかし、小さいために

* 発熱の問題から起磁力を大きくすることができず、吸着面ギャップに強いものができない。

* 吸引面積が小さいため吸引力も弱いものとなってしまう。

という問題があります。

(少しでも強いものを作るには、コイルの占積率をあげることを考える必要があります。)

 

このタイプのマグネットは、小さいため、蓄積エネルギーが小さく、電源の設計が非常に楽になるのが特徴です。

 

電流立ち上がり時定数もちいさく、通常のマグネットのように全波整流しただけの電圧を印加すると、吸引力が時間的に変化し(振動する)、弱くなるので注意が必要です。

できたら、コンデンサー等で平滑した電源を用いることが望まれます。

 

(マグネットホルダー以外のものでは、インダクタンスが大きく電流の立ち上がり時定数が大きいため、特別な平滑回路を必要としません)

 

3.研削盤用電磁チャック   目次へ

研削盤用電磁チャックは、一般に細かいものや薄いものを対象とすることがあるため、極間ピッチが小さいものが要求されます。

 

「単ポール型」と呼ばれる通常の研削盤用電磁チャックでは、構造上磁路の狭い部分が出来、且つ漏洩磁束が大きくなるため、ワークの吸引面積が大きくなると単位吸引面積あたりの吸引力が小さくなります。

 

この点、独立ポール型と呼ばれるものでは、磁路の狭い部分が出来難いため、比較的吸引力の大きなものが出来ますが、コイルが長くなるため、発熱が大きくなるという問題があります。

 

独立ポール型のものは、ワークが薄い場合にも有利で、薄いワークを対象とした細目ピッチ電磁チャックでは基本的に独立ポール型で、浮き磁極を併用した形のものが多いようです。

 

発熱を少なくするためには、通電時間を短くできる永電磁式が有効です。

 

研削盤用では、

       加工精度が要求される。

       吸引面がきれいな(凹凸がない)場合が多い。

ことからチャックの温度上昇を小さくするため、比較的起磁力を小さく設計するのが普通です。

 

細目ピッチの電磁チャックでは、少し起磁力が高くなり、独立ポール構造であることもあって発熱が大きいものとなる傾向があります。

このため、水冷式等のものも実用化されています。

 

研削盤用チャックは、起磁力が小さいため蓄積エネルギーが切削用やリフマグに比べて小さく目安として1030ws程度と考えてよいでしょう。(チャックの大きさで異なる)

 

4.切削用電磁チャック   目次へ

切削用電磁チャックは、黒皮鋼板など吸引面があまりきれいでないものを吸引する必要があり、切削であるため、研削よりも切削抵抗が大きく、ギャップに強く吸引力の大きいものが要求されます。

 

このため、起磁力も2000AT程度は必要で、漏洩磁束もなるべく小さいことが望まれます。

また、一般的に研削盤用に比べて極間ピッチが研削盤用のものより粗くなります。

 

切削用では、独立ポール構造が普通です。

 

蓄積エネルギーも目安として3060ws程度はあると考えてよいでしょう。

 

5.リフマグ   目次へ

リフマグと呼ばれるマグネットは、鋼板運搬用に使用されるマグネットで、吸引面にゴミなどが入った場合でも対応できるよう起磁力が大きく設計されているのが普通です。

 

特殊なものでは、キャタピラー材のように非常に凸凹したものの先端を吸引して運搬できるようにしたものもあります。

 

概略的には、大型のものほど起磁力が大きく設計されており、起磁力数万ATと言ったものもあります。

起磁力の大きさは、発熱で決まる場合が多く、コイルスペースの大きいものほど起磁力が大きいと考えてよいでしょう。

 

蓄積エネルギーも大きさに比例して大きくなり、数百ws程度になります。

 

電源の設計では、この蓄積エネルギーの大きさが問題になりますが、現在のところリフマグでは高度の消磁性能を要求されることは少なく、一回の逆励磁でよいため、OFF時に時間をかけることで実用上は問題がない場合が多いようです。

 

大型のリフマグでは、電流の立ち上がり時定数が非常に大きく、ON操作してから吸引力が一定の値に達するまでの時間が長くなるという問題があります。

 

この問題を解決するため、ON動作の開始時に定格電圧の何倍かの高電圧を印加し、電流が定格に達したら印加電圧を定格状態に戻すという方法もとられています。