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永電磁式磁石について

筆者  福島 貫

目次 1、概略 

2.電磁石の欠点と永久磁石の欠点 

3、永電磁式の利点 

4、永電磁方式種類

5.永電磁方式の欠点

 

 

1.概略                                このページのトップへ

 

永電磁磁石は、永久磁石を着磁したり脱磁したりすることで、磁力のON-OFFを行うもので、電磁磁石の欠点と永久磁石の欠点を補う方法として古くからいろいろの方式が考えられてきましたが、

1.      電磁式に比べて吸引力が小さい

2.      残留磁気が大きくてワークが取りにくい

という問題が解決できないという状態が長年続き、「永電磁は使用しにくい」という考えが定着したような状態がありました。

 

しかし、近年強磁性体の飽和領域での磁気回路の解析が試みられるようになり、また制御技術の進歩もあっって、切削用チャックでは電磁式に匹敵するものが出現し、研削盤用では電磁式のものに高性能の自動消磁装置を使用した場合(残留磁気が殆ど感じられない)と同等の残留磁気状態とすることができ、且つ消磁時間が短く、吸引力も電磁式よりはるかに大きいものが出来るようになりました。

 

2.電磁式の欠点と永久磁石式の欠点               このページのトップへ

電磁式の欠点

1.                                  停電時や断線により磁力がなくなる

この問題は電磁石の最大の欠点で、工作機械のテーブルなどに用いた場合は、使用中に磁力がなくなるとワークが飛ぶ、リフマグの場合はワークが落下する等の現象となり、設備の破壊や人身事故を招く危険があり、古くから高価な停電保護装置等が使用されてきましたが、停電保護装置もまた、断線の問題には対応できないという問題があります。

 

2.                                  電流を流し続けることにより発熱し、精度に影響を与える

工作機械のテーブルに使用する場合は、テーブルの精度が加工精度に影響を与えます。

電磁式では、常に電流を流す必要からテーブルの温度が上昇します。

このため、実際の設計では精度を必要とする場合は温度上昇を極力抑えるような設計が行われますが、吸引力の関係で、発熱の抑制には限度があります。

 

永久磁石式の欠点

1.      ON-OFF操作に内部の磁石を動かす必要がある。

永久磁石式のチャックでは、内部の磁石を移動することで磁力のON-OFFを行います。

この磁石の移動には大きな力が必要で、あまり大きなものは動かすことが出来ません。

また、動かすスペースや隙間が必要となるため、強度や精度に注意が必要です。

 

2.      ワークの残留磁気はとれない

ワークを磁力で吸引すると、ワーク内部に残留磁気が残ります。

ワークの残留磁気をある程度以上に小さくするには、現在のところ数回以上の減衰する交番磁界をワークに与える必要があります。

永久磁石式では、一般にチャック内部で磁気のショート回路を作り、チャックの磁気が外に出ないようにしてOFFします。

このため、永久磁石式ではワークに残る残留磁気をなくすことは出来ません。

 

3、永電磁式の利点                          このページのトップへ

永電磁式は、上記の電磁式、永久磁石式の欠点を補う方法として考え出された方法で、

1.      停電や断線により磁力がなくなるという心配がない

2.      ON-OFF操作時にのみ電力を供給すれば良いため、ON状態が長い場合は発熱による精度の低下の心配がない

3.      電力の供給によりON-OFFを行うため操作が簡単

4.      内部の磁石を動かす必要がないため、構造が簡単で、強度のあるものを作ることが出来、制度も維持しやすい。

5.      短時間励磁でよいため、コイルスペースを小さくすることができ、設計の自由度が大きく、吸引力の大きいものや薄物(ワーク)用などを作りやすい。

6.      短時間励磁のため、コイルの電流密度を上げることが出来、耐水性能を上げるためにビニール線などの被膜電線の使用が可能になる。

 

このため、研削盤用等では電磁式の数倍の吸引力のものを作ることが出来ます

また、研削盤用のものであっても、OFF時間を3秒以下にすることが可能です

永電磁方式は、ON-OFF時に比較的大きな電力を必要としますが、これも瞬間電力でよいため、電磁式や永久磁石式に比べて設計の自由度が大きくなります

 

4、永電磁方式の種類                         このページのトップへ

吸引力や残留磁気を考慮した永電磁方式には、現在

1、     ショートOFF方式

2、     磁石消磁方式があります。

これらの方式は、「永電磁式は、吸引力が弱く残留磁気が大きい」とされてきた永電磁チャックの問題を解決する方法として考え出された方法で、ショートOFF方式は大きな吸引力を必要とする用途に、磁石消磁方式は残留磁気を小さくしたい用途に使用されます

 

4,1 ショートOFF方式

ショートOFF方式は、

1.      極性の変わらない非可逆磁石と励磁コイルによって極性を変えることが出来る可逆磁石を設け、

2.      可逆磁石から出る磁束が非可逆磁石から出る磁束とぶつかる方向に可逆磁石を着磁することで磁束が外部に出るようにして吸引力を得

3.      可逆磁石を反対方向に着磁して可逆磁石から出る磁束が非可逆磁石を通る(磁気のショート回路を作る)ことで、磁束を内部に閉じ込めて外部に閉じ込めて外部に出ないようにすることで磁力をOFFする

というものです。

 

この方式では、OFF時の性能をよくする(ワークを取れやすくする)ために抗磁力ゼロのときの時の可逆磁石の磁束量と非可逆磁石の磁束量を同じにする必要があります。

磁石には少しですがバラツキがあるため、製作時に磁石の量を調整する方法が用いられています。

 

この方式の特徴は、

1.      磁石を吸引面の近くに配置することが出来る

2.      継鉄部の磁束密度の高い部分を少なくすることが出来る

ことから、継鉄部の起磁力降下を小さく出来るため、条件によっては電磁式のものより大きな吸引力を得ることが出来るという点にあります。

 

この方式の現在の欠点は、ワークにバランスのとれた減衰する交番磁界を与えることが出来ないためワークの残留磁気の除去が出来ないという点にあり、ワークが取れにくい場合があることです。

このため、ショートOFF方式は残留磁気をそれほど問題にしないリフマグや切削用チャックに用いられます。

 

 

コラム

 

永電磁式磁石は永久磁石の着磁や脱磁を電気操作で行うもので。「停電や断線で磁力がなくならない」という特徴があります。

 

従来このタイプの磁石は「磁力が弱い」「残留磁気が残る」という問題があり、あまり使用されていませんでした。

 

近年、これらの問題についての研究が飛躍的に進み、「残留磁気」については、電磁石に高性能消磁装置を使用した場合に匹敵するようになり、「吸引力」も研削盤用のものでは従来の電磁石の3倍のものが出現しています。

 

特徴

1.  停電や断線でもOK

2.  吸引力が大きい

3.  コイルが小さい

低価格電源の使用可

 

 

 

4,2磁石消磁方式

磁石消磁方式は内臓磁石そのものを消磁する方式です。

「永久磁石は保持力が大きく、残留磁気が大きいため残留磁気を十分に小さくすることは困難」と長い間思われてきました。

しかし、電源装置の高性能化に伴い近年の研究で比較的容易であることがわかってきました。

 

これと同時に永電磁方式は電磁式や永久磁石式にくらべて設計の自由度が大きいため、極間ピッチが小さいものであっても磁気特性の良い構造のものを製作できるということも分ってきました。

 

磁石消磁方式の良い点は、磁石の消磁時にワークに減衰する交番磁界が与えられるため、ワークを同時に消磁できることです。

このため、消磁性能は電磁式のマグネットに高性能の自動消磁装置を使用した場合と同程度の性能が得られます。

 

また、設計の自由度が増すことから消磁時間の短い(23秒)のものを製作することも出来、研削盤用電磁チャックで問題となる「磁力のバラツキ」や「ワークが大きくなることに伴う単位面積あたりの磁力の低下」

の問題を解決できるという利点があります。

 

ちなみに研削盤用チャックのワークの吸引面が100mm□程度での比較では永電磁方式のもののほうが吸引力が3倍程度という結果が得られています

 

しかし、磁石消磁方式はショートOFF方式に比べて漏洩磁束が大きく、吸引力の点ではショートOFF方式にはかないません。

 

従って、この方式は研削盤用チャックの様な残留磁気が非常に小さいことが要求される用途にむいていると思われます。

 

5.永電磁方式の欠点                         このページのトップへ

永電磁式の欠点は、瞬間大電流(モーターの起動電流程度)で着磁や脱磁を行いますので、短時間でON-OFFを繰り返す用途には不向きです。

(通常のものでは、10回程度の連続ON-OFFは可能ですが、それ以上の場合は、電流を流さない期間が必要です。

マグネットの大きさにもよりますが、平均的には数分に1回程度のON-OFFとするべきでしょう)