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永久磁石応用製品の設計 筆者 福島 貫 目次 設計の概要
永久磁石を用いたマグネット応用工具には 1. マグネットホルダー 2. マグネットベース 3. マグネットチャック 4. リフマグ 等があります。
永久磁石を用いたマグネット応用製品では、OFF機構が問題となります。 OFF機構を持たないものでは、吸引力の大きなものを作りやすいのですが、 1. ワークを剥がせない 2. 鉄粉がつくと取り除きにくい という決定的な問題が生じ、用途が限定されます。
永久磁石を用いたマグネット応用工具のOFF方式には 1、 チャックの内部で磁石または鉄板を移動させて内部の磁石のN極とS極を鉄で短絡させる方式 2、 チャックの内部に2組の磁石を儲け磁石を移動させて磁束のループを作り、磁束が外に出ないようにする方式
がありますが、いずれも磁石の移動時に、磁気エネルギーの変化を必要とし、この時磁石の移動を妨げる力が発生するため、大きなものが出来ないという問題があります。
また、ON-OFFのために磁石を動かす必要があることから、チャックの中が空洞のようになり、チャック剛性に問題が生じ易くなります。
永久磁石応用製品には、いろいろなものがあります。 電気制御で磁路区のON−OFFを可能にした永電磁式磁石もそのひとつで磁気回路の設計は基本的には永久磁石応用製品の設計と同じです。 ここでは永久磁石と鉄を組み合わせて鉄を吸引する磁石を作る場合に、永久磁石の能力を十分に発揮させるための計算法について記載します。 これについては、永久磁石鋼製造メーカのカダログにも記載されていますので参照してください。 磁石の回路では、「強磁性体と非磁性体の固有磁気抵抗の差が小さいこと」「強磁性体部分の磁束密度が高くなる場合には磁化曲線が飽和曲線となり、固有磁気抵抗の差をさらに小さくすること」に注意すれば電気回路と同様の方程式が使用できます。 永久磁石回路では、市販されている磁石鋼の飽和磁束密度が鉄と同程度かそれより小さいため、特別の場合を除いて、鉄部の磁束密度を一定値以下にすることが可能で、空間磁束を計算するのに仮定磁路法[1]の使用が可能ですから仮定磁路法の使用を前提に記載します。 鉄部の磁束密度が高くなる場合は、「有限要素法[2]」「簡易計算法」等の使用を検討してください。 吸引力
F :吸引力 (N) Bg
:吸引面の磁束密度
(T) S :吸引面の面積 (m2) μ0 :真空中の透磁率 起磁力
NI :起磁力 (A) G
:空隙の長さ (m) K :鉄部分の損失を考慮した係数 パーミアンス
P :パーミアンス R :磁気抵抗 μ0 :真空中の透磁率 μ0 :比透磁率
Sa :起磁力 (A) La :空隙の長さ (m) 仮定磁路法では、空間磁路の形状を5つの種類にわけ、吸引面のパーミアンス、その他の部分(漏洩部)のパーミアンスを計算します。(仮定磁路法では、鉄部分の磁気抵抗は無視する。)
磁路の合計パーミアンスがPam 磁石の磁路断面積Sm 磁石の磁路長 Lm の時左図(Fig 1)のθは
---------(4) 交点Pが動作点 動作点Pを通り、H軸に平行な線とB軸の交点Bmが磁石の動作状態の磁束密度 動作点Pを通り、B軸に平行な線とH軸の交点Hmが磁石の動作状態の磁界の強さ 永久磁石を利用して製品を作る場合、強磁性体を併用すると磁石単体の場合より吸引力を大きくしたり、磁力のON−OFFが可能になるため強磁性体と永久磁石を組み合わせた製品とするのが普通です。 このとき、永久磁石のエネルギーを最大限に引き出すためには磁石がどのような動作状態となっているかを知る必要があり、これによって電磁石の場合と同じような計算が可能となります。 永久磁石を用いた製品の設計が電磁石の場合と異なるのは、電磁石がコイルに電流を流すことで磁力を発生させるものであるため磁力源のコントロールが比較的容易にできるのに対して、永久磁石では磁力源のコントロールを磁石の寸法で行う必要があることです。 このため永久磁石を用いた設計では、まず磁路のパーミアンスを計算し、使用する磁石の減磁曲線と寸法から磁石の動作点を求め、「磁石から出る磁束の量」や「磁石の動作状態での起磁力」を求めるという方法を用います。 (ショートOFF方式の永電磁式磁石では2組の磁石から出る磁束が合計されますので「2組の磁石の合成減磁曲線」を作成して使用します。) 仮定磁路法を用いた計算は次の順序で行われます。 1)
吸引力から方程式(1)を用いて暫定吸引面積を算出する。この時、予定空隙長が1mm程度であれば吸引面の磁束密度を1〜1,2 [T] 程度とする。 2)
暫定吸引面磁束に暫定漏洩磁束を加えて、磁石から出る磁束(予定)とする。 3)
磁石の暫定動作点と磁石から出る磁束(予定)から磁石の磁路断面積を差出する。 4)
以上の暫定値を基に各部の寸法を決める。 5)
出来上がった暫定値に基づいて磁路のパーミアンス (磁気抵抗の逆数)を求める。 この時、吸引面のパーミアンスPgとそれ以外のパーミアンス(漏洩パーミアンス)Plを別々に計算し、Pg + Plを合計パーミアンスPamとする。 6)
合計パーミアンスPamと磁石の寸法からパーミアンス係数Pkを求める。 7)
磁石の減磁曲線とパーミアンス係数Pkから磁石の動作点を求め、磁石から出る磁束と磁石の起磁力を求める。 8)
磁石から出る磁束から漏洩磁束を引くと、吸引面の磁束が得られる。 9)
吸引面の磁束と吸引面積から吸引面磁束密度を計算し、吸引力を算出する。 10) いろいろな空隙長について6)〜9) の計算を行って吸引力―ギャップ特性を得る。 11) 得られた吸引力―ギャップ特性が予定と異なる場合は、寸法の変更を行って、5)〜10)を繰り返して目的のギャップ特性を得、計算を終了する。 簡易計算法では1)〜4)は仮定磁路法と同じです。 5)
磁路分割を行い、等価回路を作成する。 この時磁石鋼の部分は一つの起磁力源として扱います。 従って、起磁力源の分割は行いません。 6)
等価回路より、連立方程式を作成する。 7)
連立方程式を解いて各部の磁束と磁束密度を算出する。 8)
磁石部分の磁束密度から磁石の起磁力を算出し、各部分の磁束密度よりその部分の磁気抵抗を算出して等価回路に代入する。 9)
6)〜8)の操作を繰り返し、計算値を収束させる。 10)
いろいろな吸引面の空隙長について6)〜9)の計算を行いギャップ―特性を得る。 11)
得られた吸引力―ギャップ特性が予定と異なる場合は、寸法の変更を行って、6)〜10)を繰り返して目的のギャップ特性を得、計算を終了する。 有限要素法については文献を参照してください。
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