HOME

 

 

 

 

ご質問、ご意見をお寄せください

(ポストをクリックするとメール送信ができます)

 

 

 

 

磁路計算について

                                 筆者  福島 貫

目次  1 概要

2.よく使用される方程式

3 磁路計算の注意点

4.永久磁石を用いた設計

5.追記

6. インダクタンス

 

1. 概要     このページの先頭へ

磁気回路は基本的に電気回路と同じように扱うことができ、オームの法則や、キルヒホフの法則が使用できます。

電気回路に馴染みのある方は、次のように読み替えると良いかもしれません。

磁気回路                                        電気回路

起磁力       U [A]                 ――    電圧            V [V]

磁束          Φ [Wb]              ――    電流            I [A]

磁束密度    B [T]                    ――    電流密度        σ [A/m2]

磁気抵抗    R [A/Wb]             ――       抵抗            R [Ω]

透磁率       μ                      ――       1/固有抵抗=1/ρ

磁気回路では真空の透磁率μ0と物質の比透磁率μSを用いて

μ=μ0×μS とする。

μ04×π×107 [H/m]

 

磁気回路を扱う上で電気回路と異なる点は、

1.     強磁性体と非磁性体の透磁率の比が103程度と電気回路に於ける導体と絶縁物の導電率(固有抵抗の逆数)の比1020に比べてはるかに小さい。

2.     強磁性体は一般に磁気飽和特性をもち、磁束密度で磁気抵抗が変わる。

ことにあります。

 

このため、磁気回路では強磁性体の形状は磁路断面積が大きく、磁路長が小さいものとなるのが一般的です。

1、     電気回路では導体からもれる電流を計算することは、高周波や長距離送電の場合しか問題になりませんが、磁気回路では漏洩磁束の計算が必要になります。

2、     強磁性体内部を通る磁束の密度が高い場合には、磁束密度の大きさで強磁性体の磁気抵抗が変わりますので、これを計算に入れる必要が生じる場合があります。

3、     磁気回路では、空気中や真空中も磁束が通るものとして磁路を想定し、計算します。

 

 

2.よく使用される方程式    このページの先頭へ

2-1 磁気回路のオームの法則

U = Φ×R          ------------------------------(1)

但し、U 起磁力[A]   Φ 磁束[Wb]   R 磁気抵抗[A/Wb]

磁気回路で式(1)は、磁気抵抗の逆数であるパーミアンスを用いた式(2)が使用されます。

 Φ = U×P         ------------------------------(2)

但し、P:パーミアンス=1R

 

 2-2 磁気抵抗

-        -----------------------------(3)

但し R:磁気抵抗[A/Wb]  m:磁路長[m]  μ:透磁率[H/m]  Sm :磁路断面積[m2]

          -----------------------------(4)

 

2-3 吸引力

       --------------------(5)

但し、F :吸引力[N]   Bg :吸引面の磁束密度 [T]   Sg  吸引面の面積 [m2]

 

この式は、吸引面の被吸引強磁性体をほんの少し引き剥がした時の磁気エネルギーの変化量から求められる理論式です。

 

2-4 吸引面の磁束密度

                    --------------------(6)

但し、μ :真空中の透磁率=4×π×107[H/m]  Hg :吸引面ギャップ部の磁界の強さ [A/m]

 

3 磁路計算の注意点    このページの先頭へ

3-1 漏洩磁束と磁気飽和に注意

磁気回路の計算は基本的には電気回路と同じように計算できます。

にもかかわらず技術者の中には「磁気回路は計算できない」とする人が少なくありません。

これは、計算値と実測値が合わない場合が多いためであり、磁気と電気の相違点を理解せず、簡単な計算だけで済ませようとすることによると思われます。

 

磁気回路と電気回路の大きな相違点は「良導体、と非良導体の抵抗の差」にあり、磁気回路では強磁性体と非磁性対の固有磁気抵抗の比が103 程度しかないのに対し電気回路では導体と絶縁体の固有抵抗の比が 1020程度もあります。

このため、磁気回路では特殊な場合を除き、磁束の良導体である強磁性体部分のみならず、空気中など非磁性体部分にも磁束が通るとして計算する必要があります。

 

 

磁気回路に使用される強磁性体は磁気飽和特性をもちます。

従って、磁束密度の増加に伴って磁気抵抗が増加し、さらに強磁性体と非磁性体の抵抗の差を小さくします。

極端な場合、強磁性体を通る磁束より漏洩磁束とよばれる空間を通る磁束のほうが多い場合もあります。

 

このため、電気回路では高周波回路や長距離伝送でしか問題とならない漏洩の問題を磁気回路では殆どの場合計算に入れる必要があり、また磁束密度の増大に伴う磁気抵抗の増加を計算に入れる必要があります。

これを忘れると、「計算値と実測値が合わない」ということになり、「磁気回路は計算できない」ということになります。

 

3-2 漏洩磁束の計算

漏洩磁束の計算法については、「仮定磁路法」が古くから用いられています。

 

仮定磁路法は、漏洩磁束の通路を5つの形状に分けて計算しようとするもので、鉄部の磁束密度があまり大きくない場合には、比較的良い近似値が得られます。

 

仮定磁路法のみを用いた場合の計算の難点は、

1.      強磁性体部分の磁気抵抗を計算しない

2.      強磁性体部分の磁束密度の分布状態が計算できない

ことです。

強磁性体部分の磁束密度の分布を知ることは、強磁性体内でむだに起磁力が消費されるのを防止する意味からも、無駄な漏洩磁束を発生させない意味からも重要です。

 

3-3 強磁性体の磁気抵抗

強磁性体は磁気飽和特性をもちます。

従って、強磁性体部分の磁気抵抗は、磁束密度が飽和磁束密度に近い場合、磁束密度の大きさで大きく変わります。

強磁性体の磁化曲線を方程式で表すことは困難なようで、私は配列変数で代用しています。

 

3-4 有限要素法と簡易計算法

近年、より実測値に近い計算が得られる方法として、「有限要素法」が用いられています。

有限要素法は、磁路を細かい要素に分割し隣り合った要素間に磁気回路のオームの法則が成り立つとし、連立方程式を作成して各要素の磁束密度を求めるもので、未知数の数が非常に大きくなるため、コンピュータを用いても長い計算時間を必要とします。

また、3次元を扱う有限要素法は難解で、2次元または、軸対称3次元問題が使用されています。

 

計算時間が短く、3次元の計算ができ、鉄の磁束密度の分布状態がわかる計算法として、仮定磁路法と有限要素法の中間のような「簡易計算法」を考案し、実測値との比較を行ったところ、実測値に近い計算値が得られることがわかりました。

詳細については、ホームページの「簡易計算法を参照して下さい。

 

 

4.永久磁石を用いた設計    このページの先頭へ

電磁石の計算は上記1〜3で計算できますが、永久磁石を起磁源とする応用工具では、永久磁石の特性を計算に加える必要があります。

 

4-1 従来の設計

永久磁石を用いた磁力応用工具の設計では、従来、

1.       吸引面のギャップを想定する。

2.       仮定磁路法により空間のパーミアンスを求める。

3.       磁石の減磁曲線曲線と2で求めたパーミアンスから磁石の動作点を求める。

4.       磁石の動作点から起磁力を求め、吸引面の磁束密度を求め、吸引力を計算する。

という方法が用いられてきました。

 

この方法は、吸引面のギャップが適当にあり、継鉄部の磁路断面積がどこでも十分に大きく継鉄部の磁束密度があまり大きくならない場合は、非常に有効な方法です。

しかし、ギャップが小さく、吸引面のパーミアンスが極端に大きくなる場合や、継鉄の一部にでも磁束密度が高い所があると、計算誤差が大きくなります。

 

4-2 簡易計算法を用いる場合

簡易計算法を用いる場合は、

1.       起磁源を1つとした等価回路を作成する。

2.       最初に適当な起磁力を決めて計算を行う

3.       計算で得られた各部の磁束密度から各部の磁気抵抗を求める。

4.       同時に、起磁源を通る磁束から磁石の磁束密度を求め、これに対応する起磁力を求め再計算を行う。

5.       これを計算結果が収束するまで繰り返す。

(各部の新しい磁気抵抗や新しい起磁力を決める時、前の値と計算で求められた値との差に適当な係数を掛けた値を前の値に加え新しい値とすることで、計算結果の収束を早くすることができます。)

 

.追記    このページの先頭へ

磁気回路のより正確な計算には現在「有限要素法」が非常に有効な計算法のように思えます。

しかし、有限要素法は空間を多数の要素に分割し、隣り合った要素間に一定の法則が成り立つとして連立方程式を作成して問題を解く方法で、未知数が多くなるため計算に時間がかかるという問題があります。

 

ちなみに、有限要素法による交直マグネットの設計と応用”(森北出版1991)では二次元有限要素法、軸対称三次元有限要素法について記述されています。

この記述内容の最大の難点は、

1.       三次元でないため角型マグネットの計算が出来ない

2.       磁化曲線を2本の直線で近似している

というところです。

 

磁力応用工具では、磁気選別機などの空間磁束を利用するものを除き一般に吸引面の磁束密度を高くするのが普通です(吸引力を大きくするため)。

また継鉄部分の起磁力損失を少なくするためには、なるべく継鉄部分の磁束密度を小さくすることが望まれます。

このため、継鉄部分の磁性体の磁束密度は、磁化曲線を2本の直線で近似した場合、この2本の直線から最も遠くなる磁化曲線の編曲点付近となる部分が多くなり、計算誤差が大きくなります。

 

この問題を解決するには、鉄の磁化曲線をそのままの形で計算に組み込む必要があります。

「有限要素法」では、

1.            要素素分割により得られた連立方程式に、まず最初に鉄の磁気抵抗(固有磁気抵抗)の暫定値を代入して計算を行う。

2.            計算の結果得られた各部の磁束密度から各部の磁気抵抗(固有磁気抵抗)を求める。

3.            新しく得られた磁気抵抗を最初の方程式に代入して再計算を行う

という方法を用います。

 

私の提唱する「簡易計算法」もそうですが、磁路を分割して計算する方法は現在のところ複数回の再計算が必要なようです。

私の用いている収束方法では、少なくても20回以上の計算が必要です。

(三次元有限要素法では10回以下の再計算でも十分な値が得られる方法もあるようです)

 

このため、一回の計算時間が短いことが望まれますが、有限要素法では未知数の数が多くなるため、計算時間が長くなります。

 

「三次元有限要素法」では、高性能のコンピュータを使用しても相当に多くの時間を必要とするため、多くの方々により「計算時間を短くする」「計算精度を上げる」ための研究が進められ、「種々の計算法が考え出され」鉄の磁化曲線なども多数の折れ線グラフとする等のなどの処理で、より近い近似値が得られるようになっているようです。

 

また、有限要素法では磁路分割が計算精度に影響するという問題があり、計算のための入力が面倒で時間がかかるということから、種々の「要素分割ソフト」の開発等も行われているようです。

 

6. インダクタンス    このページの先頭へ

パーミアンスは、電気回路のインダクタンスに関係しており、インダクタンスは次式で表されます。

        ------------------------------(7)

但し、 L:インダクタンス[H]  P:パーミアンス[Wb/A]  N:コイルの巻数[]

 

インダクタンスの設計では、一般に珪素鋼板やフェライトなどの強磁性体を用いる場合でも、磁気飽和の起きない領域での設計が行われます。

インダクタンスは交流で使用されますので、渦電流損やヒステレシス損などの損失に注意する必要があります。