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 磁路計算を始められる方へ

 

目次 

概要 

フローターの原理に関する仮説

鋼板間の隙間とパーミアンス 

磁力の計算

フローターの将来性

 

フローター

筆者  福島 貫

概要  このページのTOP

積み重なった鋼板の端面に磁石を近づけると、鋼板間にスキマが出来る現象が知られており、薄い鋼板の分離に利用されています。

このための磁石は、フローター、スペーサー等の商品名で呼ばれています。(以下フローターと呼ぶ)

 

この現象は、「磁石が強磁性体を吸引する。」という一般的な概念に反し、「磁力により鋼板間に反発力が働いて鋼板間に比較的大きなスキマが出来る」というもので興味深い現象ですが、理論的な解明が行われていないように思われます。(調査不足かもしれません。)。

 

この現象は1970年頃から利用されているにもかかわらず、現在応用範囲が非常に狭い分野に限定されており、製品も永磁式のあまり大きくないものに限定されているように思われます。

 

応用範囲が限定されている理由は、現在製造されているフローターでは

1.          電磁式の物の性能が悪く(発熱が大きく大きなすき間が得にくい)

2.          永磁式のものでは使用しないときでも常に磁力が働いており、運搬時や取り付け時に危険が伴うため大型のものが実用化できない

という事情によるものと考えられます。

 

筆者は、数年前に「電磁式のものを使用しているが、発熱が大きくて困っている」との相談を受け、この問題に取り組み、ある工夫をすることで電磁式のフローターの性能が大幅に改善されることを発見しました。

 

このときは、

1、       電磁式フローターの特許を主張する人が居る(内容は、動作の基本原理には関係のないものでしたが――――)、

2、       用途が限定されているので争ってまで売るほどのものでない

という、会社の方針でそのままになってしまいました。

このため現在、特許申請もしていない状況にあります。

 

しかし、考えてみれば、超伝導のような大掛かりなものでなく、「磁石を近づけるだけで鋼板が浮く」という現象は、あまり知られておらず、非常に興味深いものです。

 

多くの人が、この現象を知ればいろいろな用途が生まれてくるように思われます。

また、電磁式でON-OFFが簡単にできることになれば、大型のものの製作が可能になり、さらに用途が広がることが期待できるように思われます。

 

フローターの原理に関する仮説    このページのTOP

磁力により積み重なった鋼板間にスキマが発生する理由は、吸引の場合と同じように「鋼板間に隙間が出来ることにより磁気エネルギーが変化し、且つスキマが大ききなほうが磁気エネルギーが小さい。」ということを意味していると考えられます。(自然の力はエネルギーが小さくなるように働く)

 

現在フェライト磁石を用いた永磁式のものが主流のためこれについて考えると次のようになります。

テキスト ボックス: 磁束

Fig1はフェライトの減磁曲線のB(磁束密度)を磁石の磁路断面積倍して磁束φとし、抗磁力を磁石の磁路長倍して起磁力Uとしたφ―U曲線です。

 

磁石から見た磁気回路のパーミアンスをPとするとき、Fig1の原点から

  -----------------------(1)

の線を引き、この線がφ⊶U曲線と交わる点の座標を(U , B)とすると、この状態の磁石のエネルギー(=磁石以外の磁気回路のエネルギー)En

  ------------------(2)

 

このエネルギーの大きさは、磁気回路のパーミアンスの関数となります。

 

Fig.2は磁束及び起磁力を1とした場合の磁気回路のパーミアンスとに対するdedpの関係をグラフにしたもので、dedpがマイナスになっている部分のあることがわかります。

Fig.3Fig.2の一部を拡大したものです。

dedpはパーミアンスの微小変化に対する磁気エネルギーの微少変化)

 

鋼板間のギャップの微小変化をdyとした時、dpdyが正であれば、dedpがマイナスの部分ではdedyもまたマイナスですから、この部分では鋼板間のギャップyが増大する方向に力が働くことになります。(仮説)

 

Fig.2はからパーミアンスが1(最大エネルギー積点)より大きい範囲で鋼板間に隙間を生じる力が働くことを意味しています。(仮説)

鋼板間の隙間とパーミアンス (仮説)     このページのTOP

 

説明を簡単にするため2枚の積み重なった鋼板の端面に磁気隙間発生器を近づけた場合を考えます。

2枚の鋼板が密着している場合と隙間がある場合を比較すると、隙間部分のパーミアンス分だけパーミアンスが増大しており、dedpがマイナスの部分では隙間が増加する方向に力が働くことになります。

Fig,4の様に隙間がの時、dyだけ微小変化した時のパーミアンスの微小変化dpを仮定磁路法によって計算すると

 

    ------------------(1)

 

但し、jw:磁極幅

(磁極は2ヶあり、Fig,4と同じものが反対の極にもあるので(3)式となります。)

 

磁力の計算 (仮説)   このページのTOP

減磁曲線と磁石の寸法よりdedpが求められ、(3)式によりdpdyに比例することがわかりますから、これにより磁力を計算することが出来ます。(仮説)

以上の磁力の計算方法を整理すると次のようになります。

1)         磁石の寸法と減磁曲線よりパーミアンスに対するdedpの表を作成しておきます。

2)         磁気回路のパーミアンスを計算します。

3)         パーミアンスと表からdedpを求めます、

4)         これと(3)式からdedを計算すれば、鋼板間に働く磁力が求められます、

これらの計算はコンピュータによる自動計算が可能です。

 

フローターの将来性  このページのTOP

現在フローターは、永磁式のものが主に生産されており、厚さ2mm以下の薄い鋼板が積み重なっている場合に、鋼板間に隙間をつくり鋼板を1枚々々に分離するのに利用されています。

 

これは、現在生産されている電磁式のものは「発熱が大きく、鋼板間にできる隙間が小さい」という理由によります。

 

永磁式のものは

1、          常に磁力が発生しており、近くにある磁性体を常に吸引する状態にあるため、大型のものは取り扱いに危険が伴うため比較的小さいものしか実用化できない。

2、          自由に磁力のONOFFができない。

という問題があり、用途が限定されており、生産台数が非常に少ないのが現状です。

 

筆者は、電磁式のフローターに工夫を加えることで、発熱を大幅に少なくし、且つ鋼板間に十分な大きさの隙間ができることを発見しました。

 

電磁式のものは、磁力のONOFFが自由で大型のものや比較的自由な形状のものが作りやすいという特徴があります。

 

このため、従来できなかったような強力なフローターや少し複雑な形状のものが製作可能になり、用途が大幅に広がるものと考えられます。