
↑肝冷斎よ、まだこちらへ来ぬのか。
文政二年(1819)、柏木如亭(52歳)は伊賀を訪うて、津藩儒・服部竹塢(はっとり・ちくう)のところで世話になっていた。
お世話になっているお礼に、ということで、一幅の山水画を描き、これに一絶句を書き添えて贈ったのである。
その絶句に曰く、
与君頻酌亦何妨。 君と頻りに酌むもまた何か妨げん。
墨汁三升債可償。 墨汁三升 債、償うべし。
所謂人生行楽耳、 いわゆる人生は行楽のみ、
従他俗子咲空嚢。 他俗子の空嚢を咲(わら)うに従(まか)せん。
あなたと何度も杯をやりとりする――別に問題のあることではございますまい。
墨汁は三升もある。これだけあれば、これまでの借りを返すような立派な画がたっぷり描けるでしょう。
「人生は楽しみをなすばかり」とは、いにしえより言い伝えるところ、
どこかの俗物どもが、わしの財布が空っぽなのを笑うても、どうでもよいのでござるんるん。
これは岩波文庫「詩本草」(揖斐高校注)に書いてあった(p194)。(ただし読み下しと現代語訳は肝冷斎であるんるん)
「人生行楽耳」の意味は昨日申し上げたとおりである。
いろいろあるのでもう寝るです。