
↓不思議なこともあるものじゃのう。(ちなみに上の画のひとの正体はこちら)
「五代十国」という時代(一般には906〜960)は、唐王朝の滅亡後、華北に五つの王朝(国姓=皇帝の姓は七姓を数う)が交代し、それ以外の各地に十の国があった時代であるので、そういわれるのです。
この「十国」中に南唐国(これは歴史的呼称で、当時のその国のひとたちは、自分たちはかつての唐帝国の承継国家である、という位置づけで「唐」と号していた。三国時代の「蜀漢」(あるいは「蜀」)が自分たちでは単に「漢」と称していたのと同じ構図です)という国がありました。
南唐の信州刺史・周本というひと、冬十一月、南唐の都・揚州にお目見えのために上京してきて、自分に賜っている邸宅に宿泊していた。
ある晩、邸宅内の離れに、
張灯而寐、未熟、聞室中声劃然。
灯を張りて寐(いぬ)るに、いまだ熟せざるとき、室中に声の劃然(かく・ぜん)たるを聞く。
灯りをともしたまま眠っていたところ、まだ熟睡に至らないうちに、部屋の中に物が割れるような音が響いた。
「劃」(カク)は「(刀を以て)物を裂く音」だそうなので、「ばりん」とか「ぼきん」という音を想像してもらえればいいのだろう。
「な、なんじゃ?」
と驚き目覚めて見るに、何か球形のものが室内の真ん中あたりに浮き上がっている。
視之、見火炉冉冉而上、直抵於屋。
これを視るに、火炉の冉々(ゼンゼン)として上り、屋に直抵せんとするを見る。
「冉」(ゼン)は「行く、進む」様子を現わす。
よくよく見たところ、火鉢がだんだんと宙に浮き上がり、屋根に届こうかという状況が目に入ってきた。
良久乃下、飛灰勃然。
やや久しくして下り、灰を飛ばすこと勃然たり。
しばらくすると降りてきたが、その際、たいへんな勢いで灰を撒き散らしたのであった。
驚いたことであるが、半ば眠っていたところを起こされた周本は、火鉢がもとの場所まで降りてきたので、とりあえずまた寝てしまった。
翌朝おきてみると、
満室浮埃覆物。
満室の浮埃 物を覆えり。
部屋中、灰が広がってすべてを覆っていた。
昨日のことは夢ではなく事実だったのだ。
しかしながら、
亦無他怪。
また他怪無し。
それ以上変なことは起こらなかった。
そうである。
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以上、五代〜宋のひと徐鉉の「稽神録」より。
「とりあえずまた寝てしまった」あたりにそこはかとないかわゆらしさがありますが、これは典型的なポルターガイスト現象であると思われる。ということで説明ついたので、不思議でも何でもない。わしの部屋でも毎晩起こっている?
昨日や一昨日の説教みたいなお話しより、こういう話が好きなのです。また、こういう話はシナや本朝の前近代には掃いて棄ててもまた出てくるぐらいたくさんあるので、今日はもう一話ぐらい紹介しよう・・・かと思ったのですが、何かをやろうという意欲があまり強くない上に今日も弱ってしまいましたので、今日はここまでとさせていただきます。明日はどうなっているかな。