
↑これは「菽」。「菽」と「豆」は、どこがどう違うのでしょうか?
昨日に引き続き蘇鶚さんが講釈してくださいます。今日は、
C変昼草
の解説です。
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C「変昼草」なる草について。
これは
類芭蕉、可長数尺。
芭蕉に類し、長さ数尺ばかりなり。
バナナのような植物であり、高さは1メートルぐらいである。
芭蕉はバナナですから、バナナと訳した。また、唐代の一尺は30センチ強なので、「数尺」を「1メートルぐらい」と解した。バナナをイメージすればもう少し大きいかも知れません。
ただし、見た目がバナナと大きく違う点があります。
一茎千葉。
一茎にして千葉なり。
一本の茎に葉が千枚もつく。
バナナにはこんなに葉がつきません。
そして、見た目以外でバナナと大きく違うことが一つあるのである。
「驚くなかれ・・・」
使者はぎろりと目を輝かせて、ぎょろーりぎょろりと皇帝並びにその近侍の者どもを見据えながら、言うた。
樹之、則百歩内昏黒如夜。
これを樹(う)うるに、すなわち百歩の内、昏黒なること夜の如し。
この植物を地面に植えますとな、その周囲百歩ほどの範囲が暗黒になるのでございます。真昼間でも夜のように。
「されば、王侯はこの植物を宮殿に植えまして、この植物のまわりで昼間であっても夜の行いを・・・ひ、ひっひっひ、アレとかアレでございますが、するのでございますよ!」
という貴重なものであるので、
始蔵於百宝匣、其上緘以胡書。
始め、百宝匣に蔵し、その上に胡書を以て緘せり。
持ち込まれたとき、それは百の宝を散りばめた箱の中に収められており、その箱は紐でくくってあって、その紐の結び目を封緘し西方の文字のはんこを押してあった。
「ひひひ、では開きますぞ・・・。開きますと、周囲は暗くなりますから、お部屋に灯りを灯しておいてくだされ・・・」
皇帝の近侍の者たちが言われたとおりに灯火を用意し、使者がそれを確かめて封緘に手をやったとき。
ほかの宝物についてはそれぞれ興味を示していた順宗皇帝、怒気をあらわにして叫んだ。
「だめじゃ!開けるな!」
使者は手をとめた。
皇帝、曰く、
背明向暗、此草何足貴也。
明に背きて暗に向かう、この草なんぞ貴ぶに足らんや。
「明るきをやめ、暗きに向かう。本来あるべき道義に背くこと甚だしい。この草は少しも貴いものではないぞ」
そして、
命併匣焚之於使前。
命じて匣と併せてこれを使の前にて焚く。
近侍に命令し、百宝を散りばめた箱もろとも、使者の前で焼いてしまった。
使者はその煙を見ながら憮然としておられたのじゃが、帝の御前を退き、宿舎に戻ったあと、外国使の接待を掌る鴻臚の役人に、
本国以変昼草為異。今皇帝以向暗為非。可謂明徳矣。
本国、変昼草を以て異と為す。今、皇帝、暗に向かうを以て非と為す。明徳と謂いつべきなり。
わしの国(拘弥国)では「変昼草」は大いに珍異のものとして尊重されております。ところが今、この国の皇帝陛下は、暗きに向かうことは反道義的なことである、として非難なされた。いや、これはご立派なことであると申さずばなりますまい。
と大変感心したようにおっしゃっておられた、ということである。
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ほんとに昼が夜に変わるのか、試してみてから焼いてほしい・・・と思うのは、後世の実証主義の賢しらの思いであろうか。
「とりあえず、わたしは欲しかったものも手に入ったので、帰るね」
と蘇鶚さんは言って、押入れの中に入ってしまった。
「ほかにも唐代のへんなこと知りたかったら、「杜陽雑編」を読んでみてください」
と自己宣伝までしておられます。
その背中に向けて、
「ご苦労さまでした。ところで、何を手にいれにゲンダイまでお見えになっていたのですか?」
と声をかけると、
「ひっひっひ、それは秘密じゃ。わしも唐代ではそこそこの地主階級じゃから、若い愛妾とかいたもんじゃからな、こういうクスリが無いと不便でのう、ひっひっひ・・・」
と笑いながら、先生は時空のはざまに消えて行ったのであった。