許可を要しない輸出及び役務取引



   安全保障貿易輸出管理関連規則は、国際的な平和及び安全の維持を妨げ
  ると認められる特定の貨物・技術を特定の地域に輸出又は提供する取引を
  規制する。規制対象に該当する輸出又は役務取引を行なう場合は経済産業
  大臣の許可又は承認を要する。しかし、特定の輸出又は役務取引について
  は、規制の対象としないとする特例を設けている。
   なお、前記規制対象(補完的輸出規制を含む)に該当しない場合も許可
  ・承認を要しないが、これは本稿の対象外とする。
  ここでは、特例が適用される場合を明らかにする。但し、対象を輸出令別
  表第1及び外為令別表の品目(許可対象品目)に限定した。
  これら法令は屡改正されるので必ず最新の法令に基づき適切に対処すること。
                            
1.許可を要しない場合を定める法令
(1)許可等の対象を定める法令概観
  許可等を要しない規定及び許可等の対象を定める法令を体系的に概観し、
  下表に纏めた。この表では各法令の略称を用い、併せて省令番号等を記
  載した。
 
輸出(貨物)
役務取引(技術)
法律
 「外国為替及び外国貿易法」
     (外為法)
第48条(輸出の許可等)
 下記の輸出には経済産業大臣の
 許可又は承認が必要。
1 特定貨物の特定地域への輸出
2 必要があると認める時は、特定
  貨物の特定地域外への輸出
3 前記許可の他、特定貨物の特定
  地域への輸出の承認
 「外国為替及び外国貿易法」
     (外為法)
第25条(役務取引等)
 下記の取引には経済産業大臣の
 許可が必要。
1 一特定技術の特定地域への
    提供
  ニ仲介貿易
2 必要があると認める時は、特定
  技術の特定地域外への提供
3,4 (省略)
政令
 「輸出貿易管理令」(輸出令)
第1条(輸出の許可)
1 特定(別表第1の1〜16の項)の
  貨物の特定地域への輸出
第2条(輸出の承認)
1 一特定(別表第2)の貨物の特定
    地域への輸出
  ニ国連制裁国(別表第2の2)向
    けの特定貨物の輸出
  三委託加工貿易
2,3 (省略)
第4条(特例)(経済産業大臣の許可
  を要しない輸出)

 詳細は2項による。
 「外国為替令」(外為令)
第17条(役務取引の許可等)
1 特定(別表の1〜16の項)の
  の特定地域への提供
2 武器(輸出令別表第1の1の項)
  の仲介貿易
3  (省略)
4 特例(経済産業大臣の許可を要
  しない取引)

 詳細は3項及び下欄(省令第8号)
による。

省令・

規則

 「貨物等省令」(省令第49号)
 輸出令別表第1の1〜16の項の
品目の仕様を定義している。

 「おそれ省令」(省令第16号)
 輸出貨物が核兵器等の開発等の
ために用いられるおそれがある場合
を定める省令。

 「貨物等省令」(省令第49号)
  外為令別表の1〜16の項の品
 目の仕様を定義している。

 「貿易外省令」(省令第8号)
   第9条(許可を要しない役務取引等)
 一経済産業大臣が行なう取引
 ニ防衛庁長官が行なう取引(輸出
   令別表第4の2の地域)
 三日本国政府が外国政府に対して
   行なう経済協力、技術協力等
 四補完的輸出規制に該当しない
   取引(別表の5から15の項に
   該当するものを除く)

告示・注意事項・通達
 「暗号特例告示」(告示第353号)
 輸出令第4条第1項第五号(暗号
特例
)の規定に基づき許可不要の
暗号装置を定める告示。

  「別表第3の2の告示」
   (告示第922号)
 輸出令第4条第1項第三号(少額
特例
)50K\以下の貨物を定める告示

 「無償告示」(告示第488号)
 輸出令第4条第1項第ニ号ホ、ヘ
無償特例)の規定に基づき対象貨
物を定める告示。
  上記3告示の詳細は2項による。

 「運用通達」
 (輸出注意事項62第11号)
 輸出令の運用を定めている。 

 「おそれ告示」(告示第112号)
 提供しようとする技術が核兵器等
の開発等のために利用される
おそれがある場合を定める告示。

 「役務通達」(4貿局第492号)
1 役務取引許可の対象
2 技術提供取引の許可
3 許可を要しない技術提供取引
 詳細は3項による。


(2)「許可を要しない」法令纏め
  許可を要しない場合を定める法令は次のようになっている。
 (輸出)                
  ・輸出令第4条第1項第一〜三,五号*            
     @暗号特例(告示第353号)(第五号)               
     A少額特例(告示第922号)(第三号)
     B無償特例(告示第488号)(第二号ホ、ヘ)
     Cその他特例
   *補完的輸出規制対応の四号は規制対象に含むものとみなし省略した。
    (本ホームページ「補完的輸出規制の概要」を参照)
 (役務取引)
  ・外為令第17条第4項
     @貿易関係貿易外取引等に関する省令(省令第8号)
     A役務通達(4貿局第492号)第3項
       許可を要しない技術提供取引   
 上記特例の詳細を次項以降に示す。但し、役務取引@は上表に概要を示したの
 で省略した。 

2.許可を要しない輸出
 以下の特例は、輸出令別表第1の1の項(武器)の中欄に掲げる貨物には適用
 しない。以下、特例を適用する輸出についてその概要を示す。
(1)暗号特例
   暗号機能を有する電子計算機(貨物等省令7条一号ハ該当)又は暗号装置
   等(前記省令8条九〜十二号に該当)であって、次のイからハの全てに該
   当するものの輸出に適用する。
  イ 店頭又は郵便若しくは電話等で自由に購入できるもの
  ロ 暗号機能が使用者によって変更できないもの
  ハ 使用に際して供給者等の支援が不要なもの
(2)少額特例
   総価格が一定限度以下(下記)の貨物の輸出に適用する。
  @但し、輸出令別表第1の2〜4の項、及び14の項の中欄に掲げる貨物
   には適用しない。
  Aまた、補完的輸出規制に該当する場合に適用しない。(その輸出が別表
   第1の5から15までの項の中欄に掲げる貨物の輸出に該当する場合を
   含む。)(適用項番は5〜13,15の項)
  B上記の適用不可貨物を除き、下記の地域を仕向け地とする貨物は
   5万円以下。
     イラン、イラク、北朝鮮、リビア
  C上記の適用不可貨物及びB以外の別表第1の貨物は100万円以下。但し、
   下表の貨物については5万円以下。

         少額特例の限度額が5万円以下の貨物

別表第1
の項番

省令番号
品目概要
(詳細は省令等による)
(14)
第4条第十二号ハ(一)又はニ
セラミック複合材料
(18)
第4条第二号又は第十五号ハ
若しくはニ
繊維を使用した成型品等
(2)
第5条第二号イ(一)、ロ(一)
1、(ニ)1若しくは(三)若しくは
ニ又は第三号
金属、セラミック又は複合材料を
加工することができる工作機械等
(3)
第5条第五号 歯車製造用工作機械等
(15)
第6条第十六号ロ
宇宙用の原子周波数標準器
(16)
第6条第十七号イ(ニ) 有機金属化学的気相成長反応炉
 
第7条第一号ロ若しくはハ又は
第三号ロ、ハ、ニ若しくはホ
電子計算機若しくは部分品であって、
@耐放射線仕様のもの
A暗号機能を有するもの
B28,000超〜150,000Mtops以下
(1)
第8条第ニ号イ(ニ) スペクトル拡散技術を用いた無線送信機又は無線受信機
(6)
第8条第六号 上記無線装置の設計、製造、試験等の装置
(7)
第8条第九号 暗号装置
(8)
第8条第十号 信号の漏洩を防止するように設計した装置
(9)
第8条第十一号 多段階の秘密保護機能を有する装置
(10)
第8条第十二号 盗聴の検知機能を有する通信ケーブルシステム
(11)
第8条第十三号 上記九号から十二号までの貨物の設計用装置等
10
(1)
第9条第一号イ(ニ)又はロ(三) 音波を利用した水中探知装置等
(2)
第9条第三号イ、ロ、ホ若しくは
ヘ 、第四号又は第五号イ
宇宙用に設計した固体の光検出器等
(4)
第9条第八号イ イメージ増強管を組み込んだカメラ等
(6)
第9条第九号ハ 宇宙用に設計した光学部品等
(7)
第9条第九号ニ 光学機械又は光学部品の制御装置等
(9)
第9条第十一号チ又はリ 磁力計の校正装置等
(11)
第9条第十三号ニ、チ又はル パルス圧縮技術を用いたレーダー等
12
(1)
第11条第一号ロ 繋索式の潜水艇であって、無人式のもの等
(2)
第11条第四号ロ又は第十号
ヘ若しくはト
潜水艇に使用することができるように設計した自動制御装置等
(5)
第11条第六号 水中用の蓄積プログラム制御方式ロボット
(6)
第11条第八号 大気から遮断された状態で使用することができる動力装置
13
(4)
第12条第十一号ロ ガスタービンエンジン製造用装置等
15
all
第14条の全て 150,000Mtops超の電子計算機等、機微品目の全て

(3)無償特例
   下記の輸出に適用する。
   (無償で輸出すべきものとして、無償で輸入した貨物)
  @本邦から輸出された貨物であって、本邦において修理された後再度輸出さ
   れるもの(修理特例とも呼ぶ)
  A本邦において開催された博覧会、展示会その他これらに類するものに外国
   から出品された貨物であって、博覧会等の終了後返送されるもの
  B物品の一時輸入のための通関手帳、ATAカルネにより輸入された貨物で
   あって、通関手帳により輸出されるもの
  C一時的に入国して出国する者が携帯し、又は税関に申告の上別送する暗号
   機能を有する電子計算機、又は暗号装置等。但し、本人の使用に供すると
   認められるものに限る
   (無償で輸入すべきものとして、無償で輸出する貨物)
  D一時的に出国するものが携帯し、又は税関に申告の上別送する暗号機能を
   有する電子計算機、又は暗号装置等。但し、本人の使用に供すると認めら
   れるものに限る
  Eその他(省略)
(4)その他特例(輸出令第4条第1項第一、ニ号)
   下記の輸出に適用する。
  @仮に陸揚げした貨物であって、本邦以外の地域を仕向け地とするもの
  A外国貿易船又は航空機が自己の用に供する船用品又は航空機用品
  B航空機の部分品等のうち、修理を要するものであって無償で輸出するもの
  C国際機関が送付するもので、輸出に対する制限を免除されている貨物
  D本邦の大使館、公使館等に送付する公用の貨物

3.許可を要しない技術提供取引
  概要を次に示す。詳細は「役務通達」による。
(1)公知の技術(プログラムを除く。)その他不特定多数の者が自由に入手
   できる情報の提供取引
  [注]新聞、雑誌等により既に不特定多数の者に対して公開されている
     技術データの提供等
(2)基礎科学分野の研究活動において技術を提供する取引
  [注]通常の企業活動における研究を除く。
(3)必要最小限の使用技術(プログラムを除く。)を提供する取引
   (必要最小限対象外品目を除く。)
  [注]輸出の一環として提供される、当該貨物の操作、据付に必要な
     最小限の技術の提供等
(4)プログラムであって、下記のものを提供する取引
   ア 店頭又は郵便若しくは電話で自由に購入できるもの。
     (暗号機能等プログラム等を除く。)
   イ プログラムが公知の技術になっているもの
   ウ 暗号機能等プログラムであって、次のすべてに該当するもの
    (ア)店頭又は郵便若しくは電話で自由に購入できるもの
      又は使用者に対し何ら制限なく無償で提供されるもの  
    (イ)暗号機能が使用者によって変更できないもの
    (ウ)プログラムの使用に際して供給者等の技術支援が不要なもの
   エ 該当貨物(必要最小限対象外品目を除く。)に内蔵され提供される
     もので、書換え及びプログラム媒体の取替えが物理的に困難、かつ
     如何なる形でもソースコードが提供されないもの
   オ 使用者に対し何ら制限なく無償で提供されるものであって、その使
     用に際して供給者の技術支援が不要なもの。但し、暗号機能等プロ
     グラム及び特定の原子力関係貨物の設計、製造又は使用に係るもの
     を除く。
(5)非該当の貨物のために特別に設計し、該当のデジタル電子計算機で実行
   させることを目的としないプログラムであって、75,000Mtops超のデジ
   タル電子計算機が実行できる形式のものを提供する取引。
   但し、当該プログラムを提供する取引が補完的輸出規制に該当する場合
   を除く。
(6)役務取引許可を受けて提供したプログラムについて、その許可を受けた
   日以降3年を超えない日までに、許可を受けた範囲を超えない機能修正
   を行ったプログラム又はその修正に必要な最小限の技術データの提供を
   行う取引(機能追加・向上を目的とするバージョン・アッブを除く)

4.特例(許可を要しない技術提供取引を含む)適用上の注意事項
(1)特例が許可(個別、包括)に優先して適用される。
   従って、特例が適用できる場合に許可証を適用してはならない。
   逆に、非該当の貨物・技術に特例を適用してはならない。
(2)上記の許可には補完的輸出規制を含む。
   但し、特に補完的輸出規制を優先するとされている特例を除く。
   (上記3項(5)及び2項(2)の少額特例等)
(3)少額特例の総価格は、輸出申告する貨物について限度額5万円以下適用
   品目と100万円以下適用品目に分類し、それぞれ合計した金額である。
   但し、上記合計は輸出令別表第1の項番の号番(項番の下にあたる号番)
   毎に行うものとする。 
  [注]@有償貨物のみならず無償貨物の場合にも適用される。
     A価格は、通常、契約書に記載された金額とする。無償の場合は
      市場価格として適当な値とする。
     B故意に貨物を分割し適用してはならない。また、少額特例は技術
      提供取引には適用されないので注意のこと。
(4)役務取引は、国内外を問わず非居住者に技術を提供する取引を対象とする。
   また、提供の手段は文書、メール、電話その他方法の如何を問わない。
   詳しくは、本ホームページの「輸出及び役務取引の時点」を参照。
(5)修理特例に関連し、修理品の輸入時の免税については、本ホームページの
   「加工又は修繕される貨物の減免税」を参照。
 [注意]実際の案件について、許可の要否を判定する場合は本稿の他、関連する
     最新の法令(解釈等を含む)及びCISTECの「ガイダンス」等の参考文献
     を参照し、或いは税関の事前相談等を受けて適切に決定すること。 
                                  以上

[改訂来歴]
 REV1 '01.6.22:4項文末に{注意}を追記。
 REV2 '01.6.27:4.(3)に但し書きを追加した。