三、サービスはお客様によって価値が変わる

モノには客観的に測れる基準があります。家具であれば、高さ・幅・奥行の寸法があり誰が計っても、どこで計っても変わりません。車であれば、排気量、乗車人数等が購入の基準になります。

ところが、サービスの基準は大変に測りにくいものなのです。それは、サービスを消費するお客様自身が、サービスの基準を作るからです。もっといえば、お客様もサービス商品の一部であるということです。

さきほど笑顔のサービスの話をしました。このサービスを受けたお客様は、きっと「なんて、爽やかな笑顔なんでしょう」と思うことでしょう。ところが、他のひとは「あの店員、なんでわたしのこと見てにやにやしているのだろう、感じわるい」と思うかもしれません。

これは極端な話ですが、受け手によって価値が変わってしまうというのがサービスなのです。この受け手によって価値が変わるということは、送り手にとって大変なことです。同じことをやっていても、常に同じ評価を受けるとは限らないからです。

それでは、サービスはなぜ受け手によって価値が変わるのでしょうか。

ひとつには、お客様の年代のちがいがあげられます。店内のBGMひとつとっても、若いひとに支持される曲が、年配のかたにとっては騒音に感じられることもあるでしょう。年配のかたには豊富な品揃えでも、若い年代のかたには「好みのものがない」と思われるかもしれません。

また、お客様の所得によって変わることもあるでしょう。嗜好や目的でも変わるでしょう。つまり、お客様の状況によってサービスの価値が変わるのです。お客様の状況とはライフスタイルです。

だから、お客様に支持されるサービスを行う上で、どんなライフスタイルのお客様を対象とするのか、ターゲット(標的)を決めることが必要になってきます。

「そんなことを言うけれど、ただでさえ少ないお客様なのに、このうえターゲットを絞ったら、来るお客様がいなくなる」

というかたもいらっしゃいます。

しかし、ここでちょっと考えていただきたいことがあります。それは、万人に支持される店づくりが果して可能かということです。

中・高校生にも主婦にも年配のかたにも、公団住まいのかたにも豪邸に住んでいるかたにも、独身のかたにも子供がたくさんいるかたにも、万人に喜ばれる「小売店」が作れるかどうかです。

本来、万人向けであるはずの百貨店やショッピングセンターでさえ、客層を想定した店づくりをしている時代です。まして、売り場面積や品数や商圏に制限のある小売店で、だれにでも支持される店づくりは不可能だと思います。

そして、だれにでも来店していただける店をつくることができたと店主が思っても、お客様からみたら、魅力のない店ということになります。

さて、ターゲットを決めるといっても具体的にどうしたらよいのでしょうか。

まず、自店の商圏を知ることです。

数字的には市町村役場から、人口、世帯数のデータが取れます。自店の顧客リストが整っていれば、年代や職業の分析ができます。

そしてなにより、商圏を自分の足でくまなく歩き回ることです。商圏内の生活を肌で感じ、お客様を見ることでさまざまな情報を手に入れることができます。

つぎに基本的な考え方を、「地域全部のお客様に支持されるのが不可能ならば、一人でも多くのお客様に支持されたい」とします。自店の商圏の中で一番多いクラスターをターゲットとするのです。

クラスターとは「房」という意味です。お客様の生活はそれぞれが個性的で、さまざまなライフスタイルを持っています。ところがひとりひとりはばらばらであっても、全体で見るとまとまりがあるのです。ちょうどブドウのように、一粒一粒はちがった味でも房ごとにまとまっているのです。房には大きなものも小さなものもあります。そこでなるべく大きな房を自店のターゲットとするのです。

そして、店づくりをこのターゲットに合わせていきます。来店いただくお客様のライフスタイルを想定した店づくりをするのです。

こうすることによって「お客様の期待どうりの裏切られることのない店」をつくることが可能となります。こうしてできた店は商圏をより深く耕すことができます。