五、サービスは遠くで売ることができない

サービスはモノと異なり遠くのお客様に届けることが困難です。サービスはひとからひとへ、こころからこころへ手渡すものですから、必ずひとが介在します。

販売にかかわるある部分は装置化、機械化できるのですが、どうしてもひとが直接かかわらなければならない分野があります。表層サービスです。

たとえば、笑顔のサービス、カウンセリング販売、生活提案のあるディスプレイ、心地よいBGM、明るい店内の雰囲気、一品でも配達‥‥。

これらのサービスを、店から遠く離れたお客様に提供するのはかなり難しいことです。サービスは輸送することが困難な商品なのです。できないことはないのですが、たいへんに金が掛かります。つまり、店から離れれば離れるほど、均一なサービスを提供するためのコストが上がる、ということになります。逆に効率は店から遠ざかるほど下がっていきます。

だから、サービスの効果とサービスが売上に貢献する効率の兼ね合いで、自店の土俵を決めることが必要になってきます。これが「商圏」です。

もちろん、商圏を設定しない商売もあります。通信販売やテレショッピング、カタログ販売などです。しかしこうした商売の形態は、もはや小売店とは異なった業態です。

それでは、商圏設計についてご説明いたします。

サービスは遠くでは売れません。小売店はサービス業ですから、自店の商品を買っていただけるお客様は、自店の近くのひとたちです。これはもし顧客台帳があれば、地図上にお客様の住んでいる場所をプロットしていけばはっきりとわかるはずです。

お客様は店の周囲には密度が濃く、離れるほどまばらに分布するはずです。この顧客の分布は、自店の影響力の分布ともいえます。

つまり、店の周囲では影響力が強く、離れるにしたがって弱くなるわけです。影響力が弱いということは、何か販売促進策を打ったとしてもその効果が期待できないということです。

だからどこかで一線を引いて、販売促進策の効果が期待できる範囲を決め、そのエリアの中を戦う土俵、すなわち戦略商圏とするのです。

小売店は地域密着型変化対応業ですから、自店の設定した商圏を深く知ることが必要です。

通常、自店の七割の顧客が分布するエリアを戦略商圏とします。商圏は業種、業態、立地などにより、大きく変わるものですが、自店を中心として半径五〇〇メートルくらいになります。半径五〇〇メートルというと歩いて六〜七分くらいの距離で、平均的な商圏でこのなかに一万二〇〇〇人のひとが住み四〇〇〇世帯の家があることになります。

この四〇〇〇世帯をどう自店の固定客にするかが顧客開発です。

さきほど、顧客の密度が濃いと販売促進効果が高くなるといいましたが、この密度のことを市場占有率、シェアとよびます。

シェアのとらえかたは、金額で計算する方法が一般的です。たとえば一千万円の市場で百万円の売上があったら、シェア一〇パーセントです。しかし、小売店の場合、より重要なのが世帯数に対する顧客の占有率です。

さて、シェアには次のような段階があります。

1)未確認シェア(七パーセント未満)

七パーセント未満、先程の四〇〇〇世帯の商圏の例ですと二八〇世帯未満の顧客しかとれていない商圏のことです。未確認という通り、店の存在がその商圏内の生活者に認知されていない段階で、店の影響力もなく、どんな販促策を打っても効果が上がらなく利益もほとんど出ない状態です。

2)生存シェア(七パーセント以上)

店の経営がやっと成り立つ生業の段階で、ようやくその市場に存在がゆるされている状態です。努力する割りには効果が上がらず、投資効果も悪く、このままだといずれ先細りになっていきます。

3)成長シェア(一一パーセント以上)

店の収益性が上がりはじめ、市場の中で影響力や競合店に対する競争力を持ちはじめる段階です。販促効果が急速に上がりはじめ、顧客が顧客を呼んできます。

4)支配シェア(二六パーセント以上)

収益性、販促効果ともにきわめて高くなる段階です。競合店に対しても揺るぎない地位を占め、その商圏内でリーダー店(地域一番店)となることができます。

5)絶対シェア(四〇パーセント以上)

収益性、販促効果がもうこれ以上上がらない段階で、これ以上販促策を打っても逆に逓減していきます。絶対シェアを持った店は、新たな顧客を求め、次の戦略が必要となっていきます。つまり、分支店を考える必要がでてきます。

しかし、支配シェアにも届かない店が支店を出すから、どちらも成功しないということになるのです。

このように商圏戦略の目的は、店のシェアを支配シェアまで高め、これを維持することです。

遠くで売れないサービスを効果的に効率よく提供するために、小売店は商圏というものをしっかりと捉えることが必要なのです。