『あおむしの旅』 モリ アキオ 作
ひゅー
夕方になって きゅうに 風がつよくなった
はっぱの上で いねむりをしていたぼくは あっという間に はっぱから落ちてしまった
気がついたら ぼくは おとこの人がしょっている リュックサックの上にいた
リュックサックは ときどき おとこの人の背中で 大きくゆれた
そのたびに ぼくはふり落とされないように ぎゅーっとしがみついた
おとこの人は 電車にのった
ぼくは リュックサックのポケットの中に入り 顔だけ出して外を見ていた
びゅーん びゅーん 外のけしきがとんでいく
やがて 外はまっ暗になった
おとこの人は 山の駅で 電車をおりて それからバスにのったんだ
ガタガタガタガタ バスは 夜の山みちを どこまでものぼっていった
バスがゆれると おとこの人も リュックサックも ぼくもゆれた
夜が明けるころ おとこの人は バスをおりた
空には星が いっぱい かがやいている
ぼくの入ったリュックサックは ゆっくり ゆっくり 山のほそ道をのぼって行く
ひがしの空が すこし 明るくなってきた
ぼくは リュックサックのポケットの中で ゆらーり ゆらーり ゆられながらねむってしまった
ドスン
きゅうに音がした
ぼくは びっくりして 目をさました
リュックサックは 大きな岩の上に おかれている
空があかるい
おとこの人は リュックサックとぼうしを 岩の上においたまま がけの上まで行った
目の下に 大きな滝つぼが 見える
ぼくが がけの上だとおもったのは じつは 滝の上だったんだ
おとこの人は その滝の上で じっと立ったまま うごかない
なんかへんだ
おとこの人は じっと 滝つぼを 見つめている
そして きゅうに 上を見あげた
あっ だめだー いけないよ 飛び降りちゃ
ぼくの声が 聞こえないのかしら
ぼくは もういちど とびおりちゃーだめだよー 聞こえないのー?と 大声でいった。
ぼくの声が 聞こえたのか おとこの人が ふりむいた
目から ぼろぼろ なみだが ながれている
おとこの人は ぼくのほうをちらっと見て また がけの上に立った
あーっ 飛び降りちゃあ だめー
そのとき 山と山のあいだに ひろがって見えるうみのむこうが 黄金色にかがやいた
日の出だ
すいへい線から あらわれた太陽が すこしずつ うみの上に はいあがってきた
まばゆい光の中に おとこの人の すがたがあった
太陽は すいへい線からはなれ 天をめざして ずんずんのぼってゆく
とつぜん おとこの人が 「うおーっ」 と さけんだ。
あーっ だめだよー
おとこの人は 岩の上に すわりこんでしまった
時間がとまったように おとこの人は そこからうごかない
ぼくは 心配で心配で 目をはなすことができなかった
しばらくして おとこの人はゆっくりと立ち上がると ぼくの方に歩いてきた
そして じぶんのリュックサックを 見つめて つぶやいた
「帰ろう・・・」
そうだよ 帰ろうよ
みんなが 待っている・・・
おとこの人は 小さな声だけど 力強くいった
「帰ろう・・ 帰ってもう一度・・・」
よかったー これでぼくも帰れる
「もう一度 そう、もう一度・・・」
おとこの人は こんどは 大声でいった
「やるぞー やるぞー!」
ほんとうによかった
帰ったら ぼくもがんばって きれいな アゲハチョウになるよ
おとこの人は ぼくをリュックサックのポケットに入れたまま 一歩一歩 山をおりはじめた
ぼくは ほっとして また リュックサックのポケットの中で ねむってしまった
僕の夢
大きくなったら 僕は 博士になりたい。
そして ドラえもんに出てくるような タイムマシンを作る
ぼくは タイムマシーンに乗って、
お父さんの死んでしまう前の日に行く
そして 「仕事に行ったらあかん」て いうんや。
M・T君(小学1年生)