愛とは夜に気付くもの
(1996年〜1998年同人誌・BE BOY GOLD掲載)
| この作品はコミック「本当に、やさしい」に収録されている「執事の分際」の続編です。 甲斐性ありまくりの執事とお子ちゃまなご主人様のお話です。 |
(小姓の分際) 売春宿で働いていた13歳のクロードはお客の1人に拾われ貴族の使用人になります。賢く努力家の彼は、読み書きから家の雑事まで直ぐにこなせるようになり、ご主人様に気に入られます。 「小姓の分際」はたった34ページながら12・3年の月日が流れていくため、クロードの成長が楽しめます。 少年クロードの顔は只者ではない13歳を感じさせ、数年後にはメガネで利発さに磨きをかけ、5年後は完全に大人の顔に、その5年後は少し目の下に小じわを蓄えた男の顔になっています(でも全てイイ男!)。 よしなが先生はキャラを老けさせて行くのが本当に上手い作家さんで、どんな年齢でも無理なく素敵に描ける技術にはいつも感心させられます。 クロードはフランス人でありながら中国人の血が流れているため、顔が東洋的。周囲から奇異の目で見られて育ったようです。唯一クロードの容姿を口にしなかったのが「だんな様」で、この「差別」を受けなかったことがクロードに忠誠を誓わせる原動力となります。 その後執事に昇格した彼は、浪費で家を傾かせてしまった旦那様に一人息子を託されます。旦那様の臨終にあたり「私は父親のようにではなく、あなたを愛していました」と心の中で告白するクロードは本当に切なくて、泣き顔に崩れる表情が心に迫ります。 クロードと共に息子のアントワーヌも赤ちゃんから少年へと成長してゆき、クロードにとてもよく懐いています。 少年アントワーヌに「悪戯は男としかできない、これは母上の祟りか」と相談受けた時のクロードの表情が面白く、「祟り」という単語にも笑いを誘われます。 とりあえず顔も中身も父親似でよかったよかった・・(笑)。 (愛とは夜に気付くもの) 17歳になったアントワーヌは美しいやんちゃ坊主に成長し、恐いもの知らず。貴族のくせに大層口が悪いです。 ある日パリの仮面舞踏会にクロードの反対を押し切って出かけた彼は、男娼と間違えられてご立腹・・声をかけてきた無礼者に「脳たりん」・「出直して来い田舎領主」と暴言を投げつけ、無礼なのはどっちだと言いたい展開に(笑)。この結果強姦されかかり、仮面の男(クロード)に助けられます。 クロードとアントワーヌの関係は執事と主人なのですが、アントワーヌの仮面舞踏会用の衣装を見て「成金ブルジョワジーのどら息子」とはっきり言っているあたり、ほとんど父親。これに対し「わざときわどい服で身をやつしてるんだっ」とムキになるアントワーヌは可愛い幼児のようです。 主人のピンチを救うクロードは本当にカッコよく(サラサラヘアも素敵!)我儘なアントワーヌのよき保護者ですが、仮面で顔が見えないのをいいことにラストはかなり大胆です。 お互い最後まで名を明かすことなく朝を向かえますが、主従という枷が無ければこのまま恋愛が始まったはず・・。一夜明けて情事に触れようとせず、背中合わせに立つ彼らには厳しく切ないものを感じます。 (執事の分際のすぐ後) これは「本当に、やさしい」の中に収録されている「執事の分際」直後のお話です。 亡命中にも関わらずクロードとの一夜にトロ〜ンとなっているアントワーヌ。「そうだ革命。そんな事があったんだ、忘れてた」と呑気な事を呟いています。「そうでしょうともあなたという方は・・」とため息をついてるクロードの後ろ姿が可笑しいです。 アントワーヌはクロードさえ居れば、政治も家もどーでもいい人なんですね・・本当に貴族様で・・可愛いです。 (主人の分際) 亡命先へ一カ月後に向かうと約束したクロードですが、二カ月経ってもやってきません。 アンントワーヌは伯母に何故来ないのかと愚痴を言いつつ、クロードがいかに有能な執事であるかとノロケています。 その晩、クロードがやってくる夢をみます。再会してもそっけないクロードですが、アントワーヌの寝巻きのボタンが掛け違ってる事に気づくあたりは爆笑です。 夢でつまらんと思いながらもアントワーヌは「抱いてくれ」とねだります。クロードは彼を全裸にしながら、肝心な所には触れず、焦らしたあげく足の甲にキスをします(甲ですよ、甲)。なんともエロティックで、よしなが作品全Hシーンの中で最も心拍数が上がってしまう場面でした・・。そしてその先もズズズズーっと唇が上がってきて・・その後もなんだか大変なもんでした(ドキドキ)。 Hシーンは、キスする・指を絡める・指をしゃぶる・手足の甲にキスする・ウナジにチューする等が個人的にツボです。直接的行為はもちろん無くてはならないものですが(ハハ)よしながさんのは前段階で胸にドスンとくるものがあって、たまりません・・。 夢の翌日、本物のクロードがやってきます。面白いのはクロードも伯母様もアントワーヌを子供扱いしている事。「大変な我儘小僧で二カ月間苦労なさったでしょう。マダム」「とんでもない。ずっといい子にしてましたよ」(主人を小僧呼ばわりかい)。さらに「死んでるのかと俺は思った」と涙ぐむアントワーヌに頬を寄せ「さあさあ泣かないで可愛い子だ」なので、幼児をあやす父親のようです。 「主人の分際」はオチが最高でした。前の晩のご乱交は「夢」ではなく、実はクロードが生活資金のためのに売り歩いた「催淫剤」が原因。これを何時アントワーヌに仕込んだのかということはさておき、メチャクチャ可愛がっているくせに何故こういう場面で鬼なのか・・。心配して待っていたアントワーヌがちょと気の毒になりますが、一生分の生活費をかせいでくる彼なのでやっぱり許せる茶目っ気でしょう・・。 (主人と貴婦人) アントワーヌは伯母様から紹介された14歳の孫娘が気に入りません。元々女嫌いな彼は会話もはずまず、「案外つまんない貴公子なのね」と言われプンプンしています。アントワーヌがどんなに愚痴ろうがサラリと皮肉まじりにかわすクロードは本当にイイ味出していますが、屋敷が狭い、ワインがまずいと文句をたれた挙句、チーズを「食わせてくれ」には切れたようで「あまり我儘をいうと、天蓋の中で知りませんよ」と耳元で囁くクロード・・ゾクゾクしちゃうアントワーヌが可愛いです。 翌日二人そろってお譲様の相手をすることになり、娘を挟んで嫉妬し合う彼らですが、アントワーヌがとにかく鈍感です。怒ったクロードはベットの中で焦らしまくりの酷い仕打ちをします。泣かせたことに満足げなクロード(P.140)とポロポロ涙をこぼすアントワーヌの表情が絶妙です。 クロードは通常、冷静沈着・無表情、言葉はたいそう丁寧で「あなたももう21におなりだ14のお譲様相手になんて言い草です」と躾までしてしまう有能な執事です。ところがベットの中で「鬼畜攻」に転じるのがビックリで、この豹変ぶりと意外性にハマル人は多い筈・・。 立場の弱い人(使用人・家臣・年下など)が「攻」なのは素敵です。普段下手に出ている人がセック○で大胆不敵というのはたまりません。なので、個人的には普段威張ってる「受」も大好きです・・。 ラストでようやくお嬢様の気持ちを理解したアントワーヌはクロードの独占欲に満足して「ははははは暗い奴!」と笑います。単純でお子ちゃまなアントワーヌの表情が楽しいです。 (雪の降る夜) 雪に10日も振り込められ、お屋敷は食料も薪も底をつきるという緊急事態。 薪がつきて寒くなったアントワーヌはクロードに抱っこをねだります。優しく抱きしめられてホッペや耳元、ウナジにキスされ、幸せそうに微笑む彼の表情はこちらまでホンワカ気持ちよ〜くなれるもの。絵の上手さに降参です。 ところが抱っこされるだけでは満足できず「寝る」誘いをクロードにしかけます。「さすがと言うかなんと言うか・・」と言いつつ応じるクロードですが、有能な執事も天候には勝てなかったようで反省気味。貧しかった家族の話等、彼の弱い部分が見えて魅力的です。が、その反面「私はいつもなら決してへまはしませんから」という力強いお言葉もあって・・不敵な微笑みを交わしながら結局いつものSM(?)Hに走ってしまう2人。ろくに食べてないのに元気な人達です(笑) 大雪はアントワーヌに読書をさせることはできなかったものの、好き嫌いを少し改善することができたようで・・「ぼっちゃまのはただの食わず嫌いなんですよ」と言われながらセッセと食べる拗ねた顔が可笑しいです 「執事の分際のすぐ後」から「雪の降る夜」までのラストは全てクロードの後ろ姿で終わっています。クロードの広い背中には包容力とユーモアが漂い、4作共通したポーズには粋なオチが伺えます。 (ああ主よ、このよろこびを) クロードの初恋の相手が自分の父親だったことを知ったアントワーヌはショックを受けます。「親子どんぶり」発言でクロードを攻め、「俺はお前以外に好きな奴なんかいなかった!!」と一途さを強調しますが、シレッとして可愛げのないクロード・・。アントワーヌは父の形見にやつあたりして部屋に籠もってしまいます。 彼の「イー」と「なすなすなす!!」そしてこの態度に無表情に驚くクロードは爆笑でした。 外は雷の悪天候。アントワーヌは家出をしたはずが、雷への恐怖から雪の中で失神。クロードに発見されるものの3日間高熱で意識不明になります。気がついた彼を抱きしめるクロードの「ああ主よこのよろこびをどうやってあなたに感謝すればいいのでしょうか・・!」はこの物語の名台詞で、冷静沈着なクロードの感情が露になり、胸に迫ります。 生活能力ゼロのアントワーヌは、クロードがいなければ生きていけませんが、クロードは他所でも十分やっていける能力の持ち主です。にも関わらず主人の世話に人生をかけ、アントワーヌが死んでしまったら自ら命を断つとまで告白しています。一見冷めているようで実は熱い男。このギャップに痺れまくるのはアントワーヌだけではない筈! (永遠に) クロードは反革命運動をしている貴族の話をアントワーヌにしますが、やっと美味いものが見つかり始めたのだから動く気はないと、無関心。そのわりに好きな人の思想はよくお分かりで、クロードが革命賛同者であることを知っています。そして、「俺はお前とお前の用意した食事があればどこだって一緒だがな」と可愛い発言をするアントワーヌ。ところがこれに対して「性欲と食欲が満たされればそれでよろしいと」と返すクロードの身も蓋もなさ・・・かなり爆笑でした。 二人は歳の差カップルだけにクロードは常に父親のようで、大層甘やかした子育てをしました。例えば雷を恐がるアントワーヌを抱っこするシーンは(でも15歳/笑)邪まな気持ちがあったにせよどう見ても親子愛で、手のかかる子ほど可愛いという感じ・・。結果、アントワーヌはいくつになってもお子ちゃまですが、お互いさえいれば満足という彼らは大そう上手くやっていて、こんなわけで読後は大層暖かい気持ちになれる作品なのです。 |