それを言ったらおしまいよ
1998〜2002年 BE×BOY GOLD・MAGAZINE BE×BOY・コミックアイズ掲載+描き下ろし
「それを言ったらおしまいよ」は近未来ファンタジー等を織り交ぜた5つの物語が収録されています。
内3話はアンハッピーな結末で、めでたし・めでたしが多い作品の中では珍しい存在です。
| それを言ったらおしまいよ 崇は億単位の稼ぎがある売れっ子作詞家。ところが親友の耕平に世話を焼いてもらいたい一念で、汚いアパートでいつも餓死寸前・・売れない作詞家を装っています。 ある日偽貧乏が耕平にバレてしまい、崇の強い恋愛感情を理解してしまう耕平・・結局2人はめでたく結ばれることになります。 耕平を繋ぎ止めるために貧乏ごっこをしている崇はひたすらムチャクチャ可愛い人です。「もう一度その手で指であたしを触ってよ」と自作の詩で愛を告白する場面は切ない可憐さ120%!こんな口説かれ方をした上に指を咥えられたら・・もう貪りつくしかない・・・堕ちる耕平に大きく頷けるのでした。 耕平はお医者で29歳(白衣姿がカッコイイっ)。両親から「パラサイトシングル」を連呼されお見合いをするはめになります。お見合いを説得する両親の長台詞が強烈で爆笑ですが、何でこの親からこんな素敵な息子が・・と耕平の毛髪力が心配になる場面でもありました(笑)。 両親が強烈なのもさることながら、お見合い相手の女医さんもユニークで魅力的でした。「予備のパンストとかタンポンもあるんで」という台詞はキャラの面白さがすぐに伝わる巧みな一言。脇役もしっかり頭に刷り込むよしなが先生のネーム力は只者ではありません。 この他、崇の作詞した歌も脳裏に焼きつきました。特に「ニャ」が可愛くて「今日のごはんはどうするのニャ?」は普段使ってしまいそうです。 可愛いと言えば崇の部屋にあるウサギやカエルのぬいぐるみ・・・一線を越えてしまったことに戸惑う耕平の横に転がっているのが可笑しいです。このシーンの蒼白な耕平と余裕な崇の対比はとても面白く、ちょっとふてぶてしくタバコを吹かす崇に「普通の29才の野郎」が見え隠れしています。 「それを言ったらおしまいよ」はコミックの表紙を飾っていますが、こんな続編もしくは2人の高校時代のストーリーをもっと読んでみたい作品です。 ※ 「金子みすず」の詞にうっとりする崇を見て「みすず」を思わず読みたくなりましたが、「わたしと小鳥とすずと」は現在、小学3年 の国語の教科書に載っています。 |
| 私の永遠の恋人 この物語は無菌状態でしか生きられない少年アーサーに兄ラフウッドが次々と自作のセクサロイドを与え、終には自分を与えて彼を死に至らしめてしまうという物悲しいお話です。 前半は身の上話をするセクサロイドや精○の味にこだわる兄など露骨な下会話が爆笑ですが、後半は無菌室にいることに満たされないアーサーが、アンドロイドを全て殺してしまうという凄惨な場面が展開します。 アンドロイドを殺した後アーサーは新たな人形を与えられますが、結局兄と関係を持つことが1番の望みであった彼は「自分が生きてきたのは兄さんの腕の中で死ぬためだったんだ」と告白しながら死んでいきます。このラストで驚いたのがアーサーは実はラフウッドの死んだ弟の身代わりで、セクサロイドだったという事実・・。 アーサーの願いを聞き入れ抱き殺してしまうラフウッドの涙は切ないですが、アーサーがセクサロイドだったという展開で兄の(人間の)エゴな部分が押し出され、少し残酷な印象を受けました。 前半の笑いとラストのどんでん返しのギャップに恐さを覚える作品ですが、やたらと美しいキャラが出まくるため・・眼福です。 |
| おとぎの国 神の罰が下り、人間が消されてしまった東京で児童カウンセラーの沢田と中一の薫が生き残っています。薫は虐めを受けていたため誰もいない状態を満足に思っていましたが、そう思っている自分は最低だとも感じていました。 沢田はそんな薫の心を理解するので、頬へキスをされる薫の癒された表情にはジンとできます。ところが、一人の寂しさを悟った途端沢田も消えてしまい、最後の一人にも「孤独」という罰が与えられる厳しいラストでした。 「おとぎの国」は初期のダイナミックな構図と味のある描線がもり沢山で微妙な表情の変化も素晴らしい、絵を楽しむことができる作品です。 |
| ある5月 妻を亡くしたばかりの初老の大学教授が40才の女性と再婚しますが、カルチャーの違いから次第にズレが生じていきます。 幸子は過去に男運が悪かったのか教授の顔色を常に伺いとても献身的です。ところが読み進めていくにつれて自分の健気さに酔っている、一種のヒス状態にある女性だということが判ってきます。 土下座や跪いて灰皿を持つシーンには恐さを感じますが、「結婚写真を居間に飾る」・「100円のシュークリームが1番美味しいと思っていた」等の些細なエピソードの織り交ぜ方もとても上手いため、2人が別離へと向かうラストには納得できるものがあります。 「ある5月」はよしなが作品には珍しい男女の生々しいお話ですが、幸子が何気に強烈で頭に残るお話でした。 |
| ピアニスト 才能が枯れてしまった40代のピアニスト(伊達)が歩道橋の上でタバコをふかしています。彼は20代の頃美貌とピアノで一世を風靡し、男にも不自由したことがありませんでした。ところがそれ以上の者にはなれず、今ではしょぼくれたゲイに成り下がり「受」になるのも断られてしまう始末・・。人生に嫌気がさしているある日、矢吹という名の若者に声をかけられます。そして翌日も同じ歩道橋でお茶に誘われ、伊達は自分に気があるのかと期待をしますが、矢吹が親の借金に追われていることが判ると通帳を渡し自殺を決意します。 「ピアニスト」は伊達の悲惨な日常を描いているわりに、暗い状況と甘い妄想場面の行ったり来たりが面白く、ラストの「お父さん・・?」には思わず笑ってしまいました。 矢吹は伊達の心を見事に看破し自殺を止めることができました。死ねずに泣き笑いする伊達の今後と2人の関係に期待できる結びでした。 もしこの2人が出来上がったら初のヒゲ×ヒゲ、そして珍しく年下攻・・・幸せになってもらいたいもんです(笑)。 |