月とサンダル(全2巻)
1994年〜1999年花音・同人誌掲載
月とサンダルはよしなが先生のデビュー作です。にも関わらずユーモアと美味しそうな料理が満載で、
2組のゲイカップルの想いととまどいが面白く描かれています。
| (1巻) 月とサンダル 高校生の小林は世界史の井田先生に片思いをしています。想いが募り自宅前まで訪ねて行くと、先生は恋人と揉めている最中。恋人に立ち去られ落ち込んでいる先生に食事を作ってあげたり、励ましたり・・先生の寂しさにつけ込む形でキスをする小林ですが、恋人の板前さんが戻ってきてしまいます。 小林が先生にアスパラを食べさせる「口、あけろよ」と「一緒に暮らそう」と言われて涙ぐむ先生の表情が好きです。「月とサンダル」は短いページ数ながらもキャラの個性が素早く分かるセリフと表現の数々・・、コメディタッチの絵も可愛らしく、ラストの「先生オレのスニーカー持ってくっかなあ・・」と取りとめのない事を考えながらノビをする小林が爽やかです。 先生と橋爪 井田先生と板前の橋爪は高校時代からの付き合いで、交際8年目。同居を考えだした2人は新居探しをしていますが、男同士という不自然さから難行します。そして些細な会話のすれ違いから先生は橋爪の愛を疑う発言をして顔を軽く叩かれます。これに対して先生の反撃はグーでパンチ!部屋から橋爪を追い出します。 橋爪は言葉が足りず照れ屋なため本音が分かりにくい人です。パンチされても怒らず仕事に行ってしまうのでケンカにもなりません。こんな彼にじれったさを感じる井田ですが、高校時代「好きだ」と言ってくれていたのを思い出し反省・・「ヒドイ事言って、あげくにグーで殴ったりして、誤らなきゃ!!」と半べその先生はとてもラブリーです。 翌朝怒った様子もなくやって来た橋爪はゲイの結婚を意味する養子縁組届の紙を持ってきます。それと共に随分前に取ったと思われる婚姻届の用紙も・・。橋爪のプロポーズに感動して泣き出す先生はとても涙もろいのですが、泣かれる度にオロオロする橋爪は本当に可愛くて、優しい感じ・・長い春の2人とはとても思えない初々しさです。 山の上のランチ 小林は料理友達の鳴海陸子ちゃんとお弁当の交換をしつつ勉強を教えてもらっています。ところがなるちゃんは交通事故にあってしまい代わりに兄の東洋が英語を教えにやってきます。家庭教師代としてお弁当を作る小林ですが、偏食で教え方も偉そうな東洋にムカつき「ジャイアン」とあだ名をつけます。ところが東洋はジャイアンに外見は程遠くバックにカトレアやアイリスを背負う麗しさ・・その上偏差値も高く一人山岳部・・ちょっと孤高な感じです(ちなみに井田先生バックはロータス、小林は雑草/笑)。 2人は当初もめてばかりですが、勉強の飲み込みがイイ小林と文句を言いながらも残さず弁当を食べるジャイアンは次第に和んでいきます。 そんな中妹のなるちゃんに告白された小林はゲイゆえに応えることができません。「ごめんな」と言いながら優しくなるちゃんを抱きしめる彼は罪な男です。そして無愛想ながらも美しい微笑を見せる東洋にクラッときてしまった小林は兄ににフォーリンラブ・・。 この章で1番爆笑できたのが「共産主義思想を阻止せよ」。こんな和訳を思いつく方が難しい?! ナチュラルボーンウィナー 小林と関わるようになってから東洋は取っ付きやすい雰囲気になり、同級生の間でも和めるようになります。 勉強を教える代わりに「日本百名山」のビデオを小林宅で見せてもらっている東洋ですが、ビデオ鑑賞中に小林の熱い視線に気がつきます。妹に確認をとると小林はホモだとはっきり肯定され、井田先生に片想いをしていたことまで分かります。自分が射程距離に入っていることが分かったジャイアンは小林宅訪問を断りますが、断れた勢いで小林は「好きだよ」と告白してしまいます。真顔で東洋を見つめる潔い小林はかっこよく、過去を思い出してとまどう東洋の憂い顔もステキです。 ジャイアン・小林・なるちゃんが微妙な関係にも関わらず仲良くお弁当を食べているシーンが好きです。突然「もうここには飯食いにこないから」と言いだすジャイアンに「小林のおかげで野菜食べれるようになったのに」となだめるよい子のなるちゃん。そして「別にいーけどよ」とあっさり受け入れる小林に一抹の寂しさを覚えるジャイアンの間・・・自分のアイデンティティーが乱されているわりに可愛い反応の東洋が面白いです。 その他上高知の川の色をバスクリンに例えたり、井田先生より美貌で頭脳もよいと自分で叫ぶあたり・・堅物のようで実はそうではない東洋のユニークさが笑えます。 天気と記憶 小林にアプローチされ、答えをださなければならない東洋は困惑しています。小林は素直で積極的、図書室に向かえにきたり、台風の中傘もささずに東洋を待っていたりと一生懸命です。ところがいくら「好き」と言っても東洋は真剣に受け取ってくれず、結局暴風雨の中で言いあいになり飛んできた看板で小林は腕を切ってしまいます。この流血シーンは何があっても東洋から目を離さない小林の一途さがよく出ていますが、それと同時に彼のカメレオン並の視野の広さと反射神経のよさが証明されたシーンでもありました(笑)。 それにしても血を見ただけで卒倒するジャイアンはお嬢様というか・・小林にお姫様抱っこをさせてみたい! 中学時代、東洋には仲のよかった友人(吉崎/当然男)から告白された経験があります。「気色悪りい奴!」と吉崎の気持ちを突っぱねたことで友情は終わり、彼の転校によってそれっきりとなってしまいます。この時東洋にも「愛」があったかは定かではありませんが、吉崎を傷つけたことで自分も同じくらい傷つき、それ以来人と深く関わることが恐くなっていたのでした。 こんな東洋を殻から出すことができたのはやはりオシの強い小林だけ・・「あんたはそいつにずっと謝りたかったんだ」と東洋の気持ちを代弁し、背中を抱きしめる包容力は年下とは思えぬスケールです。 「天気と記憶」は東洋が停電の暗闇の中で吉崎との関係を語り、明かりが戻ったところで「あんな言葉言われたくない」と本音を吐き出し、天気の回復とともに2人の心が繋がるという細かい演出が素晴らしく、ラストのキスシーンには嵐の後の静けさを感じさせられます。 みんなのいる場所 小林はジャイアンとセックスすることを決意、井田先生に方法を聞きに行きます。ところが井田&橋爪もちゃんとしたことがないため、先生は目が点になったまま上手く答えられません。 結局小林はその道の本を手に入れ読破。家に置いておけないので先生に献上します。井田は小林の「好きだからしたい」「相手を気持ちよくするために本を買った」という素直で潔い発言に感化され本を受け取ります。家でそろ〜と本を覗く先生はとても可愛く、また前向きです。橋爪は純情な先生を驚かしたくないという理由からCに踏み込めずにいましたが、先生の積極的な態度に「サラダ油で代用してもいいか?」といきなりビックリな発言・・その後に続く間と「恥辱のあまり死にそう」は爆笑でした。 一方石橋を叩かないで渡る決断力の男・小林は「かえさねーよ。今日はセックスすんだから」とジャイアンに断言(どっちがジャイアンなんだか・・)。東洋は妹の気持ちを知っているだけに躊躇しますが、「決めろよ」と小林は迷う余地を与えません。東洋は強引な愛情表現をされて断れるはずもなく、小林を抱きしめます。 橋爪×井田と小林×東洋が同時進行で事に及ぶ構成が上手く、そしてなんとか成功の2組。ところがその後小林と東洋はなるちゃんに対するうしろめたい気持ちが処理できず、又橋爪は職場でカミングアウトしてしまったことから白い目を向けられています。 結局小林の態度が不自然なことからなるちゃんに兄との関係がバレテしまいますが、なるちゃんは「だってそれが小林の友達やってるあたしのプライドでしょ」と2人を認める言葉をかけてくれます。でも本心は完全に失恋してしまった辛い状態なわけで・・・彼女のお人柄には脱帽です。 ○○成功後、落ち着いていたのはやはり大人コンビ。橋爪が職場で居辛くなっている事実を知ってもどっしりと構える先生・・、ラストでなるちゃんを慰める姿は頼もしく、又泣いている彼女にさりげなくハンカチを渡す橋爪は渋くて素敵です。 (2巻) 冬の恋人 肉まんを強引に東洋に買い与える小林・・そしてこれがクリスマスプレゼントらしい(ほんとにコレだけ?)。 たった4ページながらも小林の手玉に取られる東洋の日常を垣間見ることができます(笑)。 東洋は美術や音楽がダメみたい・・完ぺきじゃないとこも魅力的♪ 夜の恋人 橋爪は届いた手紙を見た途端激しく井田を求めてきます。不自然なものを感じつつ抱かれてしまう先生ですが、落ち着いて聞いてみればお店を持たせてもらえるという吉報。橋爪は嬉しさではしゃぎHだったわけですが・・あの表情じゃ分かりにくいって・・(笑)。 結婚しても「橋爪」と呼んでいる先生が初心を忘れない感じで可愛いです。 春の恋人 高3になった小林は受験した大学を秘密にしたあげく、遠方の大学に行くことをほのめかします。不安になった東洋は離れていってしまうかもしれない小林にサービス増量。それでも「俺と離ればなれになったらつらい?」と小林に聞かれればツンとしてしまう東洋・・本当に素直じゃなくて気位高くて美しいです。 いつもと様子の違うジャイアンを「−東洋」と見つめる小林の表情は男らしく惚れ惚れですが、「アレって潮水混ぜた・・」と言い出す唐突さも変で好きです。 「春の恋人」は小林の合格した大学は東洋と同じ東大という冗談のような結末で、試された感じのジャイアンですが、「共産主義思想を阻止せよ」からよくぞここまで伸びたものです。よほど東洋の家庭教師がよかったに違いない。 なるちゃんの元気がない 失恋後のなるちゃんを元気づけようと、2人の友達が放課後お茶に誘います。ちょっと強引で一生懸命な友達・・イイ人達です!なんてことないエピソードですが心温まるお話です。 アジアっぽいアフタヌーンティー・・食べてみたい! ジャイアンと小林もやはり 小林は○○途中でトイレへ・・焦れていく東洋の表情がとても上手く描かれていますが、小林はわざと待たせてジャイアンを観察していたのでした(酷っ)。 東洋が選んだ就職先は大蔵省ですが、冷静に振り返ってみれば転勤がないから決定したような気がする自分。小林にかなりハマッテいることにうろたえる東洋の表情が可笑しいです。 小林はいつもおすましのジャイアンを焦らせたり怒らせたりするのを楽しんでいてちょっと意地悪ですが、表情を崩す東洋をこの上なく可愛いと思っていることは確実です・・。 さてあの人は 「ソルフェージュ」キャラ3人が橋爪のお店にやってきます(久我山と田中は幸せそう♪)。 やたらと美味しそうなものを食べているので「井田」に心底行ってみたくなります。 橋爪の無表情な妻自慢が面白いです。・・橋爪の目の小じわが好きです。 先生と橋爪のその後 橋爪のお店は人手が足らなくなったので女の板さんを雇います。とても腕がよく感じのいい人でおまけに独身・・、先生は急に不安になります。 橋爪の帰宅を遅くまで待っていた先生は橋爪の顔を見たとたん「帰ってきてくれればそれでいいんだ」と涙を流します。表情を崩さずツーと落ちる先生の涙は反則です。あまりのいじらしさにドキッとさせられ、無言のコマが効果的です。 家に帰っただけで感謝の涙を流された橋爪は先生を抱きしめます。照れながらも井田に夢中になる橋爪の「俺も好きだ」は貴重な一言。事が終わった後浮気の心配を恥ずかしく思う井田ですが、「杉田さんは女だろう」の一言に自分達がゲイだったことを思い出す先生・・橋爪の「そうとも」が爆笑です。 なるちゃんのその後 医大に通うなるちゃんへのインタビュー。彼氏いない歴更新中のようで・・「幸せですか」の問いに一瞬暗い表情になりますが、とにかく笑顔が素晴らしい。幸せになってもらいたいです。 小林とジャイアンのそれから ジャイアンは大蔵省官僚、小林は母校の高校教師となり2人とも立派な社会人。東洋様の背広ネクタイは麗しく、小林は相変らず東洋にお弁当を作るラブラブぶり。ところがこのお弁当のおかげで東洋は上司から彼女の存在を突っ込まれ、恋人の存在を隠すためお弁当を禁止にしてしまいます。 仕事が一きりついたある夜、女の上司に東洋は小林のことを打ち明けます。東洋の告白欲を刺激したのはやはり隠しきれない小林への愛なのか、一生周囲を騙し続けることへの憂鬱だったのか、とにかく退職覚悟でカミングアウトしてしまいます(これはBL好きを隠していた人間が一般人にやおい好きを告白してしまった状況と同じ??←バカ)。 告白後小林宅をいきなり訪ねたジャイアンは小林に襲いかかります。多忙のため40日ぶりに会った2人の激しいHにはドキドキですが、合鍵を持っているのにドアを開けさせる態度と、「早く抜けバカ」発言は流石ジャイアン・・威張りまくっていて素敵です。 東洋はカムアウトしたことを小林に告げると、自分はとっくに職場で公にしているとあっさりとした反応・・目が点のジャイアンですが・・勇気をもらえます。この小林のあっけらかんとした潔さ、そして男らしい自信は本当に見上げたもの!こういう人は図太く長生きすることは確実で、その上料理も上手い。こんなパートナーが現実に居たら最高です。 休み明けに上司に声をかけられた東洋は潔い発言で彼女を魅了。女上司さんは感じよく応援してくれます。 井田先生は人である 「先生」といえども普通の人間です。 自分の両親に橋爪のことをカミングアウトする予定の先生は夜な夜な激しいHをしていて・・それはもう目の下にクマができるくらい・・。 告白する憂鬱を忘れるようにセックスする2人ですが「このまま死ぬか」と「そんな幸せなことできないよね・・」は間も台詞も絶妙。男同士という状況の厳しさが胸に迫ります。 基本的に優しくて人と戦うことが苦手そうな井田と橋爪・・。小林の「がんばれよ!」に心の底から同意していまうラストでした。 ジャイアンだって人である 井田先生の話を小林から聞いた東洋は、自分が両親にカムアウトする時のことを考えゾッとします。こんな兄になるちゃんは「何があってもここに1人はお兄ちゃんの味方がいるんだからね」と慰め東洋を感動させます。なるちゃんは好きな人を兄に取られてしまったとは思えぬイイ子ぶりですが、「お兄ちゃんより大物になれそうな予感がしてるから」と何気に負けん気も強いのできっと大丈夫。幸せになって欲しいです。 それにしても小林が自分の両親にカムアウトしていた事実には驚きました。どこまでも速攻な人。 オマケまんが 風呂好きの東洋のために広い風呂付きマンションに同棲する2人(しかも霞ヶ関近く)。ジャイアンは長風呂でさらにH後もすぐ入浴〜。朝までセックスの余韻を楽しみたい小林の気持ちは台無しです。でも相変わらずベタ惚れのようで、結局「2人で住めりゃ何でもいんだけど」と入浴許可をしています(笑)。東洋の前髪が下りているのが可愛いとも呟いてますし・・小林の単純さこそ可愛いです。 |