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かつて、それを見た英語圏の人間全てを笑いの坩堝にたたき落とした「もの」があった。 日本人が生み出した、ゲーム業界の黒歴史の中で燦然と輝くその「もの」を、いつしか人は、 「AYBABTU」と呼ぶようになった―― 少し前に友人の掲示板で取り上げられたネタに、「変な日本語、変な英語」というのがありまして。 その話題に関連して自分が思っていることをつらつらと書いてみようかと思います。 ちなみに、なんでこれを友人の掲示板に書かなかったかというと、書こうとしたがマジメなものになりすぎたのと、考えをまとめてる間に掲示板のログが流れてしまったからです(笑)。 まずは下にある2つの記事を。 冒頭で紹介した「AYBABTU」の正体は、ここに記されています。 asahi.com内AICより 「変な日本語、変な英語」:http://www.asahi.com/column/aic/Tue/d_takuki/20030916.html 妖精現実 フェアリアルより 「"All your base" vs. "反省しる"」:http://www.faireal.net/articles/8/03/#d30815_2 要約すると、「一般に流通している商品などの中には、主に文法的に間違っているがゆえにネイティブスピーカーにとっては面白おかしく見えるような、外国人の作った日本語文or日本人の作った英文が割といっぱいある」ということになりましょうか。 ほとんどの場合、間違いを犯した側はマジメにやっていて、そのマジメさとおかしな間違いとの間の激しいギャップがネイティブにバカうけしてしまったという。 そして、フェアリアルさんの該当記事からもリンクが張ってありますが、このようなオモシロ英語を集めまくって紹介しているサイトがあります。 「Engrish.com」:http://www.engrish.com/ このサイトには世界中(といってもほとんどが日本産)のオモシロ英語が山のように掲載されていますが、FAQ("What is Engrish?"をクリック)と「Create Your Own Engrish!」(左下の"Making Engrish〜"をクリック)に書かれていることが特に興味深いです。 前者ではオモシロ英語の成り立ちや英語という存在に対する日本人の考え方についてとても的確に書かれていると思いますし、後者においては、おそらく一部のライターやデザイナーがとっていると思われる「間違った英語テキスト作成法」がほぼ正解と言っていい形で(←限りなく確信に近い推測)記載されています。 ここで気をつけてほしいのは、ちょっとしたスペルミスはあまりEngrishとはみなさない、ということです。 Engrishというのは、もっとこう、言語が言語であるために最低限必要な何かがいくらか欠損しているようなものを指します。 日本語に例えるなら「てにをは」がおかしいことよりはるかに突き抜けたものなのです。 サイトの管理人は、「このサイトはあくまでちょっとおかしい英語をネタとして楽むためのサイトです」という内容のコメントをFAQでしています。 決して間違えた人間をバカにする意図はないと。 キム・ヨンジンさんの間違いをバカにする目的で「〜しる」を使っている日本人がほぼ皆無であるのと同じでしょう。 それは全く正しい姿勢だと思います。 ただ、間違えた側の人間は果たして自分(たち)の無知や失態を笑っていいものなのかどうか。 例えば、ドジな子供がやらかした面白い失敗が周りにバカウケしたからといって、その子に必ずしも芸人の素質があるというわけではありません。 みんなが笑いに包まれるのはいいことですが、それはその子供のお笑いの才能による「功績」では決してないんです。 ネット上でいちばん有名なオモシロ英語であるAYBABTUをクリエイトしてしまった人が、AYBABTUのFLASHを見てガッツポーズをしたとは思えません。 たぶん、ほろ苦い思い出として記憶の棚の奥にしまい込んでいるんじゃないかと思われます。 事例としての性質は異なりますが、極端な例としてEngrish.com FAQにある"SPREAD BEAVER"の件。 (参照:HIDE WITH SPREAD BEAVERの意味って?) つまり写真の女の子は「○○○ご開帳」と書いてあるシャツを着てスマイルかましているわけで。 ちょーっとHIDE、いたずらが過ぎたんちゃうん、と思ったのは私だけでしょうか。 さて。 AYBABTUが生まれたのが推定1989年。 時代は21世紀になり、ゲーム業界は昔とは比べ物にならないほど大きくなりました。 任天堂やスクエアは、その名前を知らないゲームマニアはひとりもいないといっていいほどの有名ブランドになっています。 ゲーム自体も大きく発展し、漢字を交えた日本語の文章を表示できるのも当たり前になりましたが、英語による表記ももちろん健在です。 というより、様々なメディアにおいて英語の使用頻度が大きくはね上がりました。 それでも。 世にEngrishの種は尽きまじ。 オモシロ英語が出てくるゲームは今もなお日本で日々生産されています。 世界でもゲームを売っているような大企業ではさすがにある程度ちゃんとした英語を使ってますが(何せ「実用目的で」使ってるわけですから)、問題は小規模のソフトハウスが作る国内向けのゲームや同人ゲームです。 かつて私は自分の日記で、AIR(key)のパッケージやタイトル画面などに出てくる英文もどきに関して非難したことがあります。 英語がムチャクチャだったことももちろん理由のひとつですが、それ以上に、言葉を使って人を感動させることで商売してる人間が(外国語とはいえ)言葉を蔑ろにしているというのが許せなかったんですね。 それと大体時を同じくして、同人サークルとして超新星の如く現れたのがTYPE-MOON(同人サイド)。 代表作「月姫」など、keyにも全く引けを取らないシナリオのノベルゲームを送り出してエロゲオタどもを次々と虜にし、ついには商業レーベルとなるにまで至ったほどのカリスマ的存在です。 でも、何も英語テキストのカリスマっぷりまでkeyといい勝負することないじゃん(笑)。 keyの「翻訳エンジンぶっこみ型」とは異なり、TYPE-MOONのオモシロ英語は「単語羅列型」――作者の知識としてストックしてある英単語を適当に並べただけと思われるタイプ――と思われますが、そう区別した根拠はさておきいずれの場合にも言えるのは、Engrish.comの管理人も指摘しているように、テキストを起こした人には英語をひとつの言語として扱おうという意識が希薄であるということです。 特に月姫は、最近アニメ化されたことによって海外のアニメファンからも注目されています。 日本人の私としては、月姫ネタがEngrish.comに掲載されないことを祈るべきなのでしょうか。 他にも、同人サークルなどの作品を見ていけばこのような例は枚挙に暇がありません。 みなさん、英語を使ってカッコつけたいなら翻訳エンジンに頼るのは極力避けてください。 翻訳エンジンは基本的にまだまだ馬鹿なんですから。 英語が得意だ(だった)という人が身のまわりにいないのなら、せめてキーワードとなる単語を英語に直すだけにとどめておいた方がいいです。 以下に挙げているイタリック体のテキストはフェアリアルさんの記事から引用したものですが、これこそまさに私がkeyやTYPE-MOONなどのやっつけ仕事に対して思っていたことです。 しかしまあ、読み流すチャットとかでなく、商用のゲームのような売り物である以上、やはり日本語ネイティブの人と英語ネイティブの人が協力して、間違いがないようにちゃんとチェックするべきだった、というのも確かだ。海外で発売する商品である以上、語学学習の大変さとかとは別の問題だ。英語の間違いそれ自体というより、日本の有名な大企業がこんなものをノーチェックで売ってしまう、ということが、ひとつの意外性であり、したがって驚きや笑いの対象ともなるだろう。 引用文は海外で発売する大企業の商品に対して書かれたものですが、じゃあ中小企業が作った国内向けのゲームでは手を抜いていいのかっていうと、全然そうじゃないと思うんですよね。 同人ゲームでも同様。 プロとしての責任うんぬんを問われることはないものの、作品の中身を評価するのに制作者がプロかアマかなんて関係ないですし。 自分の作ったものを世に出すんだったら、ちゃんと自分で誇れるような制作をしろと。 やるんだったら特技を最大限に駆使して最高のものを作れ。 できないんなら、またはよくわからないんならやるな。 そういうことです。 ある程度英語を知ってから英語を使ったファクターを制作すれば、まともな英語によってそれこそ本当の意味で格好がつきますし、うまくやればもっともっと作品を輝かせることだってできるんです(例えその輝きの本質を多くの人が理解できなかったとしても)。 それを怠って宝石にキズをつけたまま売り出すというのは本当にもったいないし、カッコ悪いことですよ。 まとめ:外国語もれっきとした言葉。 言葉で商売やってる人間は自分が売り物として使う言葉を疎かにするなかれ。 追記: ほらみろだから言わんこっちゃない。 _| ̄|○||| (いっちばん下の段落参照) |