163 名前:風と木の名無しさん[sage] 投稿日:04/06/30 06:54 ID:4/0lm3k5
マリネは頭脳労働もできそうなので、ジルと二人ハデに詐欺師とか泥棒とかやってほし、
適当に義賊で、トムとジェリーのごとく、国際警察してるジュール警部に世界中追っかけられる設定。

オーギュはどこぞの悪の枢軸。セルジュは巻き込まれがちな善良市民…。




+++大脱走+++



総監解任を言い渡されてからというもの、ロスマリネはつきものが落ちたように無気力になっていた。

ぼんやり歩いていると、誰かにぶつかった…ハッとして見るとそこにジルベールが立っていた。
どうやら、彼はまた監禁先から逃げ出したらしかった。

ジルベールがうつろに、何もかも諦めたような顔でロスマリネを見つめていた…。

捕まえて部屋に戻すのが総監の役割のはずが、ロスマリネはポツリと呟いた。
「見なかったことにする、さっさと逃げろ」
「え…っ?」ジルベールはきょとんとした。
「いいから、さっさといけ」ロスマリネはもう一度言った。

罠かもしれない…いつもと違うロスマリネに戸惑いながらも、とにかくジルは逃げ出そうと構えた。
しかし、逃げようとした瞬間、追っ手達が近くで騒いでいるのに気がついた。
今のジルベールは狩りの獲物だった。幾度も幾度も追い詰められて、弱りきっていた。

ロスマリネがとっさにマスターキーで近くにあった客室の鍵を開いた。
「誰かがくる…この部屋に隠れろ」
ジルベールを押し込んで、ドアを閉ざした。


うまく追っ手をかわすと、ロスマリネもジルを閉じ込めた客室に入った。
「学校中がお前を探して大騒ぎらしい。しばらくはここにいろ」
無責任な総監はそうあっさりと言ってのけた。
「本当にいいの?」ジルが訊ねる。
「良くないんだろうなぁ…ところで、セルジュにも知らせるか?」
ため息混じりに…ジルが頭をふった。
「セルジュ…かぁ、、、なんだか一緒にいるとすぐ逆上して疲れる…オーギュも疲れる」
ジルの瞳には涙が浮かんでいた。かなり追い詰められている様子だ。

「彼らから離れたいのか?」ロスマリネが単刀直入に言った。
「顔も見たくない…死ぬほど、厭!」ジルベールは吐捨てた。
その言葉にロスマリネは小さく笑った。

「…落ち着くまでここで隠れているといい」




学校、街中が、行方不明者を探しまわっていた。

だが、当のジルベールはオーギュの部屋のすぐそばの客室で、
だらだらと、自慰とかにも耽りつつ…過ごしていた。
「暇だなぁ…」彼はぼんやりと呟いた。

夜更けになると、ロスマリネが食料や雑誌を持ってくる。
灯かりは厳禁だった。暗闇の中で、彼らはその一日の事をとりとめもなく話したりした。

そんな夜を繰り返すうちに、やがて、ジルベールの唇が、自然とロスマリネの唇に触れた…。
ロスマリネは黙ってジルベールのキスを受け入れた。
「ねぇ、いっしょに逃げようよ…」ジルベールが言った。
「それ、いいね」ロスマリネが笑った。




ジルの失踪から一ヶ月、捜索は打ち切られた。オーギュストも学院を去った。
ちょうど学期も終わり、春休みの前日だった。ロスマリネは退学届けを院長に提出した。
「すべて自分の不徳の結果です。責任をとりたいのです」彼は言った。
「待ちたまえ!、君はまだ総監だろう。なんと勝手な…」院長は慌てていた。
「すぐに4月の新学期です。ジュール・ド・フェリィはうまくやってくれるでしょう。
引継ぎの書類はちゃんと総監室に用意しておきましたから、彼によろしくお伝えください」
そそくさと院長室を出ると、すぐに学院を後にした。
ジュールには黙っていた。が、すぐに知れるだろう。しかし、その時はジルベールと高飛びした後だ。
「さよなら…」
何もかも忘れるつもりで、ロスマリネは呟いた…。

こうして一時間後には、ジルとともにパリ行きの列車に乗っていたのだった。
もう後戻りは出来ない。



ジュールは引継ぎの書類を一通り眺めた。ロスマリネが書類上の事で間違いを犯すとは思わなかった。
確かに表向きは完璧な仕事だったが、しかし…やられた…ジュールは思った。

やってくれたものだ…アリオーナ、、転んでもタダでは起きないという事か…w

私立の学校は表向きで計上される収支決算とは別に、寄付金だの賄賂だので集めた資産が、
相当額、裏金としてプールされている。
ロスマリネはこの裏金と一緒にドロンしてしまっていたのである…当然、警察に訴える事もできない。
院長は自分の油断を棚に上げて地団駄踏んで悔しがっていた。ジュールはもう笑うしかなかった。
オーギュストが速攻でこの年寄りを懲戒免職にして事件に(表向き)終止符を打った。

ジルベールを失ったセルジュはパリの子爵家へと戻り、新学期になっても学院に戻る事はなかった。