+++金木犀遊戯2+++
「御綺麗な王子様ぁー!!!。どうやってオーギュに取り入ったのか教えてくれよ?」
攻撃の合間をぬって、笑い顔のジルベールが次々と淫猥な言葉を口にしていた。
ロスマリネは無言で罵詈雑言の相手をしていたが、妙な言葉ばかりを聞かされるとさすがに動きが鈍ってしまう。
そういう下世話な心理にかけては、まさにジルベールは天才的だった。
容赦なく襲いかかるジルベールの風の棘は、総監の結界を少しずつ傷つけていった。
「つぅっ…!!!」
総監が頬を抑える。そこには紅い血が滲んでいた…。
「死んだ方がマシなくらい、滅茶苦茶にしてあげるよ…その顔を」
ロスマリネはジルをキッと見据えた。
「この、私を甘く見るな!…私生児如きが…遊びは終わりだ!」
ロスマリネは携帯している鞭をその手にとった。むろん普通の鞭ではない。
鞭に気を集中する。すると茨のように変幻し、大蛇のように地を這いながら伸び始め、
グングン増殖し…その先端が簡単にジルを捕らえた。
…五肢を茨に絡め取られ、身動きを封じられたジルベールを総監が笑った。
「ふん、良い格好だな私生児!。…泣いて許しを請うなら今がその機会だ!」
だが、ジルは嘲るような微笑みを逆に総監に返した。
「僕も、あんたと○○○したいな…」
その言葉に、ロスマリネはキレた…。その瞬間、切り口が刃物以上に鋭く研ぎ澄まされた5本の薔薇が…
ジルベールの四肢と胸を刺し貫いた。
「…ッ!」
想像を絶する苦痛に、ジルベールは苛まれた。
ジルベールがもがけばもがくほど、苦しめば苦しむほどロスマリネは笑って見せた。
「お前とあの男…二人共に地獄に落とすのが私の願い」
茨をジルベールの首に蛇のように這わせると、きつく巻きつけてギリギリと締め上げる。
「がんばるじゃないか…本気で殺したくなって来た」
総監が呟き終わった瞬間、ジルベールは叫喚を上げて悶絶した。
ロスマリネは鞭をもとに戻すと、ジルベールの様子を見た。
ここに放置したままでも、そのうち目が覚める程度のダメージのはずである。
最初から瞬殺した方が簡単なのだが、総監にはオーギュストへの報告としてジルベールの能力を確認する必要があった。
結局、今回もそうたいした能力だとは思えなかったが…。
ジュールがやってきた。
「医療班に連絡しないのか?」
「こいつは自業自得だ。これ以上、甘やかす必要はない」
二人は、ジルベールに背を向けて歩き出そうとした…。しかし、まさに…その一瞬のことである。
…それは起こった…。
背後に大きな気の塊があるのが感じられた…二人は反射的に振り返って、ジルベールの方を見た。
ジルベールは倒れたままの状態であったが、その肉体からは不気味な気の塊とともに、ジルベールの「影」が膨れ上がり、黒雲のように、周囲に広がりはじめていたのだ。
「あれは…っ!」総監は対応する間も無かった。
ジルベールの影は急速に広がりながら…いきなり総監を捕らえると…その暗闇のなかへ取り込み始めた。
「ロスマリネっ!!!」ジュールが叫んだ。彼は思い出していた。
それはかつて一度だけ目にした事がある光景とよく似ていた…オーギュストがロスマリネを蹂躙した時の「闇の力」に…。
あっという間に、ロスマリネが黒い塊の中へと飲み込まれていった。
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