リズムのはなし あれこれ
リズムの話しーその1
リズムは音楽の3要素の一つですが、その起こりを考えると、全ては人間の「動作」つまり動きが元になっていると考えられます。.リズムパターンは、民族性(先天的要素)や、国民性(後天的要素)で、いろいろなものがあります。
1、基本的なリズムは、もちろん2拍子ですが、これは心臓の鼓動がそもそもの原点といわれています。赤ちゃんや幼児を眠らせるとき、子守唄を口ずさみながら、体をトーン、トーンと叩きますが、これは、年齢、性別、人種を問わず全世界共通のようです。

人間が胎内で聴覚が働くようになって初めて聞いた音、それが心臓の音。だから、心臓の鼓動に近い2拍子のリズムは、胎児の記憶をよみがえらせ、安心して眠りに就ける、もっともな話です。
2、ところが、世の中には違う感性を持つ人がいます。心臓は、ただドッキンドッキンと単調に動いているのではなく、入り口に血液が逆流しないよう、弁がついています。このせいで、吸う・閉める・吐き出す、ツー、パタン、キュー ツー、パタン、キュー、つまりは3拍子のリズムに見たてたのです。これが,かの有名な音楽家バッハでした。作品にも3拍子の名曲が沢山残されています。バッハが世界中で愛好されるのは,実は自分自身のハートトーンが原点にあると,合唱教室の先生の語ってくれた言葉が,今でもとても印象的で、忘れられません。
3、この三拍子がもっと軽快になると,ご存知「ワルツ」になってくるわけですが、これから先のリズムについては,もはや人間自身がもつ自然のリズムではなく,人間の動きがリズムの主体になってきます。
動きだけでなく、言語もリズムの大事な部分を占めています。言葉とリズム,あるいはメロディとの関連は,また項を改めますが,日本の伝統芸能の中で,三拍子のリズムを取るものは,果たしてあるのでしょうか?
伝統芸能といっても,カズボウが自信あるのは,民謡と長唄の世界のみで,ここだけに限っては、特に民謡の世界は,実に多彩なリズムが登場します。中には、日本人でなければ出来ない独特のリズムも在るようです.

一番簡単な二拍子でさえ、弾み(はずみ)方によって,いろいろなノリの変化があります.よく言われるのが,【佐渡おけさ】に代表される【三連の弾み】。このリズムの原点になる動きは踊り、恐らく手の動きと足の運びに生じる微妙なずれ、しかも洋服でなく着物を着て動く、動作にあるような感じがします。
4.さて,ワルツの踊りの感じを和服を着て出来るでしょうか?ちょっと難しいですね。被服の影響だけとは言いがたいのですが,動きが制約される分、大胆なリズムの出現はなかったようです。いつ頃から唄われているかは不明ですが,津軽よされ節という曲があります。これは3拍子で譜面が書かれています。ただし、西洋の3拍子とは、似ても似つかぬリズムです。このリズムが、どんな動きが元になって出来たのか、大変興味深いものがあります。ちょうど、酔っ払いの【千鳥足】に似ているのですが、1拍目がとてつもなく重いのです。

津軽や、南部地方の民謡によく現れる、この頭のおもさは、一体どこから来たのでしょうか?一つ想像されることは、農作業の鍬(くわ)の動き、あるいは斧で木を切る動き、です。頭の中の想像では、何やら鍬を固い大地に振り下ろして、地を耕す、このイメージで演奏すると、とても合うような感じがします。太鼓の伴奏を見ていても、津軽独特の1拍目のタメは、頭上から撥を振り下ろす豪快なアクションがなければ、生まれてこない間合いです。
長唄の中にも、三つ間といって、音譜上は3拍子が出てきますが、これはどちらかというと、間を合わせるための便宜的手段で、華麗な踊りの動きと合わせてという、3拍子は少ないようです。
5、着物という制約から解放されると、ずいぶんと軽いリズム感を持つ音楽が生まれます。阿波踊りのヨシコノ囃しとか、泥鰌すくいの安来節、菅笠に短めの紋付姿の麦屋節 etc。阿波踊りの元唄である九州の「はんや節」なども、着物のスソをはしょった(?)、軽快な動きがなければ、生まれてこないリズムです。
どうでしょうか、着る物と曲のイメージの相関が、こじつけでないこと理解頂けると思います。それでは、着物がないとどんなリズムですか? 暖かい国の、土人の踊りですね。(土人とは、別に差別用語として使うのではなく、あくまでも現住民を指します)
まあ、この辺のリズムについては、書ききれないほど沢山ありますし、現代の音楽には欠かせないものでしょうから、いまさら説明する必要もないでしょう。

最後に、結論として記憶していただきたいのは、リズムはその国の文化の集大成から生まれてくるものだということです。着物を中心に、こじつけめいた話しが続きましたが、着物文化日本の伝統芸能を、洋服に変わったからといって、簡単に脱ぎ捨ててしまうのは、ちょっと早計だとは思いませんか.
6、日本と同じように、経済大国であって、それが徐々に衰退している国、イギリスの例を考えて見ましょう.繁栄した経済のおかげで、文化的な遺産が沢山残っています.その文化の成果の象徴は、ビートルズです。もはや、経済では見劣りがするものの、文化によって外貨を集められるのです。

最近では、ガーデニングがブームになっています.日本人は、昔から自分の国、あるいは文化を卑下して、海外からのものを無条件で受け入れてきました.その結果はどうなるのでしょうか.日本には、生け花や盆栽といった日常文化があります.
何でもかんでも、まぜこぜになって、日本人としてのIDを失ってしまったら、私達はこの先何を持ってこの国を支えていけるでしょうか.
自分の国の文化に誇りを持ち、これを大切に扱う心がなければ、決して海外から関心を持たれることもないし、極端な言い方をすれば、国として存続する価値さえなくなってしまいます.例え国土がなくても、滅亡したイスラエルが復活したのは、文化を守りつづけてきたからこそです。

リズムの話し―その2
つぎにリズム感について、考えてみたいと思います。よく言われる話しですが、人間の持つリズム習得能力は、次ぎの3つに分けられます。
@、先天的に、どんなリズムでも自然と乗れる人。
A、習えばリズムに乗れる人。
B、習ってもリズムに乗れない人。
いわゆる、リズム音痴と呼ばれるのがBの部類です。通常は真中の人が一番多いわけですが、このリズム感の悪さは、音楽面だけに限らず、動作にも現れてくるようです。
黒人はリズム感が大変優れている、確かにその通りですが、これは生まれてからの後天的な環境によるものだけなのでしょうか? 後天的、あるいは胎児の時期の影響ならば、全ての人はAの部類になります。ところが、育った環境が同じでも、やはりリズム感の良し悪しには差があるし、聞いことがないはずなのになぜか、いろいろなリズムにすぐ乗れる人がいるのです。
遺伝子のせいもあるかも知れませんが、何か優れた才能については、神様が与えた賜物(タレント)としか考えられない例をいくつか見ています。
まあ、そんな例を書き連ねて、説教するのがこのホームページの目的ではありませんが、音楽の世界を語るには、天才という言葉を、素直に受け入れておいた方が良いのではないかと考えます.

最終更新12/05/14
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