遠距離恋愛




「つなー! 携帯が光ってるもんね」
「あ、たぶん、メールが来てる。 ありがとう、ランボ」
携帯をツナに手渡して、ランボはまた1階に降りていってしまった。テレビの続きが気になるのだろう。ツナはランボが部屋を出て行ったのを見届けると、ベッドに腰かけ、携帯を開いた。ぎし、とスプリングが軋む音がした。
携帯の画面には新着メールが来たことを表すアイコンが点滅していた。メールボタンを押して、受信ボックスを開く。未読メールが一件あった。
その未読メールは少しだけ変わっていた。
送信者の名前が表示されていないのだ。それどころか、送り主のアドレスすら一切ない。題名ももちろん無題。普通だったら、不審がって開けるのに戸惑ってしまうメールだ。しかし、ツナは迷うことなくそのメールを開いた。
その本文は、短く、内容は端的だった。

『お元気ですか。ちゃんと寝てますか。ちゃんと食べてますか。』

その文章に、ツナはすこしだけ笑ってしまった。
「おまえは、母さんかよ……」
しかし、すぐにツナの顔はどことなく悲しげな笑みに変わる。
「普通に暮らしてる俺なんかよりも自分の心配をしろよ……おまえのがずっとずっと大変なのに。なんで、俺の心配ばかりしてるの……」
ツナは愛しげに携帯の画面を撫でた。
「本当に、……ばか。」
どこかも分からぬ冷たい場所にいる彼を思う。
メールはいつもツナに骸の事を思う時間を与える。メールが来るたびにツナは骸への恋心を思い出した。定期的に来るメールはまるでツナにこう言うようだ。
「僕の存在を忘れないで」
(俺はずっと、いつだってお前を傍らに感じてるよ)
このメールは返信しても、宛先不明で送れず、決して骸には届かない。不公平だ、とツナは不満に思う。それと同時に、早く会って直接にこの気持ちを伝えたいという願望が増していく。
(待っててね)
今は届かなくても、いつか届けにいくから。